漁村ぎょそん
波がものを言ふやうになつてから 誰も姿を見せない砂浜に 抵抗する事を知らない貝殻のやうな女が 私生児を抱いて立つてゐた それは——生きる為には、生きる為には 泥蟹をまで食べなければならぬ 悲しい漁村の一つの姿である 夢を見ることのゆるされな …