“良(よ)” の例文
見(み)ればそこら中(じゅう)が、きれいな草地(くさち)で、そして恰好(かっこう)の良(よ)いさまざまの樹草(じゅそう)……松(まつ)、梅(うめ)、竹(たけ)、その他(た)があちこちに点綴(てんせつ)して居(い)るのでした。
女郎屋(ぢよらうや)と云(い)ふわけには行(ゆ)かず、まゝよとこんな事(こと)はさて馴(な)れたもので、根笹(ねざさ)を分(わ)けて、草(くさ)を枕(まくら)にころりと寢(ね)たが、如何(いか)にも良(よ)い月(つき)。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
予の眼力の驚くべく良(よ)かった事は、一九一四年『英国菌学会事報』七〇頁と、一九一八年『エセックス野学倶楽部特別紀要』一八頁に
ベンヺ 其(その)カピューレットの例會(れいくわい)に、足下(きみ)の戀(こ)ひ慕(した)ふローザラインが、此(この)ヹローナで評判(ひゃうばん)のあらゆる美人達(びじんたち)と同席(どうせき)するは良(よ)い都合(つがふ)ぢゃ。
器物(きぶつ)としてはつごうが良(よ)いことをも知(し)つたので、青銅器時代(せいどうきじだい)の終(をは)り頃(ごろ)には、混合(こんごう)の歩合(ぶあひ)がたいていこのわりあひになつてをります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
彼(あ)の可愛(かあい)らしい手を出して膝(ひざ)の下(した)を撫(なで)て遣(や)つて居(ゐ)る、あゝ/\可愛(かあい)い児(こ)だ、今(いま)のう良(よ)い薬(くすり)を遣(や)るよ、……煙草(たばこ)の粉末(こな)ぢやア却(かへ)つて可(い)けない
電線の調子の良(よ)し悪(あ)しや、先方の読み方の上手下手に依っても違ったが、それでもこの予感のおかげで叔父の身代はメキメキと殖えて行った。
鉄鎚 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
句の良(よ)し悪(あ)しも畢竟(ひっきょう)、作者の心にあるのであります。作者の心が奥床(おくゆか)しい心であれば自然に奥床しく映じ、奥床しく諷詠するようになります。
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
されど汝の睡りの時疾(と)く過ぐるがゆゑに、あたかも良(よ)き縫物師(ぬひものし)のその有(も)つ織物(きれ)に適(あは)せて衣を造る如く、我等こゝに言(ことば)を止(とゞ)めて 一三九—一四一
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
良(よ)き人の魂のみが天の庭へ上るという信条もあったということで、是もおそらくはまた善縄大屋子の一例と見てよかろう。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
散歩といふものは、病後上(やまひあが)りや、孱弱(ひよわ)な人に良(よ)いばかりでなく、とりわけ一国の大統領や大臣には一等効力(ききめ)があるものだ。
…………家(うち)の物(もの)を泥坊するのは良(よ)く無いが、阿父さんが吝々(けち/″\)してお銭(あし)をお遣りなさらんから、兄さんも意地に成るんだ。
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
送(おく)らば悲(かな)しきことの來(こ)んは目(め)の前(まへ)なり聞(き)かせて心配(しんぱい)さするも憂(う)ければ頼(たの)むは彼(か)の人(ひと)の力(ちから)のみ男(をとこ)の智慧(ちゑ)には良(よ)き考(かんが)へもなからずやと思(おも)ひたてば心(こゝろ)は矢竹(やたけ)
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
父は火のやうに怒(おこ)つて、絹篩にかけた程に柔らかな良(よ)い灰の上層(うはかは)から、ザラ/\した燒土(やけつち)の如き灰を取り棄てるのに、朝飯(あさはん)が晝飯(ひるめし)になるのをも忘れてゐた。
父の婚礼 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
「口笛、武田でねえかな。——曲るど。見つけられたら、良(よ)え模範青年だからな。」そして大きな声で笑った。
不在地主 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
「いやだね、あんたは。そういつもいつも、あたしばっかり攻めなくたって、良(よ)かりそうなもんじゃないの。」
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
良(よ)ッちゃん、心配御無用。あたしは、あんたの味方よ。あんたの気持、あたしには、ちゃあんと、わかっとる。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
「外科が進歩するのも良(よ)し悪(あ)しだ。バラバラ屍体も二、三十分のうちに、元のピンピンした身体に縫いあげられる世の中では、殺人罪が流行(はや)りすぎてイカン」
一九五〇年の殺人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「水は好(え)いもんじゃなあ、麹町(わし)の家(うち)の崖(がけ)に、山吹(やまぶき)が良(よ)う咲いているが、下に水があると好(え)えのじゃが——」
朱絃舎浜子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
『病氣(びやうき)に良(よ)くない、』『雨(あめ)が降(ふ)りさうですから』など宿(やど)の者(もの)がとめるのも聞(き)かず、僕(ぼく)は竿(さを)を持(もつ)て出掛(でか)けた。人家(じんか)を離(はな)れて四五丁(ちやう)も泝(さかのぼ)ると既(すで)に路(みち)もなければ畑(はたけ)もない。
都の友へ、B生より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
良(よ)しや眼前に屍(かばね)の山を積まんとも涙一滴こぼさぬ勇士に、世を果敢(はか)なむ迄に物の哀れを感じさせ、夜毎(よごと)の秋に浮身(うきみ)をやつす六波羅一の優男(やさをとこ)を物の見事に狂はせながら
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
天下万般の学に通じ事に暁(さと)らざるべからず。しかれども一生の間に自ら実験し得べき事物は極めて少数なり。故に多く学び博く識(し)らんと欲せば書籍によるを最(もっとも)良(よ)しとす。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
きりょう良(よ)しのせいか、台所女中でなく、お座敷女中になった少女は、藪入(やぶい)りに家へ帰ってきたときなど、見ちがえるような美しさになっていて、俺をどきどきさせたが
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
むしろ早く思い棄てて更(さら)に良縁を求むるこそ良(よ)けれ、世間自(おの)ずから有為の男子に乏しからざるを、彼一人のために齷齪(あくせく)する事の愚(おろ)かしさよと、思いも寄らぬ勧告の腹立たしく
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
紫陽花色(あぢさゐいろ)の薔薇(ばら)の花、品(ひん)の良(よ)い、心の平凡な樂(たのしみ)ともいふべく、新基督教風(しんキリストけうふう)の薔薇(ばら)の花、紫陽花色(あぢさゐいろ)の薔薇(ばら)の花、おまへを見るとイエスさまも厭になる、僞善(ぎぜん)の花よ、無言(むごん)の花よ。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
「これはあんまり良(よ)すぎる。」と彼女は云つた。「こんな手には何んにも云ふことが出來ない。殆んど筋なしだ。それに、掌には何があるかな? 運命は此處には書いてない。」
「聞けば独り寝の別れの歌を披露しようとて参ったとか。堂上(どうじょう)でも地下(じげ)でも身分は論ぜぬ。ただ良(よ)い歌を奉ればよいのじゃ。名は藻とか聞いたが、父母(ちちはは)はいずこの何という者じゃな」
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
さて、今日(こんにち)から考えて見ても、当時私の身に取って、いろいろな意味において幸福であったと思うことは、師匠東雲師が、まことに良(よ)い華客場(とくいば)を持っていられたということであります。
さるほどに弟も生長して年頃(としごろ)となりしかば、縁ありしを幸(さいわい)として兄はそのため婦(つま)を迎へ遣(や)りしに、この婦心狭くして良(よ)からぬものなりしゆゑ夫に対(むか)ひて、汝(おんみ)はあたかも奴隷(しもべ)のやうなり
印度の古話 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
「済まねえ、済まねえな、良(よ)っちゃん」増田はそら笑いをし、良江の顔を見て頭を振った、「おめえ、初つぁんとこの、良っちゃんじゃねえか、へえー、こいつは大きなおどろきだぜ」
季節のない街 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
額(ひたい)を撫(な)でると氷(こおり)の様に冷(つめ)たいが、地蔵眉の顔は如何にも柔和で清く、心の美しさも偲(しの)ばれる。次郎さんをはじめ此家の子女(むすこむすめ)は、皆小柄(こがら)の色白で、可愛げな、而(そう)して品(ひん)の良(よ)い顔をして居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎、徳冨蘆花(著)
そんな小僧(こぞう)の苦楽(くらく)なんぞ、背中(せなか)にとまった蝿程(はえほど)にも思(おも)わない徳太郎(とくたろう)の、おせんと聞(き)いた夢中(むちゅう)の歩(あゆ)みは、合羽(かっぱ)の下(した)から覗(のぞ)いている生(なま)ッ白(しろ)い脛(すね)に出(で)た青筋(あおすじ)にさえうかがわれて、道(みち)の良(よ)し悪(わる)しも
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
が、彼がそこへ来た途端(とたん)に、彼女は品(ひん)良(よ)く身を起すと、一ぱいになった水甕を重そうに片手に下げたまま、ちらりと彼の顔へ眼をやった、そうしていつになく、人懐しげに口元へ微笑を浮べて見せた。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「有難くなくたって、偽物よりは器量が良(よ)いじゃありませんか」
おもしろき事いふものか米の飯己(し)が嬬(つま)のごともいよよ良(よ)しちふ
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「良(よ)っちゃんは、大島の上下揃えをこしらえたんじゃ。」
窃む女 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
良辰佳会古難並 〔良(よ)き辰(とき)と佳(よ)き会(かい)は古(いにしえ)より並び難し
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
仲が良(よ)いんだか悪(わる)いんだか わからないなあ
わたしの置いて來た良(よ)く切れる大刀(たち)
良(よ)き家(いえ)、良(よ)き妻(つま)
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
香織(かおり)は私(わたくし)よりは年齢(とし)が二つ三つ若(わか)く、顔立(かおだち)はあまり良(よ)くもありませぬが、眼元(めもと)の愛(あい)くるしい、なかなか悧溌(りはつ)な児(こ)でございました。
すれば、當國(このくに)の風習通(ならはしどほ)りに、顏(かほ)は故(わざ)と隱(かく)さいで、最(いっち)良(よ)い晴衣(はれぎ)を着(き)せ、柩車(ひつぎぐるま)に載(の)せて、カピューレット家(け)代々(だい/\)の古(ふる)い廟舍(たまや)へ送(おく)られさッしゃらう。
ナニ大丈夫(だいぢやうぶ)だ、決して左様(さやう)な心配はない良(よ)く喉(のど)が潰(つぶ)れても病気さへ癒(なほ)れば夫(それ)で宜(よ)からう。登「イエ喉(のど)が潰(つぶ)れては困ります。 ...
華族のお医者 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
されど己が願ひに背(そむ)きまた良(よ)き習(ならはし)に背きてげに世に還(かへ)れる後にも、未だ嘗(かつ)て心の面帕(かほおほひ)を釋(と)くことなかりき 一一五—一一七
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
少(すくな)いとかいふことよりも、また珍(めづら)しいものがあるとかないとかいふよりも、その竝(なら)べ方(かた)が良(よ)く出來(でき)てゐるかゐないかといふのできまるのであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
どうして、あんたのような優しい児(こ)が、いかに余所(よそ)に良(よ)いことが出来たとて、さっぱりふいと、こっちを忘れなさるとは思やせなんだが、そこは人情。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「ええね、ええね、なんか嬉しい気がするぞ、今日は良(よ)う弾(ひ)けるかも知れんなあ。あれ、あんなに潮が高くなった。わしゃ、厳島(いつくしま)に行ってること思出しています。ホ!」
朱絃舎浜子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
良(よ)しや其人なりとても、此世の中に心は死して、殘る體は空蝉(うつせみ)の我れ、我れに恨みあればとて、そを言ふの要もなく、よし又人に誠あらばとて、そを聞かん願ひもなし。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
その礼としてはその方身上(しんしょう)良(よ)くなり、奉公をせずともすむようにして遣(や)らんといいたり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
子爵(ししやく)の寵愛(ちようあい)子(こ)よりも深(ふか)く、兩親(おや)なき妹(いもと)の大切(たいせつ)さ限(かぎ)りなければ、良(よ)きが上(うへ)にも良(よ)きを撰(え)らみて、何某家(なにがしけ)の奧方(おくがた)とも未(ま)だ名(な)をつけぬ十六の春風(はるかぜ)、無慘(むざん)や玉簾(たますだれ)ふき通(とほ)して此初櫻(このはつざくら)ちりかヽりし袖(そで)
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)