約束やくそく)” の例文
わたしが、お約束やくそくをいたします。いさましい、とお船出ふなでから、あなたのおかえりなさるを、氏神かみさまにご無事ぶじいのって、おちしています。」
海のまぼろし (新字新仮名) / 小川未明(著)
しやうめいくるのにはすなは其家そのいへわすれ、ぐんのぞんで約束やくそくすればすなは其親そのしんわすれ、(一六)枹鼓ふこることきふなればすなは其身そのみわする。
「でもなんですか、ぼくたちは春になったらつばめにたのんで、みんなにも知らせて結婚けっこんしきをあげましょう。どうか約束やくそくしてください」
シグナルとシグナレス (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
しかし、いま其樣そんこと悠長いうちやうかんがへてるべき塲合ばあひでない。此時このとき心痛しんつうじつ非常ひじやうであつた。櫻木大佐さくらぎたいさとの約束やくそくすで切迫せつぱくしてる。
なんで、約束やくそくしたをんなひにつてはらぬのかと——いまのお前樣まへさまとほりを、またときわたしたづねますと、盲人めくらまをすには
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
此男やがてひざをすゝめ娘の母にむかこゑをひそめていふやう、今はなにをかつゝみ申さん、われ娘御むすめごと二世の約束やくそくをしたるもの也。
わすれはせまじ餘りなさけなき仕方しかたなりと利兵衞をうらみけるが吉三郎はもとより孝心かうしんふかければ母をなぐさめ利兵衞殿斯の如く約束やくそくへん音信おとづれ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「じゃあ、こういうことにしよう。王さまのお妃におまえがなって、いちばんはじめにうまれたこどもを、わたくしにくれると約束やくそくおし。」
さてお約束やくそく懺悔ざんげでございますが、わたくしにとりて、なによりにしみているのをひとつおはないたしましょう。それはわたくし守刀まもりがたな物語ものがたりでございます。
いゝやなそれは、出來できないとき調製こしらへてれとははない、おまへさんにうんいたときことさ、まあ其樣そん約束やくそくでもしてよろこばしていてお
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
おに大将たいしょう約束やくそくのとおり、おしろから、かくれみのに、かくれがさ、うちでのづちに如意宝珠にょいほうじゅ、そのほかさんごだの、たいまいだの、るりだの
桃太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「しかし、海蛇うみへびらがおとなしくこの島を去ると約束やくそくすれば、ぼくらはかれらの必要な船の修繕器具を貸してもいいと思うが」
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
それでは、これが短歌たんかかといふと、第一だいゝち片歌かたうた約束やくそくそむきます。片歌かたうたは、片歌かたうたどうしあはせるもので、けっして、短歌たんか一組ひとくみにはなりません。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
そこで五人はかけました。おかあさんにちゃんとお約束やくそくをしたので、五人だけでってもいいというおゆるしが出たのです。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
ヂュリ 乳母うばしてやったとき時計とけいこゝのつをってゐた。半時間はんじかんかへるといふ約束やくそくしやへなんだかもれぬ。いや/\、さうではい。
「このあめだ。いくらんでも、おきゃくほうは、になるほどきもしまい。それともだれぞ、約束やくそくでもしたひとがおりかの」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
そこで、わたしのきな子供こどもたちよ。おぢさんはみんなとお約束やくそくしよう。このつぎすおぢさんのほんは、きつといいほんで、もつとやすくすること、を。
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
あなたとご一しょにごはんをいただきたいのは山々でございますが、じつは私は、神さまにしおを食べませんと言ってお約束やくそくしているのでございます。
ぼくは無責任な批評をするな、と腹がたちましたが、金沢は続いて無造作に、「しかし誰かに言い触らすようなことはしないよ。それは約束やくそくします」
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
こうして、ついに約束やくそくの土曜日が来た。天気は快晴というほどではなかったが、この季節の武蔵野むさしのにしては、風も静かで、割合あたたかい日だった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
もしここに金の延べ金があったら二人はそれを御殿ごてんに持って行くともとのとおり御家来にしてくださる約束やくそくがある。
燕と王子 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
これはありがたいやくめではありませんが、嵐の中にまた出ていくよりは、ずっとましです。そこで、ニールスは、目をさましていようと約束やくそくしました。
シューラは、新しい歌をあつめたほんを持っててやると、きのうクルイニンに約束やくそくしたのをおもした。ポケットへ手をっこんでみたが、本はなかった。
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
要吉が徴兵検査ちょうへいけんさまでつとめあげるという約束やくそくで、要吉の父は、水菓子屋の主人から何百円かのお金をかりたのです。
水菓子屋の要吉 (新字新仮名) / 木内高音(著)
宗助そうすけはそれを洋服やうふく内懷うちぶところんで汽車きしやつた。約束やくそく興津おきつたときかれ一人ひとりでプラツトフオームへりて、細長ほそなが一筋町ひとすぢまち清見寺せいけんじはうあるいた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
しかし、死んでも勝たねばならぬこの一戦! 富田六段はその翌日よくじつ、モンクスへ試合の約束やくそくを申し送った。
柔道と拳闘の転がり試合 (新字新仮名) / 富田常雄(著)
こよいこくに、かねてのお約束やくそくどおり、船からあげて阿古屋あこやの松原までかしらが連れてまいり、金子きんすと引きかえに、おやかたへお渡しいたすてはずになっておりまする
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「なりましょう。おしどりになりましょう。」「それでは今晩こんばん月が出てから、恋人こいびとをともなってここへ出ていらっしゃい。」と老人はいった。若者は約束やくそくをした。
おしどり (新字新仮名) / 新美南吉(著)
それでその貝を机に置き、今後煙草の火が消えた時は、手を鳴らす代りに貝を吹くという約束やくそくにした。
新吉しんきちは、三日に一度、町の風呂ふろへ行くとき、おかみさんから一銭銅貨いっせんどうかを三つだけうけ取るきり、お小使銭こづかいせんとしては、ただの一銭ももらえない約束やくそくになっているのです。
曲馬団の「トッテンカン」 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
すると、月はまっすぐわたしの部屋の中にさしこんできて、これから外に出かけるときには、まい晩、ちょっとわたしのところをのぞきこもうと、約束やくそくしてくれました。
何しろ畫室は、約束やくそく通りに出來てあるから、四はう密閉みつぺいしたやうになつてゐる。暖爐ストーブころならば、其の熱で嚇々くわつ/\とする、春になれば春の暖氣だんきすやうにむつとする。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
『おまへ上話うへばなしをする約束やくそくではなくッて』とつてあいちやんは、『何故なぜきらひなのサ——ネとイが』とあとからさゝやくやうにひました、またねずみおこりはしないかと氣遣きづかはしげに。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
これも必要なりれも入用なりとて兵器は勿論もちろん被服ひふく帽子ぼうしの類に至るまで仏国品を取寄とりよするの約束やくそくを結びながら、その都度つど小栗にははからずしてただち老中ろうじゅう調印ちょういんを求めたるに
ダンスの帰りの料理屋でのいきさつ——小初を世話する約束やくそくのほぼ出来上ったことを貝原は友達である薫の父親にゆうべ打ち明けに行ったことを薫はとうとう小初にはなした。
渾沌未分 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
たとへば日雇賃ひようちんにても借家賃しやくやちんにても其外そのほかもの貸借かしかり約束やくそく日限にちげんみないづれも一ウヰークにつき何程なにほどとて、一七日毎ひとなぬかごときりつくること、我邦わがくににて毎月まいつき晦日みそかかぎりにするがごとし。その一七日のとなへごと
改暦弁 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
というのは、ちょうどその日にあたるあさっての日曜日には、少し早いが八津の年忌ねんきをしようと、昨夜大吉たちと約束やくそくをしたばかりなのであった。いなりずしでも作ろうというと
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
かげで山の中のけものは、みなたすかります。これから、お約束やくそくですから、上手じょうずに人形を使うことを、あなたにおおしえしましょう。ただだまって、私のいうとおりになさらなければいけませんよ
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
家康は約束やくそくどおり甚五郎をし出したが、目見えの時一言も甘利の事を言わなんだ。蜂谷の一族は甚五郎の帰参を快くは思わぬが、大殿おおとの思召おぼしめしをかれこれ言うことはできなかった。
佐橋甚五郎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
あ、さうだ けふはおとうさんに幻燈写真げんとうしやしんを見せていただく約束やくそくだつた うれしいなあ
「おかみさん! ぼくのほかにはだれも、この部屋へやにはいらせない約束やくそくだったね」
「そんなことはない。今度こんどはきつとする。展覽會てんらんくわいはう約束やくそくもあるんだから‥‥」
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
今度は春琴は素直に妊娠にんしんを認めたがいかに聞かれても相手を云わない強いてめるとおたがいに名を云わぬ約束やくそくをしたと云う佐助かと云えば何であのような丁稚風情ふぜいにと頭から否定した。
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
友人たちは初め承知しなかったが、結局ヴラジーミル・ペトローヴィチは自説をとおした。二週間ののち、彼らが再び寄り合った時、ウラジーミル・ペトローヴィチは、その約束やくそくを果した。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
戸倉村よりは他の物品を此処にち来り以て之を交易こうえきし、其間あへて人の之を媒介ばいかいするものなく、只正直と約束やくそくとをまもりて貿易ばうえきするのみと、此に於て前日来より「あるこーる」にかつしたる一行は
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
……またいついつもの約束やくそくの チンツン
桜さく島:春のかはたれ (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
「それじゃ約束やくそくしておこう」
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
さあ約束やくそくだ お礼の千円
魔法の笛 (新字新仮名) / ロバート・ブラウニング(著)
「きっと、先生せんせいにおあいにまいります。」と、お約束やくそくをしたのです。すると、そのとき、先生せんせい年子としこかたくおにぎりなさいました。
青い星の国へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
左樣さやうわたくしきみ確信くわくしんします、きみ我等われら同志どうしとして、永久えいきゆう秘密ひみつまもこと約束やくそくたまはゞ、誠心せいしんより三度みたびてんちかはれよ。