たん)” の例文
若者わかものは、近所きんじょぬのたんわりに、手綱たづなとくつわをってうまにつけますと、さっそくそれにって、またずんずんあるいて行きました。
一本のわら (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
生れて四十年、一たんの土と十五坪の草葺のあばらぬしになり得た彼は、正に帝王ていおうの気もちで、楽々らくらくと足踏み伸ばして寝たのであった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
それでも塩水せんをかけたので恰度ちょうどあったから本田の一町一たん分には充分じゅうぶんだろう。とにかくぼくは今日半日で大丈夫だいじょうぶ五十円の仕事しごとはしたわけだ。
或る農学生の日誌 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
その前の晩、大湊おおみなといかりおろした十六たんの船がありました。船の上から大湊の陸の方をながめて物思わしげに立っているのはお松でありました。
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
漁師りょうしは、それをってゆくと、はたして、いいれました。よろこんでいえかえって、もう一たんおなじものをってくれるようにたのんだのであります。
はまねこ (新字新仮名) / 小川未明(著)
家へ帰って調べると、嚢のなかには綾絹あやぎぬが百余たんもはいっていましたので、わたくしは思わぬ金儲けをいたしました。
節子さんは娘時代には、一たん半なくては、長いそでがとれなかったという脊高せいたかのっぽ、浜子は十貫にはどうしてもならなかったかぼそい小さな体だった。
朱絃舎浜子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
駿馬に積んでいた鉄一千きんと、百たんの獣皮織物と、金銀五百両を挙げてみな、「どうか、軍用の費に」と、献上した。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「なになか呉服屋ごふくやまうぎてるのさ」と宗助そうすけ其道そのみちあかるいやうことを、このたん銘仙めいせんから推斷すゐだんしてこたへた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
そこの田地でんぢは皆で一二たんもあらうか、平素ふだん土底つちぞこから女の涙のやうなひやつこい水がちよろちよろ流れ出すので、大抵の者は気味を悪がつて手をつけなかつた。
たん以上いじやうかひつてはこしてある。其跡そのあとからは清水しみづ湧出ゆうしゆつして、たゞちにほどひくくなつてる。此所こゝ貝塚かひづかがあらうとは、今日けふまでらなかつた。
しゃくに足らぬ男にも、六しゃくちかい大兵だいひょうにも、一たんの反物をもって不足もしなければあまりもせぬ。もっとも仕立の方法によりてはいかようにもなし得られる。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
御覧じゃい、あないにの、どす黒くへりを取った水際から、三たんも五たんと、沖の方へさ汐のとこへ、貝、蟹の穴からや、にょきにょきとあしが生えましたぞい。
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「フン、女のくせに二合もけりや豪儀がうぎだゼ。」とお房はひやゝかに謂ツて、些と傍を向き、「だツて、一月ひとつき儉約けんやくして御覧ごらんなさいな、チヤンと反物たんものが一たんへますとさ。」
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
もっともお召縮緬を着たのは、あなが奢侈しゃしと見るべきではあるまい。一たん一朱か二分二朱であったというから、着ようと思えば着られたのであろうと、保さんがいう。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
三十五たん帆が頻繁ひんぱんに出入りしたものだったが、今は河口も浅くなり、廻船問屋かいせんどんやの影も薄くなったとは言え、かつおを主にした漁業は盛んで、住みよいゆたかな町ではあった。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
言い忘れたが、最初私は太郎に二たんほどの田をあてがった。そこから十八俵の米が取れた。
分配 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
発戸ほっとには機屋はたやがたくさんあった。いちごとに百たん以上町に持って出る家がすくなくとも七八軒はある。もちろん機屋といっても軒をつらねて部落をなしているわけではない。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
「こんで出際でぎはあめでもえゝ鹽梅あんべえなら、たんで四へうなんざどうしてもとれべとおもつてんのよ」
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
太郎を抱きあげ、わらび取りの娘の手籠には太郎のかわりに手拭地を一たんいれてやって、それから土間へ大きなたらいを持ち出しお湯をなみなみといれ、太郎のからだを静かに洗った。
ロマネスク (新字新仮名) / 太宰治(著)
岸を離れる二たん余の所で、船は静かに帆をおろした。と、一人が船首へ立ち
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
開きたりソレの瀧ホラ向ふの岩奇絶妙絶と云ふうちには四五たんは馳せ過る馬車の無法むはふとばせ下は藍なす深き淵かたへは削りなせる絶壁やうやくに車輪をのするだけの崕道がけみちを容赦も酙酌しんしやくもなく鞭を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
他府県でも聞くたん千円の相場は、陸前のヤチ田にも稀れでなかった。よく言っても経済知識の欠乏、悪く言えば病的の現象だが、どうせむだ使いに捨てる金だからと弁護する人があるかもしれぬ。
雪国の春 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
年産額は一千万円を超え、二百万たん余を産し、十万戸の家がこれで生計を立てているといわれます。天明てんめい年間に井上伝女いのうえでんじょの始めるところと伝え、阿波藍あわあいを用い丈夫を旨として出来るかすりであります。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
たんか四反の、島特有の段々畠を耕作している農民もたくさんある。養鶏をしている者、養豚をしている者、鰯網をやっている者もある。複雑多岐でその生活を見ているだけでもなか/\面白い。
田舎から東京を見る (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
たんばかりの畑地はよくらされてある。麦でも直ぐいてよさそうに準備されている。何の種を播くのかとなおよく見ていると、百姓の馬としては、あまりに神威を備えた白馬はふさわしくない。
「ええ、日に二十たん位洗つては河原へしますの。」
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
一、藤田堅物ふじたけんもつ——三つ、および生絹きぎぬたん
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
よくこそ心掛給ひしといた賞美しやうびなし外々にて才覺致候はんと申ければ隱居は暫く考へ脊負葛籠せおひつゞら一ツ取出し中より猩々緋しやう/″\ひとらかは古渡こわたりのにしき金襴きんらんたん掛茶入かけちやいれ又は秋廣あきひろの短刀五本骨ほんぼねあふぎの三處拵ところごしらへの香箱かうばこ名香めいかう品々しな/″\其外金銀の小道具を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
三十五たんをまくや
どんたく:絵入り小唄集 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
あさから一たん
とんぼの眼玉 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
といって、しろぬのを一たんしました。下男げなんんだうまぬのたんになれば、とんだもうけものだとおもって、さっそくうまりかえっこをしました。
一本のわら (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
あるのこと、おんな織物おりものって、まちりにかけようとする漁師りょうしかって、べつに、一たん織物おりものして
はまねこ (新字新仮名) / 小川未明(著)
くまなくその大々發掘跡だい/″\はつくつあとの、一たんばかりあるところあるいてれば、つめきほどの破片はへんをも見出みいださぬ。
御米およねおもはくをいてると、此所こゝで十ゑんらずのかねはひれば、宗助そうすけ穿あたらしいくつあつらへたうへ銘仙めいせんの一たんぐらゐへるとふのである。宗助そうすけそれもさうだとおもつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
彦島村役場の明治頃の土地台帳によると、巌流島全体の面積一たん十六とあるから、いかに小さい島かが分ろう。岸のいちばん高い所でも六十三フィートぐらいなものだとある。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
東と北に一間の下屋げやをかけて、物置、女中部屋、薪小屋、食堂用の板敷とし、外に小さな浴室よくしつて、井筒いづつも栗の木の四角な井桁いげたえることにした。畑も一たん程買いたした。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
眉の青い路之助が、八たん広袖どてらに、桃色の伊達巻だてまきで、むくりと起きて出たんですから。
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
特別の理由あるにあらざれば、たけの長短を斟酌しんしゃくせず一人前は一たんと定めてある。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
近所きんじよ女房等にようばうらは一たん晒木綿さらしもめん半分はんぶんきつてそれでかたばかりのみじか經帷子きやうかたびら死相しさうかく頭巾づきんとふんごみとをつてそれをせた。ふんごみはたゞかくにして足袋たびかはり爪先つまさき穿かせるのであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
多くは八たんの狭い地の産である。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
ひるから一たん
とんぼの眼玉 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
同道どうだうしたる男は疑ひもなき敵とねらふ吾助にて有れば忠八はおのれ吾助とひながらすツくとあがる間に早瀬はやせなれば船ははやたんばかりへだたりし故其の船返せ戻せと呼はれ共大勢おほぜい乘合のりあひなれば船頭は耳にも入ず其うちに船は此方のきしつきけれとも忠八立たりしまゝ船よりあがらず又もや元の向島むかうじまの方へと乘渡り群集ぐんじゆの中を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そのばん宇治うじちかくで日がれました。若者わかものはゆうべのようにまたぬのたんして、一けんいえめてもらいました。
一本のわら (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「なに、御拂おはらひ何時いつでもいんです」と受合うけあつてれた。宗助そうすけはとう/\御米およねのために銘仙めいせんを一たんことにした。主人しゆじんはそれを散々さん/″\値切ねぎつて三ゑんけさした。織屋おりやけたあとまた
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
頼朝の貧しい生活くらしぶりは、平常ふだんここの柵からのぞいて見ただけでも知れていた。流人の給与はおよそ穀物何十石、油何斗、ぬのたんと決った額が渡されるほか、何の収納もあるわけはないからだった。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
きんさかずききんのたちばな、にしきたんきぬ五十ぴき、これはおとうさんへのおくものでした。それからぎん長柄ながえぎんのなし、綾織物あやおりものそでが三十かさね、これはおかあさんへのおくものでした。
鉢かつぎ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
満をはらんだ十四たん帆は巨大な怪鳥のごとくうなりをって進む——。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)