森川義信
1918.10.11 〜 1942.08.13
著者としての作品一覧
哀歌(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
枝を折るのは誰だらう あはただしく飛びたつ影は何であらう ふかい吃水のほとりから そこここの傷痕から ながれるものは流れつくし かつてあつたままに暮れていつた いちどゆけばもはや帰 …
読書目安時間:約1分
枝を折るのは誰だらう あはただしく飛びたつ影は何であらう ふかい吃水のほとりから そこここの傷痕から ながれるものは流れつくし かつてあつたままに暮れていつた いちどゆけばもはや帰 …
青き蜜柑(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
愁ひ来て丘にのぼりて 酸の香る蜜柑もぐなり 悲しみの青き蜜柑を 栗林こえて見ゆるは 背きにし君の町なるぞ ゆふぐれに深く沈みて 掌にしみる青き蜜柑よ そをかみて何を思はむ 昔の日は …
読書目安時間:約1分
愁ひ来て丘にのぼりて 酸の香る蜜柑もぐなり 悲しみの青き蜜柑を 栗林こえて見ゆるは 背きにし君の町なるぞ ゆふぐれに深く沈みて 掌にしみる青き蜜柑よ そをかみて何を思はむ 昔の日は …
あの人(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
芹をつむ芹の沼べり 今日もまためだかが浮いた 肩あげの肩が細いと あの人はやさしく言つた 名も知らぬ小鳥が鳴いた 讃岐の山雲が通つた あの人は麦笛ふいた 泪ぐみ昼月みて聴いた 肩あ …
読書目安時間:約1分
芹をつむ芹の沼べり 今日もまためだかが浮いた 肩あげの肩が細いと あの人はやさしく言つた 名も知らぬ小鳥が鳴いた 讃岐の山雲が通つた あの人は麦笛ふいた 泪ぐみ昼月みて聴いた 肩あ …
雨(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
どこかに妹がきてゐる tom・tomとゴムまりをついてゐる ぼくの心のゴムまりを 妹はtom・tomとだまつてついてゐる もうとどかない花の日がぬれてゐる 思ふことがみんな童話にな …
読書目安時間:約1分
どこかに妹がきてゐる tom・tomとゴムまりをついてゐる ぼくの心のゴムまりを 妹はtom・tomとだまつてついてゐる もうとどかない花の日がぬれてゐる 思ふことがみんな童話にな …
雨の日(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
硝子窓から青猫がやつて来てぼくの膝にのる よろよろとまるで一枚の翳のやうなやつだ 背をなでてゐるとぼうぼうと啼き出し ぼくの腹の中までぼうぼうと啼き出し こいつこいつ………… だが …
読書目安時間:約1分
硝子窓から青猫がやつて来てぼくの膝にのる よろよろとまるで一枚の翳のやうなやつだ 背をなでてゐるとぼうぼうと啼き出し ぼくの腹の中までぼうぼうと啼き出し こいつこいつ………… だが …
あるひとに(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
もうとどかない花の日よりもさびしかつた つかれのやうに羞んで 古い折返しの向ふへかくれたひとよ もうとどかない花の日のやうにいつまでもぼくは考へてゐる …
読書目安時間:約1分
もうとどかない花の日よりもさびしかつた つかれのやうに羞んで 古い折返しの向ふへかくれたひとよ もうとどかない花の日のやうにいつまでもぼくは考へてゐる …
あるるかんの死(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
眠れやはらかに青む化粧鏡のまへで もはやおまへのために鼓動する音はなく あの帽子の尖塔もしぼみ 煌めく七色の床は消えた 哀しく魂の溶けてゆくなかでは とび歩く軽い足どりも 不意に身 …
読書目安時間:約1分
眠れやはらかに青む化粧鏡のまへで もはやおまへのために鼓動する音はなく あの帽子の尖塔もしぼみ 煌めく七色の床は消えた 哀しく魂の溶けてゆくなかでは とび歩く軽い足どりも 不意に身 …
歌のない歌:《夕暮に》(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
この傾斜では お伽話はやめて こはれたオペラグラスで アラベスク風な雨をごらん ひととき鳩が白い耳を洗ふと シガーのやうに雲が降りて来て ぼくの影を踏みつけてゐる 光のレエスのシヤ …
読書目安時間:約1分
この傾斜では お伽話はやめて こはれたオペラグラスで アラベスク風な雨をごらん ひととき鳩が白い耳を洗ふと シガーのやうに雲が降りて来て ぼくの影を踏みつけてゐる 光のレエスのシヤ …
帰らぬ春(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
雲のたゆたう丘の上に ほろり散つたはべに椿 呼べども逝つた春の日の 悲しい私のゆめかしら 柳の新芽もほの匂ひ 燕も来たに口づけて 水に流した木れんは どこへ流れて行つたやら …
読書目安時間:約1分
雲のたゆたう丘の上に ほろり散つたはべに椿 呼べども逝つた春の日の 悲しい私のゆめかしら 柳の新芽もほの匂ひ 燕も来たに口づけて 水に流した木れんは どこへ流れて行つたやら …
壁(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
扉や窓を濡し 支柱や車輪を濡し 出ていつた音よ 仄かな調和のどこにも 響はすでに帰らない 色彩はなく 無表情の翳がうかび しづかな匂ひがひろがり 脱落するシヤツのあとには あやまち …
読書目安時間:約1分
扉や窓を濡し 支柱や車輪を濡し 出ていつた音よ 仄かな調和のどこにも 響はすでに帰らない 色彩はなく 無表情の翳がうかび しづかな匂ひがひろがり 脱落するシヤツのあとには あやまち …
樹樹(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
つつましい文字のやうにその指を組み いまじぶんの脚で立つてゐた 空にとどいた梢に 天使のやうな雲がふとつつかかる と 花の咲かない樹樹は そのほそい指のあひだから おびただしいいの …
読書目安時間:約1分
つつましい文字のやうにその指を組み いまじぶんの脚で立つてゐた 空にとどいた梢に 天使のやうな雲がふとつつかかる と 花の咲かない樹樹は そのほそい指のあひだから おびただしいいの …
季節抄:〔梢が〕(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
梢が 空にとどいてゐる 美しい樹々よ 花の咲かない………… 花はなくとも ああせめてものわが願い 樹々の編む 光りのハンモツクに 僕はつつましく腰をおろす 風が静かにひかるとき ゆ …
読書目安時間:約1分
梢が 空にとどいてゐる 美しい樹々よ 花の咲かない………… 花はなくとも ああせめてものわが願い 樹々の編む 光りのハンモツクに 僕はつつましく腰をおろす 風が静かにひかるとき ゆ …
季節抄:〔葩束を編みながら〕(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
葩束を編みながら美しく羞むひとよ 夕べバルコンの影の跫音の言葉なら はるかな愛情も匂ふでせう ★ 梢に鴉の喪章はゐない*** 新しいアアチの青貝路にペンキの響き 自転車で春の帽子が …
読書目安時間:約1分
葩束を編みながら美しく羞むひとよ 夕べバルコンの影の跫音の言葉なら はるかな愛情も匂ふでせう ★ 梢に鴉の喪章はゐない*** 新しいアアチの青貝路にペンキの響き 自転車で春の帽子が …
帰村(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
寒々と背姿の林は続き 連峯は雪 よれよれの路はまた坂になり 鴉はあをあをと山蔭に群がり ああ少年の日の悲歌が甦へる ゆふぐれよりも早く ぱらぱら何時かのように村は花を灯し 村はまた …
読書目安時間:約1分
寒々と背姿の林は続き 連峯は雪 よれよれの路はまた坂になり 鴉はあをあをと山蔭に群がり ああ少年の日の悲歌が甦へる ゆふぐれよりも早く ぱらぱら何時かのように村は花を灯し 村はまた …
漁村(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
波がものを言ふやうになつてから 誰も姿を見せない砂浜に 抵抗する事を知らない貝殻のやうな女が 私生児を抱いて立つてゐた それは——生きる為には、生きる為には 泥蟹をまで食べなければ …
読書目安時間:約1分
波がものを言ふやうになつてから 誰も姿を見せない砂浜に 抵抗する事を知らない貝殻のやうな女が 私生児を抱いて立つてゐた それは——生きる為には、生きる為には 泥蟹をまで食べなければ …
衢路(新字旧仮名)
読書目安時間:約2分
友よ覚えてゐるだらうか 青いネクタイを軽く巻いた船乗りのやうに さんざめく街をさまよふた夜の事を—— 鳩羽色のペンキの香りが強かつたね 二人はオレンジの波に揺られたね お前も少女の …
読書目安時間:約2分
友よ覚えてゐるだらうか 青いネクタイを軽く巻いた船乗りのやうに さんざめく街をさまよふた夜の事を—— 鳩羽色のペンキの香りが強かつたね 二人はオレンジの波に揺られたね お前も少女の …
幻燈:《幼な日の思ひ出のために》(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
せるろいどのやうにふるへる むかしむかしのお姫さまよ 童話の向ふから童話のやうに掌をあげて 黒びらうどの青い喪服がよく似合ふ あれあれ木馬もお通りなさる がたがた首をゆさぶり はげ …
読書目安時間:約1分
せるろいどのやうにふるへる むかしむかしのお姫さまよ 童話の向ふから童話のやうに掌をあげて 黒びらうどの青い喪服がよく似合ふ あれあれ木馬もお通りなさる がたがた首をゆさぶり はげ …
勾配(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
非望のきはみ 非望のいのち はげしく一つのものに向つて 誰がこの階段をおりていつたか 時空をこえて屹立する地平をのぞんで そこに立てば かきむしるやうに悲風はつんざき 季節はすでに …
読書目安時間:約1分
非望のきはみ 非望のいのち はげしく一つのものに向つて 誰がこの階段をおりていつたか 時空をこえて屹立する地平をのぞんで そこに立てば かきむしるやうに悲風はつんざき 季節はすでに …
残像(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
翳だけがささへてゐる あなたの重量から ゆめの耳もみえない 疲れのやうに羞んで よりそへば傷ついてゐる言葉たち どもつて吃つてわたしは じぶんの位置をかんがへる …
読書目安時間:約1分
翳だけがささへてゐる あなたの重量から ゆめの耳もみえない 疲れのやうに羞んで よりそへば傷ついてゐる言葉たち どもつて吃つてわたしは じぶんの位置をかんがへる …
習作(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
テラアスにちかい海の日は アメシストの鏡から水もながれる だから頬をみがけぼくのアリサ 葉ざくらのかげでお前は青い花だ ハアプがながれてゐる月夜 葡萄の木蔭はフオルマリンの匂ひがい …
読書目安時間:約1分
テラアスにちかい海の日は アメシストの鏡から水もながれる だから頬をみがけぼくのアリサ 葉ざくらのかげでお前は青い花だ ハアプがながれてゐる月夜 葡萄の木蔭はフオルマリンの匂ひがい …
(上等兵安藤孝雄を憶ふ)(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
友よお前は二十歳 ひととき朔北の風よりも疾く お前の額を貫ぬいて行つたものについては もう考へまい わたしは聞いた大きな秩序のなかに ただはげしい意欲をお前の軍靴の音を わたしの力 …
読書目安時間:約1分
友よお前は二十歳 ひととき朔北の風よりも疾く お前の額を貫ぬいて行つたものについては もう考へまい わたしは聞いた大きな秩序のなかに ただはげしい意欲をお前の軍靴の音を わたしの力 …
ジンタ(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
ジンタは寂しい港町です 朔風にうらぶれた潮騒です 吐息のやうにとぎれては続きます 濡れてゐるやうに泣いてゐるやうに ラツパ・たいこ・クラリオネツト ジンタは冬がやつて来た港町です …
読書目安時間:約1分
ジンタは寂しい港町です 朔風にうらぶれた潮騒です 吐息のやうにとぎれては続きます 濡れてゐるやうに泣いてゐるやうに ラツパ・たいこ・クラリオネツト ジンタは冬がやつて来た港町です …
高館:―七月の旅の思ひ出―(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
高館に登りて見れば 小糠雨烟りて寒く 朽ちかけし家のほとりの 高き木に鳴く蝉かなし 苔かほる古き木に倚り その昔の人をしのべど 木々に吹く風も寂しく 消えて行く思ひ儚し 遠山の淡く …
読書目安時間:約1分
高館に登りて見れば 小糠雨烟りて寒く 朽ちかけし家のほとりの 高き木に鳴く蝉かなし 苔かほる古き木に倚り その昔の人をしのべど 木々に吹く風も寂しく 消えて行く思ひ儚し 遠山の淡く …
高館:―平泉の思ひ出より―(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
草深きなかに訪ねし 夢跡の寒きかなしさ 朽ち柵に倚れば仄かに 胸にしむ旅のうれひよ 緑濃きなかに見出でし 人の世のさぶしさ 夢を皆遠く流せし 北上が瞳にしみる。 …
読書目安時間:約1分
草深きなかに訪ねし 夢跡の寒きかなしさ 朽ち柵に倚れば仄かに 胸にしむ旅のうれひよ 緑濃きなかに見出でし 人の世のさぶしさ 夢を皆遠く流せし 北上が瞳にしみる。 …
旅(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
渡り鳥の様に旅をしてみたい時がある 雲の様に旅をしてみたい時がある 風のままに漂々と旅をした俳人芭蕉を憶ふ 病の床にあれば一人旅を欲する—— 束縛された人生を思ふからである 葬り去 …
読書目安時間:約1分
渡り鳥の様に旅をしてみたい時がある 雲の様に旅をしてみたい時がある 風のままに漂々と旅をした俳人芭蕉を憶ふ 病の床にあれば一人旅を欲する—— 束縛された人生を思ふからである 葬り去 …
旅人の唄(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
旅は泪よ故里はまだかよ その日その日の夢になく 運命に弱い 我は悲しい渡り鳥 旅は夢かよ春も逝くかよ 柳の雨に濡れて泣く 燕でないが 我も悲しい渡り鳥 —10・5・4— …
読書目安時間:約1分
旅は泪よ故里はまだかよ その日その日の夢になく 運命に弱い 我は悲しい渡り鳥 旅は夢かよ春も逝くかよ 柳の雨に濡れて泣く 燕でないが 我も悲しい渡り鳥 —10・5・4— …
断章(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
おほくの予感に充ち おまへの皮膚にはとどかず はるかに高い所を わたつた あの鋭い動きさへ 速かに把へたのに 精神よ 季節は錆だ 新しい時へ 歩みを移すこともできず 灰は灰に 石は …
読書目安時間:約1分
おほくの予感に充ち おまへの皮膚にはとどかず はるかに高い所を わたつた あの鋭い動きさへ 速かに把へたのに 精神よ 季節は錆だ 新しい時へ 歩みを移すこともできず 灰は灰に 石は …
衢(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
よりそふ暇もなく こみあげる約束はうばはれていつた 疲れのやうに 吃つてゐる炎よ くづれる愛をさらに踏みしめ 時間のかげに身をこがしても じぶんの力で倒れかかり 義足よ 記憶は埋れ …
読書目安時間:約1分
よりそふ暇もなく こみあげる約束はうばはれていつた 疲れのやうに 吃つてゐる炎よ くづれる愛をさらに踏みしめ 時間のかげに身をこがしても じぶんの力で倒れかかり 義足よ 記憶は埋れ …
衢にて(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
翳に埋れ 翳に支へられ その階段はどこへ果ててゐるのか はかなさに立ちあがり いくたび踏んでみたことだらう ものいはず濡れた肩や 失はれたいのちの群をこえ けんめいに あふれる時間 …
読書目安時間:約1分
翳に埋れ 翳に支へられ その階段はどこへ果ててゐるのか はかなさに立ちあがり いくたび踏んでみたことだらう ものいはず濡れた肩や 失はれたいのちの群をこえ けんめいに あふれる時間 …
廃園(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
骨を折る音 その音のなかに 流れる水は乾き 菫色の空は落ちて 石に濡れた額は傾くままに眠つた みえない推移の重さに みえない推移の重さに 眼をとぢて凍える半身は 崩れるもの影ととも …
読書目安時間:約1分
骨を折る音 その音のなかに 流れる水は乾き 菫色の空は落ちて 石に濡れた額は傾くままに眠つた みえない推移の重さに みえない推移の重さに 眼をとぢて凍える半身は 崩れるもの影ととも …
廃園:《断片》(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
骨を折る音 その音のなかに 流れる水は乾き 鳶色の風は落ちて 石に濡れた額は傾くままに眠つた みえない推移の重さに 骨を折る音 その音のなかに 佯りの 眼を閉ぢて 凍える半身は 倒 …
読書目安時間:約1分
骨を折る音 その音のなかに 流れる水は乾き 鳶色の風は落ちて 石に濡れた額は傾くままに眠つた みえない推移の重さに 骨を折る音 その音のなかに 佯りの 眼を閉ぢて 凍える半身は 倒 …
春:〔春の帽子を〕(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
春の帽子を振らう。 ヴイーナスの歌を聞かう。 こんなにも若い青空。 花ある胸。 新月新月を食べよう。 鈴が走る。 驢馬が駆ける。 何だか何だか優しく通る。 春の帽子を振らう。 小鳥 …
読書目安時間:約1分
春の帽子を振らう。 ヴイーナスの歌を聞かう。 こんなにも若い青空。 花ある胸。 新月新月を食べよう。 鈴が走る。 驢馬が駆ける。 何だか何だか優しく通る。 春の帽子を振らう。 小鳥 …
春:〔風船に〕(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
風船にひつぱられて小鳥は中空たかくのぼつていつた 風船はくるめく日傘をまはしあたたかな銀の雨を降らした 小鳥はむしやうにうれしくなり力いつぱいそのすずを鳴らした それにしても風船に …
読書目安時間:約1分
風船にひつぱられて小鳥は中空たかくのぼつていつた 風船はくるめく日傘をまはしあたたかな銀の雨を降らした 小鳥はむしやうにうれしくなり力いつぱいそのすずを鳴らした それにしても風船に …
冬の夜の歌(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
私は墜ちて行くのだ 破れた手風琴の挽歌におくられて 古びた天鵞絨の匂ひに噎び 黝い霧に深く包まれて ゆふぐれの向ふへと私は墜ちて行くのだ 今はこの掌に触れた蒼空もなく 胸近く海のや …
読書目安時間:約1分
私は墜ちて行くのだ 破れた手風琴の挽歌におくられて 古びた天鵞絨の匂ひに噎び 黝い霧に深く包まれて ゆふぐれの向ふへと私は墜ちて行くのだ 今はこの掌に触れた蒼空もなく 胸近く海のや …
星:〔星は夢の様に〕(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
星は夢の様に美しくかなしい 星は思ひ出の様になつかしくわびしい 故里を遠くはなれた旅人は星を見れば 故里を思ひ出すだらう—— 明り星の出てゐる故里の山を 星の様にやさしく星の様に …
読書目安時間:約1分
星は夢の様に美しくかなしい 星は思ひ出の様になつかしくわびしい 故里を遠くはなれた旅人は星を見れば 故里を思ひ出すだらう—— 明り星の出てゐる故里の山を 星の様にやさしく星の様に …
街:《或る友に》(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
枯れ葉は足につつかかり 街燈はぬれてまたたき 霧さへ降つてゐたおそい街の夜だつた お前は人の歌をそつと歌ひ お前は思い出したやうに歩いた 僕たちの街と本当に言へただらうか 美しい愛 …
読書目安時間:約1分
枯れ葉は足につつかかり 街燈はぬれてまたたき 霧さへ降つてゐたおそい街の夜だつた お前は人の歌をそつと歌ひ お前は思い出したやうに歩いた 僕たちの街と本当に言へただらうか 美しい愛 …
霙の中(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
妹よあの跫音は何であらう 喪はれた美しい日々の歌声ではない 今日も夕暮近い霙の中を通つてよ 怖ろしい鴉の黒い群であらうか 散薬の重いしめりに病み呆けた わたしの胸にやつて来て わた …
読書目安時間:約1分
妹よあの跫音は何であらう 喪はれた美しい日々の歌声ではない 今日も夕暮近い霙の中を通つてよ 怖ろしい鴉の黒い群であらうか 散薬の重いしめりに病み呆けた わたしの胸にやつて来て わた …
虚しい街(新字旧仮名)
読書目安時間:約2分
白亜の立体も ひたむきな断面も せつない暗さの底へ沈みつつ 沈みつつ 翳に埋れ 影に支へられ その階段はどこへ果ててゐるのか はかなさに立ちあがり いくたび踏んでみたことだらう 煙 …
読書目安時間:約2分
白亜の立体も ひたむきな断面も せつない暗さの底へ沈みつつ 沈みつつ 翳に埋れ 影に支へられ その階段はどこへ果ててゐるのか はかなさに立ちあがり いくたび踏んでみたことだらう 煙 …
悒鬱な花(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
はながさいてゐる 目をつむつてぼくは見てゐる はなびらは色をうしなひ あを白くうなだれて…… はななればはなのやうに なぜ笑はないのだらう はながさいてゐる 目をそつとつむると い …
読書目安時間:約1分
はながさいてゐる 目をつむつてぼくは見てゐる はなびらは色をうしなひ あを白くうなだれて…… はななればはなのやうに なぜ笑はないのだらう はながさいてゐる 目をそつとつむると い …
別れ(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
別れの馬車の鈴の音が つらい心をまたせめる 日暮峠でみかへれば 山が霞んで遠くなる 寒い夜風に町の灯が 悲しく遠くゆれてゐる 馬車の窓から故山見れば 空にほんのりおぼろ月 (四・十 …
読書目安時間:約1分
別れの馬車の鈴の音が つらい心をまたせめる 日暮峠でみかへれば 山が霞んで遠くなる 寒い夜風に町の灯が 悲しく遠くゆれてゐる 馬車の窓から故山見れば 空にほんのりおぼろ月 (四・十 …
別れ:(この小さき歌を友・源氏太郎に聞かす)(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
ゆふぐれを君みおくりて ばらの実の丘にのぼりつ 鳩笛のおとに濡れゆく よは肩の君のほそさよ この赤きばらの木の実を をとめの日君はめでしに おそ秋の小径に消ゆる うしろ姿の君は悲し …
読書目安時間:約1分
ゆふぐれを君みおくりて ばらの実の丘にのぼりつ 鳩笛のおとに濡れゆく よは肩の君のほそさよ この赤きばらの木の実を をとめの日君はめでしに おそ秋の小径に消ゆる うしろ姿の君は悲し …
“森川義信”と年代が近い著者
今月で生誕X十年
今月で没後X十年
今年で生誕X百年
平山千代子(生誕100年)
今年で没後X百年
大町桂月(没後100年)
富ノ沢麟太郎(没後100年)
細井和喜蔵(没後100年)
木下利玄(没後100年)
富永太郎(没後100年)
エリザベス、アンナ・ゴルドン(没後100年)
徳永保之助(没後100年)
後藤謙太郎(没後100年)
エドワード・シルヴェスター・モース(没後100年)