すなは)” の例文
(七)舜禹しゆんうあひだ(八)岳牧がくぼくみなすすむ。すなはこれ(九)くらゐこころみ、しよくつかさどらしむることすうねん(一〇)功用こうようすでおこり、しかのちまつりごとさづく。
乃美すなはち杉山松助、時山直八をして、状を探らしむ。二人帰り報じて曰く、俊太郎逮捕の為め、或ひは不穏の事あらん。よろしく邸門の守を
写真班しやしんはん英雄えいゆうは、すなはちこの三岐みつまたで一自動車じどうしや飛下とびおりて、林間りんかんてふ逍遥せうえうする博士はかせむかふるために、せて後戻あともどりをしたところである。——
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
短所を視れば、すなはち其長所を知るべし。君子は其過を見て其仁を知る、亦此の意なり。能と不能とを明識するもの、始めて人を談ずべし。
大久保湖州 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
善惡共に語つても、決して恥ぢることアないんだから——第一人稱がすなはち第三人稱、主觀的が乃ち客觀的、破壞が直ちに建設だ。
泡鳴五部作:03 放浪 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
諸君よ、諸君は彼等の口の余りに大なるを以て無数の蛙群あぐんなりと誤るなかれ。彼等はすなはち口をあいて茫然自失せる十五億の蒼生さうせいにてある也。
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
して、事あらはれなば一振ひとふりやいばに血を見るばかり。じやうの火花のぱつと燃えては消え失せる一刹那いつせつなの夢こそすなはち熱き此の国の人生のすべてゞあらう。
黄昏の地中海 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
竹越君曰く、透谷と月下に語れば清癯せいく飄渺へうべうとして神仙の如し、亦俗界の人に非るを覚ふ。蘇峰氏予につて曰く、透谷は銀匙なり君に至つてはすなはち鉄瓶のみ。
北村透谷君 (新字旧仮名) / 山路愛山(著)
有志之士、不堪杞憂きいうにたへずしば/\正論讜議たうぎすと雖、雲霧濛々もう/\がうも採用せられず。すなはち断然奸魁かんくわいたふして、朝廷の反省を促す。下情壅塞ようそくせるより起ると云ふは即是也すなはちこれなり
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
すなは巴里パリ叫喊きようかん地獄の詩人として胸奥の悲を述べ、人にそむき世に抗する数奇の放浪児が為に、大声を仮したり。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
是にいて、使者還り来て曰く、墓所に到りて視れば、かためうづめるところ動かず。すなはち開きて屍骨かばねを見れば、既にむなしくなりたり。衣物きもの畳みてひつぎの上に置けり。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
彼は女四書じよししよ内訓ないくんに出でたりとてしばしば父に聴さるる「五綵服ごさいふくさかんにするも、以つて身のと為すに足らず、貞順道ていじゆんみちしたがへば、すなはち以つて婦徳を進むべし」の本文ほんもんかなひて
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
すなはち溪聲を樹間に求め、樹にすがり、石にりてわづかにこれを窺ふ。水は國道の絶崖にかたよりて、其處に劒の如く聳立しやうりつせる大岩たいがんあたり、その飛沫の飛散する霧のごとくけぶりの如し。
秋の岐蘇路 (旧字旧仮名) / 田山花袋(著)
哀しきかも我が父、痛ましきかも我が母、一身死に向ふ途をうれへず、唯二親世にいます苦を悲しぶ。今日長く別れなば、何れの世にかることを得む。すなはち歌六首を作りてみまかりぬ。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
「コノ日、天気晴朗ニシテ、空ニ一点ノ雲無ク、すなはチ一瓢ヲ携ヘテ柴門さいもんヲ出ヅ……」
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
粋は仁にちかし、即ち魔境に他をいつくしむ者。粋は義に近し、粋は信に邇し、仮偽界に信義を守る者。すなはち迷へる内に迷はぬを重んじ、不徳界に君子たる可きことを以て粋道の極意とはするならし。
検するに、およそ将門は本意の敵にあらず、これ源氏の縁坐也云〻。孀母さうぼは堂に在り、子にあらずば誰か養はん、田地は数あり、我にあらずば誰か領せん、将門にむつびて云〻、すなはち対面せんと擬す
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
ふね塲合ばあひには、それをもつ輕氣球けいきゝゆう運命うんめいぼくし、みづから天運てんうんつきあきらめて、其時そのとき最後さいご手段しゆだんすなは海賊船かいぞくせんとか其他そのた強暴きようぼうなる外國ぐわいこく軍艦等ぐんかんとうに、海底戰鬪艇かいていせんとうてい秘密ひみつさとられぬがため
其歌集に序する、亦何ぞ妨げむ。すなはち序をつくる。
東西南北序 (旧字旧仮名) / 正岡子規(著)
勇士すなはち輝ける兵車をおりて地に立ちて
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
立出たり然るに伊豆守殿御役宅は西丸下にしまるしたなり越前守の御役宅は數寄屋橋すきやばし御門内なれば其道筋そのみちすぢへだたれば伊豆守殿には越前守よりすこしく先に御登城あり御用ごよう取次とりつぎは未だ登城なく御側衆おそばしうの泊番高木伊勢守のみ相詰あひつめたりすなはち伊豆守殿芙蓉ふように於て高木伊勢守を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
宇宙万般の事万般を貫くの理法ありて、洩さず、乱れず、発してはすなはち不可不の因を成し、収まつては乃ち不許不の果を作る。
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
第二は去年の夏、義雄に伴はれて甲州へ行つて、初めて温泉のお客さまとなつたことだ。そして第三が、すなはち、この贈り物を受けたことだ。
士卒しそついまかず、百せいしんぜず。ひとにしてけんかろし。ねがはくはきみ寵臣ちようしんくにたつとところもつぐんかんせしめば、すなはならん
けては置かじとささややうにて、心済まねば謂ひも出でず、もしそれ胸中の疑磈ぎくわいを吐きて智識のをしへけむには、胸襟きようきんすなははるひらけて臆病とみえむと思へど
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
この已来このかた秋稼しうかに至り風雨ついでしたがひて五穀豊かにみのれり。此れすなはち誠をあらはし願をひらくこと、霊貺りやうきやう答ふるが如し。すなはおそれ、載ち惶れて以てみづかやすみするとき無し。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
すなはち長崎の夕凪ゆうなぎとかとなへて、烈しい炎暑の一日いちじつあと、入日と共に空気は死するが如くに沈静し、木葉このは一枚動かぬやうな森閑とした黄昏たそがれ、自分は海岸から堀割をつたはつて
海洋の旅 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
今や友人春水の子俊秀かくの如きを見て、彼は曰へり、千秋子あり之を教へて実才を為さしめずすなはち詞人たらしめんと欲する、宜しく先づ史を読んで古今の事を知らしむべし
頼襄を論ず (新字旧仮名) / 山路愛山(著)
僕はしばらく君と共に天下の文芸を論じなかつた為めか、君の文を読んだ時に一撃を加へたい欲望を感じた。すなはち一月ばかり遅れたものの、いささか君の論陣へ返し矢を飛ばせる所以ゆゑんである。
解嘲 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「この而のか様になり候様に引つける也。」すなはち知る、茶山は上肢に痙攣を起すことがあつたのである。是は恐くは消食管壅塞の病に聯繋した徴候ではなからう。恐くは別の病証であらう。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
樊噲だって立派な将軍だが、「生きてすなはち噲等と伍を為す」と仕方が無しの苦笑をした韓信の笑には涙が催される。氏郷の書院柱にりかかって月に泣いた此の涙には片頬かたほえみが催されるではないか。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
コノ時暴風進路ヲさへぎリテ船危ク、すなはチかつど岬ニ還リテソノ付近ノぷろゐんすたんニ難ヲ避ケヌ——今ヤ殖民地ノ位置ヲ選択スルコト何ヨリモ急ニ、探険隊ノ相分レテソノ捜索ニ従事スルコト五週間
「愛」はすなはち馳せりつ、馳せ走りながら打泣きぬ。
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
一切の枝葉をはらひ、一切の被服ひふくぎ、六尺似神じしんの赤裸々を提げて、平然として目ざす城門に肉薄するのがすなはち此手紙である。
雲は天才である (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
「少くとも、この論文を書きあげる間は、死ぬべきものではない」といふ考へが浮ぶ、悲痛の哲理はすなはち生の哲學である。
泡鳴五部作:05 憑き物 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
龐涓はうけんすでつかへ、惠王けいわう將軍しやうぐんるをて、みづか以爲おもらへく(一五)のう孫臏そんびんおよばずと、すなはひそかに((人ヲシテ))孫臏そんびんさしむ。ひんいたる。
かくて餘物よぶつるや。みな丘山きうざんもたゞならず、すなはみづかる。るにしたがうて、𥶡りんこと/″\むしむなもとつらぬく。もつ飛衞ひゑいぐ。先生せんせい高踏かうたふしてつていはく、汝得之矣なんぢこれをえたり
術三則 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
すなはち其の外側から眺めるにつけて、其の内側に潜んでゐる日本現代の生活と日本人の性情とがいかに甚しく日本的風景と其の趣きをことにしてゐるかに一驚せざるを得ない。
海洋の旅 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
すなはいなび譲りて曰く、やつがれ不幸さいはひなき、元よりさはの病有り。何ぞ社稷くにいへを保たむ。願くは陛下きみ、天下を挙げて皇后に附けよ。りて大友皇子を立てて、よろしく儲君まうけのきみたまへ。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
之を誦して児童走卒も亦点頭するの工夫に至ては、すなはち漠然として顧みず、詩形を造る唯之を字を読むの眼に訴へて字を知らざる者の耳に訴へず、是豈に今の一大欠点に非ずや。
詩人論 (新字旧仮名) / 山路愛山(著)
すなはち人をして才人巨源を何処いづこかの逆旅げきりよに刺殺せしめたりと言ふ。あんずるに自殺にけふなるものは、他殺にも怯なりと言ふべからず。巨源のこの理をわきまへず、みだりに今人を罵つてつひに刀下の怨鬼えんきとなる。
八宝飯 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「愛」はすなはりつ、馳せ走りながら打泣きぬ。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
すなはち知る、人亡ぶと雖も
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
葬式の日、矢張今日のそれと同じく唯六人であつた会葬者の、三人はすなはち新山堂の伯母さんとお苑さんと自分とであつた。
葬列 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
晏嬰あんえいすなは田穰苴でんじやうしよすすめていはく、『穰苴じやうしよ田氏でんし(四)庶孽しよげつなりといへども、しかれども其人そのひとぶんしうけ、てきおどす。ねがはくはきみこれこころみよ』
若し神なり、偉人なりがありとすれば、それはすなはち自分その物の範圍内であるのを信じてゐる。自分に關係なきものは、すべて空想であるからであると。
泡鳴五部作:05 憑き物 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
道理だうりで、そこらの地内ちない横町よこちやうはひつても、つきとほしのかうがいで、つまつて、羽子はねいてるのが、こゑけはしなかつた。割前勘定わりまへかんぢやうすなは蕎麥屋そばやだ。とつても、まつうちだ。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
然り、夜深よふけの街の趣味は、すなはちこの不安と懐疑と好奇の念より呼び起さるゝ神秘に有之候これありそろ
夜あるき (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
すなはその(二二)ぼくくるま(二三)左駙馬さふば左驂ささんとをり、もつて三ぐんとなふ。使者ししやかへはうぜしめ、しかのちく。
「ああ、自分は馬鹿であつた! 豐太閤や伊藤公のき、すなはち、拔けてゐた缺點をいつも指摘しながら、自分も亦いつのまにかその缺陷があつたのだ。」
泡鳴五部作:05 憑き物 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)