たうげ)” の例文
昨日きのふ碓氷うすひ汽車きしやりて、たうげ權現樣ごんげんさままうでたとき、さしかゝりでくるまりて、あとを案内あんないつた車夫しやふに、さびしい上坂のぼりざかかれたづねた。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
事件は、併し、これからが本當のたうげでした。それから二た月ばかりの間に、此界隈で、若い男が又續け樣に二人やられたのです。
とうさんのうまれた田舍ゐなか美濃みのはうりようとするたうげうへにありましたから、おうちのお座敷ざしきからでもおとなりくにやまむかふのはうえました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
たうげくだると『多田御社道ただおんしやみち』の石標せきへう麥畑むぎばたけあぜつて、其處そこまがれば、みちはまた山川やまがはうつくしいみづ石崖せきがいすそあらはれてゐた。かはいてみちはまたまがつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
ぢゃによって、こひかみ御輦みくるま翼輕はねがるはとき、かぜのやうにはやいキューピッドにもふたつのはねがある。あれ、もう太陽たいやうは、今日けふ旅路たびぢたうげまでもとゞいてゐる。
過て宇都谷たうげに到れば絶頂ぜつちやう庵室あんしつ地藏尊ぢざうそん境内けいだい西行さいぎやう袈裟掛けさかけ松あり其所のわきへ年の頃五十位と見ゆる旅そうのやつれたるが十歳許りの女の子を引立來り彼のそう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
これ日本にほんの事で、或旅僧あるたびそうたうげえてますと、寒風かんぷうはげしくフーフーツ吹捲ふくまくりますのでたまねて杉酒屋すぎさかやといつて、のきしたに杉を丸く作つて、出してありまする居酒屋ゐざかや飛込とびこんで、僧
詩好の王様と棒縛の旅人 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
闇空やみぞららして虫飛びゆけりたうげにつかれて我あゆむとき
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
またのしたからたうげをみれば
どんたく:絵入り小唄集 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
おいたうげ切畑きりばた
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
馬籠まごめむらはづれまでますと、そのたうげうへたかいところにもたがやしたはたけがありました。そこにも伯父をぢさんにこゑけるお百姓ひやくしやうがありました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
矢張やツぱりいままで歩行あるいてはゞひろいなだらかなはうまさしく本道ほんだう、あと二らずけばやまになつて、それからがたうげになるはず
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
權山ごんざんといふたうげは、ひくいながらも、老人らうじんにはだいぶあへいでさねばならなかつた。たうげ頂上ちやうじやうからは、多田院ただのゐん開帳かいちやう太鼓たいこおときこえて、大幟おほのぼり松並木まつなみきおくに、しろうへはうだけせてゐた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
尤も、一度死なうと思つたのをたうげに、それからトントン拍子に運がよくなり、今ではかうして、子供三人まで抱へて、淋しい場所だけれど水茶屋の店を出し、どうやら無事に暮してゐる。
打渡うちわたり箱根のたうげも難なく越え藤澤の宿しゆくとまりたる其夜友次郎はにはか熱氣ねつきつよく起りもだえ苦みけるにぞお花の驚き一方ならず土地ところの醫者を頼みて見せけるに是は大暑たいしよの時分に道中を給ひし故邪氣じやき
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
たうげをおりてゆきました。
どんたく:絵入り小唄集 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
こんな看板かんばんけたうちが一けんしかないほどたうげちいさなむらでした。そこに人達ひとたちはいづれもやまうへたがやすお百姓ひやくしやうばかりでした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
たうげのぼつて、案内あんないわかれた。前途ぜんとたゞ一條ひとすぢみねたにも、しろ宇宙うちうほそふ、それさへまたりしきるゆきに、る/\、あし一歩ひとあしうづもれく。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
富士詣ふじまうでの下向げかうみぎり駕籠坂かごさかたうげにて始めて出會であひなんぢしなんと云を不便ふびんに思ひ連戻つれもどり我が宿に差置六七年やしなおきし中其恩義をわすれ我が女房と密通みつつうなし此條七を追出し田地家屋敷やしき家財迄かざいまでうばひ取んと謀計はかり白鳥はくてう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
てゝくにはしのびぬけれども、鎭守府ちんじゆふ旦那樣だんなさまが、呼吸いきのあるうち一目ひとめひたい、わたしこゝろさつしておくれ、とかういふこゝろく、たうげまへひかへてるし、ぢいや!
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
やまうへなるたうげ茶屋ちややおもす——極暑ごくしよ病氣びやうきのため、くるまえて、故郷こきやうかへみちすがら、茶屋ちやややすんだときことです。もん背戸せど紫陽花あぢさゐつゝまれてました。
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
下坂くだりざかは、うごきれると、一めい車夫しやふ空車からいて、ぐに引返ひつかへことになり、梶棒かぢぼうつてたのが、旅鞄たびかばん一個ひとつ背負しよつて、これ路案内みちあんないたうげまでともをすることになつた。
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
……それよりして、倶利伽羅くりからかゝる、新道しんだう天田越あまたごえたうげで、力餅ちからもちを……べたかつたが澁茶しぶちやばかり。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
……紫陽花あぢさゐみづのやうなつた。——一夕立ひとふゆだちしてぎながら、たうげにはみづがなかつたのである。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
長旅ながたびかゝへたり、まへたうげのぞんだれば、めてなどおもひもらず、柳屋やなぎやといふに宿やどる。
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
づこれからたうげかゝらうといふの、朝早あさはやく、もつとせんとまりはものゝ三ぐらゐにはつてたので、すゞしうちに六ばかり、茶屋ちやゝまでのしたのぢやが、朝晴あさばれでぢり/\あついわ。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それからがく/″\して歩行あるくのがすこ難渋なんじふになつたけれども、此処こゝたふれては温気うんき蒸殺むしころされるばかりぢやと、我身わがみ我身わがみはげまして首筋くびすぢつて引立ひきたてるやうにしてたうげはうへ。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しろこずゑあをは、また中空なかぞらうづうつす——とぐろをき、れて、海原うなばらのそれとおなじです。いや、それよりも、たうげ屋根やねちかかつた、あの可恐おそろしくもみね宛然そつくりであります。
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
孤驛こえきすでよるにして、里程りていいづれよりするもたうげへだてて七あまる。……かれ道中だうちう錦葉もみぢおもつた、きりふかさをおもつた、しもするどさをおもつた、むしそれよりもゆきおもつた、……外套ぐわいたうくろしづんでく。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
分間ふんかん停車ていしやいて、昇降口しようかうぐちを、たうげ棧橋かけはしのやうな、くもちかい、夕月ゆふづきのしら/″\とあるプラツトフオームへりた一人旅ひとりたび旅客りよきやくが、恍惚うつとりとしたかほをしてたづねたとき立會たちあはせた驛員えきゐんは、……こたへた。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)