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眞倒
其の
綱を
透し
果つるや、
筋斗を
打ち、
飜然と
飛んで、
土に
掌をつくと
齊しく、
眞倒にひよい/\と
行くこと
十餘歩にして、けろりと
留まる。
觀るもの
驚歎せざるはなし。
支へて、
堅く
食入つて、
微かにも
動かぬので、はツと
思ふと、
谷々、
峰々、
一陣轟!と
渡る
風の
音に
吃驚して、
數千仞の
谷底へ、
眞倒に
落ちたと
思つて、
小屋の
中から
轉がり
出した。
絲を
亂して、
卯の
花が
眞赤に
散る、と
其の
淡紅の
波の
中へ、
白く
眞倒に
成つて
沼に
沈んだ。
汀を
廣くするらしい
寂かな
水の
輪が
浮いて、
血汐の
綿がすら/\と
碧を
曳いて
漾ひ
流れる……