文句もんく)” の例文
馬鹿野郎ばかやらうなにをしてる。まるで文句もんくわからないから、巖谷いはやくるまけつけて、もううちてゐるんだ。うつそりめ、なにをしてる。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そして、ナイチンゲールはたいそう美しい声で歌をうたいましたので、だれもこの鳥には、すぐに文句もんくの言いようがありませんでした。
「だけど、時計とけいをなおしてくれるのに文句もんくをいうつもりはないよ。けっこうだよ。なおしてもらおう。きみ、さっそく、やってくれたまえ」
何がどうとかしてござりんすと云う、大へんな小唄である。文句もんくも話した時は覚えていたが、もうすっかり忘れてしまった。
田端日記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ルイザはクラフト家の人たちのすぐれていることを文句もんくなしにいつもみとめていたから、おっとしゅうと間違まちがっているなどとはゆめにも思っていなかった。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
「全くだ。自分が病気をして金を借りて、その金が返せねえから、嚊を抵当に取られちまったんだから、正直のところ文句もんくの附けようがねえ」
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「ノロこう、てめえにできるんなら、おれに文句もんくはねえ。だが、そいつをなくすんじゃあねえぞ!」と、アラシは言いました。
横合よこあいから飛びだしゃあがって、なにをてめえなんぞの知ったことか。いたふうな文句もんくをつける以上いじょうは、この喧嘩けんかを買ってでるつもりか」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ふくろじゃねえよ。おいらのせるなこの中味なかみだ。文句もんくがあるンなら、おがんでからにしてくんな。——それこいつだ。さわったあじはどんなもんだの」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
これから、この文句もんくは、なが北国ほっこくのこって、子供こどもたちが、いまでも夕焼ゆうやぞらると、そのうたをうたうのであります。
北の不思議な話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
いうまでもなくこのげいは、新吉しんきちがもと鍛冶屋かじや小僧こぞうだったので、それから思いついた芸で、歌の文句もんくの「たたけやたたけ、はげあたま」というのは
曲馬団の「トッテンカン」 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
竜之助は、お浜の例の我儘わがままな突っかかりが始まったと思うたが、今日はそんなおど文句もんくに対して思いのほか冷淡で
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ばんになると倶楽部くらぶっては玉突たまつきをしてあそぶ、骨牌かるたあまこのまぬほう、そうして何時いつもおきまりの文句もんくをよく人間にんげん
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
手紙は書きをはらずにめたものらしく、引きいた巻紙まきがみと共に文句もんく杜切とぎれてゐたけれど、読みるだけの文字で十分に全体の意味を解する事ができる。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
お礼をしなくても、牛や馬は、べつだん文句もんくをいわないからであります。だが、これは不公平な、いけないやり方である、と和太郎さんは思っていました。
和太郎さんと牛 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
猫の「をらだな」はらぬならば、「わ自由」はすなわち我が思うままということで、この文句もんくを踊の歌として覚えている人は喜界島以外には無いだろうが
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
うした地主ぢぬしにばかり出會であはしてれば文句もんくいなどたはむれつゝ、其方そのはう發掘はつくつかゝつたが、此所こゝだ三千年せんねんらいのつかぬところであつて、貝層かひそう具合ぐあひ大變たいへんい。
ヂョウジアァナは「御機嫌ごきげん如何?」と云つて、二言三言私の旅行のことや、天氣その他のおきま文句もんくを、どちらかと云ふとまだるい、ものうげな調子で附け加へた。
其處そこほねひとく』といふ文句もんくそれ自身じしんがふら/\と新宿しんじゆく停車場ていしやぢやういたのは六月二十日の午前ごぜん何時であつたかわすれた。かく一汽車ひときしやおくれたのである。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
その文句もんくは、むかし大學者だいがくしやたちも、わからないとまをしてゐる、むつかしいもので、これからさき、あなたがたのうちから、説明せつめいしてくださるひとが、るかもれません。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
工場の中を見ないうちに、このおきまり文句もんくをぶっぱなすところが、主席の得意なおどかしの手だった。
しやあはれな勞働者は其の唄のをはらぬうち惡魔あくまのやうな機械の運轉うんてん渦中くわちう身躰からだ卷込まきこまれて、唄の文句もんくの其のとほり、ながくもない生涯しようがいをはりげたのではあるまいか。
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
其他そのほかいづれも断片だんぺんで、文句もんくもとより拙劣せつれつたゞおどるまゝにペンをはしらせたものとしかえぬ。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
ちと御呵おしかあそばしてくださりませときま文句もんくはなたすれど學士がくしさらにもめず、そのおさなきがたつときなり、反對はんたいはねかへられなばおたみどのにも療治りようぢが六ツかしからん
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ニッコリ笑って、呆気あっけに取られている六人へ、不思議な、呪文じゅもんみたいな文句もんくとなえはじめた。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
そして「しっかり走れ」という言葉を、きま文句もんくのように、みなは口々にくりかえしました。
兎と亀 (新字新仮名) / ロード・ダンセイニ(著)
文句もんく色々いろ/\へて、あるひつよく、あるひよわく、あるひのゝしり、あるひはふざけ、種々樣々しゆ/″\さま/″\こといてやつた。中途ちうとへたたれてはまつたてき降伏かうふくするわけだから、れい持藥ぢやくのつもりで毎日まいにちいた。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
さうつちめえばさうだがなよ、そんだつて同胞きやうでえ一噺ひとはなしもねえなんてあと文句もんくはれても、だまつてちやおめえくちけめえな、そんだかららおめえげ耳打みゝうちしてくべとおもつたんだな
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
やう文句もんくで、隨分ずゐぶん奇妙きめうな、おそらくは新派しんぱ先生せんせい一派いつぱから税金ぜいきん徴收とりさうなではあつたが、つきあきらかに、かぜきよ滊船きせん甲板かんぱんにて、大佐たいさ軍刀ぐんたうつか後部うしろまはし、その朗々らう/\たる音聲おんせいにて
アーサはやがてお話のこらずを心の目にうかべるようになった。わたしはできるだけ一々の細かい話を説明せつめいした。かれがすっかり興味きょうみを持ってきたときに、わたしたちはいっしょに文句もんくをさらった。
琴婆さんは蓄音器の返礼へんれいにと云って、文句もんくは自作の寿ことぶきを唄うて居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
船頭の三吉は、お燗番の卯八の文句もんくに取合ふ樣子もありません。
うた文句もんくはよくはかりませんでしたが
しっぺい太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
文句もんくはずに、さッさとかへ
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
とくさんも、ひとこころめないほど馬鹿ばかでもなかろう。どのような文句もんくいたふみらないが、そのふみぽんで、まさか二十五りょう大金たいきんすまいよ
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
親父おやぢだのお袋だのの稽古してゐるのを聞き覚えたのである。その文句もんくなんでも観世音菩薩くわんぜおんぼさつの「庭にとしゑんじゆこずゑ」に現れるとかなんとか云ふのだつた。
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
むらさき色のへ、金泥きんでい地蔵じぞうさまのおすがたが刷ってある。そしてそのわきには、こんな文句もんくが書いてあるのだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ばんになると倶樂部くらぶつては玉突たまつきをしてあそぶ、骨牌かるたあまこのまぬはうさうして何時いつもおきまりの文句もんく人間にんげん
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
そして、このあたりの人間たちからこわがられていることは、じぶんでもよく知っていました。そのじぶんにむかって、なんというおどし文句もんくでしょう。
ぼくは下宿げしゅくにかえると、さっそくくすり調合ちょうごうにかかったんだ。そこへ前からぼくのことをうさんくさい目でみていた下宿げしゅくのおやじが、文句もんくを言いにきたんだ。
学生生活程気楽なものはないと文句もんく何度なんどかへされた。三四郎は此文句もんくを聞くたびに、自分の寿命もわづか二三年のあひだなのか知らんと、盆槍ぼんやり考へ始めた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「しかし文句もんくはいひますもののね、震災しんさいときは、このくらゐな泥水どろみづを、かぶりついてみましたよ。」
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
このひとうた名高なだかかつたので、うたによつて、いろ/\に文句もんくかはつてつたはつてゐます。このうたにも、五番ごばんめのが、『かこのみなとゆ』といふふうにいたほんもありました。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
其樣そんところかへるにあたるものかちつともおつかないこといからわたしうちなさい、みんなも心配しんぱいすることなん此子このこぐらゐのもの二人ふたり三人さんにん臺所だいどころいたならべておまんまべさせるに文句もんくるものか
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
わたくしたゞちに鉛筆えんぴつをとつて一書いつしよしたゝめた。書面しよめん文句もんくうである。
アーサはその読み声について文句もんくをくり返した。
雲飛うんぴ驚愕びつくりして文句もんくない。
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
きぬのハンカチの文句もんく
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
家の裏で——御厨みくりやの野武士をよんでくるぞ——と現にあいつが、おど文句もんくをいったことまでお聞かせすると、ウームそうかと、びっくりしたご様子でした
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これは吉原よしはらの焼け跡にあつた無数のり紙の一つである。「舟の中にります」と云ふのは真面目まじめに書いた文句もんくかも知れない。しかし哀れにも風流である。