)” の例文
眞新しい紅白の鈴ので縛り上げられた中年者の男が、二た突き三突き、匕首あひくちされて、見るも無慙むざんな死にやうをして居るのです。
「いゝえ、私、何よりも見附かるのがこはうございますの。ですから、そのになるやうなことは何も申上げないことにいたします。」
「そりや出来ない事もないが、——しかし温泉へくなぞは贅沢ぜいたくだな。僕はまだほぞ切つて以来、旅行らしい旅行はした事がない。」
塵労 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
いきに吾がふ君はとりが鳴くあづまの坂を今日か越ゆらむ」(同・三一九四)等、結句の同じものがあるのは注意すべきである。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
ここにあめ兒屋こやねの命、布刀玉ふとだまの命、天の宇受賣の命、伊斯許理度賣いしこりどめの命、たまおやの命、并せて五伴いつともあかち加へて、天降あもらしめたまひき。
こうじたさまして、しろ駒下駄こまげたの、爪尖つまさきをコト/\ときざ洋傘かうもりさきが、ふるへるばかり、うちにつたうてはなれる。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
今此方にて不審ふしん致す詞のに付て彼是かれこれ申は可謂いはゆる引れ者の小うたとやら取に足ずと申せしかば外記も暫時しばし默止もくし居たりしを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
花野を、あか塗笠ぬりがさをかぶつて、狐葛の葉が飛んでゆく舞臺のりは、どんなに幼心をとらへたらう。
春宵戯語 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
道の右は山を𠠇りて長壁と成し、石幽いしゆう蘚碧こけあをうして、幾条いくすぢとも白糸を乱し懸けたる細瀑小瀑ほそたきこたき珊々さんさんとしてそそげるは、嶺上れいじようの松の調しらべも、さだめてこのよりやと見捨て難し。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
母親はゝおやよりのひつけを、なにやとはられぬ温順おとなしさに、たゞはい/\と小包こづゝみをかゝへて、鼠小倉ねづみこくらのすがりし朴木齒ほうのきば下駄げたひた/\と、信如しんによ雨傘あまがささしかざしていでぬ。
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
金澤氏の年々受け得た所の二樣の鑑札は、蒼夫さんの家のはこに滿ちてゐる。鑑札は白木の札に墨書して、烙印らくいんを押したものである。札はあな穿うがを貫き、おほふに革袋かはぶくろを以てしてある。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
「自分は姶良あひら帖佐てうさの住人でへそ切つて以来このかた演説などいふ下らぬ事をやつた事もなし、またやらうとも思はなかつたが、一生に一度の積りで今日は喋舌しやべらして貰ひたい」といふ冒頭まくら
Bは保護するつもりで女のあとについて歩いて行つてゐたが、その白足袋を穿いた足が、草鞋のあらくれたで十文字にくゝられた足が、時々尖つた石に躓きかけるのを堪らない心持で見た。
山間の旅舎 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
堪忍嚢かんにんぶくろれました。それでもつよつのをつかうほどでもありません。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
ふまでのかたみに契る中ののしらべはことに変はらざらなん
源氏物語:13 明石 (新字新仮名) / 紫式部(著)
瑠璃るりはささやく紅玉こうぎよくに、(さあれ苦の一聯ひとつらね
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
「悲哀」のきんの絲のを、ゆしあんずるぞ無益むやくなる。
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
幼き年の滅びゆく吐息をもらし夢の
紅緒べにを木履かつこれた。
とんぼの眼玉 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
惜しき頸輪くびわを解きて
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
生命いのち氷鋏ひばさみ
わなゝき (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
星の光のいと
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
赤き
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
大賽錢箱だいさいせんばこの前に立つと、赤い紙入を出して、小錢をつまんでポイと投げ、鈴のに心持觸れて、双掌もろてを合せたまゝ、ひた拜みに拜み入るのでした。
勘弁かんべんしてらつせえ。うゝとも、すうとも返答へんたふすべもねえだ…わし先生せんせいはれるは、ほぞつては最初はじめてだでね。」
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
せざりし者と泣々なく/\たのもらひ乳の足ぬがちなる養育やういくつなぐ我が子の玉のほそくも五たいやせながら蟲氣むしけも有ぬすこやかさえん有ればこそ親子と成何知らぬ兒に此憂苦いうく
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
私の心のち切りながら、あなたは、私の惡い根性こんじやう根絶ねだやしするとばかり思つていらつしやる。
初春はつはる初子はつね今日けふ玉箒たまばはきるからにゆらぐたま 〔巻二十・四四九三〕 大伴家持
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
ここに天皇、天の下の氏氏名名の人どもの、氏かばねたがあやまることを愁へまして、味白檮うまかし言八十禍津日ことやそまがつひさきに、玖訶瓮くかべを据ゑて、天の下の八十伴やそともの氏姓を定めたまひき。
夜すがら両個ふたりの運星おほひし常闇とこやみの雲も晴れんとすらん、隠約ほのぼの隙洩すきもあけぼのの影は、玉の長く座に入りて、光薄るる燈火ともしびもとに並べるままの茶碗の一箇ひとつに、ちひさ有りて、落ちて浮べり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
自分の願望ぐわんまうはかりも、一方の皿に便利な国を載せて、一方の皿に夢の故郷を載せたとき、便利の皿をつたをそつと引く、白い、優しい手があつたにもかかはらず、たしかに夢の方へ傾いたのである。
妄想 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
あは手向てむけはなに千ねんのちぎり萬年まんねんじやうをつくして、れにみさをはひとりずみ、あたら美形びけい月花つきはなにそむけて、何時いつぞともらずがほに、るや珠數じゆずかれては御佛みほとけ輪廻りんゑにまよひぬべし
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「悲哀」のきんの糸のを、ゆしあんずるぞ無益むやくなる。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
八十伴やそともたまぶちの冕冠かむりたか
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
わたしの恋の琴の
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
星の光の糸の
若菜集 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
やがてまちちかい、すゞはしが、河原かはら晃々きら/\しろい、みづあをい、對岸むかうぎしくらい、川幅かははゞよこつて、艷々つや/\一條ひとすぢかゝる。
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「御覽の通り、頸には、絞め殺した時のひもあとが付いて居るが、それで見ると、刀のか前掛の紐か、——兎に角、恐ろしく丈夫な一風み方の變つた眞田紐さなだひもだ」
らくはたまのばかり恋ふらくは富士の高嶺たかね鳴沢なるさはごと (巻十四・三三五八)
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
斯くて澤井友次郎は彼の町人のすゝめにより水口の宿外れよりお花を駕籠にのせ其身は町人と共に咄など爲乍しながら駕籠のあとに付てゆく程に一里餘りにして大野といへ建場たてばに來りしが友次郎は過つて草鞋の
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
やぶれ菅笠すげがさ、しめが切れて
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
には、あをうなばらや
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
八十伴やそとも氏姓うぢかばね
なんだとヱりやうさんに失礼しつれいだがおへりあそばしていたゞきたいとあゝさうまをすよりやうさんおきゝのとほりですからとあはれやはゝきやうするばかりむすめは一呼吸こきふせまりてる/\顔色かほいろあほくはつゆたま今宵こよひはよもとおもふに良之助りやうのすけつべきこゝろはさらにもなけれど臨終いまはまでこゝろづかひさせんことのいとを
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
さればたまの絶えしにあらねば、うつゝ号泣がうきふする糸より細き婦人をんなの声は、終日ひねもすひまなかりしとぞ。
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
鈴は紅白こうはくごと引千切られ、玉垣の下には、鈴の緒で縛られた死骸があつたと申します。
さんは、瑞樹みづきのかくれ
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
たゞたまのしるしばかり、かみいとむすんでも、胡沙こさかぜかたみだれた、せ、かほやつれたけれども、目鼻立めはなだちのりんとして、口許くちもとしまつたのは、服裝なりうでも日本やまと若草わかくさ
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
お信乃が取出したのは、子供らしい大きな守袋まもりぶくろ——男の手縫らしい縫目をほぐすと、中から現はれたのは、お信乃のへそ書きと、それに三枚のお守札まもり、それから一枚の手紙でした。
足駄あしだすこゆるんでるので、足許あしもとにして、踏揃ふみそろへて、そでした風呂敷ふろしきれて、むねをおさへて、かほだけ振向ふりむけてるので。大方おほかたをんなでそんなものるのが氣恥きはづかしいのであらう。
迷子 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)