)” の例文
新字:
横笛今は心を定め、ほとほととかどを音づるれども答なし。玉をべたらん如き纖腕しびるゝばかりに打敲うちたゝけども應ぜんはひも見えず。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
あなたがお家にゐらつしやればいゝと思ひました。この部屋に這入つて來ると、空虚うつろの椅子や火のの無い爐が私に身顫ひさせました。
「飛んでもない、あつしは飮んで食ふだけが藝當で。親分も御存じの通り、かさと道樂氣は、これんばかりもありやしません」
御米およねのない眞中まんなかに、少時しばらくたゝずんでゐたが、やがて右手みぎてあた下女部屋げぢよべやを、おとのしないやうにそつといて、なか洋燈らんぷかざした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
すくないのか、とやかくと、心遣こゝろづかひにむねさわがせ、さむさにほねひやしたれば、わすれて持病ぢびやうがこゝで、生憎あいにく此時このとき
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「こはが御心なり。かれ意富多多泥古おほたたねこをもちて、我が御前に祭らしめたまはば、神の起らず、國も安平やすらかならむ」
「もう好いから、あちらへ行つてくれ」と、今度は如何にもなく、云ひつけるのでございます。
地獄変 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
近頃中風のだと言つて、座敷の中でもよく杖を手にしてゐながら、食慾はさのみ衰へなかつた。
太政官 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
チエスタ孃は彼女の座席から身を乘り出し、顏色は麥粉のやうに眞白に血のを失ひ、眼を大きく見開いて、白日夢を見る人のやうに『エイブラム師』を凝視みつめてゐた。
水車のある教会 (旧字旧仮名) / オー・ヘンリー(著)
經文きやうもん讀誦どくじゆ抹香まつかうくさくなりて、むすめらしきにほひはとほかるべしとおもひしに、そのやうのぶりもなく、柳髮りうはついつも高島田たかしまだむすげて、おくすぢえりにださぬたしなみのよさ
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
とおほめになつて、うちに少々しよう/\のこつてゐたもの褒美ほうびらせました。もちろんひめ難題なんだいにはふるひ、「赫映姫かぐやひめおほがたりめ」とさけんで、またと近寄ちかよらうともしませんでした。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
その鋭い光を横ざまに暗い繁樹しげきの間から投げる博物館の構内——牧草の生ひ繁るなかの小徑を、二人して無言で散歩すると、義雄は異樣な凄みと空想とにおぞが立つのをおぼえる。
泡鳴五部作:03 放浪 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
空は昨夜の雷雨の名殘がまだはつきりしないで、今にも降つて來さうなはひだつた。顏を洗つて階段を下りて行くと、L氏夫妻も谷口君も、もう着替をしてサロンで私たちを待つてゐた。
キフホイザー (旧字旧仮名) / 野上豊一郎(著)
記憶きおく辿たどれば、久保田さんのはわたしも二三一緒に行つた事のある、あさ草の十二かいしよの球突塲つきば背景はいけいにしたもので、そこに久保田さん獨特どくとく義理ぎりぜう世界せかいを扱つてあつたやうにおもふ。
文壇球突物語 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
みのるの例の高慢な振りがその頬に射したのを義男は見たのであつた。
木乃伊の口紅 (旧字旧仮名) / 田村俊子(著)
しかし、手紙をよむをりは、そんなことなどにも思ひはしなかつた。
おとづれ (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
濠をめぐり、目まぐるしくも變化なく、なく、單調に、單色に
展望 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
しなあつものなら身體からだあたゝまるだらうとおもひながら、自分じぶんひどものういのでなんでもおつぎにさせてた。おつぎはねばのないむぎつたぽろ/\なめしなべれた。おしな麁朶そだ一燻いとくつ込んだ。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
と、けむりとで、お清書せいしよたかくあがれば、それをいたもののがあがるとひました。まつえるけむりと一しよになつてお清書せいしよたかく、たかくあがつてくのは丁度ちやうどたこでもあげるのをるやうでした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
退いた跡には、シーッと音して、潮のがえならぬ強い薫を撒く。
漂泊 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
なんともいへない無邪氣むじやきかほつきや樣子ようすをしてゐるところなど、いかにもむかしひとかざのないこゝろうかゞはれるばかりでなく、當時とうじひと風俗ふうぞくだとか服裝ふくそうなども、これによつてることが出來できますから
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
とのぐもりすすふかく立ち舞へば咽喉のどゑごくして春もくるしさ
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
常の心は、あけに染み、血のに欲をたゝへつゝ
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
をさむみ、物怖ものおぢすくまりき。
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
やまうどによるみぬ。
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
つやなしにく。
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
この非凡ひぼんやま
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
彼等はロチスター氏には見えなかつた。彼は一心に私の顏を見つめてゐたのである。恐らく、そこからは刻々こく/\と、血のが失せてゐたのだ。
かんがへ、かんがへつゝ、雨戸あまどつて、裏窓うらまどをあけると、裏手うらて某邸ぼうていひろ地尻ぢじりから、ドスぐろいけむりがうづいて、もう/\とちのぼる。
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「お勝手の戸棚の白丁はくちやうの中に毒のがあれば、湯へ行く前に入れたかも知れないが、白丁に殘つた酒に毒が入つて居なきや、お近さんは下手人ぢやないよ」
なんことだに心配しんはい無用むよう小梅こうめ八木田やぎた年來としごろ持物もちもので、ひとにはゆびをもさゝしはせぬ、ことにはせがれ、はなくにつて紫蘇葉しそはにつゝまれようとものだに
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そばにどんなひとがゐるか見向みむきもしなかつた。如何いかなるものがそとからはひつてても、まつた注意ちゆういしなかつた。彼等かれらきた彫刻てうこくやうおのれをして、のないへや肅然しゆくぜんすわつてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「上の雪隱せんちと言ひ、風呂場の踏石ふみいしと言ひ、この家にはたゝのあるもんが多い。」
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
先生の女のやうな細い聲に、ややあがつた調子さへ加はつて來たのである。
猫又先生 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
月はあれど夕立つ雲のに見えてなにかれたる蒸しかへしなり
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
これに因りて悉にみて、國家みかど安平やすらぎき。
人のえし渡殿わたどのの影ほのぐらき朧月ろうげつ
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
みてたゆたひぬ。
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
にとられて百姓ひやくしやう
鸚鵡:(フランス) (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
よわきを
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
「水を飮ませたら、元氣づくだらう。ハナァ、持つておいで。だけど、まるで骨と皮だ。何て痩せて血のがないんだらう。」
今年ことし非常ひじやうあつさだつた。また東京とうきやうらしくない、しめりびた可厭いや蒸暑むしあつさで、息苦いきぐるしくして、られぬばん幾夜いくよつゞいた。おなじくあつかつた。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
白粉ののなさも、兩國あたりの藝人にしては非凡ですが、この娘は本當に白粉が要らなかつたのです。
奧方おくがた火鉢ひばち引寄ひきよせて、のありやとこゝろみるに、よひ小間使こまづかひがまいらせたる、櫻炭さくらなかばはひりて、よくもおこさでけつるはくろきまゝにてえしもあり、烟管きせる取上とりあげて一二ふく
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ある日回診の番が隣へ廻つてきたとき、何時いつもよりは大分だいぶ手間が掛ると思つてゐると、やがて低い話し聲が聞え出した。それが二三人で持ち合つて中々捗取はかどらないやうなしめを帶びてゐた。
変な音 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
にふかき蝶のむつみや誰知らぬ墓うらの照りのすでに久しさ
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
に染みてたゆたひぬ。
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
と、やさしく櫛卷くしまきれて、うれしらしくつたが、あどなく、して、かよわい姿すがたが、あはれにえた。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
總領の富太郎はむしがひどくなつて、夜分にひどくうなされたり、物驚きをしたり、時々は引付けたり、次第に糸の如く痩せ細つて、頼りない有樣になつて行くのでした。
ぬしをとこともをんなともひとにはえじとおもひしげなれど、たるは三十許さんじふばかりきし女中風ぢよちゆうふうと、いま一人ひとり十八じふはちか、にはだとおもはるゝやうの病美人びやうびじんかほにも手足てあしにもといふものすこしもなく
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)