てん)” の例文
旧字:
井戸は小屋をかけかはやは雪中其物をになはしむべきそなへをなす。雪中には一てん野菜やさいもなければ家内かない人数にんずにしたがひて、雪中の食料しよくれうたくはふ。
小鳥ことりつたこともないという、ごうつくばりの因業いんごうおやじが、なぜ金魚きんぎょになつたか、そのてんにも問題もんだいがないことはない。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
おこがましい申分もうしぶんかはぞんじませぬが、そのてん御理解ごりかい充分じゅうぶんでないと、地上ちじょう人類じんるい発生はっせいした径路いきさつがよくおわかりにならぬとぞんじます。
それは、普通ふつうのほたるよりもおおきさが二ばいもあって、あたまには、二つのあかてんがついていましたが、いろは、ややうすかったのであります。
海ぼたる (新字新仮名) / 小川未明(著)
今日きょうも、ローズ・ブノワさんは読方よみかたならったところをちっとも間違まちがえずに諳誦あんしょうしました。それで、いいおてんをいただきました。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
菊亭家きくていけ武田家たけだけとは、ふかい血縁けつえんのある家すじである。その晴季からなんの便たよりであろうかというてんも、伊那丸には、むねおどろしく感じられる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
世間せけんからては、病的びやうてき頭脳づのう狂人きちがひじみた気質きしつひともないことはなかつた。竹村自身たけむらじしんにしたところで、このてんでは、あま自信じしんのもてるはうではなかつた。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
まずなにごとよりもさきに、お政が胸に浮かぶのは、気違いの母がどんなふうにしてなくなったかというてんである。
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
と、これはよくったことばです、智者ちしゃ哲人てつじん、もしくは思想家しそうかたるものの、他人たにんことなところてんは、すなわちここにるのでしょう、苦痛くつうかろんずるとうことに。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
私は、それでは俳句ではない、という事を申しましたが、それにはてんが行かないようでありました。
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
「何、大丈夫だ」と云いながら高柳君はとがった肩を二三度ゆすぶった。松林を横切って、博物館の前に出る。大きな銀杏いちょう墨汁ぼくじゅうてんじたような滴々てきてきからすが乱れている。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
是より一行又かはさかのぼり、れて河岸かはぎし露泊ろはくす、此日や白樺の樹皮をぎ来りて之を数本の竹上にはさみ、火をてんずれば其明ながら電気灯でんきとうの如し、鹽原君其下そのしたに在りて
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
老人ろうじんつえると、二人はちゅうんで、すぐにその高い山の上にきました。王子はそこのいわの上に立ってながめました。しろや町はもうひとつのてんぐらいにしか見えませんでした。
強い賢い王様の話 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
もちろん、そのためにからだがいがあってはなんにもならないが、そのてん自信じしんがあったのだ
自己の心のえどころこそ成敗をはか尺度しゃくどであって、この尺度ががらぬ以上は、いかなる失敗に遭遇そうぐうしても心にうれうることがない、これ霊丹れいたんりゅう、鉄をてんじてきんと成すものか。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
どうぢや目茶めちやくちやなてんだつて ある距離きよりから見ると そんなにまつすぐに見えるんぢや
其死が夫人おくさん、あなたをはじめとして全世界に彼様あん警策けいさくを与えることが出来たでしょう乎。あの最後さいご臨終りんじゅうあるが為に、先生等身の著作、多年の言説に画竜がりゅうせいてんじたのではありますまい乎。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
ところ石町こくちょう鐘撞堂新道かねつきどうしんみち白紙はくしうえに、ぽつんと一てん桃色ももいろらしたように、芝居しばい衣装いしょうをそのままけて、すっきりたたずんだ中村松江なかむらしょうこうほほは、火桶ひおけのほてりに上気じょうきしたのであろう。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
おもひつるひたしのこゝろ一途いちづになりぬさりながらこゝろこゝろほかとももなくて良之助りやうのすけうつるものなんいろもあらずあいらしとおもほかてんのにごりなければわがひとにありともらずらねばきを
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
毛なみはつやつやしていて、お日さまの光をうけると、きれいにかがやきました。つめはおさめていました。目は灰色はいいろで、まんなかに小さな黒いてんが見えました。見るからにおとなしそうな黒ネコです。
こんどの旅行りょこうではじめて鉄道てつどうにのって、そのべんりなことがわかり、すべてのてんで、西洋せいようがすすんでいることをじっさいにしったので、諭吉ゆきちは、政治せいじのやりかたについても、きょうみをもちました。
祈祷の台の側には荊の冠を戴いたクリストの画像を懸けて、その前に小さい燈火ともしびてんじてある。室内には油と汗と土との臭が充ちてゐる。女には室内の一切の物が気に入つた。此臭までが気に入つた。
画龍点睛がりゅうてんせいという言葉がある。龍をえがいて眼をてんずる! この点睛に相違ない。『しとう』というのは『指頭しとう』のことだろう。指先ということに相違ない。『きようだ』というのは『強打』なんだろう。
南蛮秘話森右近丸 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
時にてんとなり、うつくしき虫となり
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「私もてんの仲間になりたいものだ。」
現代訳論語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
こまたけふもと大湯村と橡尾とちを村の間を流るゝたに川を佐奈志さなし川といふ、ひとゝせ渇水かつすゐせし頃水中に一てんの光あり、螢の水にあるが如し。
「だって、ぼく、わるいおてんだと、あたらしい洋服ようふくなどていって、ずかしいんだもの。」と、二郎じろうちゃんは、きまりわるそうに、いいました。
小さな妹をつれて (新字新仮名) / 小川未明(著)
わたくしはただ自分じぶんうかがいましたままをおつたえするだけでございますから、そのてんはよくよくおふくみのうえ取拾しゅしゃしていただぞんじます。
「ちがうよ。なにない。そのてんはこつちでも不思議ふしぎおもつているくらいだ。なにつていることはないのかい」
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
そのあいだに、いま申した疑問ぎもんてんをとうほうでもじゅうぶんに取り調しらべておくから、それまで待てと申すのだ
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
学校からかえってると、エムリーヌ・カペルさんは、いいおてんをいただいたということをお母さんにおはなししました。それから、そのあとでこういいました——
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
土饅頭どまんじゅうぐらいな、なだらかなおか起伏きふくして、そのさきは広いたいらな野となり、みどり毛氈もうせんをひろげたような中に、森や林がくろてんおとしていて、日の光りにかがやいてる一筋ひとすじの大河が
強い賢い王様の話 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
主人は細君をそれほどおもんじてはいないが、ただ以上いじょうてんをおおいにけいしている。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
みんなは、こんなりっぱな夜の宿やどが見つかったことを、心から喜びました。と、そのとき、仲間のひとりが、暗いすみっこのほうに、キラキラしたみどりてんが、いくつも光っているのを見つけました。
このてんから見ると主人の痘痕あばた冥々めいめいうちに妙な功徳くどくを施こしている。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その硝子ガラスの一てん日光につくわうきんひかつてる。
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
てんよ、お前はどうだ。」
現代訳論語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
こまたけふもと大湯村と橡尾とちを村の間を流るゝたに川を佐奈志さなし川といふ、ひとゝせ渇水かつすゐせし頃水中に一てんの光あり、螢の水にあるが如し。
はっとおもって、その一てん凝視ぎょうしすると、一ぴきのとかげが、かえるをくわえて、すぐちかくの煉瓦れんがかべに、どこからかはいてきたのでした。
そのてん充分じゅうぶんふくみをねがってきます。機会きかいがありましたら、だれかの臨終りんじゅう実況じっきょうしらべに出掛でかてもよろしうございます。
なに、あの小僧こぞうは、白痴はくちのように見えてざかしいところがあり、悧巧りこうに見えてのぬけているてんがある。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
老人ろうじんころされたのは、その五よるだつたから、あさよるとのちがいはあつても、おな金魚屋きんぎょやつて老人ろうじんつたというてんが、なんとなく意味いみありかんじられる。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
エムリーヌ・カペルさんも、算術さんじゅつ時間じかんがよく出来できたので、いいおてんをいただきました。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
精神病者せいしんびょうしゃ相違そういないけれど、花前はなまえが人間ちゅうの廃物はいぶつでないことは、畜牛ちくぎゅういっさいのことをべんじて、ほとんどさしつかえなきのみならず、あるてんには、なみの人のおよばぬことをしている。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
その輪は次第に一てんに縮まらんとす。
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
かくせざればうちしみつきてふみへしたる処そのまゝ岩のごとくになるゆゑ也。晒場さらしばには一てんちりもあらせざれば、白砂しろすな塩浜しほばまのごとし。
本屋ほんやの二かいで、学校がっこうごっこをやっていたのさ、ぼくは、算術さんじゅつが七てんで、かたが八てんで、三ばんだ。えらいだろう。」と、しょうちゃんは、いいました。
ねことおしるこ (新字新仮名) / 小川未明(著)
「湯をてんぜよ」
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まさちゃんは、うまくけて、いいおてんをもらったら、おばあさんのところへおくってあげて、せようとおもったので、一所懸命しょけんめいきはじめました。
政ちゃんと赤いりんご (新字新仮名) / 小川未明(著)
しかるにかのこやしのそりを引てこゝに来り、雪のほかに一てん目標めじるしもなきに雪をほること井を掘が如くにしてこやしを入るに、我田の坪にいたる事一尺をもあやまらず、これ我が農奴等のうぬらもする事なり。