かう)” の例文
晶子は三越で買つて来た白地しろぢかうの図と菊とを染めた友禅と、京都の茅野蕭蕭ちのせうせう君に託して買つて貰つた舞扇まひあふぎの一対とを夫人に捧げた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
煙草盆たばこぼんかうかをりのみして、にいまだ人影ひとかげなきとき瀧君たきくん光景くわうけいは、眞田さなだ六文錢ろくもんせん伏勢ふせぜいごとく、諸葛亮しよかつりやう八門遁甲はちもんとんかふそなへる。
九九九会小記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
女は身をかへすと、掛けかうを三十もブラ下げたやうなあやしく、艶めかしい香氣を發散させて、八五郎の膝へ存分に身を技げかけるのでした。
乞食はかう云つたと思ふと、見る見るかうの煙のやうに、何処どこかへ姿を隠してしまひました。あとには朝日の光のさした町の敷き石があるだけです。
三つの指環 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
かかるけはひの、いとかうばしくうち匂ふに、顔もたげたるに、単衣ひとへうち掛けたる几帳のすきまに、暗けれど、うち身じろぎ寄る気はひ、いとしるし。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今度こんどは石をにしきつゝんでくらをさ容易よういにはそとに出さず、時々出してたのしむ時は先づかうたいしつきよめるほどにして居た。
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
ひろはれてまゐつてから三ねんほどちましたとき食堂しよくだう上座じやうざざうかうげたり、燈明とうみやうげたり、そのほかそなへものをさせたりいたしましたさうでございます。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
庄吉爺しやうきちぢいさん、くりしびけてそんなにかうばしさうになるものなら、ひとわたくしいてれませんか。』
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
干飯ほしいひ古酒こしゆ一筒ひとづつ、ちまき、あうざし(青麩あをふ)、たかんな(筍)方々かた/″\の物送りたまふて候。草にさける花、木のかはかうとしてほとけに奉る人、靈鷲山れいしうざんへ參らざるはなし。
寒々さむざむと揺れてゐるものは、孟宗のほづえ、ささ栗のそばのかやの木、枯枝の桐の莟、墓原のかうのけむり。
観相の秋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
かうの薫りが流れ、蝋燭が闇の中に輝き、水夫等の捧げた供物が聖なる壁の到る所に懸け列ねてあつた。
一枝は、部屋部屋を野生の草花で飾り、電気の球を変へさせ、客間にはかうを焚いた。それから、湯上りの化粧を丹念にして、わざと黒つぽい単衣を軽く身につけた。
落葉日記 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
山百合やまゆりのマルタゴン、いろい眼をしたマルタゴン、東羅馬ひがしろおまの百合の花、澆季皇帝げうきくわうてい愛玩あいぐわん聖像せいざうかう
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
彼等かれら自然しぜん彼等かれらまへにもたらしたおそるべき復讐ふくしうもとをのゝきながらひざまづいた。同時どうじこの復讐ふくしうけるためにたがひ幸福かうふくたいして、あいかみに一べんかうことわすれなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
富岡は、久しぶりに文明にめぐりあふやうな気がして、かうばしいコオヒイに唇をつけた。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
味噌汁みそしるのことをおみおつけ、風呂ふろのことをおぶう、かうのもののことをおしんこ。‥‥
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
先程さきほどから萬屋よろづや主人あるじは、四でふかこひ這入はいり、伽羅きやらいてかうを聞いてりました。
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
火の側の小さな圓い卓子テエブルの上に置かれた陶器の茶碗や光つた急須きふすが、どんなに美しく見えたらう! 飮物の湯氣ゆげ燒麺麭トーストの香りが、どんなにかかうばしかつたらう! だが、その燒麺麭は
その趣味しゆみしぶれいげると、三上みかみがその著名ちよめいなる東京市内出沒行脚とうきやうしないしゆつぼつあんぎやをやつて、二十日はつかかへつてないと時雨しぐれさんは、薄暗うすぐら部屋へやなか端座たんざして、たゞ一人ひとり双手もろて香爐かうろさゝげて、かういてゐる。
彼は足もとから立ちのぼるその土の匂を、かうを匂ふ人のやうに官能を尖らかせて沁み沁みと味うて見た——ぢやらぢやらと涼しく音を立てて居た鍵束の音がやまつて、縁側の戸が開けられるまで。
さうして室内しつないなにかうゆらすやうにとニキタにめいじて立去たちさつた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
かうたき錦に爪をつつませておふしたてられ君にとつぎぬ
舞姫 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
そをだにかうゆるかと頼めるけはひ。
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
からみて沈むかうの色。
ふるさと (新字旧仮名) / 漢那浪笛(著)
港口みなとぐちんでえるのをました……あつとおもふとゆめめたが、月明つきあかりにしも薄煙うすけぶりがあるばかり、ふねなかに、たふとかうかをりのこつたと。
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かうひんする人のやうな態度で、相手の女房を「鑑賞した。」これは私がほとんどすべての女に対してする事だから、大方君にも以前に話した事があるだらう。
世之助の話 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
そして日々にち/\飯米はんまいはかつて勝手へ出す時、紙袋かみぶくろに取り分け、味噌みそしほかうものなどを添へて、五郎兵衛が手づから持ち運んだ。それを親子炭火すみび自炊じすゐするのである。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
裏岨うらそばののぼりくだりに、ほつほつと通る馬さへ時をりは青きつけつつ、声高こはだかの人の話も濡れながら行けば親しき。静こころかうをつぎつつ、さて、今日もうら安くこそ。
茶器を引寄せ、無造作に入れて、濃く熱いやつを二人の客にも勧め、自分も亦茶椀を口唇くちびる押宛おしあながら、かうばしくあぶられた茶の葉のにほひを嗅いで見ると、急に気分が清々する。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
私にしてもあの女に人をきよめる徳なんぞがあらうとは一度だつて考へなかつたことです。それは神聖な薫りといふよりも、彼女が殘して行つた香晶か何かの麝香じやかうとりうぜんかうの匂だつたでせう。
香炉かうろを手に取揚とりあげ、ぎんさじいたかうを口へ入れ、弥
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
花は薫じて追風に、不斷のかうの爐に似たり。
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
懴悔のだんかうしんの心の
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
春にはめし、かう
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
きぬたの、かう
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
いはおもて浮模様うきもやうすそそろへて、上下うへしたかうはせたやうな柳条しまがあり、にじけづつてゑがいたうへを、ほんのりとかすみいろどる。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
大原御幸おほはらごかうのところへ行つて、少しも筆が進まなくなつて、困り果てて居るところで、そのうち、突然、インスピレエシヨンを感じて、——いらか破れてはきり不断ふだんかう
一人の無名作家 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
わが庵の竹の林にこぬか雨今朝も湿しめれり。春さきのこぬか雨なり。ふるとしも見えぬ雨なり。こぬか雨笹にこもりて、かうけばかうもしめりて、事もなし、ただ明るけし。
沈默しゞまさと偶座むかひゐひとつのかうにふたいろ
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
茶、かう、十しゆ寄合よりあひ
白檀びやくだんかうぢんかう
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
たひ味噌汁みそしる人參にんじん、じやが、青豆あをまめとりわんたひ差味さしみ胡瓜きうり烏賊いかのもの。とり蒸燒むしやき松蕈まつたけたひ土瓶蒸どびんむしかうのもの。青菜あをな鹽漬しほづけ菓子くわしいちご
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
生徒に大原御幸おはらごかうの講義をしてゐるところで、先生が、この——きり不断ふだんかうき……と云ふやうな語句は、昔からその出所も意味も解らないものとされて居ると云ふと
一人の無名作家 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
わが庵の竹の林に、こぬか雨今朝も湿しめれり。春さきのこぬか雨なり。ふるとしも見えぬ雨なり。こぬか雨笹にこもりて、かうけばかうもしめりて、事もなし、ただあかるけし。
観相の秋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
蘇門答剌そもたらかうも及ばじ。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
しつに、玉鳳ぎよくほうすゞふくみ、金龍きんりうかうけり。まどくるもの列錢れつせん青瑣せいさなり。しろきからなしあかきすもゝえだたわゝにしてのきり、妓妾ぎせふ白碧はくへきはなかざつて樓上ろうじやうす。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
裏岨うらそばののぼりくだりに、ほつほつと通る馬さへ、時をりは青きつけつつ、声高こはだかの人の話も、濡れながら行けば親しよ。静こころかうをつぎつつ、さて、今日もうら安くこそ。
観相の秋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「蓋棺の後」に起るものは神化か獣化(?)かの外にある筈はない。しかし何世紀かの流れ去つた後には、——その時にもかうを焚かれるのは唯「幸福なる少数」だけである。
天津日あまつひに捧ぐるかう
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
詩人しじんこれでは、鍛冶屋かじや職人しよくにん宛如さながらだ。が、そにる、る、りつゝあるはなんであらう。没薬もつやくたんしゆかうぎよく砂金さきんるゐではない。蝦蟇がまあぶらでもない。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)