花園はなぞの)” の例文
すると、意外いがいにも、いつのまにか、そのはなは、えだなかほどからられたとみえて、もう、その花園はなぞのにはなかったのであります。
はちとばらの花 (新字新仮名) / 小川未明(著)
合天井ごうてんじょうなる、紅々白々こうこうはくはく牡丹ぼたんの花、胡粉ごふんおもかげ消え残り、くれない散留ちりとまって、あたかもきざんだものの如く、髣髴ほうふつとして夢に花園はなぞのあおぐ思いがある。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そして、こんどは、美しい花園はなぞのの中を通りぬけて、田舎いなかへ出ました。二人はずいぶん歩きました。アラジンは、そろそろくたびれはじめました。
この中庭は花園はなぞののとなりにありましたが、見れば花園では、いろいろな花が今をさかりと、きみだれていました。
あいちやんはけて、それが鼠穴ねずみあなぐらゐちひさなみちつうじてることをり、ひざをついてまへたことのあるうつくしい花園はなぞのを、そのみちについてのぞみました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
右近うこんの馬場を右手めてに見て、何れ昔は花園はなぞのの里、霜枯しもがれし野草のぐさを心ある身に踏みしだきて、太秦うづまさわたり辿たどり行けば、峰岡寺みねをかでらの五輪の塔、ゆふべの空に形のみ見ゆ。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
アリスの「よる花園はなぞの」「目を閉ぢて」「心のなかの愛」「最初の承諾」なども、全くこの表情を生かしてゐる。
皀莢瀑さいかちだきあざないたします、本名は花園はなぞのたきと云う巾の七八間もある大瀑おおだきがドーッドッと岩に当って砕けちる水音。
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
徳治とくじ三年後二条天皇が崩御になり、持明院統の花園はなぞの天皇が即位されて、伏見院が院政を摂られ、延慶えんきょうと改元されると、また為世にかわって為兼の活躍のときが来た。
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
円通寺は花園はなぞの妙心寺系の禅寺で、杉田氏は兵庫県の仏教聯合会の理事をしていられるが、妙心寺系の禅家のあいだでは、今でも、前法山とか法山之住ほうざんのじゅうとかいうことばは
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
投げられた核子たねは、芽を吹き花を開いて、幾年かのちには、鉄道の両側は美しい花園はなぞのとなり、おまけに果物圃くだものばたけとなるので、どれ程土地ところの人のためになるか知れないといふのだ。
果敢はかなのやとうちあふげばそら月影つきかげきよし、ひぢせたる丸窓まるまどのもとにんのさゝやきぞかぜをぎともずり、かげごとかあはれはづかし、見渡みわた花園はなぞのるのにしきつきにほこりて
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
(ヘ)草本帶そうほんたい高山植物こうざんしよくぶつ)。 人々ひと/″\がお花畠はなばたけといひ山上さんじよう花園はなぞのとしてめづらしがり、あこがれてゐるのがこの草本帶そうほんたいです。まへ偃松帶はひまつたい上部じようぶ徐々じよ/\にこの草本帶そうほんたいうつつてきます。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
牡丹色の薔薇ばらの花、仰山ぎやうさんに植木のある花園はなぞのつゝましやかな誇、牡丹色の薔薇ばらの花、風がおまへのはなびらあふるのは、ほんの偶然であるのだが、それでもおまへは不滿でないらしい、僞善ぎぜんの花よ
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
直接の関係はなくとも、く間接の感化かんくわをうくるものなれば、尊敬の意をうしなふまじきものなりなど、花は見ずして俯向うつむきながら庭をめぐるに、花園はなぞのひらきて、人の心をたのします園主ゑんしゆ功徳くどく
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
花園はなぞの牡丹ぼたん広々とうるわしき眺望ながめも、細口の花瓶にただ二三輪の菊古流しおらしく彼がいけたるをめ、ほめられて二人ふたり微笑ほほえみ四畳半にこもりし時程は、今つくねんと影法師相手にひとり見る事の面白からず
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
そのうちの一章に女が花園はなぞののなかに立って、小さな赤い花を余念よねんなく見詰みつめていると、その赤い花がだんだん薄くなってしまいに真白になってしまうと云うところを書いて見たいと思うんだがね
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
花園はなぞのを隣にもてるここちしぬ匂へる君をいと近く見て
註釈与謝野寛全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
そして花園はなぞの学院で普通学を学んだ。
なやましい花園はなぞの
爆薬の花籠 (新字新仮名) / 海野十三(著)
よるになると、くもあいだから、ほしが、下界げかいくさや、らしたのです。そこには、うつくしいべにや、むらさき黄色きいろはないている花園はなぞのがありました。
大きなかしの木 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あいちやんの紅鶴べにづる花園はなぞのがはしてつてしまつてたことで、其處そこあいちやんは、それがむなしく一ぽんあがらうとして、それをこゝろみてるのをました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
眞紅しんくはな咲滿さきみちた、くもしろ花園はなぞのに、ほがらかなつきうつるよ、と浴衣ゆかたいろたのであつた。
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
だが、少年の日の夢は、せさせてはいけない。少年の日の自然な空想は、いわば少年の花園はなぞのだ。昔にも、今にも、将来へも、つばさをひろげて、遊びまわるべきである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、思うまもなく、すぐまた、お日さまのキラキラ照っている、世にも美しい花園はなぞのに出ました。花園には、ガラスと大理石でできた、大きな御殿ごてんが、いくつも立っていました。
あちらに花園はなぞのや果物圃の多いのはそのせゐだといふ事を話してゐるのを聞いた。
四邊あたりぐらす花園はなぞのあきかんむしのいろ/\、天然てんねん籠中ろうちうおさめてつきこゝろきゝたし、さてもみのむしちゝはとへば、月毎つきごとの十二そなゆる茶湯ちやとうぬしそれはゝおなじく佛檀ぶつだんうへにとかや
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
その花園はなぞの薔薇ばら
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
また、まち郊外こうがいには、花園はなぞのがありました。そして、そこには、かつてたことのないような、うつくしいはなみだれいました。
すももの花の国から (新字新仮名) / 小川未明(著)
『それからだい二には、あのうつくしい花園はなぞのみちさがさなくてはならないが、なに工夫くふうはないかしら』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
……へだてたカアテンのうちなる白晝まひるに、花園はなぞのゆめごとき、をとこかほぢつ
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そして、おばあさんはさきに立って、戸口から出てうらの花園はなぞのの方へとまわりました。少女はだまって、おばあさんのあとについて行きました。
月夜とめがね (新字新仮名) / 小川未明(著)
いまではそんなたのしい、うつくしい、花園はなぞのがないかはり、まへ橋銭はしせん受取うけとざるいてある、このちいさなまどからふうがはりないぬしゝだの、奇躰きたいきのこだの、不思議ふしぎさるだの、まだ其他そのたひとかほをしたとりだの
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
それも、そのはずで、みなみからくるのは、橄欖かんらんはやしや、かおりのたかい、いくつかの花園はなぞのをくぐったり、わたったりしてきます。
大きなかしの木 (新字新仮名) / 小川未明(著)
また花園はなぞのさえあったりしたので、うかうかと時間じかんごしてしまって、みんなからはなれてしまったものもあります。
北海の波にさらわれた蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「もう、これからをつけなければならない。」と、とりたちは口々くちぐちにいって、燈台とうだいのあったしま花園はなぞのからかえってきたとりかっていってきかせました。
小さな金色の翼 (新字新仮名) / 小川未明(著)
また、かがやした花園はなぞので、はなびらがなよなよとそよかぜにひらめくのをると、たまらなくなって、彼女かのじょは、いっしょになってダンスをしたのであります。
初夏の空で笑う女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
いつのまにか、素焼すやきのはちなかにも、にわ花園はなぞのにも、やわらかなつちをやぶって、こはくいろ球根きゅうこんかおせ、太陽たいようをしたって、のびようとするのでした。
雲のわくころ (新字新仮名) / 小川未明(著)
「いいだから、こちらへおいで。」と、おばあさんはやさしくいいました。そして、おばあさんはさきって、戸口とぐちからうら花園はなぞのほうへとまわりました。
月夜と眼鏡 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして、花園はなぞのとか、やさしい人間にんげんすくわれたとかいうのは、きっとおまえがゆめたのにちがいない。
小さな金色の翼 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あるところに、ひろはたけと、はやしと、花園はなぞのと、それにたくさんな宝物たからものっているひとんでいました。
星と柱を数えたら (新字新仮名) / 小川未明(著)
小鳥ことりは、やっと元気げんき快復かいふくしてくさかげから、そとんでました。すると、そこは、花園はなぞのになって、いろいろのはなが、あおに、むらさきに、あかに、に、いていたのでした。
小さな金色の翼 (新字新仮名) / 小川未明(著)
なつからあきにかけて、はやしや、花園はなぞのにきてあそんでいたちょうや、はちや、や、とんぼや、せみが、だんだんさむくなるので、ふねってあたたかなみなみくに旅立たびたつのであります。
玉虫のおばさん (新字新仮名) / 小川未明(著)
そらんでくると、した花園はなぞのがあって、うつくしいばらが、いまをさかりにいているのをました。
はちとばらの花 (新字新仮名) / 小川未明(著)
はちは、やさしくはなかれたので、なにから物語ものがたったらいいかとおもっていましたやさきへ、また、人間にんげんのいたずらが、あちらから、のこのこと花園はなぞのほうにやってきました。
はちとばらの花 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そらをかすめてれは、たがいにおくれまいとしました。そして、夕暮ゆうぐがたになると深林しんりんや、花園はなぞのりてやすんだのでした。あか夕日ゆうひは、かれらのかなしくうつりました。
北海の波にさらわれた蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
けれど、それをはなおもってんでいっては、いけません。そして、まち近傍きんぼうには、人間にんげん栽培さいばいしている花園はなぞのや、いろいろの果樹園かじゅえんがあるものですから、そこへいっておやすみなさい。
北海の波にさらわれた蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
花園はなぞのには、ちょうや、みつばちが、はなうえまったり、葉蔭はかげかくれたりして、平和へいわねむっていました。また、かしのひとりぼっちで、いつものごとくさびしそうにだまってねむっていました。
大きなかしの木 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ちょうど南国なんごく花園はなぞのにいったときのようなかんじをさせるのであります。
煙突と柳 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ぼく学校がっこうへおいでよ、花園はなぞのせてあげるから。」と、友吉ともきちが、いうと、りょう一のに、先刻さっきもらったような、あおはなや、あかはなの、わたすかぎりほこる、うつくしい花園はなぞのえいじたのであります。
僕が大きくなるまで (新字新仮名) / 小川未明(著)