かえ)” の例文
旧字:
「おやおや、まあ。めずらしい大きなうりだこと、さぞおいしいでしょう。うちへってかえって、おじいさんと二人ふたりべましょう。」
瓜子姫子 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
やがて、そのものは、かえりました。おちになっていたおひめさまは、どんなようすであったかと、すぐにおたずねになりました。
赤い姫と黒い皇子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
また或時あるとき、市中より何か買物かいものをなしてかえけ、鉛筆えんぴつを借り少時しばらく計算けいさんせらるると思ううち、アヽ面倒めんどうだ面倒だとて鉛筆をなげうち去らる。
ひるすこしまえにはもう二人ふたりにいさんが前後ぜんごして威勢いせいよくかえってた。一人ひとりにいさんのほう袖子そでこているのをるとだまっていなかった。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
かくすにゃあたらないから、有様ありようにいってな、こと次第しだいったら、堺屋さかいやは、このままおまえにはあわせずに、かえってもらうことにする」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
ミハイル、アウエリヤヌイチは一人ひとりして元気げんきよく、あさからばんまでまちあそあるき、旧友きゅうゆうたずまわり、宿やどには数度すうどかえらぬがあったくらい
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
そしておとこかえってるのをまどからると、きゅう悪魔あくまこころなかへはいってでもたように、おんなっている林檎りんごをひったくって
わたくしは、もう人形使にんぎょうつかいをやめまして、故郷こきょうかえるつもりでおりました。この人形も、もう人様ひとさまにお目にかけないつもりでおりました。
活人形 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
実家さと両親りょうしんたいへんにわたくしうえあんじてくれまして、しのびやかにわたくし仮宅かりずまいおとずれ、鎌倉かまくらかえれとすすめてくださるのでした。
命を捨てゝも主人を助けてえというのだから、此の事が世間へ知れせえしなけりゃアいゝのだ、貰って早くお屋敷へかえって下せえ
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
牧師の慰言いげんも親友の勧告すすめも今は怨恨うらみを起すのみにして、余は荒熊あれくまのごとくになり「愛するものを余にかえせよ」というよりほかはなきに至れり。
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
シューラはいてみたり、またわらしたりした。うちかえっても、また泣いたりわらったりした。ママに様子ようすはなして、うったえた。
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
どうしたのかとちゅうまできりらしてきたその水独楽みずごま、かれの手へはかえらずに、忽然こつぜんと、どこかへ見えなくなってしまった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
S、H京都けうとからたT連中れんちうが、どこかでつてゐるといふので、夫人ふじんなに打合うちあわせをして、すこまえかえつてつた。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
私の眼はきらきらしました。しだいにかえみちの暑さがおもいやられるようになりました。私は兄さんをうながしてまた山を下りました。その時です。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そら、ばけものはチブスになってぬだろう。そこでぼくはでてきてあんずのおひめさまをつれておしろかえるんだ。そしておひめさまをもらうんだよ。
いちょうの実 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「ちがうでしよう。女中じょちゅうから板前いたまえまで調しらべてある。夕方ゆうがたかけて、十二ごろ、タクシーでかえつたことがわかつている」
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
ついに海蔵かいぞうさんは、かえってませんでした。いさましく日露戦争にちろせんそうはなったのです。しかし、海蔵かいぞうさんのしのこした仕事しごとは、いまでもきています。
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
そんな恰好かっこうをして、おともだちのジャンのところへけるはずがないでしょう? 四人がお家へかえったら、みんなのおかあさんは、そのあしをごらんになって
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
野分立のわきだった日、圭介は荻窪の知人の葬式に出向いたかえみち、駅で電車を待ちながら、夕日のあたったプラットフォームを一人で行ったり来たりしていた。
菜穂子 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
甲野博士にねだったかいがあって、博士はその日研究所のかえみちに、隆夫の家へ寄ってくれることになった。
霊魂第十号の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そしていま、ようやくのことで、みんなのところへかえる道が見つかったものですから、たいそうよろこびました。
が、翌朝よくあさはやく、一人ひとり百姓ひゃくしょうがそこをとおりかかって、このことつけたのでした。かれ穿いていた木靴きぐつこおりり、子家鴨こあひるれて、つまのところにかえってました。
行田からのかえみち、長野の常行寺じょうこうじの前まで来ると、何かことがあるとみえて、山門の前には人が多く集まって、がやがやと話している。小学校の生徒の列も見えた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
其日は始終しじゅういてあるき、翌朝山の上の小舎こやにまだ寝て居ると、白は戸のくや否飛び込んで来て、蚊帳かやしにずうと頭をさし寄せた。かえりには、予め白をつないであった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
仮にこの明りでおいでやれおかえりやれと言うことに、今はなっていても、本来の火の光に対する我々の考えは別であって、やがて、日を拝みまた雷火らいか崇信すうしんした古い神道と
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
トーマスは、透明人間がかえってきていたと知ると、おそろしさでふるえあがってしまった。
然るに何様どういうものだったか、其時は勢威日に盛んであった丁謂は、寂照をとどめんと欲して、しきり姑蘇こその山水の美を説き、照の徒弟をして答釈をもてかえらしめ、照を呉門寺に置いて
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
あやしき少女おとめの去りてより、ほどなく人々あらけぬ。かえにエキステルに問へば
うたかたの記 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
また藩の諸役所にて公然たる賄賂わいろ沙汰さたまれなれども、おのずから役徳やくとくなるものあり。江戸大阪の勤番よりたずさえかえ土産みやげの品は、旅費ののこりにあらざれば所謂いわゆる役徳をつみたるものより外ならず。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
三日ばかりって夜分村長は富岡老人をうた。機会おりを見に行ったのである。然るに座に校長細川あり、酒が出ていて老先生の気焔きえんすこぶすさまじかったので長居ながいずにかえって了った。
富岡先生 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
なみうちぎわに、ごろごろころがっている、大きなにぎりめしほどある石が、なみにあらわれて、すっかり、たまごのようにまるくなっているのにおどろいて、それを一つずつもってかえった。
ラクダイ横町 (新字新仮名) / 岡本良雄(著)
「あ、かえつたよ」「御土産をみやげもたんとあるよ」
夜汽車 (新字旧仮名) / 尾崎放哉(著)
「保証人がなくていけなければかえります」
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
わたしが、お約束やくそくをいたします。いさましい、とお船出ふなでから、あなたのおかえりなさるを、氏神かみさまにご無事ぶじいのって、おちしています。」
海のまぼろし (新字新仮名) / 小川未明(著)
「うん、うん、それはおまえうとおりだとも。だからねずみのうことはげずにかえしてやったのだから、安心あんしんおしなさい。」
猫の草紙 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
りませんよ。おっかさんが風邪かぜいて、ひとりでててござんすから、ちっともはやかえらないと、あたしゃ心配しんぱいでなりませんのさ」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
『きっと返却かえします、きっと。』などとちかいながら、またぼうるなりった。が、大約おおよそ時間じかんってからかえってた。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ちょうど袖子そでこはある高等女学校こうとうじょがっこうへの受験じゅけん準備じゅんびにいそがしいころで、おそくなっていままでの学校がっこうからかえってときに、その光子みつこさんのこえいた。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
王子おうじうえのぼってたいとおもって、とう入口いりぐちさがしたが、いくらさがしても、つからないので、そのままかえってきました。
そう思いながら、それでもまだ、かえる道をむなしく歩いていくことはおしそうに、狛笛こまぶえをとって、その歌口うたぐち湿しめしはじめる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
じつはここがそちの修行場しゅぎょうばなのじゃ。モーべつした岩屋いわやかえるにもおよばぬ。早速さっそく内部なかはいってるがよい。なにも一さいそろえてあるから……。
コスモとコスマとは、人形を大事だいじにかかえて、故郷こきょうかえっていきました。たくさんもらったお金を、半分ばかり、ターコール僧正そうじょうへおくりました。
活人形 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
わたし今朝けさ急患きゅうかんがあつて往診おうしんかけました。ところがきにもかえりにも、老人ろうじんうちもんが五すんほどひらきかかつていたから、へんなことだとおもつたのです。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
ぼくたちは弁当べんとうっていなかったのではらぺこになって、むらに二時頃じごろかえってた。それから深谷ふかだにまでおじいさんをとどけにいってくるのはらく仕事しごとではなかった。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
わしも嬉しゅうござえます、就きまして国へかえろうと思って居りましたが、山口屋に預けた金が三百両ばかりで、国にけえってうちを立てべいとは存じましたが
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
学校からかえってると、エムリーヌ・カペルさんは、いいおてんをいただいたということをお母さんにおはなししました。それから、そのあとでこういいました——
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
一人のあによめが自分にはこういろいろに見えた。事務所の机の前、昼餐ひるめしたくの上、かえみちの電車の中、下宿の火鉢の周囲まわり、さまざまの所でさまざまに変って見えた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そうこうしているうちに、庭の方を探しに行った組の警官が、息せき切ってかえってきました。
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
これといふこともなかつた。みんなはやがて椅子いすはなれた。そして以前いぜん部屋へやかえつてた。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)