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透切
髪も
櫛巻、
透切れのした繻子の帯、この段何とも
致方がない。亭主、号が春狐であるから、名だけは
蘭菊とでも
奢っておけ。
私などの
夜具は、むやみと
引張つたり、
被つたりだから、
胴中の
綿が
透切れがして
寒い、
裾を
膝へ
引包めて、
袖へ
頭を
突込むで、こと/\
蟲の
形に
成るのに、この
女中は、また
妙な
道樂で
「そうかも知れません、
私あ御存じの
土地児じゃないんですから、見たり、聞いたり、
透切だらけで。へい、どうして、貴方?」
と
擦るように袖を撫でた。その
透切した
衣の背に肩に、一城下をかけて、海に沈む日の
余波の朱を注ぐのに、なお意気は
徹って、血が冴える。