のぞ)” の例文
この型を以て未来にのぞむのは、天の展開する未来の内容を、人の頭でこしらえたうつわ盛終もりおおせようと、あらかじめ待ちもうけると一般である。
イズムの功過 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しやうめいくるのにはすなは其家そのいへわすれ、ぐんのぞんで約束やくそくすればすなは其親そのしんわすれ、(一六)枹鼓ふこることきふなればすなは其身そのみわする。
この縄へ蜂蜜を稀薄に抹擦まつさついたして、米麦の花まさに開かんとする際にのぞみ、その穂のいただきを四、五回摩盪まとうするまでのことであります。
禾花媒助法之説 (新字新仮名) / 津田仙(著)
そののち何回なんかいうした儀式ぎしきのぞんだかれませぬが、いつもいつもおな状態じょうたいになるのでございまして、それはまった不思議ふしぎでございます。
終りにのぞんで私はこの小著述をその最初の出版者たる故中村弥左衛門君に献じます。君の霊の天にありて安からんことを祈ります。
後世への最大遺物 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
(一)村尾某は東丘村ひがしおかむら(東西に長くよこたわる右足湖の東の地を云う。湖口は東丘村が湖にのぞむところを云う)から、右足湖を越えて
人間灰 (新字新仮名) / 海野十三(著)
木末こぬれの上」は、繁っている樹木のあたりの意、万葉の題には、「時にのぞめる」とあるから、或るおりに臨んで作ったものであろう。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
けれど、勝家がそこへのぞむと、茶々も初姫も、末の姫も、いいあわせたように変な顔をしてしまって、ホホともケロとも、笑わなかった。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
女流の文学者と交際し神田青年会館に開かれる或婦人雑誌主催の文芸講演会にのぞ一場いちじょうの演説をなす一段に至って、筆をいて歎息した。
十日の菊 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
この物のもとに、シピオネとポムペオとは年若うして凱旋したり、また汝の郷土にのぞみてそびゆる山にはこの物つらしと見えたりき 五二—五四
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
川幅は一けんばかり、水にのぞめば音はさまでにもないが、美しさは玉を解いて流したよう、かえって遠くの方ですさまじく岩にくだけるひびきがする。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
建久けんきゅう九年十二月、右大将家うだいしょうけには、相模川さがみがわの橋供養の結縁けちえんのぞんだが、その帰途馬から落ちたので、供養の人びとに助け起されてやかたへ帰った。
頼朝の最後 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
いま十五少年諸君の行動をけんするに、なんしょしてくっせず、事にのぞんであわてず、われわれおとなといえども及びがたきものがすこぶる多い。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
その日は終日女梁山泊おんなりょうざんぱくを以て任ずる妾の寓所にて種々いろいろと話し話され、日の暮るるも覚ええざりしが、別れにのぞみてお互いに尽す道はことなれども
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
かれには、これまでとはまるでちがった気持ちと態度とをもって、戦いにのぞもうとする意志が、ほのかにきかけていた。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
琵琶湖で名高い近江おうみは滋賀県であります。大津絵で名高い大津がその都であります。みずうみのぞんだ古い町は、昔の姿を今もそう変えておりません。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
多少たせう私達に好意かういを持つてくれる人達ひとたちは、に/\氣遣きづかひの眼をもつて私達にのぞみました。それは私達の眞意しんいなかつたからなのでした。
冬を迎へようとして (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
はじめ私は混食のキリスト信者としてこの式場にのぞんだのでありましたが今や神は私に敬虔けいけんなるビジテリアンの信者たることを命じたまいました。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
その大后いはの日賣の命、いたく嫉妬うはなりねたみしたまひき。かれ天皇の使はせるみめたちは、宮の中をもえのぞかず、言立てば、足も足掻あがかに妬みたまひき。
かかる大切たいせつの場合にのぞんでは兵禍へいかは恐るるにらず、天下後世国を立てて外に交わらんとする者は、努〻ゆめゆめわが維新いしん挙動きょどうを学んで権道けんどうくべからず
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
こののぞんでも平次は、この手柄をお品のものにして、父親の石原の利助の面目が立てさせてやりたかつたのです。
およそ抜穂は卜部、国郡司以下及び雑色人ぞうしきびと等をひきゐて田にのぞんでこれを抜く。——先づ初抜四束を取つて供御くごの飯にし、自余は皆黒白二酒にす 云々
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
しめしは江戸四宿の内只此品川のみ然れば遊客いうきやくしたがつて多く彼の吉原にもをさ/\おとらず殊更ことさら此地は海にのぞみてあかつきの他所ほかよりも早けれど客人まろうど後朝きぬ/″\
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
予はかくの如く、しばしば思わざる逆境にのぞみし代りに、再挙の計画に就きては、経験を得たること鮮少ならず。
歌舞伎かぶきの舞台では大判事清澄の息子久我之助こがのすけと、その許嫁いいなずけ雛鳥ひなどりとか云った乙女おとめとが、一方は背山に、一方は妹山に、谷にのぞんだ高楼たかどのを構えて住んでいる。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
為し翌日二人にて長崎よりふねに乗りたり後にて聞けば金起は出足であしのぞみ兄の金を千円近く盗み来たりしとの事なりやがて神戸に上陸し一年余り遊び暮すうち
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
左に高くそばだちたるは、いはゆるロットマンが岡にて、「湖上第一勝」と題したる石碑せきひの建てる処なり。右に伶人れいじんレオニが開きぬといふ、水にのぞめる酒店さかみせあり。
うたかたの記 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
おわりのぞみ、私の妻もあなたのわれ負わるゝ数々かずかずの重荷に対し、真実御同情申上げる旨、呉々くれぐれも申しました。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
驛の兩側を流れ落つる小溪、それにのぞみて衣洗へる少女をとめ二人三人ふたりみたりまばらに繁茂せる桑の畑などを見つゝ、少時しばしが程行けば、果して山田屋といへる飮食店あり。
秋の岐蘇路 (旧字旧仮名) / 田山花袋(著)
このような中心人格は絶対的な権威をもって成員にのぞむのであるが、しかしそれが共同体である限りは、この中心人格は団体の全成員と人格的に結ばれていて
政治学入門 (新字新仮名) / 矢部貞治(著)
この子供たちをかような尊い戦いのために、今日只今から社会に送り出す私の心持……お別れにのぞんで……
少女地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
谷にのぞめるかたばかりの茶屋に腰掛くれば秋に枯れたる婆様の挨拶あいさつ何となくものさびて面白く覚ゆ。
旅の旅の旅 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
「去年は倭奴わど上海をおびやかし、今年は繹騒えきそう姑蘇こそのぞむ。ほしいままに双刀を飛ばし、みだりにを使う、城辺の野草、人血まみる」。これ明の詩人が和寇わこうえいじたるものにあらずや。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
終りにのぞんで讀者諸君に一言す。余は以上の風俗考を以て自ら滿足まんぞくする者に非ず、尚ほ多くの事實を蒐集總括して更に精しき風俗考をあらはさんとはの平常ののぞみなり。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
〔譯〕賢者はぼつするにのぞみ、まさに然るべきを見て、以てぶんと爲し、死をおそるゝをぢて、死をやすんずるをこひねがふ、故に神氣しんきみだれず。又遺訓いくんあり、以てちやうそびやかすに足る。
当の獲物を射損じたばかりか、事にのぞんで弓弦が切れたのは平生ひごろの不用意も思いやらるるとあって、彼は勅勘ちょっかんの身となった。彼は御忠節を忘れるような人間ではなかった。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
日の暮れ暮れに某氏の門前にのぞんでみると、警察官が門におって人の出入を誰何すいかしている。門前には四十台ばかりの荷車に、それに相当する人夫がわやわや騒いでおった。
去年 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
正面しやうめん本院ほんゐんむかひ、後方こうはう茫廣ひろ/″\とした野良のらのぞんで、くぎてた鼠色ねずみいろへい取繞とりまはされてゐる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
とんと小説は見せなかつたのであります、ところが十三号の発刊はつかんのぞんで、硯友社けんいうしやためながわするべからざる一大変事いちだいへんじおこつた、それは社の元老げんらうたる山田美妙やまだびめう脱走だつそうしたのです、いや
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
ややもすれば年老としおいて女の役の無くなるころのぞむと奇妙きみょうにも心状こころ焦躁じれたり苛酷いらひどくなったりしたがるものであるから、この女もまたそれの時に臨んでいたせいででもあろうか
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
打水うちみづのあとかろ庭下駄にはげたにふんで、もすそとる片手かたてはすかしぼね塗柄ぬりえ團扇うちわはらひつ、ながれにのぞんでたつたる姿すがたに、そらつきはぢらひてか不圖ふとかゝるくもすゑあたりにわかくらくなるをりしも
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
折々おりおり新聞に伝えられるぼう学者は何千円の俸給ほうきゅうを取るが、毎日教場きょうじょうのぞみ授業するとき、たまたま生徒が何か質問をすると、それはむずかしい、字引じびきを引いてもちょっと分かるまい
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
あにこの最終さいしうの一夜にのぞんでうらみをぶべけんや、し此探検中あめふことおほかりせば尚二倍の日子をようすべく、病人も生ずべく、めに半途帰路にくか或は冒進ぼうしんして餓死におちゐるか
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
其ノ荊州けいしゆうヲ破リ、江陵ヲ下リ、流レニしたがツテ東スルヤ、舳艫じくろ千里、旌旗せいき空ヲおほフ、酒ヲソソイデ江ニのぞミ、ほこヲ横タヘテ詩ヲ賦ス、マコトニ一世ノ雄ナリ、而シテ今いづクニカ在ル哉
大菩薩峠:27 鈴慕の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
私は諸処の講演にのぞむ時は機会あるごとに、いつもこの主意で学生等に訓話くんわしている
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
わたくしごと現在げんざいそのなんのぞんで、弦月丸げんげつまる悲慘ひさんなる最後さいごぐるまで、その甲板かんぱんのこつてつたは、今更いまさらその始終しじゆう懷想くわいさうしても彌立よだほどで、とてもくわしいこと述立のべたてるにしのびぬが
種類の異なる美に対しては我々は一々別種の標準をもってのぞまなくてはならぬ。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
こののぞんでもはやまやかしごとを言ってくれな。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
あさのぞむよ。このみやこ
全都覚醒賦 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
まへのぞみて
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)