かお)” の例文
旧字:
「そら、どらねこがきた。」といって、かおすとみずをかけたり、いたずらっは、そばをとおると、小石こいしひろってげたりしました。
ねこ (新字新仮名) / 小川未明(著)
するとおにかおじゅう口にして、ぎえッ、ぎえッ、ぎえッと、さもおもしろそうにわらいました。そうして、大きなをむきしたまま
鬼六 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
したからないが、かわいそうに……。だけど、ほうたいだらけのまっしろなあのかおには、ぞっとするわ。まるでけものみたいだもの
しかし、よるになると、こっそりとはじめて、あさしろもんがあくまでうつしました。かおははれぼったくなり、病人びょうにんのようにみえました。
かたつかんで、ぐいとった。そので、かおさかさにでた八五ろうは、もう一おびって、藤吉とうきち枝折戸しおりどうちきずりんだ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
なんとなく心配しんぱいそうなかおで、左様々々さようさよう左様さよう、と、打湿うちしめってってるかとおもうと、やれヴォッカをせの、麦酒ビールめろのとすすめはじめる。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ぼくはそのかおながめた時、おもわず「ずいぶんやせましたね」といった。この言葉ことばはもちろん滝田くん不快ふかいあたえたのにちがいなかった。
滝田哲太郎君 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
その帽子ぼうし着物きものくつはもとより、かお手先てさきまで、うすぐろくよごれていて、長年のあいだたびをしてあるいたようすが見えています。
活人形 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
それでびっくりしてかおげ、もう一そのおかしな常談じょうだんをいってやろうとした。すると、ゴットフリートのかおが目の前にあった。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
「だがね、きみ僕達ぼくたち仲間なかまをおよめにくれっていさえしなけりゃ、まあきみかおつきくらいどんなだって、こっちはかまわないよ。」
じいさんは子供こどものようによろこんで、ながかおをいっそうながくして、あは、あは、とわらった。ぼくたちもいっしょにわらしてしまった。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
そのかおは、もうはっきりとは見えませんでしたが、やっぱりやさしくほほえみながら、こちらへ向かってうなずいているような気がします。
「そら、ね。いいぱんだろう。ほしぶどうがちょっとかおをだしてるだろう。はやくかばんへれたまえ。もうおさまがおでましになるよ。」
いちょうの実 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
あるあさ、おはつ台所だいどころながしもとにはたらいていた。そこへ袖子そでこった。袖子そでこ敷布しきふをかかえたままものわないで、あおざめたかおをしていた。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そうわれるおじいさんのおかおには、多年たねんがけたおしかたのついたのをこころからよろこぶとった、慈愛じあい安心あんしんいろただよってりました。
どこの百姓ひゃくしょう女房にょうぼうであろうか、櫛巻くしまきにしたほつれをなみだにぬらして、両袖りょうそでかおにあてたまま濠にむかってさめざめといているようす……
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
少年は二、三行読むと、なにげなくかおをあげました。すると、ちょうどかがみに目がとまり、とたんに、大声でさけびました。
私は、鈴木君からニュース映画のはなしをきいて、おそらく自分のかおが写真にうつるのもこれが最後さいごであろうと思った。
親馬鹿入堂記 (新字新仮名) / 尾崎士郎(著)
オリオンという、はじめてその名をしったぼしを見あげると、みよこのかおが、ぽうーっと、うかんできた。五百光年こうねん、アテネ・ローマの古都こと——。
ラクダイ横町 (新字新仮名) / 岡本良雄(著)
山城やましろ苅羽井かりはいというところでおべんとうをめしあがっておりますと、そこへ、ちょうえきあがりのしるしに、かお入墨いれずみをされている、一人の老人ろうじんが出て来て
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
いささかおどけたかおになつて、たたみをついてあやまつたが、一ぽう犯人逮捕はんにんたいほだい一の殊勲者しゅくんしゃ平松刑事ひらまつけいじは、あるのこと、金魚屋きんぎょやさん笹山大作ささやまだいさくの、おもいがけぬ訪問ほうもんをうけた。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
それは何も一向いっこういいことではないはずなのだけれど、いうことを聞かぬいたずらもの腕白わんぱくどもに、老教師ろうきょうしはもうほとほと手をいているので、まるで探偵たんていみたいなかおつきをしながら
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
けれども王子おうじやさしくはなしかけて、一いたうたが、ふかこころんで、かおるまでは、どうしてもやすまらなかったことをはなしたので、ラプンツェルもやっと安心あんしんしました。
それらの人達ひとたち目間苦めまくるしくつたりたりしてゐたが、ダンスひとがぎつちり鮨詰すしつめになつてゐた。音楽おんがくにつれて、いたりしずんだりする男女だんじよかおが、私達わたしたちにもえるのであつた。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
十九日、朝起きて、かおあらうべき所やあると問えば、家の前なるながれを指さしぬ。ギヨオテが伊太利紀行もおもい出でられておかし。温泉をめぐりて立てる家数三十戸ばかり、宿屋やどやは七戸のみ。
みちの記 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
貪狼巨門たんろうきょもん等北斗の七星を祭りて願う永久安護、順に柱の仮轄かりくさびを三ッずつ打って脇司わきつかさに打ちめさする十兵衛は、幾干いくその苦心もここまで運べば垢穢きたなきかおにも光の出るほど喜悦よろこびに気の勇み立ち
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
一四 部落ぶらくには必ず一戸の旧家ありて、オクナイサマという神をまつる。その家をば大同だいどうという。この神のぞうくわの木をけずりてかおえがき、四角なるぬの真中まんなかに穴をけ、これをうえよりとおして衣裳いしょうとす。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
おじいさんは、おこったかおをしてどなりつけました。
かおおおいせる者 (あらわる)お前は何者じゃ。
出家とその弟子 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
みんなは、しずかになりました。そして、としちゃんは、まるまるとした鉛筆えんぴつにぎって、おかあさんの、おかおおもしているうちに
さびしいお母さん (新字新仮名) / 小川未明(著)
みんなは「さんせいだ。」というようなかおをしましたが、さてだれ一人ひとりすすんでねこかっていこうというものはありませんでした。
猫の草紙 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
坊主ぼうずは、たてつけのわる雨戸あまどけて、ぺこりと一つあたまをさげた。そこには頭巾ずきんかおつつんだおせんが、かさかたにしてっていた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
その日にやけた年とったかおには、いつにない若々わかわかしい元気がうかんでいました。かれひたいあせをにじましながら、つよい調子ちょうしでいいました。
活人形 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
アンドレイ、エヒミチはこのせつなる同情どうじょうことばと、そのうえなみだをさえほおらしている郵便局長ゆうびんきょくちょうかおとをて、ひど感動かんどうしてしずかくちひらいた。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
とおどろきましたが、そういわれて、おチエのかおをみると、なるほど、おかあさんのいうことがわかるような気持きもちがしました。
「だが、なんともわからないぞ、あんなにやっつけられたんじゃ、ひょっとしたらぬかもしれねえぜ。」とでも言いたそうなかおつきでした。
だれかと思って横をみると、ご殿てん修築しゅうちくに使用する大石のたくさんつんであるあいだに、元気のない蛾次郎がじろうかおがチラと見えた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
現在げんざいわたくしとて、まだまだ一こう駄眼だめでございますが、帰幽当座きゆうとうざわたくしなどはまるでみにくい執着しゅうじゃく凝塊かたまり只今ただいまおもしてもかおあからんでしまいます……。
不安ふあんやら、心配しんぱいやら、おもしたばかりでもきまりのわるく、かおあかくなるようなおもいで、袖子そでこ学校がっこうへのみち辿たどった。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
いまそこの長持のふちに腰かけている小人は、せいはやっと十センチかそこらです。そいつは年とった、しわだらけのかおをしていて、ひげはありません。
が、感心かんしんなことにだれもいやなかおをしなかった。ぼくらはびっこをひきひき深谷ふかだにまでゆき、おじいさんをかえしてた。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
られたぞ」といながら一ぺんちょっとかおを出した野鼠のねずみがまたいそいであなへひっこみました。
めくらぶどうと虹 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
あのおおきな身体からだひと非常ひじょうせてちいさくなってかおにかすかな赤味あかみがあるくらいでした。
夏目先生と滝田さん (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「ああみんなはぼくかおがあんまりへんなもんだから、それでぼくこわがったんだな。」
かあさん、」とおとこった。「なんかおしてるの! ええ、林檎りんごください。」
そのなやましげな顔には、なんともいえぬ誠実せいじつさが見えていた。クリストフは頬杖ほおづえをついて、彼を見守みまもりはじめた。もうよるになりかかっていた。ゴットフリートのかおは少しずつえていった。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
「そんなことないわ。わたしおくさんとはなしてこようとおもふ。」Iつてたが、わたしむねにうづまつた彼女かのじよかおには、自然ひとりで善良ぜんれう微笑びせうかんでゐるのを、わたしかんじないわけかなかつた。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
というと平松刑事ひらまつけいじが、さすがにかおあからめひどくこまつたつきになつて
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
男は、ぱっと手をひろげると、つるりとひとなでかおをなでおろした。
生徒監せいとかんはためすような目つきで、そのかおを見つめていた。
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)