身體からだ)” の例文
新字:身体
しかわたしすこしも身體からだ異状いじやういです、壯健さうけんです。無暗むやみ出掛でかけること出來できません、何卒どうぞわたし友情いうじやうことなんとかしようさせてください。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
第六 毎日まいにち一度いちど冷水ひやみづあるひ微温湯ぬるゆにて身體からだ清潔きれいぬぐひとり、肌着はだぎ着替きかへべし。入浴ふろは六七日目にちめごとなるたけあつからざるるべきこと
養生心得草 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
またその身體からだにはこけだのひのき・杉の類が生え、その長さはたにみねつをわたつて、その腹を見ればいつもが垂れてただれております
しな硬着かうちやくした身體からだげて立膝たてひざにして棺桶くわんをけれられた。くびふたさはるのでほねくぢけるまでおさへつけられてすくみがけられた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
暗くされし無念に父の武左衞門心濟ねば鬱々うつ/\と今日も消光くらしてお光に向ひ面白からぬ事のみにて身體からだも惡く覺ゆるに床をばのべて少のあひだ足を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ひと身體からだ一部分いちぶぶんを、何年なんねんにもないでます場合ばあひおほいから……姿見すがたみむかはなければ、かほにもはないと同一おなじかもれぬ。
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
馬方うまかたひますと、うま片足かたあしづゝたらひなかれます。うま行水ぎやうずゐわらでもつて、びつしよりあせになつた身體からだながしてやるのです。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
やつ身體からだいたくせ親父おやぢらすまいとしてはたらいてた、れをたられはくちけなかつた、をとこくてへのは可笑をかしいではいか
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
『人のことを、そないに見るのはや。』と、お光は自身の身形みなりを見𢌞はしてゐる小池の視線をまぶしさうにして、身體からだすくめた。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
御米およねはかう宗助そうすけからいたはられたときなんだか自分じぶん身體からだわることうつたへるにしのびない心持こゝろもちがした。實際じつさいまた夫程それほどくるしくもなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ふと、彼れは日々の乞食見たいな生活くらしを免れて一人立ちになるには、こんなやくざな身體からだを亡ぼすより外仕方がないと思つた。
仮面 (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
『君がうして一生懸命働いてくれるのはいが。、其爲に神經衰弱でも起さん樣にして呉れ給へ。一體餘り丈夫でない身體からだな樣だから。』
菊池君 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
俺がいそいで行つて、蚊帳のなかから幸子を出して抱き上げようとして見ると、幸子の身體からだが一晩ですつかり蚤にくはれて眞赤になつてるんだ。
(旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
自分は今や唯だの一日すらも、日本在來の飮食物には滿足する事が出來ぬ身體からだになつたのかと思ふと、寧ろ淋しい悲愁を感ぜずには居られない。
新帰朝者日記 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
「月に吠える」には何の涙もなく哀傷もない。だが「青猫」を書いた著者は、始めから疲勞した長椅子ソフハアの上に、絶望的の悲しい身體からだを投げ出して居る。
定本青猫:01 定本青猫 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
食事が未だ濟まないと云ふと、食べないで居ると身體からだが餘計に疲れるからと云つて、よろよろと歩く私をれて氏は一度すまして歸つた食堂へまた行つた。
巴里まで (旧字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
ところへ兄が見舞に來てくれて、いろんな話の末に、歌舞伎座の「沈鐘」を見に行かうと思ふが身體からだに故障が起らなければ一緒に行かないかと誘つてくれた。
青木さんのこゑなんとなく上ずつてゐた。そして、わざとらしいはしやぎかた身體からだをゆすぶりながらわらつた。
(旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
ねつたのとですくなからずよわつ身體からだをドツかとおろすと眼がグラついておもはずのめりさうにした。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
その檸檬のつめたさはたとへやうもなくよかつた。その頃私は肺尖を惡くしてゐていつも身體からだに熱が出た。
檸檬 (旧字旧仮名) / 梶井基次郎(著)
どうぢゃ! 噴水像みづふきどの! え、まだいておぢゃるか? え、いつまでも雨天しけつゞきか? 其許おぬしたんだひとつのちひさい身體からだで、ふねにもなれば、うみにもかぜにもなりゃる。
と云つて井田は眞面目に寢ようと身體からだを一ゆすりゆすつた。相島は寢床に這入ると非常に疲れて居た。「井田君は甘く寢られればいゝが」と彼れは心から親切にさう思つた。
半日 (旧字旧仮名) / 有島武郎(著)
「止せ/\、どうせお處刑しおきになる身體からだだ。それより、俺は、お前に丁度いゝ嫁を見付けたよ」
あまりに無邪氣むじやきなる日出雄少年ひでをせうねん姿すがたては流石さすが怒鳴どなこと出來できず、ぐと/″\くちうちつぶやきながら、そのビールだるのやうな身體からだまろばして、帽子ぼうしあとひかけたはなしなど
身體からだの範圍では、彼女は要點々々で私の畫にもフェアファックス夫人の描寫にも似てゐた。
身體からだが自分のものだか他人ひとのものだかわからないほどに疲れきつてゐたのだから。
大戦脱出記 (旧字旧仮名) / 野上豊一郎(著)
陪審官等ばいしんくわんら身體からだふるえがとまるやいなや、ふたゝ石盤せきばん鉛筆えんぴつとをわたされたので、みんな一しんこと始末しまつしました、ひと蜥蜴とかげのみは其口そのくちいたまゝ、いたづらに法廷はふてい屋根やね見上みあげて
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
二箇所にかしよ火元ひもとゆきもつしにかゝつたが、祖母そぼいへよりも身體からだ大事だいじだといつて重幸少年しげゆきしようねんせいしたけれども、少年しようねんはこれをきかないで、幾度いくどゆきはこんでて、つひめたといふ。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
頭から顏から背から、暖いものが身體からだの中へ染み込んで行くのが感ぜられた。叢に蟲が鳴いて居る。遠くで鵯のやうな鋭い聲の鳥が鳴いて居る。更に遠くで小兒の遊ぶ聲が途斷れて聞える。
山遊び (旧字旧仮名) / 木下利玄(著)
どうで閑の多い身體からだであるから、をぢさんもきに承知した。商賣人の中でも、腕利きと云はれてゐる半七がこの事件をどんな風に扱ふかと、をぢさんは多大の興味を持つて明日を待つことにした。
半七捕物帳:01 お文の魂 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
ひよろ高いまがつた身體からだしてテク/\上つて行くのであつた。
子をつれて (旧字旧仮名) / 葛西善蔵(著)
身體からだは一枚のとなりぬ青くかがやける海ひらたき太陽
樹木とその葉:03 島三題 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
野芹のぜりつばなもしかろがわしの身體からだぢやままならぬ。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
身體からだは浮上るやうにきよくかろくなり
太陽の子 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
ヅウアブに負けぬ好き身體からだ
壘の上に横たへる身體からだ
メランコリア (旧字旧仮名) / 三富朽葉(著)
露は身體からだ
歌時計:童謡集 (旧字旧仮名) / 水谷まさる(著)
なになにをしたつて身體からださへはたらかせりや、彼女あれはせて、ちゝはのまされます。」と、仕立屋したてやさんは、いそ/\とかへつていつた。
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しなあさから心持こゝろもち晴々はれ/″\してのぼるにれて蒲團ふとんなほつてたが、身體からだちからいながらにめうかるつたことをかんじた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
仕舞しまひにはあしいたんでこしたなくなつて、かはやのぼをりなどは、やつとのこと壁傳かべづたひに身體からだはこんだのである。その時分じぶんかれ彫刻家てうこくかであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
その國からのぼつておいでになる時に、龜のこうに乘つて釣をしながら勢いよく身體からだつて來る人に速吸はやすい海峽かいきようで遇いました。
但馬守たじまのかみなつかしさうにつて、築山つきやま彼方かなたに、すこしばかりあらはれてゐるひがしそらながめた。こつな身體からだがぞく/\するほどあづまそらしたはしくおもつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
まちつかれた身體からだをそつと椅子いすにもたれて、しづかなしたみちをのぞこふとまどをのぞくと、窓際まどぎは川柳かはやなぎ青白あをしろほそよるまどうつくしくのびてた。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
向ひの小島へ落ちる夕日は極樂の光のやうに空を染めてゐた。漁夫れふし身體からだ付きからして昔はいはのやうだつたり枯木のやうだつたりして面白かつた。
入江のほとり (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
いはれると以前もと不出來ふでかしをかんがしていよ/\かほがあげられぬ、なん此身このみになつて今更いまさらなにをおもふものか、めしがくへぬとてもれは身體からだ加減かげんであらう
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
さうして其の後には反動が來る。——あんな厭な氣持はないね。何うして此の身體からださいなんでやらうかと思ふね。
我等の一団と彼 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
もの優しい新夫人を傍にして坐つた久保田君は、見違へるばかり身體からだはひきしまり、一頃の浮調子とはうつて變つて落ちついてゐた。堂々とした花婿だつた。
うつたへなば第一貴樣きさま始め我々われ/\まで其一件に身體からだしばられて仕廻しまうによりまづ離縁状りえんじやうとり此一件を片付て後に大橋樣の一件にかゝらんと相談さうだんを極めかく明日仲人なかうど佐兵衞を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
長くきちんと坐つて居る事が出來ないと見えて、話すことばの終り毎に、恐しく透通つた聲で高く遠慮なく笑ひながら、絶えず身體からだを搖り動しては坐住居ゐずまひを直して居た。
歓楽 (旧字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)