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大空
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おほぞら
今は
餘波さへもない
其戀を
味つけうために!
卿の
溜息はまだ
大空に
湯氣と
立昇り、
卿の
先頃の
呻吟聲はまだ
此老の
耳に
鳴ってゐる。
狂ひまつはり、
搦まつて、
民子の
膚を
蔽うたのは、
鳥ながらも
心ありけむ、
民子の
雪車のあとを
慕うて、
大空を
渡つて
來た
雁であつた。
此時今迄は
晴朗であつた
大空は、
見る/\
内に
西の
方から
曇つて
來て、
熱帶地方で
有名な
驟雨が、
車軸を
流すやうに
降つて
來た。
鳶尾草の花、
清淨無垢の
腕の上に
透いて見える
脈管の薄い水色、
肌身の
微笑、新しい
大空の清らかさ、
朝空のふと
映つた
細流。
若者も
思はず
手を
合はしました。
見るが
中に
日は
波間を
離れ、
大空も
海原も
妙なる
光に
滿ち、
老人と
若者は
恍惚として
此景色に
打れて
居ました。
世帶じみた
事をと
旦那どのが
恐悦顏、
見ぬやうにして
妻は
表へ
立出でしが
大空を
見上げてほつと
息を
吐く
時、
曇れるやうの
面もちいとゞ
雲深う
成りぬ。
あゝさだめなき
大空のけしきのとくもかはりゆき
あはれ、
眼は
大空の
閑かなる影を映して
大空の「
栄光」が
招/″\に
『
實は
先刻急に
思ひ
立つて、
此兵曹と
共に
遊獵に
出たのが、
天幸にも
君等をお
助け
申す
事になつたのです。』と
言ひながら、
大空を
仰ぎ
見て。
「
綺麗だわ、
綺麗だわ、
綺麗な
蟲だわ。」と
魅せられたやうに
言ひつゝ、
草履をつま
立つやうにして、
大空を
高く、
目を
据ゑて
仰いだのである。
ヂュリ
大空の
雲の
中にも
此悲痛の
底を
見透す
慈悲は
無いか? おゝ、
母さま、わたしを
見棄てゝ
下さりますな!
此婚禮を
延して
下され、せめて
一月、一
週間。
泣いたのと
暴れたので
幾干か
胸がすくと
共に、
次第に
疲れて
來たので、いつか
其處に
臥てしまひ、
自分は
蒼々たる
大空を
見上げて
居ると、
川瀬の
音が
淙々として
聞える。
黒雲の行く
大空のかなたにむかひうめきしが
場所は、
立出でた
休屋の
宿を、さながら
谷の
小屋にした、
中山半島——
此の
半島は、
恰も
龍の、
頭を
大空に
反らした
形で、
居る
処は
其の
腮である。
『はてさて、
妙だぞ、あれは
矢ツ
張滊船だわい、して
見ると
今月の
航海表に
錯誤があつたのかしらん。』と
言ひつゝ、
仰いで
星影淡き
大空を
眺めたが
浴槽の一
端へ
後腦を
乘て一
端へ
爪先を
掛て、ふわりと
身を
浮べて
眼を
閉る。
時に
薄目を
開て
天井際の
光線窓を
見る。
碧に
煌めく
桐の
葉の
半分と、
蒼々無際限の
大空が
見える。
また
吾等の
頭の
上で
大空高う
鳴響くあの
奏樂も、
雲雀の
聲では
無いと
言はう。
去にたいよりも
此處に
居たいが
幾層倍ぢゃ。さ、
死よ、
來れ、
喜んで
迎へう! それがヂュリエットの
望ぢゃ。
甲胄堂の
婦人像のあはれに
絵の
具のあせたるが、
遥けき
大空の
雲に
映りて、
虹より
鮮明に、
優しく
読むものゝ
目に
映りて、
其の
人恰も
活けるが
如し。
戞然と
音して
足代の
上へ、
大空からハタと
落ちて
来たものがある……
手に
取ると
霰のやうに
冷たかつたが、
消えも
解けもしないで、
破れ
法衣の
袖に
残つた。
霧もかゝり、
霜もおりる……
月も
曇れば
星も
暗し、
此の
大空にも
迷ひはある。
迷ひも、
其は
穩かなれども、
胸の
塞り
呼吸が
閉る、もやくやなあとの、
電、はたゝがみを
御覽ぜい。
時に
不思議なものを
見ました——
底なき
雪の
大空の、
尚ほ
其の
上を、プスリと
鑿で
穿つて
其の
穴から
落ちこぼれる……
大きさは
然うです……
蝋燭の
灯の
少し
大いほどな
眞蒼な
光が
何、
脱げば
可さゝうなものだけれど、
屋根一つ
遠くに
見えず、
枝さす
立樹もなし、あの
大空から、
遮るものは
唯麦藁一
重で、
赫と
照つては
急に
曇る……
何うも
雲脚が
気に
入らない。
暑さに一
枚しめ
殘した
表二階の
雨戸の
隙間から
覗くと、
大空ばかりは
雲が
走つて、
白々と、
音のない
波かと
寄せて、
通りを
一ツ
隔てた、
向うの
邸の
板塀越に、
裏葉の
飜つて
早や
秋の
見ゆる
雪の
難——
荷擔夫、
郵便配達の
人たち、
其の
昔は
數多の
旅客も——
此からさしかゝつて
越えようとする
峠路で、
屡々命を
殞したのでありますから、いづれ
其の
靈を
祭つたのであらう、と
大空の
雲