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さかさま
ふりがな文庫
“
倒
(
さかさま
)” の例文
……雲を貫く、工場の太い煙は、丈に余る黒髪が、
縺
(
もつ
)
れて乱れるよう、そして、
倒
(
さかさま
)
に立ったのは、
長
(
とこしえ
)
に消えぬ人々の
怨恨
(
うらみ
)
と見えた。
南地心中
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
其一のr字を
倒
(
さかさま
)
にしたような残雪は、この前劒からの帰途、南日君が辷り落ちた際に杖にしていた天幕の支柱を失った所だ。
黒部川奥の山旅
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
○放翁六十歳の時の詩に、「独り立つ柴荊の外、頽然たる一禿翁、乱山落日を呑み、野水寒空を
倒
(
さかさま
)
にす」といふ句がある。
放翁鑑賞:07 その七 ――放翁詩話三十章――
(新字旧仮名)
/
河上肇
(著)
彼等は舞台の端から端へ、続けさまに二度宙返りを打ったり、正面に積上げた机の上から、真っ
倒
(
さかさま
)
に跳ね下りたりする。
上海游記
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
ほぼ前に掲げた比較解剖図にあるものに相当すると思われる若干の階段を選み出し、発育の程度に従うて、前とは順序を
倒
(
さかさま
)
にして、まず最も発達の低いほうから説明してみるに
脳髄の進化
(新字新仮名)
/
丘浅次郎
(著)
▼ もっと見る
天地は
倒
(
さかさま
)
に相成候とも、
御前様
(
おんまへさま
)
に限りてはと、
今猶
(
いまなほ
)
私は疑ひ居り候ほど
驚入
(
おどろきいり
)
まゐらせ候。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
二人はしゃがんで籠を
倒
(
さかさま
)
にして数を数へてから小さいのはみんな又籠に戻しました。
二人の役人
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
夏の日は
已
(
すで
)
に沈んで、空一面の夕焼は堀割の
両岸
(
りょうがん
)
に立並んだ土蔵の白壁をも一様に薄赤く染めなしていると、その
倒
(
さかさま
)
なる家の影は更に美しく満潮の
澄渡
(
すみわた
)
った川水の中に漂い動いている。
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
ロメーンズの記に、牝猩々が食後空缶を
倒
(
さかさま
)
に頭に
冠
(
かぶ
)
り観客が見て笑うを楽しみとした事あり。サヴェージ博士は黒猩時に遊楽のみのために群集し、棒で板を打って音を立つ事ありというた。
十二支考:07 猴に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
池野が夏に私の家へ訪ねて来ることがあると、早速上衣を脱ぎ、両足を高く床柱へもたせ、頭を下にし体を
倒
(
さかさま
)
にして話をしたりしたものだ。こんな無遠慮なことが平気な程二人は親しかったのだ。
牧野富太郎自叙伝:01 第一部 牧野富太郎自叙伝
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
首
(
くび
)
は
寧
(
むし
)
ろ
倒
(
さかさま
)
に
垂
(
た
)
れて
額
(
ひたひ
)
がいつでも
暑
(
あつ
)
い
日
(
ひ
)
に
照
(
て
)
られて
汗
(
あせ
)
ばんで
居
(
ゐ
)
た。
百姓
(
ひやくしやう
)
は
皆
(
みな
)
此
(
こ
)
の
見窄
(
みすぼら
)
しい
女
(
をんな
)
を
顧
(
かへり
)
みなかつた。
村落
(
むら
)
から
村落
(
むら
)
へ
野
(
の
)
を
渡
(
わた
)
る
時
(
とき
)
女
(
をんな
)
の
姿
(
すがた
)
は
人目
(
ひとめ
)
を
惹
(
ひ
)
くべき
要點
(
えうてん
)
が一つも
備
(
そな
)
はつて
居
(
ゐ
)
なかつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
文「女房を取られ、
彼
(
あ
)
の
倒
(
さかさま
)
になっているのは友之助ですか、ふゝん」
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
縋
(
すが
)
る波に力あり、しかと引いて水を
掴
(
つか
)
んで、池に
倒
(
さかさま
)
に身を投じた。
爪尖
(
つまさき
)
の沈むのが、
釵
(
かんざし
)
の
鸚鵡
(
おうむ
)
の白く
羽
(
はね
)
うつが如く、月光に
微
(
かすか
)
に光つた。
伯爵の釵
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
そうして、そこから、短い
白髪
(
しらが
)
を
倒
(
さかさま
)
にして、門の下を覗きこんだ。外には、ただ、
黒洞々
(
こくとうとう
)
たる夜があるばかりである。
羅生門
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
大弓を
提
(
さ
)
げた偉大の父を真先に、田崎と喜助が二人して、
倒
(
さかさま
)
に獲物を吊した天秤棒をかつぎ、其の
後
(
あと
)
に清五郎と安が引続き、積った雪を踏みしだき、
隊伍
(
たいご
)
正しく崖の上に立現われた時には
狐
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
いわく虎は山獣の君なり、
状
(
かたち
)
猫のごとくにて大きさ牛のごとく
黄質黒章
(
きのしたじくろきすじ
)
、
鋸牙鉤爪
(
のこぎりばかぎのつめ
)
鬚健にして
尖
(
とが
)
り舌大きさ掌のごとく
倒
(
さかさま
)
に
刺
(
はり
)
を生ず、
項
(
うなじ
)
短く鼻
齆
(
ふさが
)
る、これまでは誠に文簡にして写生の妙を極め居る。
十二支考:01 虎に関する史話と伝説民俗
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
決
(
けつ
)
して
安泰
(
あんたい
)
ではない。
正
(
まさ
)
に
其
(
そ
)
の
爪
(
つめ
)
を
剥
(
は
)
ぎ、
血
(
ち
)
を
絞
(
しぼ
)
り、
肉
(
にく
)
を
毮
(
むし
)
り
骨
(
ほね
)
を
削
(
けづ
)
るやうな
大苦艱
(
だいくかん
)
を
受
(
う
)
けて
居
(
ゐ
)
る、
倒
(
さかさま
)
に
釣
(
つ
)
られて
居
(
ゐ
)
る。…………………
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
そこで一人づつ、持つてゐる茶碗を
倒
(
さかさま
)
にして、米屋が一合
枡
(
ます
)
で米をはかるやうに、ぞろぞろ虱をその襟元へあけてやると、森は、大事さうに外へこぼれた奴を拾ひながら
虱
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
縋る波に力あり、しかと引いて水を
掴
(
つか
)
んで、池に
倒
(
さかさま
)
に身を投じた。
爪尖
(
つまさき
)
の沈むのが、釵の
鸚鵡
(
おうむ
)
の白く羽うつがごとく、月光に
微
(
かすか
)
に光った。
伯爵の釵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そこで、それまで、
帆桁
(
ほげた
)
へ尻尾をまきつけて、
倒
(
さかさま
)
にぶら下りながら、
私
(
ひそか
)
に船中の
容子
(
ようす
)
を窺つてゐた悪魔は、早速姿をその男に変へて、朝夕フランシス上人に、給仕する事になつた。
煙草と悪魔
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
つく/″\と
見
(
み
)
れば
無残
(
むざん
)
や、
形
(
かたち
)
のない
声
(
こゑ
)
が
言交
(
いひか
)
はした
如
(
ごと
)
く、
頭
(
かしら
)
が
畳
(
たゝみ
)
の
上
(
うへ
)
へ
離
(
はな
)
れ、
裙
(
すそ
)
が
梁
(
うつばり
)
にも
留
(
と
)
まらずに
上
(
うへ
)
から
倒
(
さかさま
)
に
釣
(
つる
)
して
有
(
あ
)
る……
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
しばらくは、石を蹴る馬蹄の音が、
戞々
(
かつかつ
)
として、曠野の静けさを破つてゐたが、やがて利仁が、馬を止めたのを見ると、何時、捕へたのか、もう狐の後足を
掴
(
つか
)
んで、
倒
(
さかさま
)
に、鞍の側へ、ぶら下げてゐる。
芋粥
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
思わず、
忍音
(
しのびね
)
を立てた——
見透
(
みすか
)
す六尺ばかりの枝に、
倒
(
さかさま
)
に裾を巻いて、毛を
蓬
(
おどろ
)
に落ちかかったのは、虚空に消えた幽霊である。
怨霊借用
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ちと黙ったか、と思うと、め組はきょろきょろ
四辺
(
あたり
)
を見ながら、帰天斎が扱うように、
敏捷
(
すばや
)
く四合罎から
倒
(
さかさま
)
にがぶりと
飲
(
や
)
って、
呼吸
(
いき
)
も
吐
(
つ
)
かず
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ばたりと
煽
(
あお
)
って
自
(
おのず
)
から上に吹開く、引窓の板を片手に
擡
(
もた
)
げて、
倒
(
さかさま
)
に内を
覗
(
のぞ
)
き、おくの、おくのとて、若き妻の名を呼ぶ。その人、
面
(
おもて
)
青く、
髯
(
ひげ
)
赤し。
一景話題
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
引手茶屋は、ものの半年とも
持堪
(
もちこた
)
えず、——残った不義理の借金のために、大川を深川から、身を
倒
(
さかさま
)
に浅草へ
流着
(
ながれつ
)
いた。
第二菎蒻本
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
汽車
(
きしや
)
は
倒
(
さかさま
)
に
落
(
お
)
ちて
留
(
や
)
まない。
煙
(
けむり
)
が
濃
(
こ
)
いのが
岩
(
いは
)
を
崩
(
くづ
)
して、
泥
(
どろ
)
を
掻
(
か
)
き/\、
波
(
なみ
)
のやうな
土
(
つち
)
を
煽
(
あふ
)
つて、
七轉八倒
(
しちてんばつたう
)
あがき
悶
(
もだ
)
ゆる。
魔法罎
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
胴中の縄が
弛
(
ゆる
)
んで、天窓が
地
(
つち
)
へ擦れ擦れに、
倒
(
さかさま
)
になっておりますそうな。こりゃもっともじゃ、のう、たっての
苦悩
(
くるしみ
)
。
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
見
(
み
)
よ/\、
同
(
おな
)
じ
幻
(
まぼろし
)
ながら、
此
(
こ
)
の
影
(
かげ
)
は
出家
(
しゆつけ
)
の
口
(
くち
)
より
伝
(
つた
)
へられたやうな、
倒
(
さかさま
)
に
梁
(
うつばり
)
に
釣
(
つる
)
される、
繊弱
(
かよは
)
い
可哀
(
あはれ
)
なものでは
無
(
な
)
い。
真直
(
まつすぐ
)
に、
正
(
たゞ
)
しく、
美
(
うるは
)
しく
立
(
た
)
つ。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
ひたひたと
絡
(
まつわ
)
る水とともに、ちらちらと
紅
(
くれない
)
に目を遮ったのは、
倒
(
さかさま
)
に映るという釣鐘の竜の炎でない。
脱棄
(
ぬぎす
)
てた草履に早く戯るる一羽の赤蜻蛉の影でない。
夫人利生記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と女が高く
仰
(
あお
)
ぐに
連
(
つ
)
れ、高坂も
葎
(
むぐら
)
の中に
伸上
(
のびあが
)
った。草の緑が深くなって、
倒
(
さかさま
)
に雲に
映
(
うつ
)
るか、
水底
(
みなそこ
)
のような
天
(
てん
)
の色、
神霊秘密
(
しんれいひみつ
)
の
気
(
き
)
を
籠
(
こ
)
めて、
薄紫
(
うすむらさき
)
と見るばかり。
薬草取
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
手足
(
てあし
)
をぴち/\と
撥
(
は
)
ねる、
二歳
(
ふたつ
)
ぐらゐの
男
(
をとこ
)
の
兒
(
こ
)
を、
筋鐵
(
すぢがね
)
の
入
(
はひ
)
つた
左
(
ひだり
)
の
腕
(
うで
)
に、
脇
(
わき
)
へ
挾
(
はさ
)
んで、やんはりと
抱
(
だ
)
いた
處
(
ところ
)
は、
挺身
(
ていしん
)
倒
(
さかさま
)
に
淵
(
ふち
)
を
探
(
さぐ
)
つて
鰌
(
どぢやう
)
を
生捉
(
いけど
)
つた
體
(
てい
)
と
見
(
み
)
える。
銭湯
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
幾万
条
(
すじ
)
ともなき、青い炎、黒い蛇が、旧暦五月、白い日の、川波に
倒
(
さかさま
)
に映って、
鞍
(
くら
)
も人も
呑
(
の
)
もうとする。
河伯令嬢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その青い火は、しかし私の魂がもう藻脱けて、虚空へ飛んで、
倒
(
さかさま
)
に下の
亡骸
(
なきがら
)
を
覗
(
のぞ
)
いたのかも知れません。
雪霊続記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
奇觀
(
きくわん
)
、
妙觀
(
めうくわん
)
と
謂
(
いつ
)
つべし。で、
激流
(
げきりう
)
に
打込
(
うちこ
)
んだ
眞黒
(
まつくろ
)
な
杭
(
くひ
)
を、
下
(
した
)
から
突支棒
(
つツかひぼう
)
にした
高樓
(
たかどの
)
なぞは、
股引
(
もゝひき
)
を
倒
(
さかさま
)
に、
輕業
(
かるわざ
)
の
大屋臺
(
おほやたい
)
を、チヨンと
木
(
き
)
の
頭
(
かしら
)
で
載
(
の
)
せたやうで
面白
(
おもしろ
)
い。
飯坂ゆき
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
其
(
そ
)
の
青
(
あを
)
い
火
(
ひ
)
は、しかし
私
(
わたし
)
の
魂
(
たましひ
)
が
最
(
も
)
う
藻脱
(
もぬ
)
けて、
虚空
(
こくう
)
へ
飛
(
と
)
んで、
倒
(
さかさま
)
に
下
(
した
)
の
亡骸
(
なきがら
)
を
覗
(
のぞ
)
いたのかも
知
(
し
)
れません。
雪霊続記
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
ぬくぬくと肩さ並べて、手を組んで
突立
(
つった
)
ったわ、手を上げると袖の中から、口い
開
(
あ
)
くと
咽喉
(
のど
)
から
湧
(
わ
)
いて、
真白
(
まっしろ
)
な
水柱
(
みずばしら
)
が、から、
倒
(
さかさま
)
にざあざあと船さ目がけて
突蒐
(
つっかか
)
る。
海異記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
唯
(
と
)
、二、三
町
(
ちょう
)
春の真昼に、人通りが一人もない。
何故
(
なぜ
)
か
憚
(
はばか
)
られて、手を触れても見なかった。緋の毛氈は、
何処
(
どこ
)
のか座敷から柳の
梢
(
こずえ
)
を
倒
(
さかさま
)
に映る雛壇の影かも知れない。
雛がたり
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
暗くなる……薄暗い中に、
颯
(
さっ
)
と風に
煽
(
あお
)
られて、
媚
(
なま
)
めかしい
婦
(
おんな
)
の
裙
(
もすそ
)
が燃えるのかと思う、あからさまな、
真白
(
まっしろ
)
な大きな腹が、
蒼
(
あお
)
ざめた顔して、宙に
倒
(
さかさま
)
にぶら下りました。
木の子説法
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
しかるに
倒
(
さかさま
)
に伏して
覗
(
のぞ
)
かぬ目には見えないであろう、尻ッこけになった
巌
(
いわお
)
の裾に居て、
可怪
(
あやし
)
い喬木の梢なる樹々の葉を
褥
(
しとね
)
として、
大胡坐
(
おおあぐら
)
を組んだ、——何等のものぞ。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
禁を犯して採伐するものの、綱を伝って樹を上りつつ、一目見るや
倒
(
さかさま
)
に墜落するのが約束らしい。
ピストルの使い方:――(前題――楊弓)
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
戦
(
いくさ
)
は、銑吉が勝らしい。由来いかなる戦史、軍記にも、薙刀を
倒
(
さかさま
)
についた方は負である。同時に、その刃尖が肉を削り、
鮮血
(
なまち
)
が
踵
(
かかと
)
を染めて伝わりそうで、見る目も危い。
神鷺之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
空に
浮
(
うか
)
んだおからだが、下界から見る月の中から、この世へ下りる間には、雲が
倒
(
さかさま
)
に百千万千、一億万丈の滝となって、ただどうどうと底知れぬ下界の
霄
(
そら
)
へ落ちている。
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
霧の晴れたのではない、
渠
(
かれ
)
が飾れる宝玉の
一叢
(
ひとむら
)
の
樹立
(
こだち
)
の中へ、
倒
(
さかさま
)
に
同一
(
おなじ
)
光を敷くのであった。
伊勢之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
屋台から舞妓が一人
倒
(
さかさま
)
に落ちた。そこに、めらめらと鎌首を立て、這いかかったためである。
南地心中
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
……
動悸
(
どうき
)
に波を打たし、ぐたりと手をつきそうになった時は、
二河白道
(
にがびゃくどう
)
のそれではないが——石段は幻に白く浮いた、
卍
(
まんじ
)
の馬の、
片鐙
(
かたあぶみ
)
をはずして
倒
(
さかさま
)
に落ちそうにさえ思われた。
開扉一妖帖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
龍虎梅竹
(
りうこばいちく
)
、
玉堂富貴
(
ぎよくだうふつき
)
、ナソレ
牡丹
(
ぼたん
)
に
芍藥
(
しやくやく
)
、
薄
(
すゝき
)
に
蘭
(
らん
)
、
鯉
(
こひ
)
の
瀧登
(
たきのぼ
)
りがと
云
(
い
)
ふと、
鮒
(
ふな
)
が
索麺
(
さうめん
)
を
食
(
く
)
つて、
柳
(
やなぎ
)
に
燕
(
つばめ
)
を、
倒
(
さかさま
)
に
懸
(
か
)
けると、
蘆
(
あし
)
に
雁
(
がん
)
とひつくりかへる……ヨイ/\と
云
(
い
)
ふ
奴
(
やつ
)
でさ。
画の裡
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
赤い鼠がそこまで追廻したものらしい。キャッとそこで悲鳴を立てると、女は、宙へ、飛上った。
粂
(
くめ
)
の仙人を
倒
(
さかさま
)
だ、その白さったら、と
消防夫
(
しごとし
)
らしい若い奴は怪しからん事を。
半島一奇抄
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
抱合って、目を見交わして、
姉妹
(
きょうだい
)
の
美人
(
たおやめ
)
は、身を
倒
(
さかさま
)
に崖に投じた。あわれ、蔦に
蔓
(
かずら
)
に
留
(
とど
)
まった、道子と菅子が色ある
残懐
(
なごり
)
は、滅びたる世の海の底に、
珊瑚
(
さんご
)
の砕けしに異ならず。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
橋杭
(
はしぐい
)
ももう
痩
(
や
)
せて——
潮入
(
しおい
)
りの小川の、なだらかにのんびりと
薄墨色
(
うすずみいろ
)
して、瀬は愚か、流れるほどは揺れもしないのに、水に映る影は弱って、
倒
(
さかさま
)
に宿る
蘆
(
あし
)
の葉とともに
蹌踉
(
よろよろ
)
する。
海の使者
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
“倒”の意味
《名詞》
(さか)逆であること。
(出典:Wiktionary)
倒
常用漢字
中学
部首:⼈
10画
“倒”を含む語句
顛倒
打倒
転倒
七顛八倒
横倒
轉倒
蹴倒
面倒臭
卒倒
行倒
突倒
面倒
引倒
酔倒
壓倒
擲倒
罵倒
昏倒
前倒
撲倒
...