ます/\)” の例文
婚姻によりて実世界にきんせられたるが為にわが理想の小天地はます/\狭窄なるが如きを覚えて、最初には理想の牙城として恋愛したる者が
厭世詩家と女性 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
朝起きると、父は蒼ざめながらも、まなこだけます/\鋭くなつた顔を、曇らせながら、黙々として出て行つた。玄関へ送つて出る瑠璃子も
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
大豆打でえづぶちにかつころがつたてえに面中つらぢうめどだらけにしてなあ」剽輕へうきん相手あひてます/\惡口あくこうたくましくした。群衆ぐんしふ一聲ひとこゑをはごとわらひどよめいた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
さるほどに、やままたやまのぼればみねます/\かさなり、いたゞき愈々いよ/\そびえて、見渡みわたせば、見渡みわたせば、此處こゝばかりもとを、ゆきふうずる光景ありさまかな。
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
一行はじめて団結だんけつ猛然もうぜん奮進にけつす又足を水中にとうずれば水勢ます/\きうとなり、両岸の岩壁いよ/\けんとなり、之に従つて河幅はすこぶちぢま
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
あるひ飮食店いんしよくてんける揚物あげものあぶらあるひはせるろいど工場こうじようなど、文化ぶんかすゝむにしたがひ、化學藥品かがくやくひんにして發火はつか原因げんいんとなるものが、ます/\えてる。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
すべてをキユビズムでつた書斎も悪くない。この画風が装飾的にのみ意義と効果のある事がます/\うなづかれる。その次には織物や刺繍の図案が目を引く。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
此間このあひだある雑誌で「力」といふ観念について独仏両者を比較したパラントといふ人の文章を読んだ時、自分はます/\其感を深くした。
点頭録 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
かつ性來せいらい記憶力きおくりよくとぼしきは、此等これら病症びやうしやうためます/\その※退げんたいするをかんじ、治療法ちれうはふ苦心くしんせるときたま/\冷水浴れいすゐよくしてかみ祷願たうぐわんせばかなら功驗こうけんあるしとぐるひとあり。
命の鍛錬 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
勝田君かつだくんく。『彼奴きやつだ/\』と、みなくす/\わらふ。自分じぶんのことをわらつたのかと、なきだに無愛想ぶあいさうかほをしたモンゴリアがう事務長じむちやうは、ます/\むづかしいかほをする。
検疫と荷物検査 (新字旧仮名) / 杉村楚人冠(著)
これが又一層不便ふびんを増すの料となつて、孫や孫やと、その祖父祖母の寵愛はます/\太甚はなはだしく、四歳よつ五歳いつゝ六歳むつは、夢のやうにたなごころの中に過ぎて、段々その性質があらはれて来た。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
其尊嚴のます/\尊嚴ならんことを祈り、其神聖の益神聖ならんことを願ひ、苟も全國の安寧を欲して前途の大計に注目する者は、容易に其尊嚴を示す勿れ、容易に其神聖を用る勿れ
帝室論 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
山田やまだます/\親密しんみつになるにけて、遠方ゑんぱうから通ふのは不都合ふつがふであるから、ぼくうち寄宿きしゆくしては奈何どうです、と山田やまだつてくれるから、ねがうても無きさいわひと、すぐきふをつて、郷関きやうくわんを出た
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
自分は氣をかへるためピアノを離れて、取寄せた外國の雜誌を開いたが、插繪の景色けいしよくや流行服の廣告畫なぞ見ると、徒らに堪へ難い當時の追想に沈められるばかりで、ます/\現在の自分が情けなくなる。
新帰朝者日記 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
然るが故に粋は侠を待つて益〻粋に、侠は粋を頼みてます/\侠に、この二者、隠然、宗教及び道教以外に一教門を形成したるが如し。
もし震原しんげん直下ちよつかでなかつたならば、震原しんげんたいして水平すいへい方向ほうこうにも距離きよりくははつてるから、距離きよります/\とほくなるわけである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
何處どこらかあるいてたとえてあしほこりだらけだと」二三にんこゑ戯談ぜうだんかへした。いへ内外うちそとのむつとした空氣くうきます/\ざわついた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
なぜなれば真の貴女きぢよこれ等多数の低級なるうして美質に満ちた婦人の間から将来ます/\発生する事を期待するからである。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
「さうすると、君の様な身分のものでなくつちや、神聖の労力は出来ない訳だ。ぢやます/\る義務がある。なあ三千代」
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
わが國民こくみん今後こんご責任せきにんます/\重大ぢうだいならんとするのとき活動くわつどう根本機關こんぽんきくわんとも身體しんたい攝養せつやうにはもつと注意ちゆういえうす。
命の鍛錬 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
日が、トツプリ暮れてしまつた頃から、嵐はます/\吹き募つた。海は頻りに轟々と吼え狂つた。波は岸を超え、常には干乾びた砂地を走つて、別荘の土堤どての根元まで押し寄せた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
先人のあとをふみつゝ、ます/\その深奥な『自然』に面して勇しく進んで行かなければならない。
小説新論 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
しかりと雖も前途ぜんとけんます/\けんにして、人跡なほ未到のはたして予定にちがはざるなきや、之をおもへば一喜一憂交々こも/\いたる、万艱をはいして前進ぜんしんし野猪のゆうを之れたつとぶのみと、一行又熊笹くまささ叢中さうちうに頭をぼつして
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
彼等が明鏡のうちに我が真影の写るを見て、ます/\厭世の度を高うすべきも、婚姻の歓楽は彼等を誠信と楽天に導くには力足らぬなり。
厭世詩家と女性 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
疾風しつぷう威力ゐりよくさへぎつてつゝんだほのほ退けようとしてその餘力よりよく屋根やね葺草ふきぐさまくつた。たゞち空隙くうげきつてます/\其處そこちからたくましくした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
夜が更けたので次第に客は帰つて行つた。ムネ・シユリイを囲む僕等の一卓だけます/\話がしめやかに進んだ。ムネ・シユリイは幾たび煙草たばこを取つて皆に勧めた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
が、代助がます/\たのむので、では云つてげませうと前置をして、代助のうかしてゐる例を挙げ出した。梅子は勿論わざと真面目まじめを装つてゐるものと代助を解釈した。其中そのなか
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
勝彦の名が瑠璃子の唇を洩れると、勝平の巨きい顔は、ます/\苦り切つてしまつた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
これにてつみ成立せいりつし、だいくわい以後いごはそのつみによりていかなる「ばつ精神的せいしんてきばつ心中しんちうおに穿うがでゝます/\せいます/\めうなり。多言たげんするをこのまず。
罪と罰(内田不知庵訳) (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
その級友きふいう動作どうさべつ自分じぶんちがつたところもないやうなのをて、かれます/\馬鹿々々ばか/\しいおこした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
吾人ごじんの面目を燎爛れうらんせんとするこそます/\面倒なれ、比較するだにかしこけれど、万乗には之を崩御ほうぎよといひ、匹夫ひつぷには之を「クタバル」といひ、鳥には落ちるといひ、魚には上がるといひて
人生 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
遂に其宿因よりして却つて八英雄を得るに至らしめたる禍福の理法、ます/\明らかなり。
はや三じやくあまりのながさになつたので、其所そこふでいたが、公案こうあんくるしめられてゐることや、坐禪ざぜんをしてひざ關節くわんせついたくしてゐることや、かんがへるためにます/\神經衰弱しんけいすゐじやくはげしくなりさうなこと
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
そのうちあめます/\ふかくなつた。いへつゝんで遠いおときこえた。門野かどのて、すこさむい様ですな、硝子戸がらすどめませうかといた。硝子戸がらすどあひだ二人ふたりかほそろえてにはの方をてゐた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
其内そのうちうすしもりて、うら芭蕉ばせう見事みごとくだいた。あさ崖上がけうへ家主やぬしにははうで、ひよどりするどいこゑてた。夕方ゆふがたにはおもていそ豆腐屋とうふや喇叭らつぱまじつて、圓明寺ゑんみやうじ木魚もくぎよおときこえた。ます/\みじかくなつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)