I駅の一夜アイえきのいちや
まだ戦争中の話である。 三月十日の未明、本所深川を焼いたあの帝都空襲の余波を受けて、盛岡の一部にも火災が起きた。丁度その時刻には、私は何も知らずに、連絡船の中でぐっすり寝ていた。 青森に着いても何事も知らされず、いつものように乗客は先を争っ …