はい)” の例文
あるのこと、むすめは、やまはやしなかへいつものごとくはいってゆきました。すると一のかわいらしい小鳥ことりが、いいこえいていました。
ふるさとの林の歌 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ラプンツェルは、まだ一も、おとこというものをたことがなかったので、いま王子おうじはいってたのをると、はじめは大変たいへんおどろきました。
この炬燵こたつやぐらぐらいの高さの風呂にはいってこの質素な寝台の上に寝て四十年間やかましい小言こごとを吐き続けに吐いた顔はこれだなと思う。
カーライル博物館 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
茫然ぼんやりしてると、木精こだまさらふぜ、昼間ひるまだつて用捨ようしやはねえよ。)とあざけるがごとてたが、やがいはかげはいつてたかところくさかくれた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
どうぞ是非ぜひ一ついていただきたい、とうのは、じつはそうわけであるから、むしろきみ病院びょういんはいられたほう得策とくさくであろうとかんがえたのです。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ぽんの大きな木の、うつろになった中にはいって、いぬどもを木のまわりにあつめて、たくさんたきをして、そのばんねむることにしました。
忠義な犬 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
昨日の続きの仕事をして居たが昼頃から少し頭痛がし出した。湯にでもはいつて来ようと思つて、七瀬と八峰をれて湯屋へ行つた。
六日間:(日記) (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
いろんな事をつてやアがる、て/\、ウームアヽ痛いウム、オイおくま躯中からだぢゆうしびれて……こつちへはいつて背中せなかを二ツ三ツたゝいてくれ。
いよいよ江藤さんは妾になったという噂が誰の口からともなく起って、朋輩の者皆んな喧噪やかましく騒ぎ立てた、遂に係の技手の耳にはいった。
二少女 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
「さうして下さい。」と常子は始終女中の上つてくるのを気にしながら「わたしお湯にはいつて来ます。一しよに入りたいんだけれど。」
来訪者 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
駄賃が少し余計にはいったりなんかすると、すぐ酒をひっかけて来る。そんなときは何時いつもの無口屋が、とてものおしゃべりになってしまう。
戦争雑記 (新字新仮名) / 徳永直(著)
「時間器械の部屋の中というと、あの焼跡の地下室にすえけてある、あれのことだね。君が僕にはいれといったあの器械の中のことだね」
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その部屋には、兩端に壁爐かべろがあり、天井からはシャンデリアが下つて、壁の上の方に樂器がはいつてゐる小さな赤い戸棚があつた。
帽子屋ばうしやは、福鼠ふくねずみつて、あとからつゞいて法廷ほふていはいつてた三月兎ぐわつうさぎて、『三ぐわつの十四だつたとおもひます』とひました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
「ウームなるほど。すると、おれがまた人穴城ひとあなじょうはいりこむと、さっそく、小太郎山からやつらがドッと攻めかけてくるわけだな」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今年の四月頃から懐妊の気味で、其の前から出るのはいるのと言つて居たが、愈々いよいよ上京の話が決ると、『わたしばかり置いて行くのかえ、おつかさん』
(新字旧仮名) / 田山花袋(著)
そして大留だいとめのうちにも種々な術策が方々で行なわれていることが漠然と彼の頭にはいって、それが一層彼の心を臆病ならしめた。
少年の死 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
いま、このあたらしくはいって仲間なかま歓迎かんげいするしるしに、立派りっぱ白鳥達はくちょうたちがみんなって、めいめいのくちばしでそのくびでているではありませんか。
其後そのご支那しなから、道教だうけう妖怪思想えうくわいしさうり、佛教ぶつけうとも印度思想いんどしさうはいつてて、日本にほん化物ばけもの此爲このため餘程よほど豊富ほうふになつたのである。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
れるだらうから、此方こつちはいつたらからうとすゝめ、菓子くわしなどをあたへてうちに、あめ小歇こやみとなり、また正午ひるちかくなつた。
わたくしどもとても、幽界ゆうかいはいったばかりの当座とうざは、なにやらすべてがたよりなく、また飽気あっけなくおもわれて仕方しかたがなかったもので……。
親父の入れると云ふ學校にもはいらず、毎日ぶら/″\して、好きな小説に讀み耽つて二三年間と云ふもの、怠け者のやうに要領を得ずに暮した。
自伝 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
その間に鉄の腕は狼の腹まではいり、狼は苦しまぎれに鉄の腕骨をくだきたり。狼はその場にて死したれども、鉄もかつがれて帰りほどなく死したり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
ここも同じく、人の手のはいった様子がないので、草やつる伸放題のびほうだい、入って行くのも一寸ちょっと気味がるいほどであった。
怪物屋敷 (新字新仮名) / 柳川春葉(著)
やまくづして、それに引添ひきそふやうにてられたこのいへの二かいからは、丁度ちやうどせまらぬ程度ていどにその斜面しやめんそらの一とが、仰臥ぎやうぐわしてゐるわたしはいつてる。
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
「卵なんぞぜいたくなものが、おもてに使えるかい、ぼけなすめ!」波田は一撃のもとに、卵なんぞ「おもて」の者の口にはいりかねることを教えられた。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
水をかい込むのが面倒で、一週間もかしてははいり沸かしては入りした。五日目位からは銭湯の仕舞湯以上に臭くなり、風呂の底がぬる/\になった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
はいりしなに郵便箱をあけると桃色の此頃よく流行はやる様な封筒と中実なかみを一緒にした様なものが自分の処へ来て居た。
千世子(二) (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
うそまことか九十九辛棒しんぼうをなさりませ、きくのおりき鑄型いがたはいつたおんなでござんせぬ、またなりのかはることもありまするといふ、旦那だんなかへりときい朋輩ほうばいをんな
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あのちひさな建築技師けんちくぎしが三がいも四かいもあるてゝ、一かいごと澤山たくさん部屋へやつくるのですから、そこには餘程よほどあはせたちからといふものがはいつてるのでせう。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
無論發起人でないから、隨分異存もあつたのですが、まあはいつても差支なからうといふ主意から入會しました。
知られざる漱石 (旧字旧仮名) / 小宮豊隆(著)
けれども間もなく出て、靜岡の醫學校にはいつたが、其處そこから藩命で薩摩に遊んで、諸藩の書生と付き合つたが、それがわしの放浪生活の初めでもあつたらう。
兵馬倥偬の人 (旧字旧仮名) / 塚原渋柿園塚原蓼洲(著)
「おやまァ滅相めっそうな。そこへはねずみぴき滅多めったはいるこっちゃァないよ。——んぞかわわったことでもおありかえ」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
するとある日、町からしらせがとどいて、難船なんせんしたとおもった商人の持ち船が、にもつを山とつんだまま、ぶじに港へはいって来たということが分かりました。
縁側に出て見ると、淺間は鼻の先にあつた。湯にはいつて長々と寢そべつてゐると、不意に障子が暗くなつた。
山を想ふ (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
「そんなことせん方がいいがな。あなたもそれまでにしてはいり込んだところで、寝覚めがよくはないがな。」
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
今一あしで結城へはいれたのだ。水海道で斬られた。年二十五。白面の貴公子、秋冷の林中に夜をあかしかねて、如何ばかり長嘆したらうと思ふとあはれである。
天狗塚 (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
『そらい!。』とばかり、ヒタと武村兵曹たけむらへいそう所謂いはゆる出刄庖丁でばほうちやうはいつてすねおのてつすねあはせて、双方さうほう眞赤まつかになつてエンヤ/\と押合おしあつたが勝負しようぶかない
本尊の阿弥陀様の御顔おかほは暗くて拝め無い、たヾ招喚せうくわんかたち為給したまふ右の御手おてのみが金色こんじきうすひかりしめし給うて居る。貢さんは内陣を出て四畳半の自分の部屋にはいつた。
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
そしてスヌッドが何うもそれらしいと云うので、今度は奴の所へ出はいりする連中の名前を並べて見た。
赤い手 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
良人おっとはいませず=良人は函館後はしばらくろうはいっていました=父の行くえもわかりませんし、こんな事なら死んだ方がと思ったことは日に幾たびもありましたが
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
謡曲うたいの先生の杉山さんが門を少し開けたままはいり兼ねて浩二を呼んでいた。浩二もブル公が喧嘩をすれば泣いて騒ぐ方だから、声を聞きつけて飛んで来たのだった。
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「お母さんは、殺されるに違いないと、自分で座敷牢ざしきろうのようなものをこしらえてはいり込み、私のほかは誰も入れません。それで、お母さんは御無事でも、こんどは私が——」
銭形平次捕物控:282 密室 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
作るのは大分の入費でそれは村から出し合て誰でも無代たゞれますのだが此頃新道を作る人足が大勢はいり込んでい湯治塲へ行た氣で無代たゞで湯へはいり其上威張散して喧嘩を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
その時背後で、異様なしゃがれ声が起った。三人が吃驚びっくりして後を振り向くと、そこには、執事の田郷真斎がいつの間にかはいり込んでいて、大風おおふうな微笑をたたえて見下みおろしている。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
運動場うんどうばへ出て来ても我々われ/\の仲間にはいつた事などは無い、超然てうぜんとしてひとしづかに散歩してるとつたやうなふうで、今考へて見ると、成程なるほど年少詩人ねんせうしじんつた態度たいどがありましたよ
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
お夏の擧動は其夜甚だ怪しかつた。翌朝法界屋が立つて行つた後、お夏は門口に出て、其男の行つた秋田の方を眺め/\、いく等叱つてもおどしても二時間許り家にはいらなかつた。
葬列 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
一休いっきゅうさんは、幼時ようじから、からはなけるような、りこうな子供こどもでしたが、そのりこうさが、仏門ぶつもんはいってみがきをかけられ、後世こうせいにのこるような英僧えいそうにとなったわけでしょう。
先生と父兄の皆さまへ (新字新仮名) / 五十公野清一(著)
自然どうしても一部分の細かい事にはいり過ぎるやうな傾きになるのは免がれませぬ。
弘法大師の文芸 (旧字旧仮名) / 内藤湖南(著)
「このひとも東京言葉を勉強しに、高い資本もとでを費うて東京の學校へはいつとるのかい。」
入江のほとり (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)