ふね)” の例文
あるあさのこと、ひがしそらがやっとあかくなりはじめたころ、いつものごとくふねそうと、海岸かいがんをさして、いえかけたのであります。
羽衣物語 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのわり一つおねがいがあります。どうぞくすのきでふねをこしらえて、みずをいっぱいれて、その中にささのかべてください。
雷のさずけもの (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
すみさんは、休屋やすみやはまぞひに、恵比寿島ゑびすじま弁天島べんてんじま兜島かぶとじまを、自籠じごもりいは——(御占場おうらなひばうしろにたる)——かけて、ひとりでふねした。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
子どもはった。ふねがまん中ごろに来たとき、おらは見ないふりしてよく子供を見た。きちんとひざに手をいて、そらを見ながらすわっていた。
ざしき童子のはなし (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
僕等はやむを得ずふねばたに立ち、薄日うすびの光に照らされた両岸の景色を見て行くことにした。もつとふなばたに立つてゐたのは僕等二人に限つたわけではない。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
茄子なすび大根だいこ御用ごようをもつとめける、薄元手うすもとでをりかへすなれば、をりからやすうてかさのあるものよりほかさほなきふね乘合のりあひ胡瓜きうりつと松茸まつたけ初物はつものなどはたで
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
こうして、女は、手つだいをした男といっしょに、あなをあけたふねにのせられて、海につきだされました。ふたりは、まもなく波間なみまにしずんでしまいました。
玄竹げんちく意氣揚々いきやう/\と、ふねなかへ『多田院御用ただのゐんごよう』の兩掛りようがけをゑて、下男げなん二人ふたりそれを守護しゆごする位置ゐちひざまづいた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
二十七日正午、ふね岩内を発し、午後五時寿都すっつという港に着きぬ。此地ここはこのあたりにての泊舟はくしゅうの地なれど、地形みょうならず、市街も物淋ものさびしく見ゆ。また夜泊やはくす。
突貫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
彼はそれをふねになぞらえて、よく中へ入って遊んだことを覚えていた。そうしていると、やさしかった母親の顔が、闇の中へ幻の様に浮んで来る気さえした。
お勢登場 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そり(字彙)禹王うわう水ををさめし時のりたる物四ツあり、水にはふねりくには車、どろにはそり、山にはかんじき。(書経註)しかれば此そりといふもの唐土もろこしの上古よりありしぞかし。
掛引かけひきみょうを得たるものなれども、政府にてはかかるたくらみと知るや知らずや、財政窮迫きゅうはく折柄おりから、この申出もうしいでに逢うてあたかわたりにふねおもいをなし、ただちにこれを承諾しょうだくしたるに
一休いっきゅうさんが、その りょうしの ふねに のせてもらって びわこの うえで ざぜんを くんで いますと、そらの どこかで からすの なきごえが しました。
一休さん (新字新仮名) / 五十公野清一(著)
わたりにふねというものだ、なにはともあれ、こいつに乗って城内じょうないりこんで見ようではないか」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なんでも石油せきゆいて、それでふね自由じいうにする器械きかいなんださうですが、いてると餘程よつぽど重寶ちようはうなものらしいんですよ。それさへければ、ふね手間てままるはぶけるとかでね。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ふねよりふねわたりて、其祝意そのしゆくいをうけらるゝは、当時そのかみ源廷尉げんていゐ宛然えんぜんなり、にくうごきて横川氏よこかわしとも千島ちしまかばやとまでくるひたり、ふね大尉たいゐ萬歳ばんざい歓呼くわんこのうちにいかりげて
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
「まだありますよ、親分、伊丹屋の馬鹿野郎は小唄の師匠のおふねの世話も焼いていた」
かへでのやうなしきりになみ掻分かきわけてる、此樣こんなことで、ふねうごくかうごかぬか、その遲緩まぬるさ。
そのころひとちひさいふねつて海岸傳かいがんづたひにこの南滿洲みなみまんしゆうから北朝鮮きたちようせん樂浪らくろうて、南朝鮮みなみちようせんにも支那しな文明ぶんめいつたへ、さら日本につぽん西南せいなんへもたのでありまして、その結果けつかつひに朝鮮ちようせん日本につぽん
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
陸を行くには車、水を行くにはふねと昔から決ったもの。今陸を行くに舟をもってすれば、いかん? 今の世に周の古法をほどこそうとするのは、ちょうど陸に舟をるがごときものとうべし。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
枯草白き砂山のがけに腰かけ、足なげいだして、伊豆連山のかなたに沈む夕日の薄き光を見送りつ、おきより帰る父のふねおそしとまつ逗子ずしあたりのわらべの心、そのさびしさ、うら悲しさは如何あるべき。
たき火 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
ほかにも、とほつてゐるふねがある。自分じぶんふねつて、たびをしてゐる。あゝして、むかうとほつてゐるふねかられば、われ/\をばこの藤江ふぢえうらで、すゝきりをしてゐる海人あま村人むらびとてゐるだらうよ。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
「わたしならね」と彼女は、両手を胸に組んで、をわきの方へそそぎながら、言葉を続けた。——「若いむすめ大勢おおぜい、夜中に、大きなふねに乗って——静かな河に浮んでいるところ、それを書くわ。 ...
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
さむらいはそれをふねのへりにのせ、刀でぱちんと二つにわりました。
飴だま (新字新仮名) / 新美南吉(著)
ネのがつくんだ、たとへば、鼠罠ねずみわなとか、ふねとか、かねとか
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
ゆくふねに岸根をうつや春の水 太祇
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
浮名うきなをいとはばふねにのれ
浮名 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
あらゆるくによりふねこそかよ
横浜市歌 (新字新仮名) / 森林太郎(著)
いざりてふね
ゴンドラの唄 (旧字旧仮名) / 吉井勇(著)
きずつけるわかうどのふね
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
兄もろともにふねけて
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
そこでどこまでもおひめさまのおともをして行くつもりで、まず難波なにわのおとうさんのうちへおれしようとおもって、鳥羽とばからふねりました。
一寸法師 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
わたしは、うしろ姿すがた見送みおくり、「どうか、時間じかんにまにあい、ぶじにふねれますように。」と、旅人たびびとのために、こころからいのりました。
白壁のうち (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのうちとうとう二せきふねが川下からやって来て、川のまん中にとまりました。兵隊たちはいちばんはじの列から馬をひいてだんだん川へ入りました。
イギリス海岸 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
鈴生すゞなりにひとせたふねが、對岸たいがんくまで、口惜くやしさうにしてつた天滿與力てんまよりきの、おほきなあかかほが、西日にしびうつつて一そうあか彼方かなたきしえてゐた。——
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
そり(字彙)禹王うわう水ををさめし時のりたる物四ツあり、水にはふねりくには車、どろにはそり、山にはかんじき。(書経註)しかれば此そりといふもの唐土もろこしの上古よりありしぞかし。
太吉たきち小僧こぞうひとさしゆびさきいて、おふねこぐ眞似まねせいみせしなをばちよろまかされぬやうにしておれ、わたしかへりがおそいやうならかまはずとをばおろして
うらむらさき (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それからぼくうちはししたを、あのウふねいでくのがなんだかうたつてくけれど、なにをいふんだかやつぱりとりこゑおほきくしてながひつぱつていてるのとちがひませんもの。
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
一休いっきゅうさんが やはり あの としよりの りょうしの ふねに のせてもらって、うつくしく すんだ びわこの うえで、がくもんの ことを かんがえて いました。
一休さん (新字新仮名) / 五十公野清一(著)
しまとかふねとかくらべてものがなかつたからで、これはよくことだ。
鳥船とりぶねといふのは大昔おほむかし國語こくごで、ふね名前なまへでもあり、同時どうじふねについていらつしやる神樣かみさまのお名前なまへでもありました。あなたがたならば、ふねはやいからとり見立みたてたのだとおもつていてさしつかへありません。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
黄龍こうりゅうふねを負うて孟津もうしんわたる……
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ふねきしにつけば柳に星一つ
五百句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
ふねが出ようとすると
飴だま (新字新仮名) / 新美南吉(著)
さては魚河岸うをがしふねつくや
全都覚醒賦 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
いまはももふねもも千舟ちふね
横浜市歌 (新字新仮名) / 森林太郎(著)
といって、お百姓ひゃくしょうはさっそくくすのきをくりぬいて、ふねをこしらえ、その中にみずをいっぱいためて、ささのかべました。
雷のさずけもの (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「は、は、は。うみなかへは、毎日まいにちのようにはいったし、ちいさなふねって、とおくへりにいったこともある。」と、おじさんが、こたえました。
海が呼んだ話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そしてザネリをふねの方へしてよこした。ザネリはカトウにつかまった。けれどもあとカムパネルラが見えないんだ
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
すみ黒々くろ/″\かれた『多田院御用ただのゐんごよう』の木札きふだててられると、船頭せんどうはまたふねかへさないわけにかなかつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)