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御子息
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ごしそく
『え、
君の
細君と
御子息⁈』と
私は
意外に
※んだ。十
年も
相見ぬ
間に、
彼に
妻子の
出來た
事は
何も
不思議はないが、
實は
今の
今まで
知らなんだ、
况んや
其人が
今本國へ
皈るなどゝは
全く
寢耳に
水だ。
何某の
御子息、
何屋の
若旦那と、
水茶屋の
娘には、
勿体ないくらいの
縁談も、これまでに五つや十ではなく、
中には
用人を
使者に
立てての、れッきとしたお
旗本からの
申込みも二三は
数えられたが
今朝、
東の
金の
窓から
朝日影のまだ
覗きませぬ
頃、
胸の
悶を
慰めませうと、
郊外に
出ましたところ、
市からは
西に
當る、とある
楓の
杜蔭に、
見れば、
其樣な
早朝に、
御子息が
歩いてござる、
近づけば
急ぎ程なく穀物屋吉右衞門方へ
尋ね
到り
某しは江戸麻布原町家主平兵衞と申者なるが
此方の
御子息吉之助殿の事に付て
少々御相談申度儀之あり
故意々々參りたり吉右衞門殿
御在宿かと申
入けるに番頭其事を
改め
拙者店子の喜八と申者元は其許樣の方に
勤めしとの事なるが
此度不慮の
災難にて火附盜賊に
陷り
召捕れたり
其原の起りは
御子息吉之助殿故なり
其譯は斯樣々々の事なりと
淺草にて吉之助に
逢しより喜八方へ引取り
勘當の
詫を
追て致す先
入牢申付ると有て
假牢に入置れ早速此段嘉川主税之助方へ申入らるゝ樣
其許御子息藤五郎殿家來と申神田豐島町酒屋にて
酒興の上
亂暴に及候者有之に付此方へ
召捕置候間用役の者一人早々御
差越成るべしとの事なれば嘉川の
屋敷にては大いに驚き是は