荷車にぐるま)” の例文
そして、あたりはしずかであって、ただ、とおまちかどがる荷車にぐるまのわだちのおとが、ゆめのようにながれてこえてくるばかりであります。
花と人の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
けれども、それが荷車にぐるまにつまれて、馬にひかれて、森を出ていくとき、もみの木はこうひとりごとをいって、ふしぎがっていました。
カアカア、アオウガアガアガア、と五六みづうへひく濡色ぬれいろからすくちばしくろぶ。ぐわた/\、かたり/\とはしうへ荷車にぐるま
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
俺は今一人だが、俺の友達も其処そこ此処ここに居る。其一人は数年前にられて、今は荷車にぐるまになって甲州街道を東京の下肥のせて歩いて居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
かたりと荷車にぐるまがとまりました。ぶたは、はつとわれ にかへつてみあげました。そこには縣立けんりつ畜獸ちくじう屠殺所とさつじよといふおほきな看板かんばんかゝかつてゐました。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
現在いまでもそんなことで油斷ゆだんらぬ、村落むら貧乏びんばふしたから荷車にぐるまばかりえてうまつてしまつたが荷車にぐるま檢査けんさつておどろいたなどといふことや
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
朝なお早ければちまたはまだ往来ゆきき少なく、朝餉あさげの煙重く軒より軒へとたなびき、小川の末は狭霧さぎり立ちこめて紗絹うすぎぬのかなたより上り来る荷車にぐるまの音はさびたるちまたに重々しき反響を起こせり。
わかれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
所へ遠くから荷車にぐるまおとが聞える。今、静かな横町をまがつて、此方こつちへ近付いてるのが地響ぢひゞきでよくわかる。三四郎は「た」と云つた。美禰子は「はやいのね」と云つた儘じつとしてゐる。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
二十七日、払暁荷車にぐるまに乗りて鉄道をゆく。さきにのりし箱にくらぶれば、はるかにまされり。固より撥条バネなきことは同じけれど、壁なく天井てんじょうなきために、風のかよいよくて心地あしきことなし。
みちの記 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
川岸かし荷車にぐるま轣轆れきろくふる
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
荷車にぐるまひきが荷車に追はれ
鶴彬全川柳 (新字旧仮名) / 鶴彬(著)
なんのお前様まへさまたばかりぢや、わけはござりませぬ、みづになつたのはむかふのやぶまでゞ、あと矢張やツぱりこれと同一おんなじ道筋みちすぢやままでは荷車にぐるまならんでとほるでがす。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
乞食こじき子供こどもは、どうなることかとおもって、しばらくってていました。そのうちに、とうとううまは、はしわたって、おも荷車にぐるまいていってしまいました。
あらしの前の木と鳥の会話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あつ刺戟しげきおどろくべき活動力くわつどうりよく百姓ひやくしやう手足てあしあたへる。百姓ひやくしやううま荷車にぐるまつてたふしたむきをせつせとはこぶ。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ああ、どうかして、はやく荷車にぐるまの上に、つまれるようになればいいなあ、そして、目のさめるように、りっぱになって、あたたかいへやに、すみたいものだなあ。
なんとふことだ。天氣てんき上等じやうとうのとほりの青空あをぞらだ。かうして自分じぶん荷車にぐるまにのせられ、そのうへにこれはまたほか獸等けものら意地いぢめられないやうに、用意周到よういしうとうなこの駕籠かご
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
例年れいねん隣家となりを頼んだもち今年ことし自家うちくので、懇意こんいな車屋夫妻がうすきね蒸籠せいろうかままで荷車にぐるまに積んで来て、悉皆すっかり舂いてくれた。となり二軒に大威張おおいばり牡丹餅ぼたもちをくばる。肥後流ひごりゅう丸餅まるもちを造る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
翌日よくじつあさはや門野かどの荷車にぐるまを三台やとつて、新橋の停車場ていしやば迄平岡の荷物にもつ受取うけとりにつた。実はうからいて居たのであるけれども、うちがまだきまらないので、今日けふ迄其儘にしてあつたのである。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
合點がつてんと、せるのでないから、そのまゝ荷車にぐるま道端みちばたにうつちやつて、をひくやうにしておくりとゞけた。
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
今日きょうも、乳母車うばぐるまは、のあたたかそうにあたって、黄色きいろなほこりが、人間にんげんあるくげたのさきから、また荷車にぐるまのわだちのあとからこるのをていましたが、いつしか
春さきの古物店 (新字新仮名) / 小川未明(著)
となり主人しゆじんからはしばらくしてあつまつたにぎめし手桶てをけを二つ三つたせてよこした。つてから近所きんじよもの卯平うへい念佛寮ねんぶつれうはこばれた。勘次かんじ卯平うへいせた荷車にぐるまいた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
紙鳶たこすら自由に飛ばされず、まりさえ思う様にはつけず、電車、自動車、馬車、人力車、自転車、荷車にぐるま、馬と怪俄けがさせ器械の引切りなしにやって来る東京の町内にそだつ子供は、本当にみじめなものだ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
たちま荷車にぐるまりてきはじめた——これがまた手取てつとばやことには、どこかそこらに空車あきぐるまつけて、賃貸ちんがしをしてくれませんかとくと、はらつた親仁おやぢ
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ちょうど幾台いくだいとなしに、うま荷車にぐるまいて、ガラガラとまちなかとおってあちらへいくのをました。
けしの圃 (新字新仮名) / 小川未明(著)
こうして、泥濘ぬかるみなかてられた天使てんしは、やがて、そのうえおも荷車にぐるまわだちかれるのでした。
飴チョコの天使 (新字新仮名) / 小川未明(著)
おもけずまた露地ろぢくちに、抱餘かゝへあままつ大木たいぼく筒切つゝぎりにせしよとおもふ、張子はりこおそろしきかひな一本いつぽん荷車にぐるま積置つみおいたり。おつて、大江山おほえやまはこれでござい、らはい/\とふなるべし。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
おとここまって、しかたがないから、とおりかかった荷車にぐるま乞食こじきせて、自分じぶんあるいていった。
つばめと乞食の子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ところへ、荷車にぐるまが一だい前方むかうから押寄おしよせるがごとくにうごいて、たのは頬被ほゝかぶりをした百姓ひやくしやうである。
星あかり (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
のちに、むらひと入口いりぐちしげつた、白木しらきみや、——鎭守ちんじゆやしろとほつた。路傍みちばたに、七八臺しちはちだい荷車にぐるまが、がた/\とつてて、ひとひとつ、眞白まつしろ俵詰たはらづめこなうづたかんだのをときは……
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ゴト、ゴトとおも荷車にぐるまうまかせてきたおとこは、手綱たづなをゆるめてまりました。
子供と馬の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
いまう、さつきから荷車にぐるまたゞすべつてあるいて、すこしも轣轆れきろくおときこえなかつたことも念頭ねんとうかないで、はや懊惱あうなうあらながさうと、一直線いつちよくせんに、夜明よあけもないとかんがへたから
星あかり (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
その子供こどもが、中学ちゅうがくがるころのこと、みちあるいていると、荷車にぐるまく、つよそうな若者わかものあいました。ふとかおをあわせると、いつか病院びょういんで、うでらなければぬといわれた少年しょうねんでした。
きつねをおがんだ人たち (新字新仮名) / 小川未明(著)
うそまことか、本所ほんじよの、あの被服廠ひふくしやうでは、つむじかぜなかに、荷車にぐるまいたうまが、くるまながらほのほとなつて、そらをきり/\と𢌞まはつたとけば、あゝ、そのうま幽靈いうれいが、くるま亡魂ばうこんとともに
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
やっと一ばかりもくると、乞食こじきは、わざと荷車にぐるまうえ居眠いねむりをするまねをした。おとこは、車引くるまひきのみみくちをつけて、なんでもみちのわからないところへれていってくれるようにたのんだ。
つばめと乞食の子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ちやうど、まだあかしれたばかりの暮方くれがたでね、……高樓たかどのから瞰下みおろされる港口みなとぐち町通まちどほりには、燒酎賣せうちううりだの、雜貨屋ざつくわやだの、油賣あぶらうりだの、肉屋にくやだのが、みな黒人くろんぼ荷車にぐるまかせて、……商人あきんどは、各自てん/″\
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
その荷車にぐるまいているのは、しろうまでありました。そして、さきって、手綱たづないているおとこは、からだのがっしりした大男おおおとこでありました。うまも、おとこも、だいぶつかれているようにえたのであります。
子供と馬の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
小形の牛だと言ふから、近頃青島せいとうから渡来とらいして荷車にぐるまいて働くのを、山の手でよく見掛ける、あの若僧わかぞうぐらゐなのだと思へばい。……荷鞍にぐらにどろんとしたおけの、一抱ひとかかえほどなのをつけて居る。
雨ばけ (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
おとこが、うし荷車にぐるまかして、往来おうらいまちほうへゆくのをました。
少女がこなかったら (新字新仮名) / 小川未明(著)
うまは、また、おも荷車にぐるまいてあるいてゆきました。
子供と馬の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)