其樣そん)” の例文
新字:其様
鐵車てつしや其樣そんことではビクともしない、反對はんたいじう彈飛はじきとばすと、百獸ひやくじう王樣わうさま團子だんごのやうにくさうへ七顛八倒しちてんばつたう吾等われら一同いちどうはドツとわらつた。
此樣こんな時に、もしうちから誰かむかひに來て呉れたら、自分は何樣どんなにうれしかツたか知れぬ。併し其樣そんな事を幾ら考へてゐたツて無駄だ。
水郷 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
其樣そんなものに鼻毛はなげよまれてはてあとあしのすな御用心ごようじんさりとてはお笑止しようしやなどヽくまれぐちいひちらせどしんところねたねたしのつも
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
うして、其樣そんところ這入はいつたのだ。當分たうぶん其所そこにゐるつもりなのかい」と宗助そうすけかさねていた。安井やすゐはたゞすこ都合つがふがあつてとばかりこたへたが
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「いくらでも、其樣そんな警句の材料にするが可いサ。」斯うA君も苦笑して、痩せた足に大きな足袋で、部屋のなかを歩いて見た。
伊豆の旅 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
アヽ解つた、お前此頃松公まつこうにげを打たれたと云ふから、其で其樣そんなに自棄糞やけくそになつてるんだね。道理で目の色が變だと思つた。オヽ物騷々々!
絶望 (旧字旧仮名) / 徳田秋声(著)
うれしい消息しらせなら、それを其樣そんかほをしてきゃるのは、ゆかしいらせのこと調しらべを臺無だいなしにしてしまふといふもの。
小川の橋を渡り損じて水に落つる滑稽の結局に至つた時分、オヤ、自分は今其樣そんな事を想つて居る筈では無かつた。
努力論 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
願ひますと云ば手先のものなんだぐず/\云ふ事たアネヘ貴樣は怪しい奴に相違さうゐない夜中無提灯むぢやうちんにて其樣そんな大包みを背負せおひ形容なりにも似合にあは鮫鞘さめざや脇差わきざしをさし是は大方其處そこらで盜み來りしならん殊に草鞋わらんぢ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
其處そこ何者なにものかゞるに相違さうゐない、ひとか、魔性ましやうか、其樣そんことかんがへてられぬ、かく探險たんけん覺悟かくごしたので、そろ/\とをかくだつた。
一體お前さん等ア今日に限ツて何んだツて其樣そんなに騷ぐんだ……人體解剖ツてものア其樣なふざけた譯のものぢや無からうぜ。
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
いゝやなそれは、出來できないとき調製こしらへてれとははない、おまへさんにうんいたときことさ、まあ其樣そん約束やくそくでもしてよろこばしていてお
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
『お前着物を如何どうなんだよ。此寒いのに、ベラ/\したあはせかなんかで。其樣そん姿なりで此邊を彷徨うろ/\しておくれでないよ、眞實ほんとうに外聞が惡いから。』
絶望 (旧字旧仮名) / 徳田秋声(著)
「今は其樣そんな氣樂を言つてるけれど——。」とK君は大きな體躯を搖りながら笑つた。「彼時は彼樣あんなことを言つたツけナア、なんて言ふんだらう。」
伊豆の旅 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
今日以後も昨日以前同樣の取扱方を吾が身に加へて居て、而して明日からは往日と異なつた結果を得ようといふ其樣そんな得手勝手な注文は成り立つ道理が無い。
努力論 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
其樣そんことは、もうとうってゐる。婚禮こんれいことをばなんうてぢゃ? さ、それを。
させて置ながら又今となりあひたいとは如何にだますが商賣しやうばいでも餘りにおし強過つよすぎると取ても付ぬ挨拶に吉六暫時しばしあきれしが夫は長庵が一ぞん惡功わるだくみせし事ならん小夜衣さんにかぎつては其樣そんな御人じや御座りません早速さつそくかへつておいらんへ其御話しを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
しかし、いま其樣そんこと悠長いうちやうかんがへてるべき塲合ばあひでない。此時このとき心痛しんつうじつ非常ひじやうであつた。櫻木大佐さくらぎたいさとの約束やくそくすで切迫せつぱくしてる。
何故なぜ?………おれだツて其樣そんなに非人情ひにんじやうに出來てゐる人間ぢやないぞ。偶時たまにはさいの機嫌を取ツて置く必要もある位のことは知ツてゐる。」
青い顔 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
れは其樣そんものもらひたくない、おまへそのうんといふはつまらぬところかうといふのではないか、一昨日をとゝひ自家うち半次はんじさんが左樣さうつてたに
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
其樣そん心算つもりではなかつたから、お大は繁々しげ/\かねへ呼出をかける。第一大切の米櫃こめびつなくして了つては、此先生活の道がないので、見かけによらぬ氣の小いお大は、氣が氣でない。
絶望 (旧字旧仮名) / 徳田秋声(著)
「僕の生涯には暗い影が近づいて來たやうな氣がするね、何となく斯う暗い可畏おそろしい影が——君は其樣そんなことを思ひませんか。尤も、僕には兄が死んでる。だから餘計に左樣さう思ふのかも知れない。」
伊豆の旅 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
今朝けさひがしきんまどから朝日影あさひかげのまだのぞきませぬころむねもだへなぐさめませうと、郊外かうぐわいましたところ、まちからは西にしあたる、とあるかへで杜蔭もりかげに、れば、其樣そん早朝あさまだきに、御子息ごしそくあるいてござる、ちかづけば
なにれはれたものだ、うやつてうするとひながら急遽あわたゞしう七尻端しりはしをりて、其樣そんゆわひつけなんぞよりれが夾快さつぱりだと下駄げたぐに
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
其樣そんなにわたしにくいんですか。憎いなら憎いやうに………」とかつとしたていで、突ツかゝり氣味ぎみになると
青い顔 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
れはおまへなくなつたらすこしも面白おもしろことくなつて仕舞しまふのだから其樣そんいや戯言じようだんしにしておれ、えゝつまらないことひとだとかしらをふるに
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
其樣そんうそくもんぢやない。お祖樣ぢいさんは能く知ツてゐるぞ。其の螢籠はんだ、」失敗しまツた! 自分は螢籠を片手にぶらさげてゐた。うなツてはもう爲方しかたが無い。
水郷 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
左樣さうであらう、校内かうないいちひとだとおまへつねめたではないか、其人そのひとであるからけつしておまへうらんでぬ、其樣そんことはあるはずがない、いきどほりは世間せけんたいしてなので
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
近子は輕くお叩頭じぎをして、「うも御親切に有難うございます。」と叮嚀ていねいツたかと思ふと、「ですが、其樣そんなにおひやらないで下さいまし。幾ら道具でも蟲がありますからね。」
青い顔 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
わからぬなりにきくのおりきとほしてゆかう、人情にんじようしらず義理ぎりしらずか其樣そんことおもふまい、おもふたとてうなるものぞ、此樣こん此樣こん業體げうていで、此樣こん宿世すくせ
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
平常へいぜいいたいむすめかほずにまする、れをばなん馬鹿々々ばか/\しいおやなしでもひろつてつたやうに大層たいさうらしい、もの出來できるの出來できぬのと其樣そんくちけたもの
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
たかなみだかほうらめしげに、おなさけなしまだ其樣そんなこと自由まゝにならば此胸このむねなかつて御覽ごらんれたし。
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それはおまへらぬから其樣そんにくていなことへるものゝ三日みつか交際つきあひをしたら植村樣うゑむらさまのあとふて三途さんづかはまできたくならう、番町ばんちやう若旦那わかだんなわるいとふではなけれど
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ふたらば介抱かいはうしてくだされといふに、きみつたをいまだにことがない、れるほどむはいが、また頭痛づゝうがはじまりはせぬか、なに其樣そんなに逆鱗げきりんにふれたことがある
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
正太しようた何故なにともきがたく、はたのうちにあるやうにておまへうしてもへんてこだよ、其樣そんことはづいに、可怪をかしいひとだね、とれはいさゝか口惜くちをしきおもひに
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
可愛かわいらしき四つばかりの、彼子あれ先刻さつきひとのでござんす、あのちいさな子心こゞゝろにもよく/\くいとおもふとえてわたしことをば鬼々おに/\といひまする、まあ其樣そん惡者わるものえまするかとて
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
よしや良人おつと藝者狂げいしやぐるひなさらうとも、かこものして御置おおきなさらうとも其樣そんこと悋氣りんきするわたしでもなく、侍婢をんなどもから其樣そんうわさきこえまするけれどれほどはたらきのある御方おかたなり
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それでは美登利みどりさんがいのであらう、さうめて御座ござんすの、と圖星づぼしをさゝれて、そんなことものか、なん其樣そんこと、とくるりうしろいてかべこしばりをゆびでたゝきながら
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
とりたてゝなに自分じぶんばかり美事みごとたからつてるやうにほこがほまをすことの可笑をかしいをおわらひにりましやう、だからわたしくちして其樣そん仰山ぎやうさんらしいことひませぬけれど
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そとなるはおほゝとわらふて、お父樣とつさんわたし御座ござんすといかにも可愛かわゆこゑ、や、れだ、れであつたと障子しようじ引明ひきあけて、ほうおせきか、なんだな其樣そんところつてて、うしてまたこのおそくにかけて
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)