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澄
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すま
ふりがな文庫
“
澄
(
すま
)” の例文
彼女は杖の
所有主
(
もちぬし
)
の中年の紳士を睨め付けたが、
対手
(
あいて
)
は一向知らん顔で
澄
(
すま
)
して居た。女の怨めし気な表情は
堪
(
たま
)
らなく彼を嬉しがらせた。
乗合自動車
(新字新仮名)
/
川田功
(著)
一たび二たび三たびして、こたえやすると耳を
澄
(
すま
)
せば、
遥
(
はるか
)
に滝の音聞えたり。どうどうと響くなかに、いと高く
冴
(
さ
)
えたる声の
幽
(
かすか
)
に
竜潭譚
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
それは今、硬直している者の腰の辺から、破れた布切を解いてきて、
周章
(
あわ
)
てて自分の腰に巻きつけたばかりであるが、
澄
(
すま
)
し込んでいる。
不周山
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
露西亜
(
ロシア
)
の軍艦がどこで沈没したろうかなどと思い浮かべる暇も出なかった。ただ頭へぴかぴかと、平たい
研
(
と
)
ぎ
澄
(
すま
)
したものが映った。
満韓ところどころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
河野は
行
(
おこな
)
い
澄
(
すま
)
して動かなかった。七日の明け方になったところで、今まで傍にいた鹿はどこへ往くともなしに急にいなくなってしまった。
神仙河野久
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
▼ もっと見る
「サア
何時
(
いつ
)
と限った事もありませんが、マア
闇
(
くら
)
い時の方が多いようですね、ツマリ
闇
(
くら
)
いから
其様
(
そん
)
な
疎匆
(
そそう
)
をするのでしょうよ」と
澄
(
すま
)
している。
画工と幽霊
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「それの辛さに、私は髪を下して、
斯
(
こ
)
う行い
澄
(
すま
)
して居るがどうしても忘れられないのは、お前の怨めしさと、良平様の恋しさ」
百唇の譜
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
慎太郎はふと耳を
澄
(
すま
)
せた。誰かが音のしないように、暗い
梯子
(
はしご
)
を
上
(
あが
)
って来る。——と思うと
美津
(
みつ
)
が上り口から、そっとこちらへ声をかけた。
お律と子等と
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
兼太郎
(
かねたろう
)
は点滴の音に目をさました。そして油じみた
坊主枕
(
ぼうずまくら
)
から
半白
(
はんぱく
)
の頭を
擡
(
もた
)
げて不思議そうにちょっと耳を
澄
(
すま
)
した。
雪解
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
と
実
(
み
)
もふたも無いような言い方をして
澄
(
すま
)
し込んでいるものですが、そもそもこの日本の国は神国なり、日常の道理を越えたる不思議の真実、
炳
(
へい
)
として存す。
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
丘
(
をか
)
を
下
(
くだ
)
つて
耳
(
みゝ
)
を
澄
(
すま
)
すと、
響
(
ひゞき
)
は
何
(
な
)
んでも、
島
(
しま
)
の
西南
(
せいなん
)
に
當
(
あた
)
つて
一個
(
ひとつ
)
の
巨大
(
おほき
)
な
岬
(
みさき
)
がある、
其
(
その
)
岬
(
みさき
)
を
越
(
こ
)
えての
彼方
(
かなた
)
らしい。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
今までは一般に嫌っておりました。それに違いありません。……といって母は神様ではないから、衣食の資料は
要
(
い
)
らないといって
澄
(
すま
)
している訳にも行きません
平塚・山川・山田三女史に答う
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
大炊助
(
おおいのすけ
)
が持って来た火縄を取ると、
弾
(
たま
)
ごめして、直ぐそう叫び狂っている
甥
(
おい
)
の姿を狙い
澄
(
すま
)
しているのだった。
新書太閤記:01 第一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
卯平
(
うへい
)
は
窶
(
やつ
)
れた
蒼
(
あを
)
い
顏
(
かほ
)
をこちらへ
向
(
む
)
けて
居
(
ゐ
)
た。
彼
(
かれ
)
は
眠
(
ねむ
)
つて
居
(
ゐ
)
た。おつぎはすや/\と
聞
(
きこ
)
える
呼吸
(
いき
)
に
凝然
(
ぢつ
)
と
耳
(
みゝ
)
を
澄
(
すま
)
した。おつぎはそれから
枕元
(
まくらもと
)
の
鍋蓋
(
なべぶた
)
をとつて
見
(
み
)
た。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
おつに
澄
(
すま
)
してねり込んで来るのが、亜米利加面がダイヤのブローチよりも鼻につく、並べて見ると、ウェイトレッスの方がよほど上品であるが、いずれにしても
スウィス日記
(新字新仮名)
/
辻村伊助
(著)
あとでみた、写真には、ハアト形のなかに、お
澄
(
すま
)
しな
田舎
(
いなか
)
女学校の三年生がいて、おまけに
稚拙
(
ちせつ
)
なサインがしてあるのが、いかにも
可愛
(
かわい
)
く、ほほ笑んでしまった。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
馬鹿云うな、君達を相手にするのは
手間潰
(
てまつぶ
)
しだ、そんな
暇
(
ひま
)
はないと、高くとまって
澄
(
すま
)
し込んで居るから
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
だが、ここでしくじる様なことがあっては、凡ての苦心が水の泡だ。彼はじっと耳を
澄
(
すま
)
して、
辛抱
(
しんぼう
)
強く表通りの
跫音
(
あしおと
)
を聞こうとした。……しんとして何の気はいもない。
心理試験
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
早川君は通学の当時この娘さんの姿を見かけると、
澄
(
すま
)
し返るのが常だった。或時、冗談のように
ある温泉の由来
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
耳を
澄
(
すま
)
すと、水車の音が
此処
(
ここ
)
まで聞えて来る。ただ悲しいと思ってその音に耳を澄していると
越後の冬
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
鏡
(
かがみ
)
のおもてに
映
(
うつ
)
した
眉間
(
みけん
)
に、
深
(
ふか
)
い八の
字
(
じ
)
を
寄
(
よ
)
せたまま、ただいらいらした
気持
(
きもち
)
を
繰返
(
くりかえ
)
していた
中村松江
(
なかむらしょうこう
)
は、ふと、
格子戸
(
こうしど
)
の
外
(
そと
)
に
人
(
ひと
)
の
訪
(
おとず
)
れた
気配
(
けはい
)
を
感
(
かん
)
じて、じッと
耳
(
みみ
)
を
澄
(
すま
)
した。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
エジツが縄を
弛
(
ゆる
)
め
乍
(
なが
)
ら耳をぢつと
澄
(
すま
)
して「それ、
釣瓶
(
つるべ
)
が今水に着きました」と
静
(
しづか
)
に言ふ時、底の底で
幽
(
かすか
)
に紙の触れる様な音がした。
釣瓶
(
つるべ
)
が重いので僕も手を添へて巻上げた。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
何ともいえぬ苦しみだ、私は
強
(
し
)
いて心を
落着
(
おちつ
)
けて、耳を
澄
(
すま
)
して考えてみると、時は既に
真夜半
(
まよなか
)
のことであるから、
四隣
(
あたり
)
はシーンとしているので、
益々
(
ますます
)
物凄い、私は
最早
(
もはや
)
苦しさと
女の膝
(新字新仮名)
/
小山内薫
(著)
あら不思議、
慥
(
たしか
)
に
其
(
その
)
声、是もまだ
醒
(
さめ
)
ぬ
無明
(
むみょう
)
の夢かと
眼
(
め
)
を
擦
(
こす
)
って見れば、しょんぼりとせし像、耳を
澄
(
すま
)
せば
予
(
かね
)
て知る
樅
(
もみ
)
の木の
蔭
(
かげ
)
あたりに子供の集りて
鞠
(
まり
)
つくか、風の
持来
(
もてく
)
る数え
唄
(
うた
)
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
都貌
(
みやこがほ
)
あり、
田舎相
(
ゐなかがほ
)
あり、
髯
(
ひげ
)
あり、無髯あり、場馴れしあり、まごつくあり、親しきは亭主夫婦と握手して、微笑してかはす両三言、さもなきは小生と同様
澄
(
すま
)
しかへつた一
点頭
(
てんとう
)
、内閣大臣
燕尾服着初めの記
(新字旧仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
こゝに
或村
(
あるむら
)
の娘、
例
(
れい
)
の御はたやにありて心を
澄
(
すま
)
し、おはたをおりて
居
(
ゐ
)
たりしに、
傍
(
かたはら
)
の
窓
(
まど
)
をほと/\と
音
(
おと
)
なふものあり、心にそれとおぼへあれば立よりてひらき見るに、はたして心を
通
(
かよは
)
す男也。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
戀とは言はず、情とも謂はず、
遇
(
あ
)
ふや
柳因
(
りういん
)
、
別
(
わか
)
るゝや
絮果
(
ぢよくわ
)
、いづれ迷は同じ
流轉
(
るてん
)
の
世事
(
せじ
)
、今は言ふべきことありとも覺えず。只〻此上は
夜毎
(
よごと
)
の
松風
(
まつかぜ
)
に
御魂
(
みたま
)
を
澄
(
すま
)
されて、
未來
(
みらい
)
の
解脱
(
げだつ
)
こそ
肝要
(
かんえう
)
なれ。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
といふに至りては、伏姫の心中既に大方の悲苦を
擺脱
(
はいだつ
)
して、澄清洗ふが如くになりたらむ。八房も亦た時に至りては、読経の声に耳を傾け、心を
澄
(
すま
)
し欲を離れて、
只管
(
ひたすら
)
姫上
(
ひめうへ
)
を
眷慕
(
けんぼ
)
するの情を断ちぬ。
処女の純潔を論ず:(富山洞伏姫の一例の観察)
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
すると
見物人
(
けんぶつにん
)
は
喜
(
よろこ
)
びました。
誰
(
だれ
)
もまだ、
狸
(
たぬき
)
の
鳴
(
な
)
き声を
聞
(
き
)
いた者がありませんでした。
皆
(
みな
)
静
(
しず
)
まり
返
(
かえ
)
って耳を
澄
(
すま
)
しました。ところが、いつまでたっても人形は
鳴
(
な
)
きません。
甚兵衛
(
じんべえ
)
はまたくり
返
(
かえ
)
しました。
人形使い
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
これも
夜
(
よる
)
靜
(
しづ
)
かに
室
(
むろ
)
のうちに
籠
(
こも
)
つて、
耳
(
みゝ
)
を
澄
(
すま
)
し、
眼
(
め
)
には、その
鳥
(
とり
)
の
鳴
(
な
)
いてゐる
場所
(
ばしよ
)
の
光景
(
こうけい
)
を、
明
(
あき
)
らかに
浮
(
うか
)
べてゐるのであります。こんな
歌
(
うた
)
になると、
赤人
(
あかひと
)
は、
人麿
(
ひとまろ
)
にも
黒人
(
くろひと
)
にも
負
(
ま
)
けることはありません。
歌の話
(旧字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
それから
熟
(
よ
)
く耳を
澄
(
すま
)
してきゝますと人の息をするようでげすな。
根岸お行の松 因果塚の由来
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
(いいえ誰も見ておりはしませんよ。)と
澄
(
すま
)
して言う、
婦人
(
おんな
)
もいつの間にか
衣服
(
きもの
)
を脱いで全身を
練絹
(
ねりぎぬ
)
のように
露
(
あらわ
)
していたのじゃ。
高野聖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「いや。」と、忠一は考えて、「竹の折れる程は
未
(
ま
)
だ
積
(
つも
)
るまい。𤢖じゃアないか。」と、笑いながら
猶
(
なお
)
も耳を
澄
(
すま
)
していた。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
今迄
傍
(
そば
)
にゐたものが一町許
遠退
(
とおの
)
いた気がする。三四郎は
借
(
か
)
りて置けば
可
(
よ
)
かつたと思つた。けれども、もう仕方がない。蝋燭
立
(
たて
)
を見て
澄
(
すま
)
してゐる。
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
聞き
澄
(
すま
)
して居るとイギリスの労働者が海を越して遠く熱帯の地に出稼ぎに行く心持が、
汚
(
きたな
)
い三等室や薄暗い甲板の有様と
釣合
(
つりあ
)
つて非常に
能
(
よ
)
く表現されて居る。
黄昏の地中海
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
近付くまゝに
中
(
うち
)
の様子を伺えば、
寥然
(
ひっそり
)
として人のありとも
想
(
おも
)
われず、是は不思議とやぶれ戸に耳を
付
(
つけ
)
て聞けば
竊々
(
ひそひそ
)
と
咡
(
ささ
)
やくような音、
愈
(
いよいよ
)
あやしく
尚
(
なお
)
耳を
澄
(
すま
)
せば
啜
(
すす
)
り
泣
(
なき
)
する女の声なり。
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
今言った事を忘れてしまったように、ケロリとして
澄
(
すま
)
し返って居るのでした。
奇談クラブ〔戦後版〕:01 第四の場合
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
刻
(
こく
)
は、
草木
(
くさき
)
も
眠
(
ねむ
)
る、
一時
(
いちじ
)
と
二時
(
にじ
)
との
間
(
あひだ
)
、
談話
(
だんわ
)
暫時
(
しばし
)
途絶
(
とだ
)
えた
時
(
とき
)
、ふと、
耳
(
みゝ
)
を
澄
(
すま
)
すと、
何處
(
いづこ
)
ともなく
轟々
(
ごう/\
)
と、
恰
(
あだか
)
も
遠雷
(
えんらい
)
の
轟
(
とゞろ
)
くが
如
(
ごと
)
き
響
(
ひゞき
)
、
同時
(
どうじ
)
に
戸外
(
こぐわい
)
では、
猛犬稻妻
(
まうけんいなづま
)
がけたゝましく
吠立
(
ほえた
)
てるので
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
湖から
朝靄
(
あさもや
)
が立ちこめて、ローエングリンを送り届けた帰り
途
(
みち
)
の、道草は
可笑
(
おか
)
しいが、もとより浮き草もない
小波
(
さざなみ
)
の上に、靄の色の羽づくろいして白鳥が一羽、おつに
澄
(
すま
)
して
游
(
およ
)
いでいたばかり
スウィス日記
(新字新仮名)
/
辻村伊助
(著)
又もとの
窟
(
あな
)
へはいりしゆゑ
我
(
わし
)
は
窟
(
あな
)
の口に
居
(
ゐ
)
て
雪車哥
(
そりうた
)
のこゑやすらんと
耳
(
みゝ
)
を
澄
(
すま
)
して
聞居
(
きゝゐ
)
たりしが、滝の音のみにて鳥の
音
(
ね
)
もきかず、その日もむなしく
暮
(
くれ
)
て又穴に一夜をあかし、熊の
掌
(
て
)
に
飢
(
うゑ
)
をしのぎ
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
然
(
しか
)
も
其
(
その
)
種々
(
いろ/\
)
な
叫
(
さけ
)
びの
錯雜
(
さくざつ
)
して
聞
(
きこ
)
える
聲
(
こゑ
)
が
自分
(
じぶん
)
の
心部
(
むね
)
から
或
(
ある
)
物
(
もの
)
を
引
(
ひ
)
つ
攫
(
つか
)
んで
行
(
ゆ
)
くやうで、
自然
(
しぜん
)
にそれへ
耳
(
みゝ
)
を
澄
(
すま
)
すと
何
(
なん
)
だか
遣
(
や
)
る
瀬
(
せ
)
のないやうな
果敢
(
はか
)
なさを
感
(
かん
)
じて
涙
(
なみだ
)
が
落
(
お
)
ちた。
涙
(
なみだ
)
は
卯平
(
うへい
)
の
白髮
(
しらが
)
に
滴
(
したゝ
)
つた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
耳を
澄
(
すま
)
すと
確
(
たしか
)
に日本海の波音である。二人はやっと橋の上を渡った。……岸に雪が積っていて、河の流れは細くなって、
殆
(
ほと
)
んど見えなかった。二人は橋を渡って、またあるかなきかの道をたどった。
北の冬
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
阿姪
(
あてつ
)
阿甥
(
あせい
)
書生
等
(
とう
)
の眼を避けて、鏡に
背
(
そむ
)
いて
澄
(
すま
)
し居たり。
燕尾服着初めの記
(新字旧仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
国俊の一刀、八方眼に
狙
(
つ
)
け
澄
(
すま
)
まして
血顫
(
ちぶる
)
いした。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「其はまた何といふわけでござらうの。」と
澄
(
すま
)
して、例の糸を
繰
(
く
)
る、五体は
悉皆
(
しっかい
)
、車の仕かけで、人形の動くやう、媼は
少頃
(
しばらく
)
も手を休めず。
二世の契
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
唄の声は
正
(
まさ
)
しくお葉であった。重太郎は枯柳に
犇
(
ひし
)
と
取付
(
とりつ
)
いて、酔えるように耳を
澄
(
すま
)
していた。雪はいよいよ
降頻
(
ふりしき
)
って、重太郎も柳も
真白
(
まっしろ
)
になった。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
車の
音
(
おと
)
の動くのが、白い雲の動くのに関係でもある様に耳を
澄
(
すま
)
してゐる。車は落付いた秋の
中
(
なか
)
を容赦なく近付いて
来
(
く
)
る。やがて門の前へ
来
(
き
)
て
留
(
とま
)
つた。
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
小林という自分と同じ名前が幾度か言出されるのをふと聞きつけて何心なく耳を
澄
(
すま
)
した。
寐顔
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
彼は懐中電気を握ったまま、しばらく耳を
澄
(
すま
)
して
佇
(
たたず
)
んだ。
扉
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
が、
客
(
きやく
)
が
待
(
ま
)
たうが
待
(
ま
)
つまいが、
一向
(
いつかう
)
に
頓着
(
とんぢやく
)
なく、
此方
(
こつち
)
は
此方
(
こつち
)
、と
澄
(
すま
)
した
工合
(
ぐあひ
)
が、
徳川家時代
(
とくがはけじだい
)
から
味
(
あぢ
)
の
變
(
かは
)
らぬ
頼
(
たの
)
もしさであらう。
松の葉
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
澄
常用漢字
中学
部首:⽔
15画
“澄”を含む語句
清澄
澄明
真澄
上澄
澄徹
白澄
尊澄
見澄
蒼澄
取澄
泰澄
聞澄
澄憲
澄江
研澄
底澄
最澄
謙澄
河澄
磨澄
...