蒼白あをじろ)” の例文
「もう何時なんじ」とひながら、枕元まくらもと宗助そうすけ見上みあげた。よひとはちがつてほゝから退いて、洋燈らんぷらされたところが、ことに蒼白あをじろうつつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
顏色かほいろ蒼白あをじろく、姿すがたせて、初中終しよつちゆう風邪かぜやすい、少食せうしよく落々おち/\ねむられぬたち、一ぱいさけにもまはり、往々まゝヒステリーがおこるのである。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
喜三郎は神經質らしく小鬢こびんいたり、襟を直したりして居ります。蒼白あをじろいおたな者で、いかにも弱々しく善良さうでさへあります。
ともすると風に吹き消されさうになる裸蝋燭を袖でまもりながら、一歩々々長い廊下を歩いて行くかれの蒼白あをじろひげの深い顔が見えた。
ある僧の奇蹟 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
Jesuヂェシュー Mariaマリヤ! どれほどにがみづその蒼白あをじろほゝをローザラインのためあらうたことやら? 幾何どれほど鹽辛水しほからみづ無用むだにしたことやら
人々ひとびと御主おんあるじよ、われをもたすたまへ。」此世このよ御扶おんたすけ蒼白あをじろいこのわが罪業ざいごふあがなたまはなかつた。わが甦生よみがへりまでわすれられてゐる。
軽気球の繋がれてゐるのは、この三階の物干台で、朝と夕方には、縞銘仙しまめいせんの筒つぽの着物を着たここの主人が蒼白あをじろい顔を現して操作を行ふ。
日本三文オペラ (新字旧仮名) / 武田麟太郎(著)
酒気が身体へ廻つたと見えて、頬も、耳も、手までもあかく成つた。丑松は又、一向顔色が変らない。飲めば飲む程、かへつて頬は蒼白あをじろく成る。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
俺あき見分けらあ。機関兵はせて色が蒼白あをじろいや。水兵はまる/\とふとつて色が黒いや。何故なぜつてよ、機関兵は石炭のこなほこりや、油煙を
ある職工の手記 (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
打ち見やりて時頼莞爾につこと打ちみ、二振三振ふたふりみふり不圖ふと平見ひらみに映る我が顏見れば、こはいかに、内落ち色蒼白あをじろく、ありし昔に似もつかぬ悲慘の容貌。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
玄乗破了和尚げんじようはれうをしやうさんが、玄関へ応対に出て見ると、若者は蒼白あをじろい顔をうつむけて、庭の梅の木の下にしよんぼり立つてゐた。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
そしてえず其の考に小突こづかかれるのであるから、神經は次第にひよわとなツて、ほゝの肉はける、顏の色は蒼白あをじろくなる
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
彼の顏が蒼白あをじろいのも、あんなにに近く坐つてゐるのも、家の中で外套を着てゐるのも確かにそんな理由からなのだ。
きとほるやうに蒼白あをじろきがいたましくえて、折柄をりから世話せわやきにたりし差配さはいこゝろに、此人これ先刻さきのそゝくさをとこつまともいもとともうけとられぬとおもひぬ。
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
六月ろくぐわつらすなかに、寢不足ねぶそく蒼白あをじろかほを、蒸返むしかへしにうだらして、すぢもとろけさうに、ふら/\とやしきちかづく。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
片輪といふ程目立たなくも室長は軽いセムシで、二六時中蒼白あをじろい顔のまゆを逆立てて下を向いて黙つてゐた。
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
蒼白あをじろい少年であつた私は、彼からその一節を読みきかされて、にはかに小さい心臓の痛みを感じた。私はその頃、周囲に女の子の遊び友達しかもつてゐなかつた。
町の踊り場 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
津下君は色の蒼白あをじろ細面ほそおもての青年で、いつも眉根まゆねしわを寄せてゐた。私は君の一家の否運が Kain のしるしのやうに、君の相貌の上にあらはれてゐたかと思ふ。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
へば蒼白あをじろくなる顔は益々ます/\蒼白あをじろひいでたまゆを寄せて口を一文字に結んだのを見るとふさ可恐こはいと思つた。
節操 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)
鼠色の白楊はこやなぎよ、罪ありさうにふるへてゐる、全體ぜんたいどんな打明話うちあけばなしが、その蒼白あをじろい葉の上に書いてあつたのだらう、どういふ思出を恐れてゐるのだ、秋の小逕こみちに棄てられた熱に惱んだ少女子をとめごよ。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
あの蒼白あをじろいつるつるの瀬戸でできてゐるらしい立派な盤面ダイアルの時計です。
耕耘部の時計 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
ひそやかな葉摺れに消え入る思ひして私の夢は蒼白あをじろい眼を沈めてゆく
太陽の子 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
金花はまるで喪心さうしんしたやうに、翡翠の耳環の下がつた頭をぐつたりと後へ仰向あふむけた儘、しかし蒼白あをじろい頬の底には、あざやかな血の色をほのめかせて、鼻の先に迫つた彼の顔へ、恍惚くわうこつとしたうす眼を注いでゐた。
南京の基督 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
かへるな可愛かあいい、蒼白あをじろ蝸牛でゝよ、さア/\一しよをどらんせ。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
みんなみんな蒼白あをじろいせるろいどの向ふよ
夕暮の窓にもたれて、蒼白あをじろき息ふく
まよわし (新字旧仮名) / 漢那浪笛(著)
落涙らくるゐす、蒼白あをじろに。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
物を思へど、蒼白あをじろ
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
かほ蒼白あをじろ若者わかもの
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
蒼白あをじろう、はひのやうに蒼白あをじろうなって、みどろになって、どこもどこもこごりついて。ると其儘そのまゝ、わしゃうしなうてしまひましたわいの。
しゝ飛出とびだしたやうにまたおどろいて、かれひろつじ一人ひとりつて、店々みせ/\電燈でんとうかずよりおほい、大屋根おほやねいし蒼白あをじろかずた。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
くびすぢには月光のやうな蒼白あをじろい光の反映があり、同じかすかな輝きは、あはい雲の列を染め、宵の明星みやうじやうの夢幻的な姿はそこから現はれて身をかゞめてゐた。
北の方から電車が進んで来、警笛を鳴らし、蒼白あをじろく烈しいヘッドライトはそれを避ける彼らの影を、雨に濡れた軌道の小石の上に大きく振廻すのであつた。
釜ヶ崎 (新字旧仮名) / 武田麟太郎(著)
けれども三四郎は、かう云ふかほだちからる、此時にひらめいた咄嗟の表情を生れて始めて見た。蒼白あをじろひたひうしろに、自然のまゝれたい髪が、肩迄見える。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
地上ちじやうにあつて、この蒼白あをじろ苦患くげん取巻とりまかれてゐるわがは、いまこの無垢むくつてゐるしゆ幼児をさなごくび吸取すひとつてやらうと、こゝまで見張みはつてたのである。
息ぎれがして、顔色が一層蒼白あをじろくなつた栄蔵だけが、どこへ身を隠したものかと、まごついてゐた。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
いつも血色の悪い、蒼白あをじろい顔が、大酒たいしゆをしたやうに暗赤色あんせきしよくになつて、持前の二皮目ふたかはめ血走ちばしつてゐる。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
そしてえず其の考に小突こづかかれるのであるから、神經は次第にひよわとなツて、ほゝの肉はける、顏の色は蒼白あをじろくなる、誰が見てもカラ元氣のない不活發ふくわつぱつな青年となツて[#
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
蒼白あをじろい生え際、唇が珊瑚さんご色で、横顏の綺麗さは、歌舞伎役者にも、あんなのはありません」
目星をつけた家の気勢けはひを暫くうかゞつた後、格子戸を開けてみると、額の蒼白あをじろい、眉毛まゆげの濃い、目の大きい四十がらみのお神が長火鉢のところにゐて、ちよつと困惑した顔だつた。
のらもの (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
物思ものおもがほ若者わかものえりのあたりいやりとしてハツと振拂ふりはらへば半面はんめん瓦斯燈がすとうひかり蒼白あをじろ
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
マーキュ はて、あの蒼白あをじろ情無じゃうなをんなのローザラインめが散々さん/″\やつくるしめるによって、はて狂人きちがひにもなりかねまいわい。
さ、それべた所爲せゐでせう、おなかかは蒼白あをじろく、ふかのやうにだぶだぶして、手足てあし海松みるえだれたやうになつて、つと見着みつけたのがおにしま、——魔界まかいだわね。
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
宗助そうすけ今日こんにちまで經驗けいけんうつたへて、これくらゐかすかな燈火ともしびに、いとなむ人間にんげんおもおここと出來できなかつた。そのひかり無論むろんつきよりもつよかつた。かつつきごと蒼白あをじろいろではなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
顏色は變に蒼白あをじろかつた。しかしその他では彼は容貌の美しい人であつた。特に初めて見た時さうである。よく/\見ると彼の顏には何か人に不快いやだと思はすものがあつた。
ときふゆはじめで、しもすこつてゐる。椒江せうこう支流しりうで、始豐溪しほうけいかは左岸さがん迂囘うくわいしつつきたすゝんでく。はじくもつてゐたそらがやうやうれて、蒼白あをじろきし紅葉もみぢてらしてゐる。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
ふと池の向ひの木立の蔭に淡赤うすあかい電燈の影が、月暈つきのかさのやうな円を描いて、庭木や草の上に蒼白あをじろく反映してゐるのが目についたが、それは隠居所のやうな一むね離房はなれで、瓦葺かはらぶきの高い二階建であつた。
或売笑婦の話 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
... 誰が見てもカラ元氣のない不活發ふくわつぱつな青年となツて」は底本では「は次第にひよわとなツて、ほゝの肉はける、顏の色は蒼白あをじろくなる、誰が見てもカラ元氣のない不活發ふくわつぱつで何うかして忘れて了はうとする、 ...
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
貴方あなたは丸で代言人の様な事を仰しやるのね」と云つた。代助は蒼白あをじろくなつたひたひあによめそばせた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
あ、とつて、えかゝるのにおどろいて、なかばうつゝにひらく、をんなたちのかほ蒼白あをじろい。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)