ぐん)” の例文
昭和二年初めて三田の書生及三田出身の紳士が野球見物の帰りぐんをなし隊をつくって銀座通を襲った事を看過するわけには行かない。
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
幾里いくりも幾里ものあいだ、ただいちめんに青すすきの波である。その一すじの道を、まッくろな一ぐんの人間が、いそぎに、いそいでいく。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
爪長つめながく、おほきさは七しやく乃至ないしじやう二三じやくぐらいの巨鳥きよてうが、天日てんじつくらくなるまでおびたゞしくぐんをなして、輕氣球けいきゝゆう目懸めがけて、おそつてたのである。
そとから、らせをもたらした一ぐん道案内みちあんないとなりました。そして、そのあとからみんながいっしょにつづいてったのであります。
北海の波にさらわれた蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
開墾地かいこんちへは周圍しうゐかくれる場所ばしよ所爲せゐか、村落むら何處どこにもにはかそのこゑかなくなつたすゞめぐんをなして日毎ひごとおそうた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
其れとなゝめに対して右方うはうそびえたウフイツチ邸は階下の広大な看棚ロオヂアを広場に面せしめて、その中には希臘ギリシヤ羅馬ロオマ時代の古彫像が生ける如くぐんを成して居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
る人ぐんをなすは勿論もちろん、事をはりてはこゝかしこにて喜酒よろこびざけえんをひらく。これみな 国君こくくん盛徳せいとく余沢よたくなり。他所にも左義長あれどもまづは小千谷をぢや盛大せいだいとす。
はるかに思いもよらぬ後方のぐんを抜いた空に、ぽっかり浮んでいるのは祖母そぼの頂である。離れて久住くじゅうの頂が、やや低いところに見える。英彦えひこが見える、市房いちふさが見える。
雲仙岳 (新字新仮名) / 菊池幽芳(著)
カピューレット長者ちゃうじゃさきに、ヂュリエットおよ同族どうぞくもの多勢おほぜいぱうよりで、他方たはうよりきた賓客ひんきゃく男女なんにょおよびロミオ、マーキューシオー假裝者かさうしゃの一ぐんむかふる。
くちなはきらめきぬ、蜥蜴とかげも見えぬ、其他の湿虫しつちうぐんをなして、縦横じうわう交馳かうちし奔走せるさま一眼ひとめ見るだに胸悪きに、手足をばくされ衣服をがれ若き婦人をんな肥肉ふとりじし酒塩さかしほに味付けられて
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
海底超人は、いまや用がおわったので、ぐんをなして、ぞろぞろと甲板の上にはいのぼってきた。
海底大陸 (新字新仮名) / 海野十三(著)
五年生のなかにたったひとり、本校の大ぜいのなかでもぐんをぬいてできのよい女の子がいることで、みさきからかよっている三十人の男女生徒がちこくしなかったようにいった。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
その狼藉はなお可なり、酒席の一興、かえって面白しとしてじょすべしといえども、座中ややもすれば三々五々のぐんを成して、その談、花街かがい柳巷りゅうこうの事に及ぶが如きは聞くに堪えず。
日本男子論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
ぐんをなして腸腺ちょうせんつらぬき、これを破壊して血管と腹膜に侵入し、そこに瓦斯がすを発生して、組織を液体化する醗酵素はっこうそを分泌するのだが、この発生瓦斯の膨脹力は驚くべきものであって
(新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
西蔵チベット世界せかい屋根やねといはれてゐるほどで、くに全体ぜんたいたか山々やまやまつらなりだ。その山々やまやまなかでもぐんいてたかく、西蔵チベット屋根やねともいはれるのが、印度インドとの国境こくきやうまたがるヱヴェレストざんである。
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
大きい亀どもは、肯いた様子をして、ぐんをなし隊を結んで、それを載せて行った。
不周山 (新字新仮名) / 魯迅(著)
それも亡くなられるほんの三四ヶ月前に万世はしのミカドホテルの球突塲たまつきばで一せんこゝろみたのだつたが、持てんも前にげた人たちよりもいさゝぐんをぬいた六十てんで、そのふりたるや快活くわいくわつ奔放ほんほう
文壇球突物語 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
ここには大分だいぶぐんをなしてかずにしたら、両方を合せて約二十粒もあったろう。姉は丹念に一粒ずつ取っては食い、取っては食い、とうとう妹の顔中にある奴を一つ残らず食ってしまった。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
私は憂鬱になつてしまつて、自分が拔いたままかさねた本のぐんながめてゐた。
檸檬 (旧字旧仮名) / 梶井基次郎(著)
あたかも若き競技者が方人かたうど調練者ならしてぐんせかれてか楕圓砂場だゑんさぢやうをさして行く時
頌歌 (旧字旧仮名) / ポール・クローデル(著)
野を散歩すうららかにして小春の季節なり。櫨紅葉はじもみじは半ば散りて半ば枝に残りたる、風吹くごとにひらめき飛ぶ。海近き河口に至る。潮退きてあらわれ鳥のぐん、飛び回る。水門をろす童子どうじあり。
小春 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
そこには人、ぐんを成して行かず、ひとり行くを悦ぶ。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
ホルスタインのぐんを指導するとき
『春と修羅』 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
遠く行く一ぐんの鳥
短歌 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
まして近頃はいくさがなくて人肉に飢えているので、野から町へ移ったいわゆる野良犬が街道筋にはぐんをなしていることが珍しくない。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鴻雁こうがんは空を行く時列をつくっておのれを護ることに努めているが、うぐいすは幽谷をでて喬木きょうぼくうつらんとする時、ぐんをもなさず列をもつくらない。
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
その国の野蛮に派手な服装をした印度インド人の一ぐんと、青い服を着けた波斯ジプシイの男の踊子とだけは特に雇はれて居るらしい。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
この魚族ぎよぞくは、きわめて性質せいしつ猛惡まうあくなもので、一時いちじ押寄おしよせてたのは、うたがひもなく、吾等われら餌物えものみとめたのであらう。わたくしそのぐんたちま野心やしんおこつた。
ぐんが、はなびらをりまいたように、そらったのです。つづいて大群たいぐん大空おおぞらをかすめて、さきんでいった、れのあとにつづきました。
北海の波にさらわれた蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
る人ぐんをなすは勿論もちろん、事をはりてはこゝかしこにて喜酒よろこびざけえんをひらく。これみな 国君こくくん盛徳せいとく余沢よたくなり。他所にも左義長あれどもまづは小千谷をぢや盛大せいだいとす。
杉かひのきか分からないが根元ねもとからいただきまでことごとく蒼黒あおぐろい中に、山桜が薄赤くだんだらに棚引たなびいて、しかと見えぬくらいもやが濃い。少し手前に禿山はげやまが一つ、ぐんをぬきんでてまゆせまる。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ヅーフ部屋と云う字引のある部屋に、五人も十人もぐんをなして無言で字引をひきつゝ勉強して居る。夫れから翌朝よくあさの会読になる。会読をするにもくじもっ此処ここから此処までは誰とめてする。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
足下きみ昨夜ゆうべはマブひめ(夢妖精)とおやったな! 彼奴あいつ妄想もうざうまする産婆さんばぢゃ、町年寄まちどしより指輪ゆびわひか瑪瑙玉めなうだまよりもちひさい姿すがたで、芥子粒けしつぶの一ぐんくるまひかせて、ねぶってゐる人間にんげん鼻柱はなばしら横切よこぎりをる。
と、首領らしい男が手をさし挙げると、一ぐんのいなごのように、そのすべてが、村の方へ向って、一散に駈けて行った。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
野犬やけんの一ぐんは、ジャックを中心ちゅうしんにして、自分じぶんたちの生活せいかついとなむことにしました。かれらは、どこへいくにも一塊ひとかたまりとなって、いつでもてきたる用意よういをしていました。
花の咲く前 (新字新仮名) / 小川未明(著)
寺の門内には仮店かりみせありて物を売り、ひとぐんをなす。芝居にはかりに戸板をあつめかこひたる入り口あり、こゝにまもものありて一人まへ何程とあたひとる、これ屋根普請やねふしん勧化くわんけなり。
せうは四五しやくよりだいは二三じようぐらいの數※すうまん沙魚ふかが、ぐんをなしてわが端艇たんてい周圍まわり押寄おしよせてたのである。
少し酒気を帯びては居るが人の悪い案内者風の男でも無いから僕も附いて行つた。この老人としよりたちばうと話しながく日本人を珍らしがつて附近の子供の一ぐんもぞろぞろと附いて来た。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
またそれには、こういう武人の一ぐんに対して、何らか求める大志を抱いているものということもほぼ想像がつく。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
寺の門内には仮店かりみせありて物を売り、ひとぐんをなす。芝居にはかりに戸板をあつめかこひたる入り口あり、こゝにまもものありて一人まへ何程とあたひとる、これ屋根普請やねふしん勧化くわんけなり。
そして、よるになるとかれらの一ぐんは、しばらく名残なごりしむように、ひくみずうみうえんでいたが、やがて、ケーがんを先頭せんとうきたをさして、目的もくてき到達とうたつすべく出発しゅっぱつしたのであります。
がん (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのような母、あのような父、正行がぐんを抜いた戦陣ぶりも理由なきことではなかった。だがの、正行
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
観人みるひとぐんをなして大入なれば、さるの如きわらべどもにのぼりてみるもあり。小娘ちひさきむすめざるさげ冰々こほり/\とよびて土間どまの中をる。ざるのなかへ木の青葉あをばをしき雪のこほりかたまりをうる也。
観人みるひとぐんをなして大入なれば、さるの如きわらべどもにのぼりてみるもあり。小娘ちひさきむすめざるさげ冰々こほり/\とよびて土間どまの中をる。ざるのなかへ木の青葉あをばをしき雪のこほりかたまりをうる也。
「いやその世辞が油断ならぬ。よも、こちらの腹を見やぶられはしまいな。都ではいくたびも会っておるが、ぐんをぬいて如才じょさいのない、そして炯眼けいがんな佐々木道誉のことだ」
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こうして呂宋兵衛たちは、この村をいつくしたら、次の部落へ、つぎの部落を蹂躪じゅうりんしきったらその次へ、ぐんをなして桑田そうでんらす害虫のように渡りあるく下心したごころでいるのだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ああ戦国の餓鬼がき! 戦場のあとに白昼はくちゅう公盗こうとうをはたらく野武士のぶしの餓鬼! その一ぐんであった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
影法師の一かたまりがささやいていると、彼方かなたの石垣のくずれに腰かけている一ぐん
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)