“具(ぐ)” の例文
そこで金太郎は體を固(かた)く小さくして、道の白い流(なが)れの上へ、飛びこむやうな具(ぐ)合に轉んでいつた。自轉車は三四米先へ投(な)げ出された。
坂道 (旧字旧仮名) / 新美南吉(著)
そしてあの少年(しょうねん)の持(も)っていたような絵(え)の具(ぐ)や筆(ふで)があったら、自分(じぶん)にもきっと、あのようにいきいきと描(か)けるのであろうと思(おも)いました。
どこで笛吹く (新字新仮名) / 小川未明(著)
詰侍(つめざむらい)の部屋(へや)や長屋(ながや)にいる常備(じょうび)の武士(ぶし)を、番士(ばんし)は声をからして起しまわる。たちまち、物(もの)の具(ぐ)とって馳(か)けあつまる敵(てき)はかずを増(ま)すばかり。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
翌日朝早く案内者一人召(め)し具(ぐ)し二人きおいにきおいて滝壺に下る。岩崩れ足辷(すべ)る。手に草をつかみてうしろ向きになりて少しずつ下り行く。
滝見の旅 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
而(しか)るに更に将門等を召すの使を給はる、然るに心安からざるに依りて、遂に道に上らず、官使英保純行に付いて、由を具(ぐ)して言上し了んぬ。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
木戸に坐つて居る鹽辛聲(しほからごゑ)は、四十前後の不景氣な男で、その頭の上に掛け並べた泥繪(どろゑ)の具(ぐ)の看板は、存分に下品で、そして存分に刺戟的でした。
改めらるゝに中(なか)には紺糸縅鐵小脾(こんいとをどしてつこざね)の具足(ぐそく)一領(りやう)南蠻鐵桃形(なんばんてつもゝなり)の兜(かぶと)其外籠手(こて)脛當(すねあて)佩楯(はいだて)沓等(くつとう)六具(ぐ)とも揃へて是あり又(また)底(そこ)の方(かた)に何(なに)か疊紙(たゝみ)の樣なる包(つゝみ)あり是を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
素人(しろうと)の母親の握る鮨は、いちいち大きさが違っていて、形も不細工だった。鮨は、皿の上に、ころりと倒れて、載せた具(ぐ)を傍へ落すものもあった。
鮨 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
甲胄堂(かつちうだう)の婦人像(ふじんざう)のあはれに絵(ゑ)の具(ぐ)のあせたるが、遥(はる)けき大空(おほぞら)の雲(くも)に映(うつ)りて、虹(にじ)より鮮明(あざやか)に、優(やさ)しく読(よ)むものゝ目(め)に映(うつ)りて、其(そ)の人(ひと)恰(あだか)も活(い)けるが如(ごと)し。
甲冑堂 (新字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
なれたる人はこれをはきて獣(けもの)を追ふ也。右の外、男女の雪帽子(ばうし)雪下駄(げた)、其余(そのよ)種々雪中歩用(ほよう)の具(ぐ)あれども、薄(はく)雪の国に用ふる物に似(に)たるはこゝに省(はぶ)く。
其代り筆(ふで)が些(ちつ)とも滞つてゐない。殆んど一気呵成(かせい)に仕上(しあげ)た趣がある。絵(ゑ)の具(ぐ)の下(した)に鉛筆の輪廓が明(あき)らかに透(す)いて見えるのでも、洒落な画(ぐわ)風がわかる。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
家屋庭園の装飾はただちに我が形体の寒熱痛痒(つうよう)に感ずるに非(あら)ざれども、精神の風致を慰(なぐさむ)るの具(ぐ)にして、戸外の社会に交りてその社会の美を観るもまた
教育の目的 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
本編雪の外(ほか)它(た)の事を載(のせ)たるは雪譜(せつふ)の名を空(むなし)うするに似(に)たれども、姑(しばらく)記(しる)して好事(かうず)の話柄(わへい)に具(ぐ)す。増修(そうしう)の説(せつ)も亦(また)然(しか)り。
すなわち一方は稀(まれ)にしかこれを口にせず、または少なくとも戯笑(ぎしょう)の具(ぐ)には供しなかった。その痕跡がまだシビ・スビ・ツビの語には残っているかと思う。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
ぱっと、漆盆(うるしぼん)の上(うえ)へ欝金(うこん)の絵(え)の具(ぐ)を垂(た)らしたように、あたりが明(あか)るくなった。同時(どうじ)に、春重(はるしげ)のニヤリと笑(わら)った薄気味悪(うすきみわる)い顔(かお)が、こっちを向(む)いて立(た)っていた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
ははゝゝそれはね 天体(たい)を見るには機械(きかい)にばかり頼(たよ)らないで『見るのに具(ぐ)合ひのいい調子(てうし)』にしておくことだよ
一二二水向(むけ)の具(ぐ)一二三物せし中に、木の端(はし)を刪(けづ)りたるに、一二四那須野紙(なすのがみ)のいたう古(ふる)びて、文字も一二五むら消(ぎえ)して所々見定めがたき、正しく妻の筆の跡なり。
我々は是に膏藥(こうやく)の類を入るる事有れどコロボツクルは之を以て繪(ゑ)の具(ぐ)入れとせしなり。赤色(あかいろ)の繪(ゑ)の具(ぐ)を入れたる儘(まま)のはまぐり貝は大森貝塚(かいづか)より數個發見(はつけん)されたり。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
或日東堂が役所で公用の書状を発せようとして、藤田に稿を属(しょく)せしめた。藤田は案を具(ぐ)して呈した。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
ごく珍(めづら)しい例(れい)ではありますが、赤(あか)い繪(え)の具(ぐ)で塗(ぬ)つたものさへ見(み)かけられるのであります。しかし燒(や)き方(かた)はどれも軟(やはら)かい質(しつ)ですから、水(みづ)を入(い)れるとたいていは浸(し)み出(だ)します。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
と呟いて、血にぬれた薙刀を肩にかつぎ、物(もの)の具(ぐ)ユサユサとゆすり上げたかと思うと
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
水彩画の画(え)の具(ぐ)で書くのであったが、色の用法などは何人にも習わず、また手本というようなものは一冊もなく、ただ目前に草花類を置いていきなりそれを写生するのであったから
子規居士と余 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
自己の論法を展開する便宜(べんぎ)の具(ぐ)としているまでの如くであるけれども、然し、織田の論理の支柱となっている感情は、熱情は、東京に対する大阪であり、織田の反逆でなしに、大阪の反逆
ピアノの前に二月堂の卓を二つつないで、瓦斯(ガス)のカンテキ(鍋(なべ)やカンテキは母屋から借りて来たのである)ですぐに始めたが、具(ぐ)がいつもより分量が多く、種類もたくさん揃(そろ)えてあるのに驚いた。
鍵 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
日曜の朝、「秋」は銀かな具(ぐ)の細巻の
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
眞白き石に具(ぐ)せられぬ。
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
御馬(おんうま)の具(ぐ)は何々(なに/\)
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
孔明は、屍(かばね)を谷へ捨てさせたが、その物(もの)の具(ぐ)や旗印は、これを取って、自軍の兵に装わせた。つまり敵の具を以て全軍偽装したのである。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それで、一枚(まい)描(か)こうかと思(おも)って、絵(え)の具(ぐ)を買(か)いに出(で)かけて、帰(かえ)ってみると召集令(しょうしゅうれい)がきていたんだ。ああ、それで気(き)がついたよ。
戦友 (新字新仮名) / 小川未明(著)
なれたる人はこれをはきて獣(けもの)を追ふ也。右の外、男女の雪帽子(ばうし)雪下駄(げた)、其余(そのよ)種々雪中歩用(ほよう)の具(ぐ)あれども、薄(はく)雪の国に用ふる物に似(に)たるはこゝに省(はぶ)く。
画工(ゑかき)さんは立処(たちどころ)にコバルトの絵(ゑ)の具(ぐ)を溶(と)いたし、博士(はかせ)は紫(むらさき)の蝶(てふ)を追(お)つて、小屋(こや)うらの間道(かんだう)を裏(うら)の林(はやし)に入(はい)つたので。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
其中(そのうち)には、さすが御大名丈(おだいみやうだけ)あつて、好(い)い繪(ゑ)の具(ぐ)を惜氣(をしげ)もなく使(つか)ふのが此(この)畫家(ぐわか)の特色(とくしよく)だから、色(いろ)が如何(いか)にも美事(みごと)であると云(い)ふ樣(やう)な、宗助(そうすけ)には耳(みゝ)新(あた)らしいけれども
門 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
土器(どき)では三本脚(さんぼんあし)のれきなどでありますが、近頃(ちかごろ)にいたつて河南省(かなんしよう)や甘肅省(かんしゆくしよう)あたりでは、墨色(すみいろ)の繪(え)の具(ぐ)で模樣(もよう)を描(か)いた美(うつく)しい土器(どき)が、石器(せつき)と一(いつ)しょにたくさんに發見(はつけん)されますが
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
窓(まど)の下(もと)なる小机に、いま行李(こり)より出したる旧(ふる)き絵入新聞、遣(つか)ひさしたる油(あぶら)ゑの具(ぐ)の錫筒(すずづつ)、粗末なる烟管(キセル)にまだ巻烟草(まきタバコ)の端(はし)の残れるなど載せたるその片端に、巨勢はつら杖(づえ)つきたり。
うたかたの記 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
すなわち東洋諸国専制流(せんせいりゅう)の慣手段(かんしゅだん)にして、勝氏のごときも斯(かか)る専制治風の時代に在(あ)らば、或は同様の奇禍(きか)に罹(かか)りて新政府の諸臣を警(いま)しむるの具(ぐ)に供せられたることもあらんなれども
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
蠅帳の中には、すでに鮨の具(ぐ)が調理されてあった。母親は素早くその中からひときれを取出してそれからちょっと押えて、長方形に握った飯の上へ載せた。子供の前の膳の上の皿へ置いた。
鮨 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
右の下の隅に圖(づ)したるは土瓶形(どびんかた)土器の横口(よこくち)にして。模樣(もよう)は赤色の繪(ゑ)の具(ぐ)を以て畫(ゑが)きたり。右の上の三個は、土器表面(ひやうめん)に在る押紋を其原(もと)に還したるものにして、取(と)りも直さず紐(ひも)細工の裝飾なり。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
致せ湯責(ゆぜめ)火(ひ)責水責鐵砲(てつぱう)責海老(えび)熊手(くまで)背割(せわり)木馬(もくば)しほから火の玉(たま)四十八具(ぐ)の責に掛るぞヤイ/\責よ/\との聲諸とも獄卒(ごくそつ)共ハツと云樣無慘(むざん)なる哉(かな)九助を眞裸(まつぱだか)にして階子(はしご)の上に仰向(あふむけ)に寢かし槌の枕を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
一般に、私達の日常に於ては、言葉は専(もっぱ)ら「代用」の具(ぐ)に供(きょう)されている。
FARCE に就て (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
所(ところ)は石町(こくちょう)の鐘撞堂新道(かねつきどうしんみち)。白紙(はくし)の上(うえ)に、ぽつんと一点(てん)、桃色(ももいろ)の絵(え)の具(ぐ)を垂(た)らしたように、芝居(しばい)の衣装(いしょう)をそのまま付(つ)けて、すっきりたたずんだ中村松江(なかむらしょうこう)の頬(ほほ)は、火桶(ひおけ)のほてりに上気(じょうき)したのであろう。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
「そこもとたちふたりは、若君の右翼(うよく)左翼(さよく)となり、おのおの二十名ずつの兵を具(ぐ)して、おそばをはなれず、ご先途(せんど)を見とどけられよ、早く早く」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「もう、けんかはよしておくれ、明日(あす)にでもお金(かね)をこしらえてきて絵(え)の具(ぐ)を買(か)ってあげますから。」といいました。
金歯 (新字新仮名) / 小川未明(著)
本編雪の外(ほか)它(た)の事を載(のせ)たるは雪譜(せつふ)の名を空(むなし)うするに似(に)たれども、姑(しばらく)記(しる)して好事(かうず)の話柄(わへい)に具(ぐ)す。増修(そうしう)の説(せつ)も亦(また)然(しか)り。
朝(あした)に法を聴き、夕(ゆうべ)に道を聴き、梧前灯下(ごぜんとうか)に書巻を手にするのは皆この自証(じしょう)を挑撥(ちょうはつ)するの方便(ほうべん)の具(ぐ)に過ぎぬ。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
即(すなは)ち、一錢銅貨(いつせんどうくわ)五十餘枚(ごじふよまい)を、ざらりと一側(ひとかは)ならびに、細(ほそ)い、青(あを)い、小(ちひ)さい蝦蟇口(がまぐち)を用意(ようい)して、小口(こぐち)から、「さあ、さあ、お剩錢(つり)を。」——これは、以來(いらい)、九九九會(くわい)の常備(じやうび)共通(きようつう)の具(ぐ)と成(な)つて
九九九会小記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
ついに一度(ど)も来(き)たことのない、中村松江(なかむらしょうこう)の女房(にょうぼう)が、訪(たず)ねて来(き)たと聞(き)いただけでは、春信(はるのぶ)は、直(す)ぐさまその気(き)になれなかったのであろう。絵(え)の具(ぐ)から眼(め)を離(はな)すと、藤吉(とうきち)の顔(かお)をあらためて見直(みなお)した。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
裝飾 衣服の裝飾(そうしよく)は紐(ひも)を縫(ぬ)ひ付け、又は糸にて縫ひ取り、又は繪の具にて塗(ぬ)りて作りしと思はる。土偶中には上着(うはぎ)の所々に赤き繪(ゑ)の具(ぐ)を付けたるも有り、股引に數個の横線 畫きたるも有るなり。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
何(いず)れも仏性(ぶっしょう)具(ぐ)せる身を 隔(へだ)つるのみこそ悲しけれ。
ざわざわと、こんなことをささやきながら、あなたこなたにたおれている武士の物(もの)の具(ぐ)や持ち物を剥(は)ぎまわっているのだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼(かれ)はどこへいったら、あれと同(おな)じい絵(え)の具(ぐ)や、筆(ふで)を売(う)っているだろうかと、そればかり思(おも)っていたのでありました。
どこで笛吹く (新字新仮名) / 小川未明(著)