あらそ)” の例文
旧字:
かねると、生徒せいとらは、さきあらそって廊下ろうかからそとへとかけしました。そのとき、りょう一は、先生せんせい教員室きょういんしつへいかれるあとったのです。
僕が大きくなるまで (新字新仮名) / 小川未明(著)
測る道具と測る品物が往々にしてことなるので、この二者を混同するとつまらぬことにあらそいが起こり、たがいに不愉快ふゆかいの念をしょうずるにいたる。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
いろよい返事へんじしたためたおせんのふみを、せろせないのいさかいに、しばしこころみだしていたが、このうえあらそいは無駄むださっしたのであろう。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
蛮流幻術ばんりゅうげんじゅつにたけて、きたいな神変しんぺんをみせる呂宋兵衛も、臆病おくびょうな生まれつきはあらそえず、語韻ごいんはふるえをおびて昌仙の顔をみまもっていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
為義ためよしはもう七十の上を出た年寄としよりのことでもあり、天子てんしさま同士どうしのおあらそいでは、どちらのお身方みかたをしてもぐあいがわるいとおもって
鎮西八郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
塔見物にそばへよって来た人々は、こんどは草花の美しさにとりこになって、あらそうようにして源一の店から花の鉢を買っていく。
一坪館 (新字新仮名) / 海野十三(著)
帝室ていしつをば政治社外の高処こうしょあおたてまつりて一様いちようにその恩徳おんとくよくしながら、下界げかいおっあいあらそう者あるときは敵味方の区別なきを得ず。
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
買主が入り込んでのちも、其栗の木は自分が植えたの、其にらや野菜菊は内で作ったの、其炉縁ろぶちは自分のだの、と物毎にあらそうた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
ただ人並ひとなみみすぐれて情義深なさけふかいことは、お両方ふたかた共通きょうつう美点みてんで、矢張やは御姉妹ごきょうだい血筋ちすじあらそわれないように見受みうけられます……。
十五分ばかりわたしたちは風とあらそいながら歩みつづけた。しんとした夜の沈黙ちんもくの中でわたしたちの足音がかわいたかたい土の上でさびしくひびいた。
いままでは、強情我慢で、そしてまた、どこからか聞きだしてきては勤めてきたが、身についていないということは、あらそえないと吉良は思った。
元禄十三年 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ですから、もしもヘッケベリヤのシカたちが、もうすこしすもうをつづけていたとしたら、丘の上でもはげしいあらそいがはじまったかもしれません。
川中島かわなかじま合戦」といわれる両家のあらそいは天文てんもん二十二年(一五五三)から永禄えいろく七年(一五六四)まで、十年余日にわたってくりかえされたものであるが
城を守る者 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
あらそふて之をしよくす、探検たんけん勇気ゆうき此に於てさうさうきたる、相謂て曰く前途ぜんと千百の蝮蛇まむし応に皆此の如くなるべしと。
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
さて手毬てまりの大さになりたる時他のわらべが作りたる玉栗たまくり庇下ひさししたなどにおかしめ、我が玉栗を以他の玉栗にうちあつる、つよき玉栗よわき玉栗をくだくをもつて勝負しようぶあらそふ。
五銭玉と引換えに一袋のあんパンをツカむと、イキナリ自分の口へもっていったその顔! 泣き叫ぶ背の子や、両手にあらそってがみつく子供達を振りもぎって
冬枯れ (新字新仮名) / 徳永直(著)
若いしうがどれとつてつて見ると、どうも先刻さつきみせて、番頭ばんとうさんとあらそひをして突出つきだされた田舎者ゐなかものてゐますといふから、どれとつて番頭ばんとうつて見ると
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
これをあらそう者あるべからず、あきらかみとむるところなれども、日本の武士道ぶしどうを以てすれば如何いかにしてもしのぶべからざるの場合を忍んで、あえてその奇功きこうおさめたる以上は
そして、すら/\と石橋しゃっきょう前方むこうへ渡つた。それから、森を通る、姿はみどりに青ずむまで、しずかに落着いて見えたけれど、ふたかさなつた不意の出来事に、心の騒いだのはあらそはれない。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
骨節の延び延びとした、やや痩せぎすのしなやかさは十六七の娘という方が適当かもしれないが、あらそわれないのは胸のあたりの暖かい肉づき、小鼻と生えぎわの滑かな脂肪しぼうだった。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
文学界の人はことに何事も感情任せで蝸牛角上かぎゅうかくじょうあらそいをしているから文筆を以て天下に貢献するような仕事は出来ず、実業界は道義全く地を払って更に信用の重んずべき事を知らん。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
踏むは地と思えばこそ、裂けはせぬかとの気遣きづかいおこる。いただくは天と知る故に、稲妻いなずま米噛こめかみふるおそれも出来る。人とあらそわねば一分いちぶんが立たぬと浮世が催促するから、火宅かたくは免かれぬ。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しんたのむねで、十五にんばかりのちいさいものがうしろにのこった。ところが、そこでちょっとしたあらそいがこった。しんねんだから、かえらねばならないはずの比良夫君ひらおくんが、かえろうとしなかったからだ。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
「もしそうだとすると」とゴルドンは、双方そうほうあらそいをなだめながら
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
その猫がまたあらそひの種となるらむ
悲しき玩具 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
昼間ひるまがそうあったばかりでなしに、よるになってるときも、みんなは、おかあさんのそばにたいといって、その場所ばしょあらそいました。
お母さまは太陽 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「はははは、飛んでもないことを。あなた方を相手にして、うでずくなどのあらそいは、とてもわたしたちにはできないことです」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
為朝ためともは、おもしろくおもいませんでしたけれど、むりにあらそってもむだだとおもいましたから、そのままおじぎをして退しりぞきました。そしてこころの中では
鎮西八郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
あらそっているひまがない。もう出かけなければならないからな。さあおいで、こぞうさん、おまえの名はなんと言うんだっけ
さて手毬てまりの大さになりたる時他のわらべが作りたる玉栗たまくり庇下ひさししたなどにおかしめ、我が玉栗を以他の玉栗にうちあつる、つよき玉栗よわき玉栗をくだくをもつて勝負しようぶあらそふ。
吾、醜かりし時、ひとわれうとみ、み、嫌ひて避け、見るごとに吾を殺さんとしぬ。吾、美しと云はるゝに到れば、ひとあらそうて吾を招く。吾れの変れる。人のまなこなき乎。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
おつなことをいふやうだがなにかねなかをんな出来できねえと相場さうばきまつて、すつぺら坊主ばうずになつても矢張やツぱ生命いのちしいのかね、不思議ふしぎぢやあねえか、あらそはれねもんだ、ねえさんねえ
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ツルの踊りには、なにか、あらあらしいところがありましたが、それでいて、それがひとの心に呼びおこす気もちは、やさしいあこがれなのです。だれももうあらそうことは考えなくなりました。
しばらくは上になり下になり、人とサル、いや博士とX号の必死のあらそい。
超人間X号 (新字新仮名) / 海野十三(著)
あづけたあづからないのあらそひになつたところが、出入でいりの車力しやりき仕事師しごとし多勢おほぜいあつまつてて、此奴こいつ騙取かたりちがひないとふので、ポカ/\なぐつておもて突出つきだしたが、証拠しようこがないから表向訴おもてむきうつたへることが出来できない。
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
海蔵かいぞうさんは、こんなにかかったひとあらそってもしかたがないとおもって、しゃっくりにきくおまじないは、ちゃわんにはしを一ぽんのせておいて、ひといきにみずをのんでしまうことだとおしえてやりました。
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
だいたい夫婦めおとあらそいにあまり感心かんしんしたものはすくのうございまして、なかにははたているほうかえって心苦こころぐるしく、おぼえずかおそむけたくなる場合ばあいもございます。これなども幾分いくぶんかそのたぐいでございまして……。
あらそっていては時間がたつ。この大任はぼくにあたえてくれたまえ」
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
髪結かみゆいのおたつと、豆腐屋とうふやむすめのおかめとが、いいのいけないのとあらそっているうちに、駕籠かごさらおおくの人数にんず取巻とりまかれながら、芳町通よしちょうどおりをひだりへ、おやじばしわたって、うしあゆみよりもゆるやかにすすんでいた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
丁度きたない所を奇麗な写真に取つて眺めてゐる様な気がする。写真は写真として何所どこ迄も本当にちがひないが、実物のきたない事もあらそはれないと一般で、同じでなければならぬ筈のふたつが決して一致しない。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
小学の首席を我とあらそひし
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「よし。」といって、鉛筆えんぴつ孝二こうじあたえられました。いつも、首席しゅせきあらそあずま小原おばらは、まだませんでした。つづいてたのは有田ありたです。
生きぬく力 (新字新仮名) / 小川未明(著)
いったん、よろけ合った二つのからだは、闘鶏師とうけいしにケシかけられた猛禽もうきんのように、また、かたと肩をみあって、んずほぐれつのあらそいをおこした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
夜討ようちなどということは、おまえなどの仲間なかまの二十か三十でやるけんか同様どうようぜりあいならばらぬこと、おそおおくも天皇てんのう上皇じょうこうのおあらそいから
鎮西八郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
此てうちんをもあらそうばふにかならずやぶる、そのほね一本たりとも田の水口みなくちへさしおけば、この水のかゝる田は熟実みのりよく虫のつく事なし。神灵しんれいのあらたかなる事あまねく人の知る所なり。
其結果は如何である? 儂が越して程なくようあって来訪した東京の一紳士しんしは、あまり見すぼらしい家の容子ようすに掩い難い侮蔑を見せたが、今年来て見た時は、眼色にあらそわれぬ尊敬を現わした。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
んで、気色けしきばんで、やゝ坊主ばうずがあせりした。——あらそひのなかばであつた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そらあか晩方ばんがた、たいがれて、このむらりにきたときは、きっといいことがあるというので、むら人々ひとびとあらそって、そのたいをいます。
女の魚売り (新字新仮名) / 小川未明(著)
此てうちんをもあらそうばふにかならずやぶる、そのほね一本たりとも田の水口みなくちへさしおけば、この水のかゝる田は熟実みのりよく虫のつく事なし。神灵しんれいのあらたかなる事あまねく人の知る所なり。
むかし、但馬国たじまのくににおまつられになっている出石いずし大神おおがみのおむすめに、出石少女いずしおとめというたいそううつくしい女神めがみがおまれになりました。この少女おとめをいろいろな神様かみさまがおよめにもらおうとおもってあらそいました。
春山秋山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)