堅固けんご)” の例文
一つの家でも一つの社会でも、親子の結びつきの堅いところには、おのずから堅固けんごな生活の基礎がすえられるように思われます。
親子の愛の完成 (新字新仮名) / 羽仁もと子(著)
船体はうまいぐあいに泥堆でいたいに乗ったらしくて、意外に堅固けんごなようすをみせ、吉之丞が案じていたようなことにはならずにすんだ。
呂宋の壺 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
谷川たにがはからあがつてさしつたとき手足てあしかほひとぢやから、おらあ魂消たまげくらゐ、お前様まへさまそれでも感心かんしんこゝろざし堅固けんごぢやからたすかつたやうなものよ。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
こゝにマッカリオあり、こゝにロモアルドあり、またこゝに足を僧院の内に止めて道心堅固けんごなりしわが兄弟達あり。 四九—五一
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
永い間まもって来た堅固けんごな城壁も——海抜七千尺に近いこの高原を囲む重畳ちょうじょうたる山岳も——空爆の前には何の頼みにもならなかったのである。
雲南守備兵 (新字新仮名) / 木村荘十(著)
どんどん柱が立ったところで、それを横につらねて、堅固けんごな壁が出来ます。そうして一区画くかくずつ出来上ると、こんどは排水はいすい作業をやります。
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
勿論もちろん外形ぐわいけいあらはれてもなにいぶかしいてんはないが、すこしくわたくし異樣ゐやうおぼえたのは、さう噸數とんすう一千とんくらゐにしてはその構造かうざうあまりに堅固けんごらしいのと
その本国に来て見れば〔おのずから〕公明正大、優しき人もあるものだと思て、ます/\平生へいぜいの主義たる開国一偏の説を堅固けんごにしたことがある。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
私は自分には何か自分自身を誇示するやうな要素があるのではないかと疑つた。私は益ゝ堅固けんごに自分を鎧ふことに努力した。
母たち (新字旧仮名) / 神西清(著)
「それは物置ものおきにあるたこでは不十分だ、だがさらに大なる、さらに堅固けんごなものに改造したら、だいじょうぶだと思う」
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
と、思返おもひかへしたものゝ、猶且やはり失望しつばうかれこゝろ愈〻いよ/\つのつて、かれおもはずりやう格子かうしとらへ、力儘ちからまかせに搖動ゆすぶつたが、堅固けんご格子かうしはミチリとのおとぬ。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「おお、お綱殿にも堅固けんごにして、どうぞ、無事に、お父上に会われてまいるよう、鴻山も、蔭ながら祈りますぞ」
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そんなに堅固けんごな、のほどのらない、てつというものが、この宇宙うちゅう存在そんざいするのか? おれは、そのことをすこしもらなかった。」と、盲目めくらほしはいいました。
ある夜の星たちの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
勘次かんじ監督かんとくつぼみ成長せいちやうとゞめるひやゝかな空氣くうきで、さうしてこれねらふものを防遏ばうあつする堅固けんご牆壁しやうへきである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
それは畢竟ひっきょうチベットの地勢の堅固けんごなる事を知らぬからで、もしチベット国の地勢の堅固なる事を知り、そうして確かに露国のような人間が入ったと聞いたならば
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
この古い石のおしろ城壁じょうへき堅固けんごなうえに、ネズミの通れるような道がほんのわずかしかありません。
役人にしてその位地が堅固けんごなりと思うあいだは随分勝手かってな口をきき、いつめても天下を濶歩かっぽする意気込みを現すも、一たび辞職を勧告さるればたちまち態度を変え
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
引寄ひきよせ十分に食終くひをはり夫より悠然いう/\と幸手宿へ立歸り此由を三五郎にはなし密かにしめし合せ彼等の子分が金兵衞のかたきねらひ來る時は斯樣々々かやう/\手配てくばりを成して用心堅固けんごに居たりけり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
みこのゆったしばがきなぞは、いかに堅固けんごにゆいまわしてあろうとも、おれがたちまち切り破って見せる。焼きはらって見せてやる」と歌いました。みこはどこまでも負けないで
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
石棒なるものは抑なんの用にきやうせしものか、諸説しよせつ有りと雖も何れも堅固けんごなる根據こんきよを有せず。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
必ずしも十襲じっしゅう珍蔵というほどではなくとも、物が堅固けんごなだけに重代の品が多く、従ってどうして手に入れたか、どこの海岸へ漂着したものかを、今となっては尋ね知ることがかたい。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
さしもに堅固けんごな王子の立像も無惨むざんな事にはいしずえをはなれてころび落ちてしまいました。
燕と王子 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
くまばちふる土塀どへい屋根やねしたのやうなところにおほきなをかけますが、地蜂ぢばちもそれにおとらないほどの堅固けんごなもので、三がいにも四かいにもなつてて、それがうるしはしらさゝへてあります。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
しか月々つき/″\自分じぶんはうからおくるとすると、今日こんにち位置ゐち堅固けんごでない當時たうじはなは實行じつかうしにくい結果けつくわおちいりさうなので、くるしくはあつたが、おもつて、半分丈はんぶんだけ叔父をぢわたして、何分なにぶんよろしくとたのんだ。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
さうふやうにかんがへてると、我國わがくに經濟界けいざいかい基礎きそ堅固けんごのものにらずして早晩さうばん變動へんどうすべき状態じやうたいのものであつたので、あたかひと自分じぶん收入しうにふでは生計費せいけいひ不足ふそくぐるをもつ毎月まいつき借入金かりいれきんをして
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
そなたはやはりそなたで、あの愁歎なげきそなた愁歎なげきであったなら、それはみなローザラインのためであったに、なりゃ、そのこゝろかはったか? すれば、このとなへしめ……をんなこゝろうつはず男心をとこごころさへも堅固けんごにあらず。
「さあさあ、これへ——堅固けんごで、相変らずの高評、お目出たいな」
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
関翁は始終しじゅう一行いっこう殿しんがりとして、股引ももひき草鞋わらじしりひきからげてつえをおともにてく/\やって来る。足場の悪い所なぞ、思わず見かえると、あと見るな/\と手をふって、一本橋にも人手をらず、堅固けんごに歩いて来る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「それは何より、では両方! しかし堅固けんごなこのろうを……」
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
谷川から上って来さしった時、手足も顔も人じゃから、おらあ魂消たまげたくらい、お前様それでも感心にこころざし堅固けんごじゃから助かったようなものよ。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これすなわち、わが国が、完全なる防空力を有する地殻ちかく及び防空硬天井ぼうくうこうてんじょうの下に、かくの如く地下千メートルの地層に堅固けんごなる地下街を建設したことによって
と、そう思返おもいかえしたものの、やはり失望しつぼうかれこころにいよいよつのって、かれおもわずりょう格子こうしとらえ、力儘ちからまかせに揺動ゆすぶったが、堅固けんご格子こうしはミチリとのおともせぬ。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
彼女は、眼のまえをへだてている闇の古池を見、彼方かなた堅固けんごなる建物を眼に見ながらも、この機会と天祐てんゆうにたいして、だめだと思う気はすこしも出て来なかった。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あら仕廻しまう故清兵衞は先へ立サア/\遠慮ゑんりよなしに奧へ/\と兩人をともなひ行先久々にての對面たいめん互ひに堅固けんごにて目出たしと挨拶あいさつに及ぶ中早や商賣柄しやうばいがらとは云ながら女房も如才じよさいはなく酒と肴を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
意志さえ堅固けんごなれば、賢愚けんぐを問わず、百難前にせまっても、これをおかして断行する。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
さひわひにも艇中ていちうには端艇たんてい本船ほんせん引揚ひきあげるとき使用しようする堅固けんごなる鐵鎖てつぐさりと、それに附屬ふぞくして鉤形つりばりがたの「Hookフツク」がのこつてつたので、それをはづして、フツク只今たゞゐま小鰺こあぢつらぬいてやをら立上たちあがつた。
もっともあなたの信心が堅固けんごでその道を変えないからしてこういう功徳くどくを得られたのでございましょうけれども、とにかく仏様がかくまで御まもり下されたのはありがたい事でございます
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
てつという、堅固けんごなものが存在そんざいして、自分じぶん反抗はんこうするようにかんがえたからです。
ある夜の星たちの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それから主人しゆじんからは給料きふれう以外いぐわい賞與しやうよがあつたりするのですこ堅固けんごにすれば
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
さうして到底たうていまたもとみちかへ勇氣ゆうきたなかつた。かれまへながめた。まへには堅固けんごとびら何時いつまで展望てんばうさへぎつてゐた。かれもんとほひとではなかつた。またもんとほらないでひとでもなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
國民こくみん消費節約せうひせつやく徹底的てつていてきにして、それがあきらか外國貿易ぐわいこくぼうえきうへあらはこれつて金解禁きんかいきん出來できたことをかんがへてると、今日こんにちたゞち日本にほん經濟界けいざいかい堅固けんごになつたとははれないけれども、この財政ざいせい整理緊縮せいりきんしゆく
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
警官隊が駈けつけたが、そのウルランド氏を堅固けんご硝子函ガラスばこの中から救いだすには、まる一日かかった。
見えざる敵 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「市松(福島)は、きょう見て来た小牧の敵塁のうち、どこの備えが、もっとも堅固けんごに見えたか」
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『まあ、みにくさかなですこと。』と少年せうねん氣味惡きみわるさうに、その堅固けんごなる魚頭かしらたゝいてた。
うかゞそつ起出おきいで押入おしいれの中に有る箪笥たんす抽斗ひきだしを開け金をうばひ取らんとなせしかど錠前ぢやうまへ堅固けんごなれば急にあける事かなはず其中に十二歳なるむすめ不※ふとさま母樣かゝさんれ直助がと云ふ聲聞き立石が枕邊まくらべにある刀を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
いつのころか、ここはカトリックの修道院しゅうどういんになって、道徳堅固けんごな外国の僧侶そうりょたちが、女人禁制きんせいの、清い、きびしい生活を送り、朝夕、聖母せいぼマリヤに対する礼拝れいはいを怠らない。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
(——奥村助右衛門尉、粉骨ふんこつを尽して働き、堅固けんごに持ちこたえられた由)
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そういうときには、どんな堅固けんごな潜水扉も卵をおしつぶすようにやられてしまう
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「いや、いくら咲耶子さくやこでも、この堅固けんごをやぶっては逃げられまい」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)