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透
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とほ
ふりがな文庫
“
透
(
とほ
)” の例文
金と銀との花の盞から静かにこぼれ落ちる金と銀との花の
芬香
(
ふんかう
)
は、大気の動きにつれて、音もなくあたりに
浸
(
し
)
み
透
(
とほ
)
り、また揺曳する。
水仙の幻想
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
私はやがて、繰返す女の言葉も遂には途切れたなり聞えなくなつた時、ふと薄い袷の膝を
透
(
とほ
)
して、女の涙の生暖い潤ひを覺え出した。
歓楽
(旧字旧仮名)
/
永井荷風
、
永井壮吉
(著)
眩
(
まぶ
)
しいものが一
閃
(
せん
)
、
硝子
(
ガラス
)
を
透
(
とほ
)
して
私
(
わたし
)
の
眼
(
め
)
を
射
(
い
)
つた。そして一
瞬
(
しゆん
)
の
後
(
のち
)
、
小松
(
こまつ
)
の
枝
(
えだ
)
はもう
無
(
な
)
かつた。それは
光
(
ひかり
)
の
中
(
なか
)
に
光
(
ひか
)
り
輝
(
かゞや
)
く
斑點
(
はんてん
)
であつた。
日の光を浴びて
(旧字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
私
(
わたし
)
の
居
(
ゐ
)
た、
草
(
くさ
)
にも、しつとりと
其
(
そ
)
の
靄
(
もや
)
が
這
(
は
)
ふやうでしたが、
袖
(
そで
)
には
掛
(
かゝ
)
らず、
肩
(
かた
)
にも
卷
(
ま
)
かず、
目
(
め
)
なんぞは
水晶
(
すゐしやう
)
を
透
(
とほ
)
して
見
(
み
)
るやうに
透明
(
とうめい
)
で。
人魚の祠
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
しかもそれは皆な自己を
透
(
とほ
)
して、立派な証券を持つてかれに迫つて来た。かれは愈々仏の前に手を合せなければならないことを感じた。
ある僧の奇蹟
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
▼ もっと見る
其年
(
そのとし
)
の
京都
(
きやうと
)
の
冬
(
ふゆ
)
は、
音
(
おと
)
を
立
(
た
)
てずに
肌
(
はだ
)
を
透
(
とほ
)
す
陰忍
(
いんにん
)
な
質
(
たち
)
のものであつた。
安井
(
やすゐ
)
は
此
(
この
)
惡性
(
あくしやう
)
の
寒氣
(
かんき
)
に
中
(
あ
)
てられて、
苛
(
ひど
)
いインフルエンザに
罹
(
かゝ
)
つた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
昼間見置きし枕辺の聖母の心臓を剣さし
透
(
とほ
)
せる油絵は、解剖図などかけし様にて、あまり心地よき寝覚めの
伴侶
(
とも
)
にもあらざりき。
馬上三日の記:エルサレムよりナザレへ
(新字旧仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
末男
(
すゑを
)
は
子供
(
こども
)
を
抱
(
だ
)
きながら、まち
子
(
こ
)
と一
所
(
しよ
)
に
銀座
(
ぎんざ
)
の
明
(
あか
)
るい
飾窓
(
かざりまど
)
の
前
(
まへ
)
に
立
(
た
)
つて、
星
(
ほし
)
の
見
(
み
)
える
蒼空
(
あをそら
)
に、すき
透
(
とほ
)
るやうに
見
(
み
)
える
柳
(
やなぎ
)
の
葉
(
は
)
を
見
(
み
)
つめた。
追憶
(旧字旧仮名)
/
素木しづ
(著)
すると歯にも
透
(
とほ
)
る位、苦味の交つた甘さがある。その上彼の口の中には、
急
(
たちま
)
ち橘の花よりも涼しい、微妙な匂が一ぱいになつた。
好色
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
新秋
(
しんしう
)
の
氣
(
き
)
もちいゝ
風
(
かぜ
)
が
簾
(
すだれ
)
を
透
(
とほ
)
して
吹
(
ふ
)
く、それが
呼吸氣管
(
こきうきくわん
)
に
吸
(
す
)
ひ
込
(
こ
)
まれて、
酸素
(
さんそ
)
が
血
(
ち
)
になり、
動脈
(
どうみやく
)
が
調子
(
てうし
)
よく
搏
(
う
)
つ………その
氣
(
き
)
が
味
(
あぢ
)
はへない。
ねこ
(旧字旧仮名)
/
北村兼子
(著)
落
(
お
)
ち
掛
(
か
)
けた
日
(
ひ
)
が
少時
(
しばし
)
竹藪
(
たけやぶ
)
を
透
(
とほ
)
して
濕
(
しめ
)
つた
土
(
つち
)
に
射
(
さ
)
し
掛
(
か
)
けて、それから
井戸
(
ゐど
)
を
圍
(
かこ
)
んだ
井桁
(
ゐげた
)
に
蒞
(
のぞ
)
んで
陰氣
(
いんき
)
に
茂
(
しげ
)
つた
山梔子
(
くちなし
)
の
花
(
はな
)
を
際立
(
はきだ
)
つて
白
(
しろ
)
くした。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
厚き
蓐
(
しとね
)
の積れる雪と真白き上に、
乱畳
(
みだれたた
)
める
幾重
(
いくへ
)
の
衣
(
きぬ
)
の
彩
(
いろどり
)
を争ひつつ、
妖
(
あで
)
なる姿を
意
(
こころ
)
も
介
(
お
)
かず
横
(
よこた
)
はれるを、窓の日の
帷
(
カアテン
)
を
透
(
とほ
)
して
隠々
(
ほのぼの
)
照したる
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
ジーンといふ音のやうな感じが、頬を
透
(
とほ
)
して口のなかへ沁み渡りました。美智子は力一杯に、氷の包を握りしめました。
美智子と歯痛
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
出窓の前の
青桐
(
あをぎり
)
を
透
(
とほ
)
して
屋根庇
(
やねひさし
)
の陰に、下座敷の
寂
(
ひつ
)
そりした
障子
(
しやうじ
)
の腰だけが見えた。
其処
(
そこ
)
からは時々若夫人の声が響いて、すぐに消えるのだつた。
朧夜
(新字旧仮名)
/
犬養健
(著)
奥州藤原家が
何時
(
いつ
)
の間にか、「だんまり虫が壁を
透
(
とほ
)
す」格で大きなものになつてゐたのも、何を語つてゐるかと云へば
平将門
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
が、実際その通りで驚く程容易しい、此通り誰でも研究といふ程の研究はせずとも、文法の十六則に一通り目を
透
(
とほ
)
しさへすれば、一寸文章も書ける。
エスペラントの話
(新字旧仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
第十
常居
(
ゐま
)
は
濕氣
(
しめりけ
)
少
(
すくな
)
く
日當
(
ひあた
)
りよくして
風
(
かぜ
)
の
透
(
とほ
)
る
樣
(
やう
)
に
心
(
こゝろ
)
を
用
(
もち
)
ふ
可
(
べ
)
し。一ヶ
年
(
ねん
)
一兩度
(
いちりやうど
)
は
必
(
かなら
)
ず
天井
(
てんじやう
)
また
椽
(
えん
)
の
下
(
した
)
の
塵
(
ちり
)
を
拂
(
はら
)
ひ、
寢所
(
ねどころ
)
は
高
(
たか
)
く
燥
(
かわ
)
きたる
方
(
はう
)
を
擇
(
えら
)
ぶべき
事
(
こと
)
。
養生心得草
(旧字旧仮名)
/
関寛
(著)
上ること廿四丁、
蟠廻
(
はんくわい
)
屈曲して山腹岩角を行く。石塊
𡵧𡵧
(
ぐわん/\
)
大さ牛のごとくなるもの幾百となく路に横り
崖
(
がい
)
に
欹
(
そばた
)
つ。時
已
(
すでに
)
卯後、残月光曜し山気冷然として
膚
(
はだへ
)
に
透
(
とほ
)
れり。
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
併
(
しか
)
しながら風が少しも吹かず、一体に空気が湿つぽく落着いて居て、夕方から
後
(
のち
)
、街に
灯
(
あかり
)
が
点
(
つ
)
くと、霧を
透
(
とほ
)
す温かい
脂色
(
やにいろ
)
の光が
凡
(
すべ
)
ての物に陽気な
而
(
しか
)
も
奥深
(
おくぶか
)
い陰影を与へ
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
溺れた屍が鳥と
帆檣
(
ほばしら
)
の下に沈み、緑色の水を
透
(
とほ
)
してほの見え、
腕環
(
うでわ
)
が洗ひ流されたか、それとも引きちぎられたかした美しい一本の腕だけが、くつきりと見えてゐるのだ。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
所謂
(
いはゆる
)
眼光紙背に
透
(
とほ
)
る者、書を読む、斯の如くにして始めて書を
活
(
い
)
かすべし。天下の書は何人も自由に読むを得べし。然れども読者の多くは宝の山に入れども手を
空
(
むなし
)
うして還れり。
明治文学史
(新字旧仮名)
/
山路愛山
(著)
夜明けにはまだ途方もないしきっと雲が薄くなって月の光が
透
(
とほ
)
って来るのだ。
秋田街道
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
濃緑の松の葉の傘は、大概楢よりも高く
挺
(
ぬ
)
き上つて、光線を容易に
透
(
とほ
)
しさうもなく、大空にひろがつてゐる、森の中をさまよひながら、楢の葉の大波を
掻
(
か
)
き分けて行くと、方々にこの黒松の集団が
亡びゆく森
(新字旧仮名)
/
小島烏水
(著)
澄
(
す
)
み
透
(
とほ
)
る明るい空の青が、水平線近くで、茫と煙る金粉の靄の中に融け去つたかと思ふと、其の下から、今度は、一目見ただけで忽ち全身が染まつて了ひさうな華やかな濃藍の水が、擴がり、膨らみ
環礁:――ミクロネシヤ巡島記抄――
(旧字旧仮名)
/
中島敦
(著)
僕は知つてゐるよ。君の思つてゐることくらゐ、見
透
(
とほ
)
せないでたまるか。あたしは、虫けらだ。精一ぱいだ。命をあげる。ああ、信じてもらへないのかなあ。さうだらう? いづれ、そんなところだ。
火の鳥
(新字旧仮名)
/
太宰治
(著)
くだまきぞ宵は
爆
(
は
)
ぜたれ子がい
寝
(
ね
)
てすずむしの音のみ今は
透
(
とほ
)
りぬ
風隠集
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
玉枝の聲は小さいが、實によく
透
(
とほ
)
りました。
銭形平次捕物控:220 猿蟹合戦
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
しかも、晶子の
動悸
(
どうき
)
は
羅
(
うすもの
)
を
透
(
とほ
)
して
慄
(
ふる
)
へ
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
悲しさ
骨身
(
ほねみ
)
を
透
(
とほ
)
すなり
大菩薩峠:03 壬生と島原の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
しら玉の清らに
透
(
とほ
)
る
恋衣
(新字旧仮名)
/
山川登美子
、
増田雅子
、
与謝野晶子
(著)
天
(
てん
)
にでもいゝ、
地
(
ち
)
にでもいゝ、
縋
(
すが
)
らうとする
心
(
こゝろ
)
、
祈
(
いの
)
らうとする
希
(
ねが
)
ひが、
不純
(
ふじゆん
)
な
沙
(
すな
)
を
透
(
とほ
)
して
清
(
きよ
)
くとろ/\と
彼女
(
かのぢよ
)
の
胸
(
むね
)
に
流
(
なが
)
れ
出
(
で
)
て
來
(
き
)
た。
悔
(旧字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
偶
(
たま
)
にはくるが、もう
以前
(
いぜん
)
のやうに
山
(
やま
)
の
手
(
て
)
の
邸町
(
やしきまち
)
、
土
(
ど
)
べい、
黒
(
くろ
)
べい、
幾曲
(
いくまが
)
りを
一聲
(
ひとこゑ
)
にめぐつて、
透
(
とほ
)
つて、
山王樣
(
さんわうさま
)
の
森
(
もり
)
に
響
(
ひゞ
)
くやうなのは
聞
(
き
)
かれない。
木菟俗見
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
疎
(
まば
)
らな鎮守の森を
透
(
とほ
)
して、
閃々
(
きら/\
)
する燈火の影が二つ三つ見え出した頃には、月が
已
(
すで
)
にその美しい姿を高社山の黒い偉大なる姿の上に
顕
(
あら
)
はして居て
重右衛門の最後
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
彼
(
かれ
)
はいきなり
蕎麥幹
(
そばがら
)
の
束
(
たば
)
を
大
(
おほ
)
きな
足
(
あし
)
で
蹴
(
け
)
つた。
彼
(
かれ
)
は
更
(
さら
)
に
短
(
みじか
)
い
竹
(
たけ
)
の
棒
(
ぼう
)
を
持
(
も
)
つて
行
(
い
)
つてきつと
力
(
ちから
)
を
極
(
き
)
めて
地
(
ち
)
に
突
(
つ
)
き
透
(
とほ
)
した。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
宮は
虚
(
すか
)
さず
躍
(
をど
)
り
被
(
かか
)
りて、我物得つと手に為れば、遣らじと満枝の組付くを、
推隔
(
おしへだ
)
つる
腋
(
わき
)
の下より
後突
(
うしろづき
)
に、
𣠽
(
つか
)
も
透
(
とほ
)
れと刺したる急所、一声
号
(
さけ
)
びて
仰反
(
のけぞ
)
る満枝。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
空
(
そら
)
を
見
(
み
)
ると
凍
(
こほ
)
つてゐる
樣
(
やう
)
であるし、
家
(
うち
)
の
中
(
なか
)
にゐると、
陰氣
(
いんき
)
な
障子
(
しやうじ
)
の
紙
(
かみ
)
を
透
(
とほ
)
して、
寒
(
さむ
)
さが
浸
(
し
)
み
込
(
こ
)
んで
來
(
く
)
るかと
思
(
おも
)
はれる
位
(
くらゐ
)
だのに、
御米
(
およね
)
の
頭
(
あたま
)
はしきりに
熱
(
ほて
)
つて
來
(
き
)
た。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
が、フランソア・ヴイヨンだけは彼の心にしみ
透
(
とほ
)
つた。彼は何篇かの詩の中に「美しい牡」を発見した。
或阿呆の一生
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
※クトリヤ・ホテルは
一町
(
いつちやう
)
とない
処
(
ところ
)
と云ふので、赤帽に鞄を持たせて、その跡を私等二入は歩いて行つた。わたしは目が
覚
(
さ
)
めた。見えない暗い中も見
透
(
とほ
)
せる程頭がはつきりとして来た。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
どんなに淡い
霞
(
かすみ
)
にしても、それを
透
(
とほ
)
して向う側の星を見たら、多少は星の光が薄らぐものだけれど、彗星となるとそれが少しもないんだ。彗星の尾を透して他の星がはつきり見えるんだ。
朧夜
(新字旧仮名)
/
犬養健
(著)
陽の光も
透
(
とほ
)
らぬ深い泉のやうに澄んだこの善良な人が、私の血管から血一滴とらずとも、また彼の水晶のやうな良心に、ほんの微かな罪の汚點をつけるだけで忽ち私を殺し得ると思つた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
それが
癪
(
しやく
)
に触ると言つて、お客は桃太郎の頭から
熱爛
(
あつかん
)
の酒をぶつ掛けた。酒は肩から膝一面に流れた。
紅
(
あか
)
い
長襦袢
(
ながじゆばん
)
の色は
透綾
(
すきや
)
の表にまで
滲
(
し
)
み
透
(
とほ
)
つて来たが、桃太郎は眉毛一つ動かさうとしなかつた。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
マントルピース
火立
(
ほだち
)
華やぐかたへには金髮のふさ
透
(
とほ
)
りゆらげり
白南風
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
衣
(
きぬ
)
を
透
(
とほ
)
して
乾物
(
ひもの
)
の
如
(
ごと
)
く骨だちぬ。
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
ひい、と
泣
(
な
)
いて
雲
(
くも
)
に
透
(
とほ
)
る、……あはれに、
悲
(
かな
)
しげな、
何
(
なん
)
とも
異樣
(
いやう
)
な
聲
(
こゑ
)
が、
人々
(
ひと/″\
)
の
耳
(
みゝ
)
をも
胸
(
むね
)
をも
突貫
(
つきつらぬ
)
いて
響
(
ひゞ
)
いたのである。
霰ふる
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
おつぎは
手
(
て
)
ランプを
置
(
お
)
いて
勘次
(
かんじ
)
がしたやうに
鼻
(
はな
)
へ
當
(
あ
)
てゝ
臭
(
にほひ
)
を
嗅
(
か
)
いで
見
(
み
)
たり、
左
(
ひだり
)
の
手
(
て
)
だけを
袖
(
そで
)
へ
透
(
とほ
)
して
見
(
み
)
たりした。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
すると
彼是
(
かれこれ
)
半時ばかり経つて、深山の夜気が肌寒く薄い着物に
透
(
とほ
)
り出した頃、突然空中に声があつて
杜子春
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
さうして落ちかゝつた日が、凡ての向ふから横に
光
(
ひかり
)
を
透
(
とほ
)
してくる。女は此夕日に向いて立つてゐた。三四郎のしやがんでゐる
低
(
ひく
)
い
陰
(
かげ
)
から見ると岡の上は大変
明
(
あか
)
るい。
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
貴方もお諦め下さいまし、全く因果なのでございますから、
切
(
せめ
)
てさうと諦めてでもゐて下されば、それだけでも私幾分か思が
透
(
とほ
)
つたやうな気が致すのでございます。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
路は昼間
小僮
(
せうどう
)
に案内して貰つて知つて居るから別段甚しく迷ひもせずに、やがて緑樹の
欝蒼
(
こんもり
)
と生ひ茂つた、月の光の満足にさし
透
(
とほ
)
らぬ、少しく
小暗
(
をぐら
)
い阪道へとかゝつて来た。
重右衛門の最後
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
オテル・ド・※ロンの鉄門を押して
入
(
はひ
)
ると、石を敷き詰めた広い中庭が高い鉄柵で七分三分に
劃
(
しき
)
られ、柵を
透
(
とほ
)
して見える古い層楼の正面の
石廊
(
せきらう
)
へ夕日の斜めに
射
(
さ
)
した光景が物寂びて居た。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
透
常用漢字
中学
部首:⾡
10画
“透”を含む語句
見透
透徹
透明
透垣
透綾
滲透
透彫
透過
透間
透通
透見
透視
浸透
透影
透切
射透
透入
無色透明
真透
明透
...