竹内浩三
1921.05.12 〜 1945.04.09
著者としての作品一覧
あきらめろと云うが(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
かの女を人はあきらめろと云うが おんなを人はかの女だけでないと云うが おれには遠くの田螺の鳴声までかの女の歌声にきこえ 遠くの汽車の汽笛までかの女の溜息にきこえる それでも かの女 …
読書目安時間:約1分
かの女を人はあきらめろと云うが おんなを人はかの女だけでないと云うが おれには遠くの田螺の鳴声までかの女の歌声にきこえ 遠くの汽車の汽笛までかの女の溜息にきこえる それでも かの女 …
雨(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
さいげんなく ざんござんごと 雨がふる まっくらな空から ざんござんごと おしよせてくる ぼくは 傘もないし お金もない 雨にまけまいとして がちんがちんと あるいた お金をつかう …
読書目安時間:約1分
さいげんなく ざんござんごと 雨がふる まっくらな空から ざんござんごと おしよせてくる ぼくは 傘もないし お金もない 雨にまけまいとして がちんがちんと あるいた お金をつかう …
ある夜(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
月が変圧器にひっかかっているし 風は止んだし いやにあつくるしい夜だ 人通りもとだえて 犬の遠吠えだけが聞こえる いやにおもくるしい夜だ エーテルは一時蒸発を止め 詩人は居眠りをす …
読書目安時間:約1分
月が変圧器にひっかかっているし 風は止んだし いやにあつくるしい夜だ 人通りもとだえて 犬の遠吠えだけが聞こえる いやにおもくるしい夜だ エーテルは一時蒸発を止め 詩人は居眠りをす …
色のない旗(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
詩を作り、 人に示し、 笑って、自ら驕る ——ああ、此れ以外の 何を己れは覚えたであろう? この世で、これまで…… 城左門 できるだけ、知らない顔を試るのだけれど、気にしないわけに …
読書目安時間:約1分
詩を作り、 人に示し、 笑って、自ら驕る ——ああ、此れ以外の 何を己れは覚えたであろう? この世で、これまで…… 城左門 できるだけ、知らない顔を試るのだけれど、気にしないわけに …
うたうたいは(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
うたうたいはうたうたえときみ言えど口おもくうたうたえず。うたうたいがうたうたわざれば死つるよりほかすべなからんや。魚のごとあぼあぼと生きるこそ悲しけれ。 …
読書目安時間:約1分
うたうたいはうたうたえときみ言えど口おもくうたうたえず。うたうたいがうたうたわざれば死つるよりほかすべなからんや。魚のごとあぼあぼと生きるこそ悲しけれ。 …
海(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
ぼくが帰るとまもなく まだ八月に入ったばかりなのに 海はその表情を変えはじめた 白い歯をむき出して 大波小波をぼくにぶっつける ぼくは帰るとすぐに 誰もなぐさめてくれないので 海に …
読書目安時間:約1分
ぼくが帰るとまもなく まだ八月に入ったばかりなのに 海はその表情を変えはじめた 白い歯をむき出して 大波小波をぼくにぶっつける ぼくは帰るとすぐに 誰もなぐさめてくれないので 海に …
演習一(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
ずぶぬれの機銃分隊であった ぼくの戦帽は小さすぎてすぐおちそうになった ぼくだけあごひもをしめておった きりりと勇ましいであろうと考えた いくつもいくつも膝まで水のある濠があった …
読書目安時間:約1分
ずぶぬれの機銃分隊であった ぼくの戦帽は小さすぎてすぐおちそうになった ぼくだけあごひもをしめておった きりりと勇ましいであろうと考えた いくつもいくつも膝まで水のある濠があった …
演習二(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
丘のすそに池がある 丘の薄は銀のヴェールである 丘の上につくりもののトオチカがある 照準の中へトオチカの銃眼をおさめておいて おれは一服やらかした 丘のうしろに雲がある 丘を兵隊が …
読書目安時間:約1分
丘のすそに池がある 丘の薄は銀のヴェールである 丘の上につくりもののトオチカがある 照準の中へトオチカの銃眼をおさめておいて おれは一服やらかした 丘のうしろに雲がある 丘を兵隊が …
おもちゃの汽車(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
ゴットンゴットン 汽車が行く ケムリをはいて 汽車が行く アレアレアレアレ 脱線だ お人形さんの 首が飛び キューピイさんの 手が飛んだ 死傷者優に三十個 オモチャの国の 大椿事 …
読書目安時間:約1分
ゴットンゴットン 汽車が行く ケムリをはいて 汽車が行く アレアレアレアレ 脱線だ お人形さんの 首が飛び キューピイさんの 手が飛んだ 死傷者優に三十個 オモチャの国の 大椿事 …
金がきたら(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
金がきたら ゲタを買おう そう人のゲタばかりかりてはいられまい 金がきたら 花ビンを買おう 部屋のソウジもして気持よくしよう 金がきたら ヤカンを買おう いくらお茶があっても水茶は …
読書目安時間:約1分
金がきたら ゲタを買おう そう人のゲタばかりかりてはいられまい 金がきたら 花ビンを買おう 部屋のソウジもして気持よくしよう 金がきたら ヤカンを買おう いくらお茶があっても水茶は …
帰還(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
あなたは かえってきた あなたは 白くしずかな箱にいる 白くしずかなきよらかな ひたぶる ひたぶる ちみどろ ひたぶる あなたは たたかっただ 日は黒ずみくずれた みなきけ みなみ …
読書目安時間:約1分
あなたは かえってきた あなたは 白くしずかな箱にいる 白くしずかなきよらかな ひたぶる ひたぶる ちみどろ ひたぶる あなたは たたかっただ 日は黒ずみくずれた みなきけ みなみ …
愚の旗(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
人は、彼のことを神童とよんだ。 小学校の先生のとけない算術の問題を、一年生の彼が即座にといてのけた。先生は自分が白痴になりたくなかったので、彼を神童と言うことにした。 人は、彼を詩 …
読書目安時間:約3分
人は、彼のことを神童とよんだ。 小学校の先生のとけない算術の問題を、一年生の彼が即座にといてのけた。先生は自分が白痴になりたくなかったので、彼を神童と言うことにした。 人は、彼を詩 …
雲(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
ふわふわ雲が飛んでいる それは春の真綿雲 むくむく雲が湧いて来た それは夏の入道雲 さっさと雲が掃いたよう それは秋空よい天気 どんより灰色いやな雲 それは雪雲冬の空 まあるい空の …
読書目安時間:約1分
ふわふわ雲が飛んでいる それは春の真綿雲 むくむく雲が湧いて来た それは夏の入道雲 さっさと雲が掃いたよう それは秋空よい天気 どんより灰色いやな雲 それは雪雲冬の空 まあるい空の …
雲(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
空には 雲がなければならぬ 日本晴れとは 誰がつけた名かしらんが 日本一の大馬鹿者であろう 雲は 踊らねばならぬ 踊るとは 虹に鯨が くびをつることであろう 空には 雲がなければな …
読書目安時間:約1分
空には 雲がなければならぬ 日本晴れとは 誰がつけた名かしらんが 日本一の大馬鹿者であろう 雲は 踊らねばならぬ 踊るとは 虹に鯨が くびをつることであろう 空には 雲がなければな …
行軍一(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
白い小学校の運動場で おれたちはひるやすみした 枝のないポプラの列の影がながい ポプラの枝のきれたところに肋木の奇妙なオブジェに 赤い帽子に黒い服のガラスのような子供たちが 流れく …
読書目安時間:約1分
白い小学校の運動場で おれたちはひるやすみした 枝のないポプラの列の影がながい ポプラの枝のきれたところに肋木の奇妙なオブジェに 赤い帽子に黒い服のガラスのような子供たちが 流れく …
行軍二(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
あの山を越えるとき おれたちは機関車のように蒸気ばんでおった だまりこんでがつんがつんとあるいておった 急に風がきて白い雪のかたまりをなげてよこした 水筒の水は口の中をガラスのよう …
読書目安時間:約1分
あの山を越えるとき おれたちは機関車のように蒸気ばんでおった だまりこんでがつんがつんとあるいておった 急に風がきて白い雪のかたまりをなげてよこした 水筒の水は口の中をガラスのよう …
口業(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
修利修利摩訶修利修修利娑婆訶 己のうたいしことのはのかずかずは乾酪のごと麦酒のごと光うしないてよどみはてしはわがこころのさまもかくありなんとの証なるべし うたうまじかたるまじただ黙 …
読書目安時間:約1分
修利修利摩訶修利修修利娑婆訶 己のうたいしことのはのかずかずは乾酪のごと麦酒のごと光うしないてよどみはてしはわがこころのさまもかくありなんとの証なるべし うたうまじかたるまじただ黙 …
五月のように(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
なんのために ともかく生きている ともかく どう生きるべきか それはどえらい問題だ それを一生考え考えぬいてもはじまらん 考えれば考えるほど理屈が多くなりこまる こまる前に次のこと …
読書目安時間:約1分
なんのために ともかく生きている ともかく どう生きるべきか それはどえらい問題だ それを一生考え考えぬいてもはじまらん 考えれば考えるほど理屈が多くなりこまる こまる前に次のこと …
こん畜生(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
こん畜生! おれはみぶるいした おれは菊一文字の短刀を買って ふたたびその女のところへきた さァ死ね さァ死ね お前のような不実な奴を生かしておくことはおれの神経がゆるさん 女は逃 …
読書目安時間:約1分
こん畜生! おれはみぶるいした おれは菊一文字の短刀を買って ふたたびその女のところへきた さァ死ね さァ死ね お前のような不実な奴を生かしておくことはおれの神経がゆるさん 女は逃 …
しかられて(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
しかられて 外へは出たが 我家から 夕餉の烟と 灯火の 黄色い光に 混ぜられた たのしい飯の音がする 強情はってわるかった おなかがすいた 風も吹く 三日月さんも 出て来たよ あや …
読書目安時間:約1分
しかられて 外へは出たが 我家から 夕餉の烟と 灯火の 黄色い光に 混ぜられた たのしい飯の音がする 強情はってわるかった おなかがすいた 風も吹く 三日月さんも 出て来たよ あや …
射撃について(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
松の木山に銃声がいくつもとどろいた 山の上に赤い旗がうごかない雲を待っている 銃声が止むとごとんごとんと六段返しみたいに的が回転する おれの弾は調子づいたとみえてうつたびに景気のい …
読書目安時間:約1分
松の木山に銃声がいくつもとどろいた 山の上に赤い旗がうごかない雲を待っている 銃声が止むとごとんごとんと六段返しみたいに的が回転する おれの弾は調子づいたとみえてうつたびに景気のい …
十二ヶ月(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
一月—— 凍てた空気に灯がついた 電線が口笛を吹いて 紙くずが舞上った 木の葉が鳴った スチュウがノドを流れた 二月—— 丸い大きな灰色の屋根 真白い平な地面 つけっぱなしのラムプ …
読書目安時間:約2分
一月—— 凍てた空気に灯がついた 電線が口笛を吹いて 紙くずが舞上った 木の葉が鳴った スチュウがノドを流れた 二月—— 丸い大きな灰色の屋根 真白い平な地面 つけっぱなしのラムプ …
白い雲(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
満州というと やっぱし遠いところ 乾いた砂がたいらかに どこまでもつづいていて 壁の家があったりする そのどこかの町の白い病院に 熱で干いた唇が 枯草のように 音もなく 山田のこと …
読書目安時間:約1分
満州というと やっぱし遠いところ 乾いた砂がたいらかに どこまでもつづいていて 壁の家があったりする そのどこかの町の白い病院に 熱で干いた唇が 枯草のように 音もなく 山田のこと …
人生(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
むつかしいもの。この上もなくむつかしいもの。映画。こんなにむつかしいとは知らなんだ。知らなんだ。 あればあるほどいい。又、なければそれでもいい。 女のために死ぬ人もいる。そして、僕 …
読書目安時間:約1分
むつかしいもの。この上もなくむつかしいもの。映画。こんなにむつかしいとは知らなんだ。知らなんだ。 あればあるほどいい。又、なければそれでもいい。 女のために死ぬ人もいる。そして、僕 …
空をかける(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
蛍光を発して 夜の都の空をかける 風に指がちぎれ鼻がとびさる 虹のように蛍光が 夜の都の空に散る 風に首がもげ脚がちぎれる 風にからだが溶けてしまう 蛾が一匹 死んでしまった …
読書目安時間:約1分
蛍光を発して 夜の都の空をかける 風に指がちぎれ鼻がとびさる 虹のように蛍光が 夜の都の空に散る 風に首がもげ脚がちぎれる 風にからだが溶けてしまう 蛾が一匹 死んでしまった …
大正文化概論(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
G線の下で アリアをうたっていた てるてる坊主が 雨にぬれていた 交通が便利になって 文化はランジュクした 戦争に勝って リキュウルをのんだ はだかおどりの女のパンツは 日章旗であ …
読書目安時間:約1分
G線の下で アリアをうたっていた てるてる坊主が 雨にぬれていた 交通が便利になって 文化はランジュクした 戦争に勝って リキュウルをのんだ はだかおどりの女のパンツは 日章旗であ …
チャイコフスキイのトリオ(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
アアちゃん 白い雪のふる 木の葉のちる 寒い風のふく アアちゃん ぼくは たたずみ うづくまり 寒い風のふく 湯気のちぎれとぶ アアちゃん ぼくは 地べたに 爪あとをつけ ケシの種 …
読書目安時間:約1分
アアちゃん 白い雪のふる 木の葉のちる 寒い風のふく アアちゃん ぼくは たたずみ うづくまり 寒い風のふく 湯気のちぎれとぶ アアちゃん ぼくは 地べたに 爪あとをつけ ケシの種 …
泥葬(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
われ、山にむかいて、目をぞあぐる。わがたすけは、いづくよりきたるならん。 (讃美歌第四百七十六) 鼻もちならねえ、どぶ水なんだ。屍臭を放つ腐り船が半沈みなんだ。青みどろなんかが、か …
読書目安時間:約2分
われ、山にむかいて、目をぞあぐる。わがたすけは、いづくよりきたるならん。 (讃美歌第四百七十六) 鼻もちならねえ、どぶ水なんだ。屍臭を放つ腐り船が半沈みなんだ。青みどろなんかが、か …
手紙(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
午前三時の時計をきいた。 午前四時の時計をきいた。 まっくらな天井へ向けた二つの眼をしばしばさせていた。 やがて、東があかるんできた。シイツが白々しくなってきた。 にこりともせず、 …
読書目安時間:約1分
午前三時の時計をきいた。 午前四時の時計をきいた。 まっくらな天井へ向けた二つの眼をしばしばさせていた。 やがて、東があかるんできた。シイツが白々しくなってきた。 にこりともせず、 …
東京(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
東京はタイクツな町だ 男も女も 笑わずに とがった神経で 高いカカトで 自分の目的の外は何も考えず 歩いて行く 東京は冷い町だ レンガもアスファルトも 笑わずに 四角い顔で 冷い表 …
読書目安時間:約1分
東京はタイクツな町だ 男も女も 笑わずに とがった神経で 高いカカトで 自分の目的の外は何も考えず 歩いて行く 東京は冷い町だ レンガもアスファルトも 笑わずに 四角い顔で 冷い表 …
トスカニニのエロイカ(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
がらがら まぬけたいかづち がらがら トスカニニのゆく トスカニニのエロイカのゆく がらがら 花を見 蛇を見 むすめを見 見るものを見 がらがら 帽子を忘れ ステッキを忘れ ズボン …
読書目安時間:約1分
がらがら まぬけたいかづち がらがら トスカニニのゆく トスカニニのエロイカのゆく がらがら 花を見 蛇を見 むすめを見 見るものを見 がらがら 帽子を忘れ ステッキを忘れ ズボン …
鈍走記(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
生まれてきたから、死ぬまで生きてやるのだ。 ただそれだけだ。 * 日本語は正確に発音しよう。白ければシロイと。 * ピリオド、カンマ、クエッションマーク。 でも、妥協はいやだ。 * …
読書目安時間:約2分
生まれてきたから、死ぬまで生きてやるのだ。 ただそれだけだ。 * 日本語は正確に発音しよう。白ければシロイと。 * ピリオド、カンマ、クエッションマーク。 でも、妥協はいやだ。 * …
鈍走記(草稿)(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
1生まれてきたから、死ぬまで生きてやるのだ。ただそれだけだ。 2日本語は正確に発音しよう。白ければシロイと。 3ペリオド、カンマ、クエッションマアク。でも、妥協はいやだ! 4小さい …
読書目安時間:約3分
1生まれてきたから、死ぬまで生きてやるのだ。ただそれだけだ。 2日本語は正確に発音しよう。白ければシロイと。 3ペリオド、カンマ、クエッションマアク。でも、妥協はいやだ! 4小さい …
日本が見えない(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
この空気 この音 オレは日本に帰ってきた 帰ってきた オレの日本に帰ってきた でも オレには日本が見えない 空気がサクレツしていた 軍靴がテントウしていた その時 オレの目の前で大 …
読書目安時間:約1分
この空気 この音 オレは日本に帰ってきた 帰ってきた オレの日本に帰ってきた でも オレには日本が見えない 空気がサクレツしていた 軍靴がテントウしていた その時 オレの目の前で大 …
入営のことば(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
十月一日、すきとおった空に、ぼくは、高々と、日の丸をかかげます。 ぼくの日の丸は日にかがやいて、ぱたぱた鳴りましょう。 十月一日、ぼくは○○聯隊に入営します。 ぼくの日の丸は、たぶ …
読書目安時間:約1分
十月一日、すきとおった空に、ぼくは、高々と、日の丸をかかげます。 ぼくの日の丸は日にかがやいて、ぱたぱた鳴りましょう。 十月一日、ぼくは○○聯隊に入営します。 ぼくの日の丸は、たぶ …
冬に死す(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
蛾が 静かに障子の桟からおちたよ 死んだんだね なにもしなかったぼくは こうして なにもせずに 死んでゆくよ ひとりで 生殖もしなかったの 寒くってね なんにもしたくなかったの 死 …
読書目安時間:約1分
蛾が 静かに障子の桟からおちたよ 死んだんだね なにもしなかったぼくは こうして なにもせずに 死んでゆくよ ひとりで 生殖もしなかったの 寒くってね なんにもしたくなかったの 死 …
望郷(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
東京がむしょうに恋しい。カスバのペペル・モコみたいに、東京を望郷しておる。 あの街あの道あの角で おれやおまえやあいつらと あんなことしてああいうて あんな風してあんなこと あんな …
読書目安時間:約1分
東京がむしょうに恋しい。カスバのペペル・モコみたいに、東京を望郷しておる。 あの街あの道あの角で おれやおまえやあいつらと あんなことしてああいうて あんな風してあんなこと あんな …
ぼくもいくさに征くのだけれど(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
街はいくさがたりであふれ どこへいっても征くはなし勝ったはなし 三ヶ月もたてばぼくも征くのだけれど だけどこうしてぼんやりしている ぼくがいくさに征ったなら 一体ぼくはなにするだろ …
読書目安時間:約1分
街はいくさがたりであふれ どこへいっても征くはなし勝ったはなし 三ヶ月もたてばぼくも征くのだけれど だけどこうしてぼんやりしている ぼくがいくさに征ったなら 一体ぼくはなにするだろ …
北海に(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
夜の大海原に 星もなく さぶい風が波とたたかい 吹雪だ 灯もない 吹雪だ あれくるう 北海あれる ただ一つの生き物 ウキをたよりに 生きのび生きのびる人間 助かるすべも絶えた それ …
読書目安時間:約1分
夜の大海原に 星もなく さぶい風が波とたたかい 吹雪だ 灯もない 吹雪だ あれくるう 北海あれる ただ一つの生き物 ウキをたよりに 生きのび生きのびる人間 助かるすべも絶えた それ …
骨のうたう(原型)(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
戦死やあわれ 兵隊の死ぬるやあわれ とおい他国でひょんと死ぬるや だまってだれもいないところで ひょんと死ぬるや ふるさとの風や こいびとの眼や ひょんと消ゆるや 国のため 大君の …
読書目安時間:約1分
戦死やあわれ 兵隊の死ぬるやあわれ とおい他国でひょんと死ぬるや だまってだれもいないところで ひょんと死ぬるや ふるさとの風や こいびとの眼や ひょんと消ゆるや 国のため 大君の …
街角の飯屋で(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
カアテンのかかったガラス戸の外で 郊外電車のスパァクがお月さんのウィンクみたいだ 大きなどんぶりを抱くようにしてぼくは食事をする 麦御飯の湯気に素直な咳を鳴らしどぶどぶと豚汁をすす …
読書目安時間:約1分
カアテンのかかったガラス戸の外で 郊外電車のスパァクがお月さんのウィンクみたいだ 大きなどんぶりを抱くようにしてぼくは食事をする 麦御飯の湯気に素直な咳を鳴らしどぶどぶと豚汁をすす …
三ツ星さん(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
私のすきな三ツ星さん 私はいつも元気です いつでも私を見て下さい 私は諸君に見られても はずかしくない生活を 力一ぱいやりまする 私のすきなカシオペヤ 私は諸君が大すきだ いつでも …
読書目安時間:約1分
私のすきな三ツ星さん 私はいつも元気です いつでも私を見て下さい 私は諸君に見られても はずかしくない生活を 力一ぱいやりまする 私のすきなカシオペヤ 私は諸君が大すきだ いつでも …
南からの種子(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
南から帰った兵隊が おれたちの班に入ってきた マラリヤがなおるまでいるのだそうな 大切にもってきたのであろう 小さい木綿袋に 見たこともない色んな木の種子 おれたちは暖炉に集って …
読書目安時間:約1分
南から帰った兵隊が おれたちの班に入ってきた マラリヤがなおるまでいるのだそうな 大切にもってきたのであろう 小さい木綿袋に 見たこともない色んな木の種子 おれたちは暖炉に集って …
麦(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
銭湯へゆく 麦畑をとおる オムレツ形の月 大きな暈をきて ひとりぼっち 熟れた麦 強くにおう かのおなごのにおい チイチイと胸に鳴く かのおなごは いってしまった あきらめておくれ …
読書目安時間:約1分
銭湯へゆく 麦畑をとおる オムレツ形の月 大きな暈をきて ひとりぼっち 熟れた麦 強くにおう かのおなごのにおい チイチイと胸に鳴く かのおなごは いってしまった あきらめておくれ …
メンデルスゾーンのヴァイオリンコンチェルト(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
若草山や そよ風の吹く 大和の野かすみかすみ そよ風の吹く おなごの髪や そよ風の吹く おなごの髪や 枯草のかかれるを 手をのばしとってやる おなごのスカアトや つぎあとのはげしさ …
読書目安時間:約1分
若草山や そよ風の吹く 大和の野かすみかすみ そよ風の吹く おなごの髪や そよ風の吹く おなごの髪や 枯草のかかれるを 手をのばしとってやる おなごのスカアトや つぎあとのはげしさ …
YAMA(その他)
読書目安時間:約1分
Ishikoro no michi Ishikoro no michi Kaa tto higa sena wo yaku Aoba no Midori ga me ni itai …
読書目安時間:約1分
Ishikoro no michi Ishikoro no michi Kaa tto higa sena wo yaku Aoba no Midori ga me ni itai …
夕焼け(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
赤い赤い四角い形が 障子に落ちている 青い青い丸い葉が 赤い空気に酔っている ひらひらとコーモリが 躍る 人は 静かに戸を閉めて 電気をつけて 汁をすする 赤い明るい西の空も 灰色 …
読書目安時間:約1分
赤い赤い四角い形が 障子に落ちている 青い青い丸い葉が 赤い空気に酔っている ひらひらとコーモリが 躍る 人は 静かに戸を閉めて 電気をつけて 汁をすする 赤い明るい西の空も 灰色 …
夜汽車の中で(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
ふみきりのシグナルが一月の雨にぬれて ボクは上りの終列車を見て 柄もりの水が手につめたく かなしいような気になって なきたいような気になって わびしいような気になって それでもため …
読書目安時間:約1分
ふみきりのシグナルが一月の雨にぬれて ボクは上りの終列車を見て 柄もりの水が手につめたく かなしいような気になって なきたいような気になって わびしいような気になって それでもため …
よく生きてきたと思う(新字新仮名)
読書目安時間:約2分
よく生きてきたと思う よく生かしてくれたと思う ボクのような人間を よく生かしてくれたと思う きびしい世の中で あまえさしてくれない世の中で よわむしのボクが とにかく生きてきた …
読書目安時間:約2分
よく生きてきたと思う よく生かしてくれたと思う ボクのような人間を よく生かしてくれたと思う きびしい世の中で あまえさしてくれない世の中で よわむしのボクが とにかく生きてきた …
横町の食堂で(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
はらをへらした人のむれに、ぼくは食堂横町へながされていった。 給仕女の冷い眼に、なき顔になったのを、大きなどんぶりでもって人目からおおった。 えたいのしれぬものを、五分とながしこん …
読書目安時間:約1分
はらをへらした人のむれに、ぼくは食堂横町へながされていった。 給仕女の冷い眼に、なき顔になったのを、大きなどんぶりでもって人目からおおった。 えたいのしれぬものを、五分とながしこん …
夜通し風がふいていた(新字新仮名)
読書目安時間:約1分
上衣のボタンもかけずに 厠へつっ走って行った 厠のまん中に くさったリンゴみたいな電灯が一つ まっ黒な兵舎の中では 兵隊たちが あたまから毛布をかむって 夢もみずにねむっているのだ …
読書目安時間:約1分
上衣のボタンもかけずに 厠へつっ走って行った 厠のまん中に くさったリンゴみたいな電灯が一つ まっ黒な兵舎の中では 兵隊たちが あたまから毛布をかむって 夢もみずにねむっているのだ …
“竹内浩三”について
竹内 浩三(たけうち こうぞう、1921年(大正10年)5月12日 - 1945年(昭和20年)4月9日)は、日本の詩人。三重県宇治山田市(現在の伊勢市)生まれ。
(出典:Wikipedia)
(出典:Wikipedia)
“竹内浩三”と年代が近い著者
今月で生誕X十年
今月で没後X十年
今年で生誕X百年
平山千代子(生誕100年)
今年で没後X百年
大町桂月(没後100年)
富ノ沢麟太郎(没後100年)
細井和喜蔵(没後100年)
木下利玄(没後100年)
富永太郎(没後100年)
エリザベス、アンナ・ゴルドン(没後100年)
徳永保之助(没後100年)
後藤謙太郎(没後100年)
エドワード・シルヴェスター・モース(没後100年)