幾人いくにん)” の例文
幾人いくにんの家族があってもたがい相侵あいおかさないで一家団欒だんらん和気靄々わきあいあいとするようにならなければ政治上の立憲制度も到底円滑に行われんよ。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
夫婦ふうふあひだうまれたもの幾人いくにん彼等かれらあひだ介在かいざいしてた。有繋さすが幾人いくにん自分じぶん父母ふぼばれるのでにがわらひんでひかへてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
そのために、兎の味方の幾人いくにんかは彼を見すてて、亀の方につきました。そして、亀の大威張おおいばりな言葉を、大声で喝采しました。
兎と亀 (新字新仮名) / ロード・ダンセイニ(著)
そのマージの不思議な術を見ようと思って、幾人いくにんもの人が出かけましたが、一人として向こうに行きついた者はないそうです。
手品師 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
「あの寺男てらおとこているなら、ほかのものをわりにさせればいいのだ。このむらには、あそんでいるものが、幾人いくにんもあるはずだ。」
娘と大きな鐘 (新字新仮名) / 小川未明(著)
平手ひらてで板を叩くようなつづみの音をさせて、鳥打帽子をかぶった万歳まんざい幾人いくにんも来ます。かね太皷たいこを鳴らすばかりで何にも芸のない獅子舞も来ます。
二階から (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
孔子を国賓こくひんとしてぐうしようという国はある。孔子の弟子の幾人いくにんかを用いた国もある。が、孔子の政策を実行しようとする国はどこにも無い。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
ところが病気のせいで二人力ににんりきになっていた患者は、幾人いくにんかの看視人の手を苦もなく振りほどいてしまい、相手は勢い余って床べたへつんのめってしまった。
はげしい戦いにたおれた今、幾人いくにんがふたたび故郷の土をふみ、ふたたび会えるかと思うと、心は暗くしずむ。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
「——見うけるところ、良人もあろうし、幾人いくにんかの子供もあろう人妻ひとづまではないか。なぜそんな短気たんきなことをいたす。くるしい事情じじょうがあろうにもしろ、浅慮千万せんりょせんばん……」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
本堂の廊下らうかには此処こゝ夜明よあかししたらしい迂散うさんな男が今だに幾人いくにんこしをかけてて、の中にはあかじみた単衣ひとへ三尺帯さんじやくおびを解いて平気でふんどしをしめ直してゐるやつもあつた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
「源吉は面目のために黙っていたし、お越はそれを思い知らせるために幾人いくにんでも殺す気になった」
ふまでもなくうまむちぼく頭上づじやうあられの如くちて來た。早速さつそくかねやとはれた其邊そこら舟子ふなこども幾人いくにんうをの如く水底すゐていくゞつて手にれる石といふ石はこと/″\きしひろあげられた。
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
二千倍という顕微鏡は、数も少くまたこれを調節ちょうせつすることができる人も幾人いくにんもないそうです。
手紙 三 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
先を争うようにして幾人いくにんかの塾生が手をあげるのだったが、今日は、それどころか、かんじんの「夜話」をひらきもしないで、ひそひそと私語をつづけているものが多かった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
若い男が幾人いくにんもいました。編集長自身は大きな机のそばに立っていました。二冊の小さい本が、いずれも若い作家の書いたものですが、それが批評されることになっていました。
あの娘についてはパドゥアの若い者はみな大騒ぎをしているのだが、運よくその顔を見たという者は、まだほんの幾人いくにんもない。ベアトリーチェ嬢については、わたしはあまりよく知らない。
もちろんぼくの姿すがたを見つけるはずはない。ぼくはつかれはてていたので、ひとやすみしようと思って、博物館はくぶつかんのまっ白な階段かいだんをのぼっていったんだ。その近くで子どもたちが幾人いくにんも遊んでいたよ。
答『それはわからぬ。通例つうれいよほど沢山たくさんで、幾人いくにん勘定かんじょうはしかねるのじゃ。』
「うん三人ある。この先幾人いくにん出来るか分らん」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
なにしろ、東京とうきょうでは、幾人いくにんということなく、自動車じどうしゃや、トラックの犠牲ぎせいとなっているから、こののちも、よくをつけなければならない。
空晴れて (新字新仮名) / 小川未明(著)
もう幾人いくにんあるいたあとなので、おもふやうにはけなかつたがそれでも勘次かんじはおしなにひかされて、まだのこつて蒟蒻こんにやくかついでかへつてしまつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
しかるに今の世の夫婦たる者を御覧なさい。たがいに双方で満足して人間無上むじょうの幸福をけている人が幾人いくにんありましょうか。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
そのうちに国王はくなり、王子が国王の位に即き、次いで自分もまた年をとって亡くなり、それから幾人いくにんもの王が代々後をいで、幾千年もたちましたが
夢の卵 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
同じ時刻じこくに同じ場所を動いているのだが、よく見ると顔ぶれの幾人いくにんかがかわり、そのせいでか、みんなの表情もあたりの木々の新芽しんめのように新鮮しんせんなのに気がつく。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
幾人いくにんかの子供こどもがおにわはいってました。そしてみずにパンやお菓子かしれました。
錦を着て郷土に帰る者が幾人いくにんありましても、郷土は依然いぜんとしてぼろを着たままであり、時としては、そうした人々を育てるために、郷土はいっそうみじめなぼろを着なければならない
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
見るまに、かれと龍太郎の犠牲にえとなる者のかずが知れなかった。そのふたりにまもられながら伊那丸いなまる小太刀こだちをぬいて幾人いくにんった。だが、かれはてきをかけまわしてびせかけることはしない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして、近傍きんぼうのいい医者いしゃ幾人いくにんんでみせたり、いろいろとをつくしてくれました。けれど、二人ふたり病気びょうきは、だんだんわるくなるばかりでした。
村の兄弟 (新字新仮名) / 小川未明(著)
店の中には幾人いくにんもの店員がひかえていますし、表には大勢の人が通っています。とうとう昼頃になりました。
不思議な帽子 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
しろいシヤツのうへ浴衣ゆかたかたまでくつて、しりからげて草鞋わらぢ穿はい幾人いくにんれつからはなれたとおもつたら、其處そこらにつて見物けんぶつして女等をんならむかつて海嘯つなみごとおそうた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
いくらくりかえして、この歌の深い意味をとき聞かしても、のみこめる子どもは幾人いくにんもいなかった。一年生がまっさきに、二年生がつづいて、がやがや がやがや。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
しかるに我邦わがくにの婦人中食物上の原理を知って料理する者が幾人いくにんあるだろう。婦人はさておき料理学校の先生すらもこの問題に明答を与え得る人が沢山はあるまいと思う。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
早めに帰って来たものは一人もなく、中には夕食に間にあわなかったものも幾人いくにんかあったので、ちょっと心配されたが、それでも食卓をかたづけるころまでには、どうなり全部の顔がそろった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
そして、おじいさんは、むかし、いったことのある場所ばしょわすれてしまって、幾人いくにんとなくすれちがった人々ひとびといていました。
雪の上のおじいさん (新字新仮名) / 小川未明(著)
よしや広海さんのお家へ三十人のお客が来るとしてもテンピを家へ置いてある人が幾人いくにんありましょう。恐らくは半分もむずかしいと思います。カステラ鍋といってもそうでしょう。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
知って迎えてあげたのだ。今までに幾人いくにんとなく、わしをたずねて来かかった者はあるが、みな途中で引き返してしまった。それなのにお前は、たとえ命がけとはいえ、よくもこれまでやって来た
手品師 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
あねは、これまでこんなことをいったものが、幾人いくにんもありましたから、またかとおもいましたが、その大尽だいじんというのは、こえている大金持おおがねもちだけに
港に着いた黒んぼ (新字新仮名) / 小川未明(著)
このしまつよい、幾人いくにんかのかしらというようなものは、みんな二人ふたりよりは年上としうえでありました。そして、つよいものほど、頭蓋骨ずがいこつをたくさんいえなかならべていました。
幸福に暮らした二人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
うちのものも、いっしょにきて、まちへゆかれるおじいさんを見送おくったのです。むらから、こうして、くるまいて、てゆくものは、ほかにも幾人いくにんかありました。
少女がこなかったら (新字新仮名) / 小川未明(著)
あのおばあさんに、こまれたら、どうしてもげられはしないということだ。おそろしいかどわかしのおばあさんなのだ! 仲間なかまが、幾人いくにんあるかもわからない。
生きた人形 (新字新仮名) / 小川未明(著)
氷山ひょうざんはかなり、おおきく、とがったやまのようにするどひかったところもあれば、また、幾人いくにんって、けっこをすることができるほどの広々ひろびろとした平面へいめんもありました。
幽霊船 (新字新仮名) / 小川未明(著)
しずむころになると、毎日まいにちのように、海岸かいがんをさまよって、あおい、あおい、そして地平線ちへいせんのいつまでもくらくならずに、あかるいうみあこがれるものが幾人いくにんとなくありました。
明るき世界へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
わたしは、二人ふたりあねほしはなになったとき、小鳥ことりとなりました。それは、野山のやまびまわってあそぶためではありません。毎日まいにち山河やまかわえてゆく旅人たびびと幾人いくにんあるかしれません。
王さまの感心された話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
にち太郎たろうは、学校がっこうで、幾人いくにんかのともだちとおにごっこをしてさわいでいました。そのとき、一人ひとりが、ベンチにつまずいて、片足かたあしほねくだきました。みんなは、大騒おおさわぎをしました。
翼の破れたからす (新字新仮名) / 小川未明(著)
あるとき、おんなかわあらっていると、まえ金色こんじきうおいてしずんだことがあるそうだ。そればかりでない、むかしから、幾人いくにん金色こんじきうおたものがあるということだ。
金の魚 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして、幾人いくにんもいる肉襦袢にくじゅばんまいわかおんならのれから、っているおんなさがしました。
公園の花と毒蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
皇子おうじは、てどもてども、姫君ひめぎみえないので、はらをたてて、ひとつには心配しんぱいをして、幾人いくにんかの勇士ゆうししたがえて、みずからシルクハットをかぶり、燕尾服えんびふくて、黒塗くろぬりの馬車ばしゃ
赤い姫と黒い皇子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それで幾人いくにんとなくこのまちとお旅人たびびとが、みなこのまちにきかかると、きゅうからだつかれをおぼえてねむくなりますので、まちはずれのかげのしたや、もしくはまちなかにあるいしうえこしろして
眠い町 (新字新仮名) / 小川未明(著)
真理しんり奉仕ほうしする、野口英世のぐちひでよのようなひとれば、これまで発見はっけん困難こんなんとされた病菌びょうきんとたたかって、人間にんげん恐怖きょうふから、解放かいほうするであろうし、そういう科学者かがくしゃ幾人いくにんれば、どれほど
世の中のために (新字新仮名) / 小川未明(著)