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御子息
『え、
君の
細君と
御子息⁈』と
私は
意外に
※んだ。十
年も
相見ぬ
間に、
彼に
妻子の
出來た
事は
何も
不思議はないが、
實は
今の
今まで
知らなんだ、
况んや
其人が
今本國へ
皈るなどゝは
全く
寢耳に
水だ。
何某の
御子息、
何屋の
若旦那と、
水茶屋の
娘には、
勿体ないくらいの
縁談も、これまでに五つや十ではなく、
中には
用人を
使者に
立てての、れッきとしたお
旗本からの
申込みも二三は
数えられたが
今朝、
東の
金の
窓から
朝日影のまだ
覗きませぬ
頃、
胸の
悶を
慰めませうと、
郊外に
出ましたところ、
市からは
西に
當る、とある
楓の
杜蔭に、
見れば、
其樣な
早朝に、
御子息が
歩いてござる、
近づけば