種々いろ/\)” の例文
何事なんにも知らずに世の中へ出て来た私を仮りに生徒とすれば、その少年の生徒の前へ来て種々いろ/\なことを教へて呉れた教師が誰だつたか
(新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
此方こちら焚火たきびどころでい。あせらしてすゝむのに、いや、土龍むぐろのやうだの、井戸掘ゐどほり手間てまだの、種々いろ/\批評ひひやうあたまからかぶせられる。
行きましたともさ、すぐに行つて種々いろ/\聽いてきたの。今日もちよつと行つて來たのですの。あなたは、まだ年少ちひさいから駄目なのよ。
日本橋あたり (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
種々いろ/\なる感想が自分の胸にうしほのやうに集つて来て、其山中の村が何だか自分と深い宿縁をつて居るやうな気がて、何うもらぬ。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
此方こちらには葡萄棚もあり其の他種々いろ/\菓物くだものも作ってありまして、彼是一町ばかり入ると、屋根は瓦葺かわらぶきだが至って風流な家作やづくりがあります。
なになんでも望遠鏡ばうゑんきやうのやうにまれてはたまらない!ちよツはじめさへわかればもうめたものだ』此頃このごろではにふりかゝる種々いろ/\難事なんじ
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
ういふ樣子やうすのやうなことをいふてきましたかともひたけれど悋氣男りんきをとこ忖度つもらるゝも口惜くちをしく、れは種々いろ/\御厄介ごやつかい御座ござりました
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
種々いろ/\な事が書いてある。ジエンツアノの葡萄酒やピエンツアの無花果の事がある。それから例の不思議な事件の其後の成行がある。
復讐 (新字旧仮名) / アンリ・ド・レニエ(著)
それより一同いちどう種々いろ/\まをしてかれ御前ごぜんにわびたりければ、幼君えうくんふたゝび御出座ごしゆつざありて、籠中かごのなかひとむかはせられ、「其方そのはうさほどまでにくるしきか」
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おもひそかはゝ委敷事くはしきことを語りければはゝおどろき今度の御呼出およびだしは吉三郎と對決たいけつさせんとの事なるべければ種々いろ/\御尋おんたづねあるならんが其時そのとき委細ゐさい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
れことわすれたんべら、かくつたとおもつてたつけが本當ほんたうわかんねえほどかくつたな」寡言むくち卯平うへい種々いろ/\饒舌しやべつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
仏蘭西フランスで見ると同じやうなあを黄昏たそがれの微光は甲板上の諸有あらゆるものに、船梯子ふなばしごや欄干や船室の壁や種々いろ/\の綱なぞに優しい神秘の影を投げるので
黄昏の地中海 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
それから種々いろ/\話して居たんですが、暫らくしてから、「どうだ、一週間許り待つて呉れるなら汽車賃位出來る道があるが、待つか待たぬか。」
雲は天才である (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
阿母おつかさんの頭には、電車の車内広告の頭の禿げた男が、万年筆をさゝつゝの形にした絵が思ひ出された。それには二円八十銭より種々いろ/\とあつた。
楽屋には甲冑かぶと、槍、面などが沢山並べてありました。私達はその中に坐つて、何とも云へぬ喜に浸りながら、種々いろ/\の愉快な相談をして居りました。
泣き笑ひ (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
(これにもかぎらずさま/″\の術あり)雁のる処をふるは夕暮ゆふぐれ夜半やはんあかつき也、人此時をまちて種々いろ/\たくみつくしてとらふ。
此の頃先生は、西洋へ持つていらつしやる脚本をこしらへる為に、種々いろ/\材料を集めてゐらつしやいましたが、それも皆悲しい遺品かたみになつてしまひました。
忘れ難きことども (新字旧仮名) / 松井須磨子(著)
負けず嫌ひの虚榮心に富んだ感情的のものであるだけ内心では種々いろ/\と思ひ耽ることが多い、或は忍ぶ戀路に身を殺すなどといふやうなたぐひもあらうし
一家 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
まちには、病院びやうゐん新院長しんゐんちやういての種々いろ/\うはさてられてゐた。下女げぢよ醜婦しうふ會計くわいけい喧嘩けんくわをしたとか、會計くわいけい其女そのをんなまへひざつて謝罪しやざいしたとか、と。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
それから二人ふたり種々いろ/\談話はなしをしてうち懇意こんいになり、ボズさんが遠慮ゑんりよなくところによるとぼく發見みつけ場所ばしよはボズさんのあじろのひとつで、足場あしばはボズさんがつくつたこと
都の友へ、B生より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
書肆はかたはら立派な果物罐詰類の店を出してゐる、進歩思想の商人である。此二人がプラトンに種々いろ/\の葡萄酒や焼酎を勧めて、プラトンは応接にいとまあらずと云ふ工合である。
板ばさみ (新字旧仮名) / オイゲン・チリコフ(著)
其の惑亂した心が繪に映るから何うしたツて思ふつぼはまツて來ない。加之單に此の藝術上の煩悶ばかりではない。周三には、にも種々いろ/\の煩悶があつて、彼を惱ましている。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
難有ありがたうよ」と老母はまぶたぬぐひつ「此程このほども伜のことを引受けて下だすつた、弁護士の方がいらしつたんでネ、先生様の御友達の方で、——御両人おふたり種々いろ/\御相談なすつていらしつたがネ、 ...
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
女子教育上ぢよしけういくじやう意見いけんとしては別段べつだん申上まをしあげることも御在ござませんが、わたくしが一昨年さくねんはる女子英學塾ぢよしえいがくじゆくひらいてから以來いらい種々いろ/\今日こんにち女子ぢよしすなは女學生ぢよがくせいつい經驗けいけんしたことがありますから
女教邇言 (旧字旧仮名) / 津田梅子(著)
それ故食堂に入つて、中に居る人、其注文の品、そんなものを観て居ると、本当に種々いろ/\で、平素の生活状態や、趣味嗜好かうしといふやうなものが、さながらの縮図となつて展開されて来る。
買ひものをする女 (新字旧仮名) / 三宅やす子(著)
其他そのほか面白おもしろこと隨分ずゐぶんあつた。音樂會おんがくくわい翌々日よく/\じつことで、ふね多島海たたうかいおきにさしかゝつたときおほく船客せんきやく甲板かんぱん集合あつまつて種々いろ/\遊戯あそびふけつてつたが、其内そのうちたれかの發起はつき徒競走フートレースはじまつた。
種々いろ/\それには理由があつたわけですが、要は新しい芝居の役者とさうして仕打との、すべてに於いての厚かましい、微塵遠慮といふものゝないヤリ口が、世間から愛想を尽されたのでした。
井上正夫におくる手紙 (新字旧仮名) / 久保田万太郎(著)
かうした種々いろ/\な變化の中にも、テムプル先生は、學校の監督を續けて來てゐた。私の學び得たものゝうちで、最もよい部分は彼女の教育に負うてゐる。彼女の友情とまじはりとは、いつも私の慰めだつた。
と聞きましたが、お藤は更に物も云えません様子だから流れの水を飲ませ、脊中を撫り、種々いろ/\介抱致して居るうちに漸く生気しょうきに成って
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
世話人は種々いろ/\なことをかれた。しかしその不思議な僧の行為の中には、あやしいやうなことは少しもなかつた。すべて自然であつた。
ある僧の奇蹟 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
彼此かれこれ種々いろ/\すぐれた簡便かんべん方法はうはふかんがへてはたものゝ、たゞ厄介やくかいことにはうしてれを實行じつこうすべきかと名案めいあんたなかつたことです。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
実は君の叔父さんからも種々いろ/\御話が有ましたがね、叔父さんも矢張やつぱり左様さういふ意見なんです。何とか君、うまい工夫はあるまいかねえ。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
そへ種々いろ/\禮物れいものおくりけるゆゑ五八はにはか分限ぶげんとなり何れも其家々そのいへ/\繁昌はんじやうなせし事實に心實しんじつほど大切たいせつなるものはなしと皆々感じけるとなん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
みさきのやうなかたちうて水田すゐでんかゝへて周圍しうゐはやしやうや本性ほんしやうのまに/\勝手かつてしろつぽいのやあかつぽいのや、黄色きいろつぽいのや種々いろ/\しげつて
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
それ貴方あなたよこからたり、たてからたり、種々いろ/\にしてたのしみますのでございます。てかけなどとまをしますものは、うしたものでございますとさ。」
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
また二人が種々いろ/\な会話を取り交すところがあるのです、実はそれが悉くほんとの事で会話も二人が話した儘を私は書いて仕舞つたのです、美智子
青白き公園 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
そればかりでも身躰からだ疲勞ひらうはなはだしからうとおもはれるので種々いろ/\異見いけんふが、うもやまひせゐであらうか兎角とかくれのこともちひぬにこまりはてる
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
『今お聞き申して居れば、役場の方にも種々いろ/\御事情がある樣でごあんすゝ、一寸お預りしただけでごあんすから、兎に角これはお返し致しあんす。』
足跡 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
疊半分以上の、そのころのものではよいしながあつたので、それに息をかけて拭きながら種々いろ/\の表情をやりました。
鏡二題 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
熊のたる跡へすはりしにそのあたゝかなる事巨燵こたつにあたるごとく全身みうちあたゝまりてさむさをわすれしゆゑ、熊にさま/″\礼をのべ猶もたすけ玉へと種々いろ/\かなしき事をいひしに
言語学者は早速返しの年賀状をしたゝめた。活版刷の葉書のそばに、一度親しくお目に懸つて、種々いろ/\御話が伺ひたいと添書そへがきまでした。宛名には叮嚀に榊原政職閣下と書きつけた。
湿つた石壁につてしたたる水が流れて二つの水盤に入る。寂しい妄想まうざうに耽りながら此中の道を歩く人に伴侶を与へるためか、穹窿きうりうには銅で鋳た種々いろ/\鳥獣とりけものが据ゑ附けてある。
復讐 (新字旧仮名) / アンリ・ド・レニエ(著)
わたくし時折ときをり種々いろ/\こと妄想まうざうしますが、往々わう/\幻想まぼろしるのです、或人あるひとたり、またひとこゑいたり、音樂おんがくきこえたり、またはやしや、海岸かいがん散歩さんぽしてゐるやうにおもはれるときります。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
幻花子げんくわし此當時このたうじ、ぐツと先生振せんせいぶつて、りながら種々いろ/\講釋こうしやくかせるのであつた。
と思ツて種々いろ/\と考へて見たけれども、うも解らなかツた。それで
水郷 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
結婚の申込をことごとく謝絶致します所から、人を疑つて喜ぶ世間は種々いろ/\の風評を立てまして——貴所あなたの御名誉に関係致しまする様な記事を、数々しば/\新聞の上などでも読みまする毎に、何程自分で自分を叱り
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
飯島のうちでは妾のお國が、孝助を追出すか、しくじらするように種々いろ/\工夫をこらし、この事ばかり寝ても覚めても考えている、悪い奴だ。
叔母さんのお墓へ行く途中で行き逢つた知らない顔……電車の窓から見た種々いろ/\な若い人の後姿……急いで熱い往来を過ぎ行く影……あれか
出発 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
なほ半町ほど辿たどつて行くと、もう其処は尾谷川のがけで、石に激する水声が、今迄種々いろ/\な悪声を聞いた自分の耳に、ほとんど天上の音楽の如く聞える。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
そこ種々いろ/\押問答おしもんだふしましたが、あいちやんのはうでも別段べつだんうま理屈りくつず、こと芋蟲いもむし非常ひじよう不興ふきようげにえたので、あいちやんは早速さつそくもどりかけました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)