)” の例文
先哲せんてついはく……君子くんしはあやふきにちかよらず、いや頬杖ほゝづゑむにかぎる。……かきはな、さみだれの、ふるのきにおとづれて……か。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
まちなかとお人々ひとびとも、両側りょうがわみせもだいぶわったけれど、やはり、銀行ぎんこうは、そこにあり、そして、こうがわにたばこがありました。
街の幸福 (新字新仮名) / 小川未明(著)
なるほどそれは好都合であると喜んでいると、三、四日の後、町の地物じものへ買物に立寄った時、偶然にあることを聞き出した。
温泉雑記 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ちょうどそのとき、中津なかつからくろがね惣兵衛そうべえという商人しょうにん長崎ながさきにきていて、用事ようじがすんだので、中津なかつへかえることになっていました。
大きなおしろがそびえ立ち、ひくかべはなにかこまれた中庭には、美しく石がしきつめてあって、古風こふう庭園ていえんはいかにも優雅ゆうがです。
S——町のはずれを流れている川をさかのぼって、重なり合った幾箇いくつかの山裾やますそ辿たどって行くと、じきにその温泉場の白壁やむねが目についた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
彼女は祖母たちのいる裏二階へ行ってそのことを話して見ると、そういうたぐいのものは皆隠宅(しず)の方にしまい込んであった。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
震災しんさい以來いらい東京とうきやう梅園うめぞの松村まつむら以外いぐわいには「しるこ」らしい「しるこ」あとつてしまつた。そのかはりにどこもカツフエだらけである。
しるこ (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
わけてむねも下がるといううしこくをすぎると、山里のつねでもあるが、五月というのに冬のような気温の急下に肌もこごえそうだった。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
其中そのなかの一人は同じ村外れの一軒のあばから金色きんいろの光りが輝きいでるのを見て不思議に思つてうかがつて見ますと何様どうでせう
金銀の衣裳 (新字旧仮名) / 夢野久作(著)
それから元気よく口笛くちぶえきながらパンってパンのかたまりを一つと角砂糖かくざとうを一ふくろ買いますといちもくさんに走りだしました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
此間敵よりハ鎗をなげ突にし、又ハ火鉢を打込色々たゝかふ。味方も又鎗持て禦ぐ。家内之戦実にかましくたまり不申。
こうわれてくずはすっかりになってしまいました。そしてちゃがまのすすめるとおりくずをやめてしまいました。
文福茶がま (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
をりからかしボート桟橋さんばしにはふなばた数知かずしれず提燈ちやうちんげた凉船すゞみぶねもなくともづないてやうとするところらしく、きやく呼込よびこをんなこゑが一そう甲高かんだか
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
「松代さんより弟の鋭市さんがはにかなのよ。あなたの前へ出ると、なんだか頭がしびれるみたいだつて云つてたわよ。」
花問答 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
すると金魚屋きんぎょやは、そのころ時刻じこくだつたら、パチンコにいたとこたえたから、井口警部いぐちけいぶはその実否じっぴを、平松刑事ひらまつけいじめいじてたしかめさせることにした。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
それから外廻りは、家の広い外郭になって居て、大炊屋おおいやもあれば、湯殿火焼ひたなども、下人の住いに近く、立っている。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
の棟の糸薄いとすすきも畑の畔の枝豆も、風に吹かれて揺れるものといえば、なにもかも、みな思いありげに見えるのではないかなどと考えていたそうな。
生霊 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
辭令に巧みな壯語男爵後藤遞相を送り、駄句だく子爵岡部法相を送つた北海道は、今また伊藤公爵と韓太子とを迎へた。
泡鳴五部作:03 放浪 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
右手はむねさえぎられて、見えぬけれども、地勢から察すると、だらだらりに風呂場の方へ落ちているに相違ない。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
これだけの寺だからむねの高い本堂が見えそうなものだが、それは回禄かいろくしたのかどうか知らぬが眼に入らなくて、小高い処に庫裡様くりようの建物があった。
観画談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
近くの在所のつじあきなに、五六人の者が寄合って夜話よばなしをしている最中、からりとくぐり戸を開けて酒を買いにきた女が、よく見るとあの娘であった。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
そうしてモデルツて來るモデルもモデルもかたはしから刎付はねつけて、手蔓てづるてやツとこさ自分で目付めつけ出したモデルといふのがすなはちお房であツた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
やかまの節そっくりだ。おい余吉よきちさん、来年の秋にはその声で、桜山さくらやま八幡様の境内をワッといわせるがいいよ。
中山七里 二幕五場 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
ちんのバアへ立ち寄って、ブランデエの強烈なのを二三杯ぐいと引きかけて、己は早速世界館へ舞い戻った。
小僧の夢 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
仕立屋さんはくつはやぶれ、足はまめだらけでしたから、つえを手にもって、むじゃきな兵隊へいたいさんたちが陽気ようきにさわいでいる〈ちょい〉へいきました。
子供達こどもたち毬唄まりうたにまではやされて、るもらぬも、うわさはな放題ほうだい、かぎのおせんならでは、けぬ煩悩ぼんのうは、血気盛けっきざかりの若衆わかしゅうばかりではないらしく
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
七兵衛は子供の頃から、むねを歩くのが好きであった。自分の家の屋の棟を歩き終ると、隣りの屋根へ飛び移って、それからそれと宿しゅくの土を踏まずに歩いていた。
そのつたみせといふのが、新はし博品館はくひんくわんとなりの今はぼうになつてゐる雜貨店ざつくわてんで、狹い銀座通ぎんざとほりにはまだ鐡道てつどう車が通ひ、新はししなかんでん車になつたばかりのころだつた。
おきんの所へ出はいりして顔見知りの呉服屋のかつが「うちの二階空いてまんね、蝶子さんのことでっさかい部屋代はいつでもよろしおま」と言うたのをこれさいわいに
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
二葉亭と嵯峨さがとは春廼舎傘下の寒山拾得であったが、その運動は離れ離れであった。美妙は硯友社の一人であったが、抜駈ぬけがけの功名にはやって終に孤立してしまった。
自分じぶんかごつて、つなたかむねにひきあげさせて、つばめたまごむところをさぐるうちに、ふとひらたいものをつかみあてたので、うれしがつてかごおろ合圖あひずをしたところが
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
出もどりの姉おこよにやらせている名物いろは寿司ずしおかっ引きいろは文次ぶんじが住まいである。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
難波人なにはびと葦火あしびしてあれどおのが妻こそとこめづらしき 〔巻十一・二六五一〕 作者不詳
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
「こんなことをスパイにでもぎつけられたら大変だが、急ぎの軍需品を積んで行くのでこういう時化でも出帆するそうだ。くに文左衛門というところだな、はっはっは」
秘境の日輪旗 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
「易とは、これ、八卦屋の漢語だ。唐では、八卦見のことを、易家というな。八卦屋が、二つに分れると、になって、四い屋と、八卦屋とが合併すると、ハッケヨイヤ」
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
おな新開しんかいまちはづれに八百髮結床かみゆひどこ庇合ひあはひのやうな細露路ほそろぢあめかさもさゝれぬ窮屈きうくつさに、あしもととては處々ところ/″\溝板どぶいたおとあなあやふげなるをなかにして、兩側りようがはてたる棟割長屋むねわりながや
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
玄竹げんちくさまは、わたくしがおのことをおしとつて、ひをしとなまるのをおわらひになりますが、御自分ごじぶんは、しをひとちがへて、失禮しつれいをひつれい、質屋しちやをひちおつしやいます。ほゝゝゝゝゝ。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
夜なかなどに、ときおり郡司の息子が弓などを手にして、女の住んでいるたいのあたりを犬などにえられながら何時までもさまようようになったのは、そんな事があってからのことだった。
曠野 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
以前何かの折に一寸引合に出した事のある米国の劇場監督チヤールズ・フロオマンは、恐ろしいやかまで、相手が誰であらうと、自分の指図に従はないものは手厳しくけるので名高い男だつた。
すずおうの書斎もその儘に残っているそうでございますよ」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
あかあかと葦火あしびたくも小夜更けて汐らし沖つ千鳥よ
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
わがを揺するこの疾風はやてぞ雲ふき散りし星空のもと
詩集夏花 (新字旧仮名) / 伊東静雄(著)
ほのおが燃え立って、黒かった苔のが11320
「へえ、……錠前じょうまえ……。」
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
むかしおもえば とまけむり
横浜市歌 (新字新仮名) / 森林太郎(著)
商店のむねの間からは
太陽の子 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
たかにひとりのぼりて
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
いらかも寒きの棟を
故郷の花 (旧字旧仮名) / 三好達治(著)
あめ
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)