墓地ぼち)” の例文
「いやあ。さっぱりございませんな。どなたも、ずっと見えませんですよ。あまり静かで、墓地ぼちのような気がしてまいりますわい」
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
みそはぎそばには茶碗ちやわんへ一ぱいみづまれた。夕方ゆふがたちかつてから三にん雨戸あまどしめて、のない提灯ちやうちんつて田圃たんぼえて墓地ぼちつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
墓地ぼちゆきまっていましたけれど、いさむちゃんは、見覚みおぼえがあったので、このしたにおねえさんがねむっているとおしえたのでした。
青い星の国へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
まだしも向うの墓地ぼちの死骸に引合せてくれた方がましな位だ。私はどうするだらう、ジエィン? 何處を向けば話相手や希望があるだらう?
ですが、閻魔樣あちらさままへでは、けたものですから。——じつ此寺こゝ墓地ぼちに、洲崎すさき女郎やつまつてるんです。へ、へ、へ。
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
はや冬風のすさぶ中、許都郊外の南原なんげんに、立派な棺槨かんかく墓地ぼち)が築かれた——。老母の死後、曹操が徐庶をなぐさめて贈ったものの一つである。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そんなとき、墓地ぼちとか、あるいはどこかおそろしい場所ばしょをとおっていかなければならないようなばあいには、にいさんはいつもこうこたえました。
柳之助りゅうのすけ亡妻ぼうさいの墓に雨がしょぼ/\降って居たと葉山はやまに語るくだりを読むと、青山あおやま墓地ぼちにある春日かすが燈籠とうろうの立った紅葉山人こうようさんじんの墓が、と眼の前にあらわれた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
昼寐ひるね夜具やぐきながら墓地ぼちはう見下みおろすと、いつも落葉おちばうづもれたまゝ打棄うちすてゝあるふるびたはか今日けふ奇麗きれい掃除さうぢされて、はな線香せんかうそなへられてゐる。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
札幌さっぽろの天地は僕の青年時代に学問したところで、さなきだに第二の故郷としてしたわしいが、この慕わしき念をいっそう深からしむるものは、この小さき墓地ぼちである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
この寺は——慈眼寺じげんじといふ日蓮にちれん宗の寺は震災よりも何年か前に染井そめゐ墓地ぼちのあたりに移転してゐる。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
カレンはがらんとした墓地ぼちのなかへ、踊りながらはいっていきました。そこでは死んだ人は踊りませんでした。なにかもっとおもしろいことを、死んだ人たちは知っていたのです。
それゆゑ私共わたしども貝塚かひづかつたり石器せつきらばつてゐるところつてゐますと、そのしたから石器時代せつきじだい人間にんげんほねるので、はじめてそこが墓地ぼちであつたことがられるのであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
すぐうしろの丘の共同墓地ぼちのほうへげてゆくのを見ると
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
私は、ここはきっと、象の墓地ぼちなのだろうと思いました。
此処は墓地ぼちうら、夏は朝
海豹と雲 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
あきぼんには赤痢せきりさわぎもしづんであたらしいほとけかずえてた。墓地ぼちにはげたあかつちちひさなつかいくつも疎末そまつ棺臺くわんだいせてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
良吉りょうきちかなしさのあまりきあかしました。文雄ふみおむらのおてら墓地ぼちほうむられました。良吉りょうきち文雄ふみおのお葬式そうしきのときにもいてついてゆきました。
星の世界から (新字新仮名) / 小川未明(著)
(私は二人の墓を見ましたが、それは××州の、古びた商業市にある陰氣な、すゝけた古い僧院のだゝつ廣い墓地ぼちの片隅に、敷石になつてゐました。)
あるとき、いちばん上のむすこが、それはそれはみごとな草のはえている墓地ぼちにヤギをつれていって、草を食べさせたり、そこらをとびまわらせたりしました。
で、何時いつ何處どこから乘組のりくんだか、つい、それはらなかつたが、ちやうわたしたちのならんでけたむかがは——墓地ぼちとは反對はんたい——のところに、二十三四のいろしろ婦人ふじんる……
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そこには大江山捜査課長の自信をドン底へつき落とすようなパチノ墓地ぼち惨劇さんげきが控えていたのであった。
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
彼が隣の墓地ぼちにはもと一寸した閻魔堂えんまどうがあったが、彼が引越して来る少し前に乞食の焚火たきびから焼けて了うて、木の閻魔様ははいになり、石の奪衣婆だつえばばかり焼け出されて
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
毎夜まいよとまりのきやく連込つれこ本所ほんじよ河岸かし宿屋やどやて、電車通でんしやどほりでそのきやくとわかれ、道子みちこ裏通うらどほりにあるアパートへかへつてると、まどしたとなりてら墓地ぼちになつてゐるから
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
私共わたしどもは、かような墓地ぼち發掘はつくつして、その時分じぶん人々ひと/″\がどんな宗教上しゆうきようじようかんがへをもつてゐたかといふこともわかり、またそのからだにつけてゐた種々しゆ/″\裝飾そうしよくで、當時とうじ風俗ふうぞくるばかりでなく
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
それからまた日目かめほとけおくつて村落むらもの黄昏たそがれ墓地ぼちうた。へび猶且やつぱり棺臺くわんだいかげらなかつた。へび自由じいう匍匐はらばふにはあまりに瘡痍きずおほきかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
人々ひとびとあつまって、牛女うしおんな葬式そうしきして、墓地ぼちにうずめてやりました。そして、あとのこった子供こどもを、みんながめんどうをそだててやることになりました。
牛女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
禮吉れいきち悚然ぞつとしながら、それでも青山あをやま墓地ぼちなかを、青葉あをばがくれに、はなむ、しろさをおもつた。……
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いっぽう、殺された弟のほね墓地ぼちへはこばれて、りっぱなおはかのなかにうめられました。
この墓地ぼち研究けんきゆうは、貝塚かひづかなどよりもいつそう大切たいせつなものになつてるのであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
売る者は売れ、俺等おいらは売らぬ、とまして居た反対がわの人達も、流石さすがおこり出した。腰弁当、提灯持参、草鞋わらじがけの運動がはじまった。村会に向って、墓地ぼち排斥はいせきの決議を促す申請書を出す。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
先祖せんぞ代々つたわって居ります永正寺えいしょうじ墓地ぼちへ持って参りほうむったのでございます
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
と、良吉りょうきちはいいました。木枯こがらしは、そのさびしいほかにはだれも人影ひとかげのいない墓地ぼちきすさんで、れたが、そらや、うえにわびしくまわっていました。
星の世界から (新字新仮名) / 小川未明(著)
見舞みまひ盛花もりばなを、貴方あなたなんだとおもひます——わざとね——青山あをやま墓地ぼちつて、方々はう/″\はか手向たむけてあります、其中そのなかから、りたけれてないのをつて、こしらへてたんですもの、……
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
くろはこは、おとこをいれてなかめられました。それから、はるあめは、この墓地ぼちにもりそそぎました。はかほとりにあった木々きぎは、いくたびも若芽わかめをふきました。
銀のつえ (新字新仮名) / 小川未明(著)
翌日よくじつは、いいお天気てんきでした。ふたりは、まちへだたった、はやししたにあったてら墓地ぼちへまいりました。
青い星の国へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
それからというものは、かれ毎日まいにちのようにひまさえあればおてら墓地ぼちへいって、文雄ふみおはかまえにすわって、ちょうどきているともだちにかってはなすとおなじようにかたりました。
星の世界から (新字新仮名) / 小川未明(著)
かれあにや、いもうとや、また、カフェーのおかみさんたちは、みんな年若としわかくしてんだ、かれをかわいそうにおもいました。かれからだくろはこなかれて、墓地ぼちへはこんでほうむったのであります。
銀のつえ (新字新仮名) / 小川未明(著)
子供こども時分じぶんむらはずれのはやしや、てら墓地ぼちなどへ、おとりのとりかごをさげていって、ひわや、しじゅうからなどをらえたことをおもすと、どこからともなく、すがすがしいつちがして
自由 (新字新仮名) / 小川未明(著)
みんなは相談そうだんをして、ボンをていねいにおてら墓地ぼちほうむりました。そうして、ぼうさんにたのんでおきょうんでやりました。その当座とうざ正雄まさおはボンがいなくなったのでさびしくてなりませんでした。
おじいさんの家 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そこはひろ野原のはらなかでありました。けれどわざわいを下界げかいにまいたあねは、どんなさびしいところをあるいても平気へいきでありました。野原のはらなかにははやしがありました。はやしをぬけるとおおきな墓地ぼちがあります。
消えた美しい不思議なにじ (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして墓地ぼちぎて、おかにさしかかりますと、そこにはおおきな病院びょういんがあります。かみながくうしろにらしたあねは、病院びょういん内部ないぶしのんで、病人びょうにんのいるへやを、一つ一つのぞいてあるきました。
消えた美しい不思議なにじ (新字新仮名) / 小川未明(著)
当日とうじつひつぎむらて、山麓さんろく墓地ぼちへさしかかろうとすると、このとき、どこからあらわれたものか、たくさんの乞食こじきや、浮浪児ふろうじれつをつくって、ひつぎあとについてきたので、一どうがびっくりしました。
万の死 (新字新仮名) / 小川未明(著)