松葉まつば)” の例文
夕飯ゆうはんのあとは、お祖父じいさん、お祖母ばあさん、少年しょうねんの三にんが、いろりのはたでえだ松葉まつばをたき、毎晩まいばんのようにたのしくおはなしをしました。
おかまの唄 (新字新仮名) / 小川未明(著)
すぐをつとそばから松葉まつばひろげてあななかをつついた。と、はちはあわててあなからたが、たちま松葉まつばむかつて威嚇的ゐかくてき素振そぶりせた。
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
とこものの、ぼたん、ばらよりして、缺摺鉢かけすりばち、たどんの空箱あきばこ割長屋わりながや松葉まつばぼたん、唐辛子たうがらしいたるまでこゑせばふしになる。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あわてて松葉まつばまきをくべると、ひどいけむりの中からほのおがまいたって、土間の自転車の金具が炎で赤く光った。
河沙魚 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
日蓮は鎌倉に登ると、松葉まつばやつに草庵を結んで、ここを根本道場として法幡ほうばんをひるがえし、彼の法戦を始めた。彼の伝道には当初からたたかいの意識があった。
こぼれ松葉まつばつちになるまで二人ふたりともにとちぎりしものをわればかりなにとしておくるべきとあしずりしてなげきしがいのち果敢はかなくとゞめられてふたゝんともおもはざりし六疊敷ろくでふじき部屋へや
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そこへくとぢいやのつたがありました。松葉まつばんだのもありました。ぢいやはその背負しよつたり、松葉まつば背負しよつたりして、おうち木小屋きごやはうかへつてるのでした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
まず※は幾条いくすじにもける、それでもって打たれるのでかわの裂目のひりひりしたところがはげしくさわるから、ごくごく浅いきずではあるが松葉まつばでも散らしたように微疵かすりきずが顔へつく。
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
時々は家の主も瓜の種なぞひたして置く。松葉まつばが沈み、蟻や螟虫あおむし溺死できしして居ることもある。尺に五寸の大海に鱗々の波が立ったり、青空や白雲がこころ長閑のどかに浮いて居る日もある。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
いつもはお庭に松葉まつばもはいる時分秋頃から御隱居樣のはさみの音も聞えず
うづみ火 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
手足てあしのばせばくゝりつけたかやしのれてかさ/\とほどせま室内しつないを、さむさはたばねた松葉まつばさきでつゝくやうに徹宵よつぴてその隙間すきまねらつてまなかつた。勘次かんじえてしまつた。かれきたまくらしてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
当日とうじつ哲夫てつおは、おかあさんにつれられていったが、ひかしつ松葉まつばづえをついた少年しょうねんが、ねえさんにつれられていっていました。
中学へ上がった日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
が、惡戯いたづら氣分きぶんになつて、をつとかなかつた。そして、なほもはちからだにつつきかかると、すぐくちばし松葉まつばみついた。不思議ふしぎにあたりがしづかだつた。
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
書肆ほんや前借さきがり途中とちうででもあつてたがい、よわよめが、松葉まつばいぶされるくらゐになみだぐみもしかねまい。
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ぢいやはやまからつて木小屋きごやにしまつていて、たきつけにする松葉まつばもしまつていて、るだけづゝおうち爐邊ろばたはこびました。赤々あか/\とした毎日まいにち爐邊ろばたえました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
あの中島なかじまは、むらがつたはなゆきかついでるのです。きしに、はなかげうつところは、松葉まつばながれるやうに、ちら/\とみづれます。小魚こうをおよぐのでせう。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
が、やがて不意ふい松葉まつばからはなれるとはちはぶんとあがつた。三にんははつとどよめいた。けれども、はち大事だいじ犧牲ぎせい蜘蛛くも死骸しがい警戒けいかいしにつたのだつた。
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
松葉まつばづえの少年しょうねんは、及第きゅうだいしたろうか。」と、おもったからです。どうしたのか、その姿すがたえませんでした。このとき、おもいがけない事件じけんこったのです。
中学へ上がった日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
二時やつさがりに松葉まつばこぼれて、ゆめめて蜻蛉とんぼはねかゞやとき心太ところてんおきなこゑは、いち名劍めいけんひさぐにて、打水うちみづ胡蝶てふ/\おどろく。行水ぎやうずゐはな夕顏ゆふがほ納涼臺すゞみだい縁臺えんだい月見草つきみさう
五月より (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
これをくと、おじいさんは、なか松葉まつばをたき、うえからるしたてつびんをわかしにかかりながら
とうげの茶屋 (新字新仮名) / 小川未明(著)
御神燈ごしんとうかげひとつ、松葉まつばもん見當みあたらないで、はこのやうな店頭みせさきに、煙草たばこるのもよぼ/\のおばあさん。
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しろふく兵隊へいたいさんはベッドのうえよこになっているもの、あるいは、こしをかけているもの、また、すわっているもの、また、松葉まつばづえをかかえてばなしをしているもの
少女と老兵士 (新字新仮名) / 小川未明(著)
肝心かんじんことひおくれた。——赤蜻蛉あかとんぼは、のこらず、ひとつものこらず、みなひとつづゝ、ひとつがひ、松葉まつばにつないで、天人てんにん八挺はつちやうぎんかいいかだのやうにして飛行ひかうした。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ある兵隊服へいたいふくた、二人連ふたりづれのおじさんが、おくすりりにきました。一人ひとりのおじさんは、松葉まつばづえをついて、往来おうらいうえで、なにかおおきなこえして、わめいていました。
小さな年ちゃん (新字新仮名) / 小川未明(著)
またおとうとは、松葉まつばをくべたりてつびんをかけたりして、夕飯ゆうはんのしたくをしていました。おかあさんがかぜをひいてねていられたので、いいつけられた用事ようじをしているのでした。
ペスときょうだい (新字新仮名) / 小川未明(著)
うでる、ちゝる。はらへばはしつて、またスツとる。あゝ、をんなゆきうでだと、松葉まつばいのちいれずみをしよう、ゆびにはあをたまらう。わたしさけおもつて、たゞすぎ刺青ほりものした。
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
哲夫てつおは、おかあさんをのこしていきかけると、松葉まつばづえの少年しょうねんもいっしょにいきかけました。
中学へ上がった日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
清々すが/\しいのは、かけくちをちら/\と、こぼれて、やまぷんかをる、ひのきまきなど新緑しんりよくである。松葉まつばもすら/\とまじつて、浴槽よくさういて、くゞつて、るゝがまゝにふ。
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
よくると、その青年せいねんは、右足みぎあし義足ぎそくで、くさうえに、松葉まつばづえがおいてありました。
托児所のある村 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ひくくのは、かげをうけていろい。うへぶのは、ひかりいろうすい。したむれは、眞綿まわた松葉まつばをちら/\とき、うへむれは、白銀しろがねはりをきら/\とひるがへす……際限かぎりもなく、それがとほる。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)