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漸
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やつ
ふりがな文庫
“
漸
(
やつ
)” の例文
親爺
(
おやぢ
)
は幾度か叱り飛ばして
漸
(
やつ
)
と芋畑に連れ出しはしたが、成斎は
鼬
(
いたち
)
のやうにいつの間にか畑から滑り出して、自分の
家
(
うち
)
に帰つてゐた。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
さうして
女房
(
にようばう
)
は
激烈
(
げきれつ
)
な
神經痛
(
しんけいつう
)
を
訴
(
うつた
)
へつゝ
死
(
し
)
んだ。
卯平
(
うへい
)
は
有繋
(
さすが
)
に
泣
(
な
)
いた。
葬式
(
さうしき
)
は
姻戚
(
みより
)
と
近所
(
きんじよ
)
とで
營
(
いとな
)
んだが、
卯平
(
うへい
)
も
漸
(
やつ
)
と
杖
(
つゑ
)
に
縋
(
すが
)
つて
行
(
い
)
つた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
牛屋
(
うしや
)
の
手間取
(
てまとり
)
、
牛切
(
ぎうき
)
りの
若
(
わか
)
いもの、
一婦
(
いつぷ
)
を
娶
(
めと
)
る、と
云
(
い
)
ふのがはじまり。
漸
(
やつ
)
と
女房
(
にようばう
)
にありついたは
見
(
み
)
つけものであるが、
其
(
そ
)
の
婦
(
をんな
)
(
奇醜
(
きしう
)
)とある。
鑑定
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
磯村はそれらの雑念から
脱
(
のが
)
れようとして、
強
(
し
)
ひて机に坐り返して、原稿紙のうへの
埃
(
ほこり
)
を軽く吹きながら、
漸
(
やつ
)
とのことでペンを動かしはじめた。
花が咲く
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
彼方
(
あつち
)
此方
(
こつち
)
と
搜
(
さが
)
す中、
漸
(
やつ
)
とのことで大きな
無花果
(
いちじく
)
の
樹蔭
(
こかげ
)
に
臥
(
ね
)
こんで
居
(
ゐ
)
るのを
見
(
み
)
つけ
出
(
だ
)
し、
親父
(
おやぢ
)
は
恭々
(
うや/\
)
しく
近寄
(
ちかよ
)
つて
丁寧
(
ていねい
)
にお
辭儀
(
じぎ
)
をして
言
(
い
)
ふのには
怠惰屋の弟子入り
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
▼ もっと見る
辭退
(
じたい
)
をして
其
(
その
)
席
(
せき
)
へ
顏
(
かほ
)
を
出
(
だ
)
す
不面目丈
(
ふめんもくだけ
)
は
漸
(
やつ
)
と
免
(
まぬ
)
かれた
樣
(
やう
)
なものゝ、
其
(
その
)
晩
(
ばん
)
主人
(
しゆじん
)
が
何
(
なに
)
かの
機會
(
はずみ
)
につい
自分
(
じぶん
)
の
名
(
な
)
を
二人
(
ふたり
)
に
洩
(
も
)
らさないとは
限
(
かぎ
)
らなかつた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
学校では、前にも言つた如く、
些
(
ちつ
)
とも学科に身を入れなかつたから、一年から二年に昇る時は、三十人許りの
級
(
クラス
)
のうち尻から二番で
漸
(
やつ
)
と及第した。
二筋の血
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
是ではならぬと丗五年の夏は宇都宮中学のグラウンドを借りて、猛烈な練習を積んだ結果、
漸
(
やつ
)
と学習院に復讐をしたが、未だ/\威張る事は世間が許さない。
野球界奇怪事 早慶紛争回顧録
(新字旧仮名)
/
吉岡信敬
(著)
それから一ト月余になるが
羅甸
(
ラテン
)
語と
希臘
(
ギリシヤ
)
語とを
陳
(
なら
)
べた難かしい手紙が来たゞけで顔を見せないから、嬢様
漸
(
やつ
)
と安心して先ず是で十九の厄を免れてノウ/\した。
犬物語
(新字旧仮名)
/
内田魯庵
(著)
漸
(
やつ
)
と自分の身体になつたと思はれるまでに、手の
隙
(
す
)
いて来たお文は、銀場を空にして母の側に立つた。
鱧の皮
(新字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
ミユンヘン大学のドクトル試験に及第して
猶
(
なほ
)
此処
(
ここ
)
の病院で研究を続けて居る深瀬さんのお世話で日本人に縁の深いパンシヨン・バトリヤの
一室
(
ひとま
)
に
漸
(
やつ
)
と
泊
(
とま
)
る事が出来た。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
幸ひ案じた程でも無いらしいので、
漸
(
やつ
)
と安心して、それから二人は他の
談話
(
はなし
)
の仲間に入つた。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
今まで通つたことのない町だと大河内君が云つたが、その時暗いところから突然に巡査が出て來てかういふリヤカーでさへ
漸
(
やつ
)
と通れるところを、車で來るなんて君も亂暴な男だと詰問した。
京洛日記
(旧字旧仮名)
/
室生犀星
(著)
仕方
(
しかた
)
が
御座
(
ござ
)
りませぬで
漸
(
やつ
)
とまあ
此處
(
こゝ
)
をば
見
(
み
)
つけ
出
(
だ
)
しまして
御座
(
ござ
)
ります、
御覽下
(
ごらんくだ
)
さりませ
一寸
(
ちよつと
)
斯
(
か
)
うお
庭
(
には
)
も
廣
(
ひろ
)
う
御座
(
ござ
)
りますし、
四隣
(
あたり
)
が
遠
(
とほ
)
うござりますので
御氣分
(
ごきぶん
)
の
爲
(
ため
)
にもよからうかと
存
(
ぞん
)
じまする
うつせみ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
喰
(
くら
)
ふの勢ひ
有
(
あり
)
とか寶澤は心中に
偖々
(
さて/\
)
此
婆
(
ばゝ
)
めが
善
(
よき
)
貨物
(
しろもの
)
を持て居ることよ此二品を手に入て我こそ天下の
落胤
(
らくいん
)
と
名乘
(
なのつ
)
て出なば分地でも
御
(
ご
)
三
家
(
け
)
位
(
ぐらゐ
)
萬一
(
もし
)
極運
(
きやくうん
)
に
適
(
かな
)
ふ時はと
漸
(
やつ
)
と當年十一の
兒
(
こ
)
が
爰
(
こゝ
)
に
惡念
(
あくねん
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
ひた走りに銀座の大通りまで走つて、
漸
(
やつ
)
と息をついた事があつた。
水 附渡船
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
そして
漸
(
やつ
)
と
ちるちる・みちる
(旧字旧仮名)
/
山村暮鳥
(著)
都督の辞令を受取つた中将は、
漸
(
やつ
)
とこの頃似合ふやうになつた背広服を、
惜気
(
をしげ
)
もなく脱ぎ捨てて早速中将の軍服に着替へようとした。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
低
(
ひく
)
い
粟幹
(
あはがら
)
の
屋根
(
やね
)
から
其
(
その
)
括
(
くゝ
)
りつけた
萱
(
かや
)
や
篠
(
しの
)
の
葉
(
は
)
には
冴
(
さ
)
えた
耳
(
みゝ
)
に
漸
(
やつ
)
と
聞
(
きゝ
)
とれるやうなさら/\と
微
(
かす
)
かに
何
(
なに
)
かを
打
(
う
)
ちつけるやうな
響
(
ひゞき
)
が
止
(
や
)
まない。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
床几
(
しやうぎ
)
の
下
(
した
)
に
俵
(
たはら
)
を
敷
(
し
)
けるに、
犬
(
いぬ
)
の
子
(
こ
)
一匹
(
いつぴき
)
、
其日
(
そのひ
)
の
朝
(
あさ
)
より
目
(
め
)
の
見
(
み
)
ゆるものの
由
(
よし
)
、
漸
(
やつ
)
と
食
(
しよく
)
づきましたとて、
老年
(
としより
)
の
餘念
(
よねん
)
もなげなり。
弥次行
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
晴代は前から変に思つてゐたので丸菱が何うしたのだらうと、ぢつと聴き耳を立ててゐたが、それが牛込の女の名だといふことが
漸
(
やつ
)
とわかつた。
のらもの
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
『泣かないんだ、新太郎さん。私だつて今度は、一番下で
漸
(
やつ
)
と及第したもの。』と、弟にでも言ふ様に言つて
二筋の血
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
忌々
(
いま/\
)
しさうに頭を
振
(
ふつ
)
て、急に
急足
(
いそぎあし
)
で
愛宕町
(
あたごちやう
)
の
闇
(
くら
)
い狭い
路地
(
ろぢ
)
をぐる/\
廻
(
まは
)
つて
漸
(
やつ
)
と
格子戸
(
かうしど
)
の小さな二
階屋
(
かいや
)
に「小川」と薄暗い
瓦斯燈
(
がすとう
)
の
点
(
つ
)
けてあるのを
発見
(
めつ
)
けた。
節操
(新字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
「フム、フム」と黒幕の中で
鷹揚
(
おうやう
)
に鼻の先の軽い一笑を演じる一つの心が其れに次ぐ。
後
(
あと
)
は気の乗らない沈黙。
其間
(
そのあひだ
)
に
踠
(
もが
)
いて居た首と手とは
漸
(
やつ
)
とのことで
釦
(
ブトン
)
を入れ終つた。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
源太郎は、蝋燭の火で
漸
(
やつ
)
と一服煙草を吸ひ付けると、掃除のわるい煙管をズウ/\音させて、無恰好に煙を吐きつつ、だらしなく披げたまゝになつてゐる手紙の上に眼を落した。
鱧の皮
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
講義筆記をメカに暗誦して
漸
(
やつ
)
と卒業証書を握つたのを鬼の首でも取つたやうに喜んで、得意が
鼻頭
(
はなのさき
)
に
揺下
(
ぶらさが
)
つてる。何ぞといふと赤門の学士会のと同類の力を頼りにして威張たがる。
犬物語
(新字旧仮名)
/
内田魯庵
(著)
その何だか頻に嫌にお成りなされて何處へか行かう行かうと仰しやる、仕方が御座りませぬで
漸
(
やつ
)
とまあ此處をば見つけ出しまして御座ります、御覽下さりませ一寸こうお庭も廣う御座りますし
うつせみ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
「それで、
漸
(
やつ
)
と安心した。夫ぢや何を気を付けるんですい」
坊っちやん
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
「三十年もかゝつて
漸
(
やつ
)
と溜めたんですもの、私には子供のやうにしか思へません。せめて一本でも残して置きたいもんですね。」
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
裸
(
はだか
)
で
飛込
(
とびこ
)
んだ、
侍方
(
さむらひがた
)
、
船
(
ふね
)
に
寄
(
よ
)
りは
寄
(
よ
)
つたれども、
燃
(
も
)
え
立
(
た
)
つ
炎
(
ほのほ
)
で
手
(
て
)
が
出
(
だ
)
せぬ。
漸
(
やつ
)
との
思
(
おも
)
ひで
船
(
ふね
)
を
引
(
ひつ
)
くら
返
(
かへ
)
した
時分
(
じぶん
)
には、
緋鯉
(
ひごひ
)
のやうに
沈
(
しづ
)
んだげな。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
「
俺
(
お
)
らはあ
錢
(
ぜね
)
も
有
(
あ
)
りもしねえで」
卯平
(
うへい
)
は
他人
(
ひと
)
の
騷
(
さわ
)
ぎに
釣
(
つ
)
り
込
(
こ
)
まれようとするよりも、
自分
(
じぶん
)
の
心裏
(
しんり
)
の
或
(
ある
)
物
(
もの
)
を
漸
(
やつ
)
とのこと
吐
(
は
)
き
出
(
だ
)
さうとするやうに
呟
(
つぶや
)
いた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
たえ子はその晩、
漸
(
やつ
)
と/\
電車
(
でんしや
)
に間に合つた。勿論どこを
捜
(
さが
)
しても話をするやうな家はなかつた。何処でも戸をしめてゐたり、火を落してゐたりした。
復讐
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
源太郎は、蝋燭の火で
漸
(
やつ
)
と一服煙草を吸ひ付けると、掃除のわるい煙管をズウ/\音させて、無恰好に煙を吐きつゝ、だらしなく
披
(
ひろ
)
げたまゝになつてゐる手紙の上に眼を落した。
鱧の皮
(新字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
『泣かないんだ、新太郎さん。私だつて今度は、一番下で
漸
(
やつ
)
と及第したもの。』と、弟にでも言ふ樣に言つて、『明日好い物持つてつて上げるから、泣かないんだ。皆が笑ふから。』
二筋の血
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
大磯
(
おほいそ
)
近
(
ちか
)
くなつて
漸
(
やつ
)
と
諸君
(
しよくん
)
の
晝飯
(
ちうはん
)
が
了
(
をは
)
り、
自分
(
じぶん
)
は二
個
(
こ
)
の
空箱
(
あきばこ
)
の
一
(
ひとつ
)
には
笹葉
(
さゝつぱ
)
が
殘
(
のこ
)
り一には
煮肴
(
にざかな
)
の
汁
(
しる
)
の
痕
(
あと
)
だけが
殘
(
のこ
)
つて
居
(
ゐ
)
る
奴
(
やつ
)
をかたづけて
腰掛
(
こしかけ
)
の
下
(
した
)
に
押込
(
おしこ
)
み、
老婦人
(
らうふじん
)
は三
個
(
こ
)
の
空箱
(
あきばこ
)
を
丁寧
(
ていねい
)
に
重
(
かさ
)
ねて
湯ヶ原ゆき
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
その何だか
頻
(
しきり
)
に
嫌
(
いや
)
にお成りなされて
何処
(
どこ
)
へか
行
(
ゆ
)
かう行かうと
仰
(
おつ
)
しやる、仕方が御座りませぬで
漸
(
やつ
)
とまあ此処をば見つけ出しまして御座ります、御覧下さりませ
一寸
(
ちよいと
)
こうお庭も広う御座りますし
うつせみ
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
漸
(
やつ
)
と原稿も出来上つたので、芥川氏は東京に帰つて来た。すると千葉の
旅籠屋
(
はたごや
)
宛に出した漱石氏の手紙が、
後
(
あと
)
から追つ駈けて入つて来た。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
漸
(
やつ
)
との
思
(
おも
)
ひ、
念力
(
ねんりき
)
で、
其
(
そ
)
の
婦
(
をんな
)
を
見
(
み
)
ました
時
(
とき
)
は、
絹絲
(
きぬいと
)
も、むれて、ほろ/\と
切
(
き
)
れて
消
(
き
)
えさうに、なよ/\として、
唯
(
たゞ
)
うつむいて
居
(
ゐ
)
たのであります。
三人の盲の話
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
木山の
納屋
(
なや
)
には、
米杉
(
べいすぎ
)
の角材や板や、内地ものの細かいものが少しあるだけだつたが、方々駈けまはつて
漸
(
やつ
)
と
入用
(
いりよう
)
だけのものを取そろへ、今度こそは
一
(
ひ
)
と
儲
(
まう
)
けする積りで
のらもの
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
荒物屋に少しばかりの
呉服物
(
ごふくもの
)
を附け加へた家の並んでゐる
片側町
(
かたかはまち
)
を通つて、
漸
(
やつ
)
と車の通ふほどの野道の、十字形になつたところへ來ると、二人は足を止めて、
何
(
ど
)
う行かうかと顏を見合はした。
東光院
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
伯母様も
何処
(
どこ
)
やら痩せが見えまする、心配のあまり煩ふて下さりますな、それでも日増しに
快
(
よ
)
い方で御座んすか、手紙で様子は聞けど見ねば気にかかりて、今日のお
暇
(
いとま
)
を待ちに待つて
漸
(
やつ
)
との事
大つごもり
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
漸
(
やつ
)
と安心すると、動悸が高く胸に打つて居る。
病院の窓
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
こんな事を言ひ/\、
樵夫
(
きこり
)
が
漸
(
やつ
)
と
枯木
(
かれき
)
を
伐
(
き
)
り倒すと、なかから土で
拵
(
こさ
)
へた
梟
(
ふくろ
)
の形をした物が、三つまでころころと転がり出した。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
妻
(
つま
)
の
皓體
(
かうたい
)
が
氣懸
(
きがか
)
りさに、
大盡
(
だいじん
)
ましぐらに
奧
(
おく
)
の
室
(
ま
)
へ
駈込
(
かけこ
)
むと、
漸
(
やつ
)
と
颯
(
さつ
)
と
赤
(
あか
)
く
成
(
な
)
つて、
扱帶
(
しごき
)
を
捲
(
ま
)
いて
居
(
ゐ
)
る
處
(
ところ
)
。
物狂
(
ものくる
)
はしく
取
(
と
)
つて
返
(
かへ
)
せば、
畫師
(
ゑし
)
も
其
(
そ
)
の
畫
(
ゑ
)
も
何處
(
どこ
)
へやら。
画の裡
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
ちやうど彼女も二千円ばかりの借金を二年半ばかりで切つてしまつて、
漸
(
やつ
)
と身軽な看板借りで、山の手から下町へ来て
披露目
(
ひろめ
)
をした其の当日から、三日にあげず遊びに来た木山は
のらもの
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
伯母樣
(
おばさま
)
も
何處
(
どこ
)
やら
痩
(
や
)
せが
見
(
み
)
えまする、
心配
(
しんぱい
)
のあまり
煩
(
わづら
)
ふて
下
(
くだ
)
さりますな、
夫
(
そ
)
れでも
日増
(
ひま
)
しに
快
(
よ
)
い
方
(
ほう
)
で
御座
(
ござ
)
んすか、
手紙
(
てがみ
)
で
樣子
(
やうす
)
は
聞
(
き
)
けど
見
(
み
)
ねば
氣
(
き
)
にかゝりて、
今日
(
けふ
)
のお
暇
(
いとま
)
を
待
(
ま
)
ちに
待
(
ま
)
つて
漸
(
やつ
)
との
事
(
こと
)
大つごもり
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
漸
(
やつ
)
と安心すると、動悸が高く胸に打つて居る。
病院の窓
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
春挙氏は石を集め出したのは、
漸
(
やつ
)
とこなひだなのに、もうそんなに噂が高まつたのかと、
頸窩
(
ぼんのくぼ
)
へ手をやつて、満足さうに声を立てて笑つた。
茶話:05 大正八(一九一九)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
二
(
ふた
)
つめの
峠
(
たうげ
)
、
大良
(
だいら
)
からは、
岨道
(
そばみち
)
の
一方
(
いつぱう
)
が
海
(
うみ
)
に
吹放
(
ふきはな
)
たれるので
雪
(
ゆき
)
が
薄
(
うす
)
い。
俥
(
くるま
)
は
敦賀
(
つるが
)
まで、
漸
(
やつ
)
と
通
(
つう
)
じた。
麻を刈る
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
私はまだ思ひ出せなかつたが、
巴黎院
(
パリーゐん
)
といふ、一頃通りで非常に
盛
(
さか
)
つた理髪店のマダムの面影が、
何
(
ど
)
うやら
漸
(
やつ
)
とのことで思ひ出せた。マスタアは洋行帰りのモダンな紳士であつた。
町の踊り場
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
漸
常用漢字
中学
部首:⽔
14画
“漸”を含む語句
漸々
漸次
漸〻
佳人意漸疎
東漸
漸進
漸時
漸減
西漸
無漸
浸漸
漸進論
漸源
漸移
漸綻
漸蔵主
漸近線
漸進的
漸次強音
漸遅
...