“倖”のいろいろな読み方と例文
読み方割合
しあわ49.3%
さいわ19.4%
さいわい10.4%
しあわせ9.0%
しあは7.5%
かう1.5%
さい1.5%
しあはせ1.5%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
自分にすぎた筒井であっただけまばゆいばかりの妻を得ていることが、どういうしあわせにも増して底の深い倖せであったことであろう。
津の国人 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
座敷はその間に片づけられ、隠居は一服いつけて二人を待っていた。さいわいに日が照って、庭に向いた障子は閉めきるほど寒くは無かった。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
お定は悲しむまえに、まず病が本物だったことをもっけのさいわいにわめき散らして、死神が舞いこんできよった。
(新字新仮名) / 織田作之助(著)
通り魔か? 通りすぎた気配だけあって、姿のない怪人! 生命の満足に残ったのが虎松にとって大きなしあわせだったといえる。
くろがね天狗 (新字新仮名) / 海野十三(著)
いまね、この御所を見てゐて、急に、何だか、現在の方がしあはせのやうな気がしたンだ。——やぶれたものの哀れさは、美しい。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
厚かましいお願だが、彼等の孤弱を憐れんで、今後とも道塗だうと飢凍きとうすることのないやうにはからつて戴けるならば、自分にとつて、恩かう、之に過ぎたるはい。
山月記 (旧字旧仮名) / 中島敦(著)
……さいわいなのは子供と離されていることだ、甲之助と乳母とは廊下をかぎなりに曲って、五つばかり向うの部屋にいる、良人の好みで召使たちもずっと離れていた。
めおと蝶 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
誰も力になつてくれるもののない抵抗しやうのない淋しさで、暗がりに眼を開いたまゝ、ゆき子はじつと激しい雨の音に耳をかたむけてゐた。伊庭がこの家にゐなかつた事はしあはせであつた。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)