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飜然
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ひらり
ふりがな文庫
“
飜然
(
ひらり
)” の例文
新字:
翻然
初更
(
しよかう
)
に
至
(
いた
)
るや、
病
(
や
)
める
妻
(
つま
)
なよやかに
起
(
お
)
きて、
粉黛
(
ふんたい
)
盛粧
(
せいしやう
)
都雅
(
とが
)
を
極
(
きは
)
め、
女婢
(
こしもと
)
をして
件
(
くだん
)
の
駿馬
(
しゆんめ
)
を
引出
(
ひきいだ
)
させ、
鞍
(
くら
)
を
置
(
お
)
きて
階前
(
かいぜん
)
より
飜然
(
ひらり
)
と
乘
(
の
)
る。
唐模様
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
満枝は物をも言はずつと起ちしが、
飜然
(
ひらり
)
と貫一の身近に寄添ひて
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
と
冴
(
さ
)
えた声で手招きをしながら、もう石橋を
飜然
(
ひらり
)
と越えて、先へ立って駆出すと、
柔順
(
すなお
)
な事は、一同ぞろぞろ、ばたすたと続いて行く。
卵塔場の天女
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と若い女が諸声で、やや色染めた紅提灯、松原の茶店から、夕顔別当、白い顔、絞の浴衣が、
飜然
(
ひらり
)
と出て、六でなしを左右から。
浮舟
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「
失禮
(
しつれい
)
、
唯今
(
たゞいま
)
。」と
壁
(
かべ
)
の
中
(
なか
)
に、
爽
(
さわやか
)
な
少
(
わか
)
い
聲
(
こゑ
)
して、
潛
(
くゞ
)
り
門
(
もん
)
がキイと
開
(
あ
)
くと、
蝶
(
てふ
)
のやうに
飜然
(
ひらり
)
と
出
(
で
)
て、ポンと
卷莨
(
まきたばこ
)
の
灰
(
はひ
)
を
落
(
おと
)
す。
画の裡
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
▼ もっと見る
と
籠
(
かご
)
を
開
(
あ
)
ける、と
飜然
(
ひらり
)
と来た、が、此は純白
雪
(
ゆき
)
の如きが、嬉しさに、
颯
(
さっ
)
と
揚羽
(
あげは
)
の、
羽裏
(
はうら
)
の色は淡く黄に、
嘴
(
くち
)
は
珊瑚
(
さんご
)
の
薄紅
(
うすくれない
)
。
印度更紗
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
と
籠
(
かご
)
を
開
(
あ
)
ける、と
飜然
(
ひらり
)
と
來
(
き
)
た、が、
此
(
これ
)
は
純白
(
じゆんぱく
)
雪
(
ゆき
)
の
如
(
ごと
)
きが、
嬉
(
うれ
)
しさに、
颯
(
さつ
)
と
揚羽
(
あげは
)
の、
羽裏
(
はうら
)
の
色
(
いろ
)
は
淡
(
あは
)
く
黄
(
き
)
に、
嘴
(
くち
)
は
珊瑚
(
さんご
)
の
薄紅
(
うすくれなゐ
)
。
印度更紗
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
早瀬はちょっと
言
(
ことば
)
を切って……夫人がその時、わななきつつ持つ手を落して、膝の上に
飜然
(
ひらり
)
と一葉、半紙に書いた女文字。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
蟹五郎
神通
(
じんずう
)
広大——俺をはじめ考えるぞ。さまで思悩んでおいでなさらず、両袖で
飜然
(
ひらり
)
と飛んで、
疾
(
はや
)
く剣ヶ峰へおいでなさるが
可
(
よ
)
いではないか。
夜叉ヶ池
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
屹
(
きっ
)
と振向かっしゃりました様子じゃっけ、お顔の団扇が
飜然
(
ひらり
)
と
飜
(
かえ
)
って、
斜
(
ななめ
)
に浴びせて、嘉吉の横顔へびしりと来たげな。
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
それが為にこうして出向いた、真砂町の様子を聞き度さに、
特
(
こと
)
に、似たもの夫婦の
譬
(
たとえ
)
、信玄流の沈勇の方ではないから、随分
飜然
(
ひらり
)
と
露
(
あらわ
)
れ兼ねない。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
飜然
(
ひらり
)
と返して、指したと思えば、峰に並んだ向うの丘の、松の
梢
(
こずえ
)
へ
颯
(
さっ
)
と飛移ったかと思う、旗の
煽
(
あお
)
つような火が
松明
(
たいまつ
)
を投附けたように
※
(
ぱっ
)
と燃え上る。
朱日記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
瘠
(
や
)
せた夫人は
膨
(
ふく
)
らかに、
児
(
こ
)
の宿ったる姿して、一所になって渡ったが、姿見の前になると、影が分れて
飜然
(
ひらり
)
と出た。
わか紫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ガサリなどゝ
音
(
おと
)
をさして、
畚
(
びく
)
を
俯向
(
うつむ
)
けに
引繰返
(
ひきくりかへ
)
す、と
這奴
(
しやつ
)
にして
遣
(
や
)
らるゝはまだしもの
事
(
こと
)
、
捕
(
と
)
つた
魚
(
うを
)
が
飜然
(
ひらり
)
と
刎
(
は
)
ねて、ざぶんと
水
(
みづ
)
に
入
(
はい
)
つてスイと
泳
(
およ
)
ぐ。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
この
光景
(
ありさま
)
に、驚いたか、湯殿口に立った
髯面
(
ひげづら
)
の紳士が、
絽羽織
(
ろばおり
)
の
裾
(
すそ
)
を
煽
(
あお
)
って、庭を切って
遁
(
に
)
げるのに心着いて、屋根から
飜然
(
ひらり
)
……と飛んだと言います。
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
聞きも果てず、満面に活気を帯び
来
(
きた
)
った竜田は、
飜然
(
ひらり
)
と躍込み、二人の
間
(
なか
)
へ
衝
(
つ
)
と立って、
卓子
(
テイブル
)
に手を
支
(
つ
)
いたが、解けかかる毛糸の襟巻の端を
背後
(
うしろ
)
へ
撥
(
は
)
ねて
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
中のどれかが、折々
気紛
(
きまぐ
)
れの鳥影の
映
(
さ
)
すように、
飜然
(
ひらり
)
と幕へ
附着
(
くッつ
)
いては、一同の姿を、
種々
(
いろいろ
)
に描き出す。……
吉原新話
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
袱紗
(
ふくさ
)
の
縮緬
(
ちりめん
)
が
飜然
(
ひらり
)
と
飜
(
かえ
)
ると、燭台に照って、
颯
(
さっ
)
と輝く、銀の地の、ああ、
白魚
(
しらうお
)
の指に重そうな、一本の舞扇。
歌行灯
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
蒼空
(
あおぞら
)
を
飜然
(
ひらり
)
と飛び、帽子の
廂
(
ひさし
)
を
掠
(
かす
)
めるばかり、大波を乗って、
一跨
(
ひとまた
)
ぎに
紅
(
くれない
)
の虹を
躍
(
おど
)
り越えたものがある。
春昼後刻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ト
美女
(
たをやめ
)
は
袂
(
たもと
)
を
取
(
と
)
つて、
袖
(
そで
)
を
斜
(
なゝ
)
めに、
瞳
(
ひとみ
)
を
流
(
なが
)
せば、
心
(
こゝろ
)
ある
如
(
ごと
)
く
桜
(
さくら
)
の
枝
(
えだ
)
から、
花片
(
はなびら
)
がさら/\と
白
(
しろ
)
く
簪
(
かざし
)
の
花
(
はな
)
を
掠
(
かす
)
める
時
(
とき
)
、
紅
(
くれない
)
の
色
(
いろ
)
を
増
(
ま
)
して、
受
(
う
)
け
取
(
と
)
る
袖
(
そで
)
に
飜然
(
ひらり
)
と
留
(
と
)
まつた。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
鞠
(
まり
)
がはずんで
潮
(
うしお
)
に取られ、羽根が外れて海に落つれば、
切立
(
きったて
)
のその崖を、するすると何の苦もなく、
蟹
(
かに
)
を捕え、貝を拾い、
斜
(
ななめ
)
に飛び、横に伝い、
飜然
(
ひらり
)
と
反
(
かえ
)
る身の軽さ。
わか紫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
其
(
そ
)
の
綱
(
つな
)
を
透
(
とほ
)
し
果
(
は
)
つるや、
筋斗
(
もんどり
)
を
打
(
う
)
ち、
飜然
(
ひらり
)
と
飛
(
と
)
んで、
土
(
つち
)
に
掌
(
てのひら
)
をつくと
齊
(
ひと
)
しく、
眞倒
(
まつさかさま
)
にひよい/\と
行
(
ゆ
)
くこと
十餘歩
(
じふよほ
)
にして、けろりと
留
(
と
)
まる。
觀
(
み
)
るもの
驚歎
(
きやうたん
)
せざるはなし。
唐模様
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
電車が来る、と物をも言わず、味噌摺坊主は
飛乗
(
とびのり
)
に
飜然
(
ひらり
)
、と乗った。で、その小笠をかなぐって脱いだ時は、早や乗合の中に紛れたのである。——白い火が飛ぶ上野行。
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
母親が
曲彔
(
きょくろく
)
を立つて、花の中で迎へた
処
(
ところ
)
で、哥鬱賢は
立停
(
たちど
)
まつて、
而
(
そ
)
して……桃の花の
重
(
かさな
)
つて、影も
染
(
そ
)
まる緋色の
鸚鵡
(
おうむ
)
は、お嬢さんの肩から翼、
飜然
(
ひらり
)
と母親の手に
留
(
と
)
まる。
印度更紗
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
と
七輪
(
しちりん
)
の
上
(
うへ
)
を
見計
(
みはか
)
らひ、
風呂敷
(
ふろしき
)
を
受取
(
うけと
)
つて、
屋臺
(
やたい
)
へ
立
(
た
)
ち、
大皿
(
おほざら
)
からぶツ/\と
煙
(
けむり
)
の
立
(
た
)
つ、
燒
(
や
)
きたてのを、
横目
(
よこめ
)
で
睨
(
にら
)
んで、
竹
(
たけ
)
の
皮
(
かは
)
の
扱
(
しご
)
きを
入
(
い
)
れる、と
飜然
(
ひらり
)
と
皮
(
かは
)
の
撥
(
は
)
ねる
上
(
うへ
)
へ
松の葉
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
母親
(
はゝおや
)
が
曲彔
(
きよくろく
)
を
立
(
た
)
つて、
花
(
はな
)
の
中
(
なか
)
で
迎
(
むか
)
へた
處
(
ところ
)
で、
哥鬱賢
(
こうつけん
)
は
立停
(
たちど
)
まつて、
而
(
そ
)
して……
桃
(
もゝ
)
の
花
(
はな
)
の
重
(
かさな
)
つて、
影
(
かげ
)
も
染
(
そ
)
まる
緋色
(
ひいろ
)
の
鸚鵡
(
あうむ
)
は、お
孃
(
ぢやう
)
さんの
肩
(
かた
)
から
翼
(
つばさ
)
、
飜然
(
ひらり
)
と
母親
(
はゝおや
)
の
手
(
て
)
に
留
(
と
)
まる。
印度更紗
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
「お前、そのお盆なんぞ、早くよ。」と釣鐘にでも隠れたそうに、肩から居間へ
飜然
(
ひらり
)
と飛込む。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その舌の
尖
(
さき
)
を
摺
(
す
)
って、
野茨
(
のばら
)
の花がこぼれたように、
真白
(
まっしろ
)
な蝶が
飜然
(
ひらり
)
と飛んだ。が、角にも留まらず、直ぐに消えると、ぱっと
地
(
じ
)
の底へ
潜
(
くぐ
)
った
状
(
さま
)
に、大牛がフイと
失
(
う
)
せた。……
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
なよやかな白い手を、半ば
露顕
(
あらわ
)
に、
飜然
(
ひらり
)
と友染の袖を
搦
(
から
)
めて、紺蛇目傘をさしかけながら
妖術
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
瞬間、島の
青柳
(
あおやぎ
)
に銀の影が、パツと
映
(
さ
)
して、
魚
(
うお
)
は
紫立
(
むらさきだ
)
つたる
鱗
(
うろこ
)
を、
冴
(
さ
)
えた
金色
(
こんじき
)
に輝かしつゝ
颯
(
さっ
)
と
刎
(
は
)
ねたのが、
飜然
(
ひらり
)
と宙を
躍
(
おど
)
つて、船の中へ
堂
(
どう
)
と落ちた。
其時
(
そのとき
)
、水がドブンと鳴つた。
伯爵の釵
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
車夫の
提灯
(
ちょうちん
)
が露地口を、薄黄色に
覗
(
のぞ
)
くに引かれて、葛木はつかつかと出て、
飜然
(
ひらり
)
と乗ると、
楫
(
かじ
)
を上げる、背に
重量
(
おもし
)
が掛って、前へ
突伏
(
つッぷ
)
すがごとく、胸に抱いた人形の顔を
熟
(
じっ
)
と
視
(
み
)
た。
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
優しいながら、口を
緊
(
し
)
めて——
透
(
とお
)
った鼻筋は気質に似ないと人の云う——
若衆質
(
わかしゅだち
)
の
細面
(
ほそおもて
)
の眉を払って、仰向いて見上げた二階の、天井裏へ、
飜然
(
ひらり
)
と飛ぶのは、一面、銀の舞扇である。
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
挨拶
(
あいさつ
)
とともに
番頭
(
ばんとう
)
がズイと
掌
(
てのひら
)
で
押出
(
おしだ
)
して、
扨
(
さ
)
て
默
(
だま
)
つて
顏色
(
かほいろ
)
を
窺
(
うかゞ
)
つた、
盆
(
ぼん
)
の
上
(
うへ
)
には、
湯札
(
ゆふだ
)
と、
手拭
(
てぬぐひ
)
が
乘
(
の
)
つて、
上
(
うへ
)
に
請求書
(
せいきうしよ
)
、むかし「かの」と
云
(
い
)
つたと
聞
(
き
)
くが
如
(
ごと
)
き
形式
(
けいしき
)
のものが
飜然
(
ひらり
)
とある。
城崎を憶ふ
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
すぐに、くるりと腹を見せて、
葉裏
(
はうら
)
を
潜
(
くぐ
)
ってひょいと
攀
(
よ
)
じると、また一羽が、おなじように塀の上からトンと下りる。下りると、すっと枝に
撓
(
しな
)
って、ぶら下るかと思うと、
飜然
(
ひらり
)
と伝う。
二、三羽――十二、三羽
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
兇器
(
きょうき
)
が手を離るゝのを
視
(
み
)
て、局は
渠
(
かれ
)
が
煙草入
(
たばこいれ
)
を探す
隙
(
すき
)
に、そと身を起して、
飜然
(
ひらり
)
と一段、天井の雲に
紛
(
まぎ
)
るゝ如く、廊下に
袴
(
はかま
)
の
裙
(
すそ
)
が
捌
(
さば
)
けたと思ふと、
武士
(
さむらい
)
は
武
(
む
)
しや
振
(
ぶ
)
りつくやうに
追縋
(
おいすが
)
つた。
妖魔の辻占
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
飜然
(
ひらり
)
と
揺
(
ゆら
)
ぎ、おでん屋の屋台もかッと
気競
(
きおい
)
が出て、
白気
(
はくき
)
濃
(
こま
)
やかに
狼煙
(
のろし
)
を揚げる。
露肆
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
瞬間、島の
青柳
(
あおやぎ
)
に銀の影が、パッと
映
(
さ
)
して、魚は紫立ったる
鱗
(
うろこ
)
を、
冴
(
さ
)
えた
金色
(
こんじき
)
に輝やかしつつ
颯
(
さっ
)
と
刎
(
は
)
ねたのが、
飜然
(
ひらり
)
と宙を躍って、船の中へどうと落ちた。その時、水がドブンと鳴った。
伯爵の釵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
汽車の
轟
(
とどろ
)
きの下にも埋れず、何等か妨げ遮るものがあれば、音となく響きとなく、
飜然
(
ひらり
)
と軽く体を
躱
(
か
)
わす、形のない、思いのままに勝手な
音
(
ね
)
の
湧出
(
わきい
)
ずる、空を
舞繞
(
まいめぐ
)
る鼓に翼あるものらしい
陽炎座
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
飜然
(
ひらり
)
と
此方
(
こなた
)
へ
向
(
むき
)
をかえると、
渚
(
なぎさ
)
に
据
(
すわ
)
った丘の根と、海なるその岩との間、離座敷の二三間、中に泉水を
湛
(
たた
)
えた
状
(
さま
)
に、
路一条
(
みちひとすじ
)
、
東雲
(
しののめ
)
のあけて
行
(
ゆ
)
く、
蒼空
(
あおぞら
)
の透くごとく、薄絹の雲左右に分れて
悪獣篇
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
大
(
おおい
)
なる顔を、縁側に
擡
(
もた
)
げて座敷を
窺
(
うかが
)
い、
飜然
(
ひらり
)
と飛上りて
駈来
(
かけきた
)
り、お丹の膝に
摺
(
すり
)
寄れば、
髻
(
もとどり
)
を
絡巻
(
からま
)
ける車夫の手を、お丹
右手
(
めて
)
にて支えながら、
左手
(
ゆんで
)
を働かして、(じゃむこう)の
首環
(
くびわ
)
を探り
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
これが
植込
(
うゑこみ
)
を
遙
(
はる
)
かに
透
(
すか
)
し、
門
(
もん
)
の
外
(
そと
)
からあからさまに
見
(
み
)
えた、と
見
(
み
)
る
間
(
ま
)
もなく、
件
(
くだん
)
の
美少年
(
びせうねん
)
の
姿
(
すがた
)
は、
大
(
おほき
)
な
蝶
(
てふ
)
の
影
(
かげ
)
を
日南
(
ひなた
)
に
殘
(
のこ
)
して、
飜然
(
ひらり
)
と——
二階
(
にかい
)
ではないが——
窓
(
まど
)
の
高
(
たか
)
い
室
(
しつ
)
へ
入
(
はひ
)
つた。
再
(
ふたゝ
)
び
説
(
と
)
く。
みつ柏
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
(
飜然
(
ひらり
)
と飛ぶ。……乱るる
紅
(
くれない
)
、炎のごとく、トンと床を下りるや、
颯
(
さっ
)
と廻廊を
突切
(
つッき
)
る。途端に、五個の燈籠
斉
(
ひと
)
しく消ゆ。廻廊暗し。美女、その暗中に消ゆ一舞台の上段のみ、やや
明
(
あかる
)
く残る。)
海神別荘
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
飜然
(
ひらり
)
と映って、
行燈
(
あんどう
)
へ、中から透いて影がさしたのを、女の手ほどの
大
(
おおき
)
な
蜘蛛
(
くも
)
、と
咄嗟
(
とっさ
)
に首を
縮
(
すく
)
めたが、あらず、
非
(
あら
)
ず、柱に触って、やがて
油壺
(
あぶらつぼ
)
の前へこぼれたのは、
木
(
こ
)
の葉であった、
青楓
(
あおかえで
)
の。
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
十貫、百と
糶上
(
せりあ
)
げるのに、尾を下にして、頭を上へ上へと上げる。……景気もよし、見ているうちに値が出来たが、よう、と云うと、それ、その鯛を目の上へ差上げて、人の頭越しに
飜然
(
ひらり
)
と投げる。
古狢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そのまま、ふわりとして、
飜然
(
ひらり
)
と
上
(
あが
)
った。物干の
暗黒
(
やみ
)
へ影も隠れる。
吉原新話
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「島野、」と呼懸けざま、
飜然
(
ひらり
)
と
下立
(
おりた
)
ったのは滝太郎である。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
蝉はひとりでジジと笑って、
緋葉
(
もみじ
)
の影へ
飜然
(
ひらり
)
と飛移った。
縷紅新草
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と見ると二人の脇の下を、
飜然
(
ひらり
)
と飛び出した猫がある。
悪獣篇
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
一
尺
(
しやく
)
、
金鱗
(
きんりん
)
を
重
(
おも
)
く
輝
(
かゞや
)
かして、
水
(
みづ
)
の
上
(
うへ
)
へ
飜然
(
ひらり
)
と
飛
(
と
)
ぶ。
人魚の祠
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
と、蚊帳を払って、明が
飜然
(
ひらり
)
と飛んで
縋
(
すが
)
った。——
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
飜
漢検1級
部首:⾶
21画
然
常用漢字
小4
部首:⽕
12画
“飜然”で始まる語句
飜然々々