母親ははおや)” の例文
高橋たかはしは、はや父親ちちおやわかれたけれど、母親ははおやがあるのでした。正吉しょうきちだけは、両親りょうしんがそろっていて、いちばん幸福こうふくうえであったのです。
世の中へ出る子供たち (新字新仮名) / 小川未明(著)
と、母親ははおやおしえました。するとみんな一生懸命いっしょうけんめい、グワッ、グワッと真似まねをして、それから、あたりのあおおおきな見廻まわすのでした。
父親ちちおや相当そうとうたか地位ちい大宮人おおみやびとで、狭間信之はざまのぶゆき母親ははおやはたしか光代みつよ、そして雛子ひなこ夫婦ふうふなか一粒種ひとつぶだねのいとしだったのでした。
するとすぐくさにとりついてべるのは子供こどもで、ゆるゆると子供こどもべさせておいたあとで、あましをべるのは母親ははおやだということだよ。
姨捨山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
日様ひさまはもえる宝石ほうせきのようにひがしそらにかかり、あらんかぎりのかがやきをかなしむ母親ははおやたびにでたどもらとにげておやりなさいました。
いちょうの実 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「おお、」と母親ははおやうめいた。「わたしは千じょうもあるそこへでもはいっていたい。あれをかされちゃア、とてもたまらない。」
で、そのいえすべて什具じゅうぐとは、棄売すてうりはらわれて、イワン、デミトリチとその母親ははおやとはついぶつとなった。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
それに、生徒監せいとかんはとても愛想あいそよく母親ははおやむかえて、さんざんおわびをいったのだから、その上どう仕様しようがあろう?
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
なんだか母親ははおやのような、ゆっくりと長いほほえみを浮かべて、わたしに笑いかけました、「かわいそうに、なんとしたことじゃやら、ほんになあ、やれやれ!」
その男というのは、ほかの人に影響えいきょうあたえるなどとは自分でも思っていなかったし、たれても平凡へいぼん人間にんげんだった。——それはクリストフの母親ははおやルイザの兄だった。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
こうして私がお茶屋奉公でもいたさなければ、母親ははおやや亭主が日干しになってしまうので御座います。亭主は足腰が立ちませんし母親は眼が不自由な因果な身の上で御座ります……。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
母親ははおや以外いがいしたしいものをぶにも、「ちゃあちゃん」としかまだなかった。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
障子しょうじ隙間すきまから、かお半分はんぶんのぞかせた母親ははおやを、おせんはあわててさえぎった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
と、子家鴨達あひるたちは、いままでたまごからんでいたときよりも、あたりがぐっとひろびろしているのをおどろいていました。すると母親ははおや
「おかあさん、くるしい?」と、勇吉ゆうきちは、母親ははおやのまくらもとにつききりで、をもんでいましたが、なんとおもったか、きゅうがって
一粒の真珠 (新字新仮名) / 小川未明(著)
母親ははおやわった姿すがたてびっくりした子供こどもは、きながら方々ほうぼう父親ちちおやのいるところさがあるいて、やっとつけると、いまがたたふしぎを父親ちちおやはなしたのです。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
そうしてほどなく或人あるひと世話せわ郡立学校ぐんりつがっこう教師きょうしとなったが、それも暫時ざんじ同僚どうりょうとは折合おりあわず、生徒せいととは親眤なじまず、ここをもまたしてしまう。そのうち母親ははおやぬ。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
あの貧乏びんぼう百姓ひゃくしょうの、やさしい、まるで母親ははおやのようなほほえみだの、おいのりの十のしるしや、あのくびよこにふりながら、「ほんに、さぞたまげたこったろうになあ、なあぼう
すると母親ははおやは、おおきな、おおきな、おさらくろいスープをって、はこんでました。マリちゃんはまだかなしくって、あたまもあげずに、おいおいいていました。すると父親ちちおやは、もう一
そのはそれくらいのことでわかれましたが、あとまたちょいちょいこの二人ふたり来訪らいほうけ、とうとうそれがえんで、わたくしは一こちらの世界せかいでこの母親ははおやとも面会めんかいげることになりました。
このとき、盲目もうもく母親ははおやきながら、十五、六のむすめが、雪道ゆきみちあるいていきました。母親ははおや三味線しゃみせんかかえていました。旅芸人たびげいにんです。
雪消え近く (新字新仮名) / 小川未明(著)
などと、いつも悪体あくたいをつくのです。母親ははおやさえ、しまいには、ああこんなならうまれないほうがよっぽどしあわせだったとおもようになりました。
母親ははおやをかくした百姓ひゃくしょうつみはむろんゆるしてやるし、これからは年寄としより島流しまながしにすることをやめにしよう。
姨捨山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
あいかわらず母親ははおやのようなやさしいほほえみでわらいかけながら、そうつけたしました。
答『しばらくは母親ははおや手元てもとかれるが、やがて修業場しゅぎょうばほう引取ひきとるのじゃ。』
母親ははおやみみふさぎ、かくして、たり、いたり、しないようにしていたが、それでも、みみなかでは、おそろしい暴風あらしおとひびき、なかでは、まるで電光いなびかりのように、えたり、ひかったりしていました。
「もう、ちっとがまんをおし、じきわりますからね。そうしたら、はいって、ごはんのしたくをします。」と、母親ははおやは、こたえました。
水七景 (新字新仮名) / 小川未明(著)
一人ひとり母親ははおやわかれては、ほかたよもののないの上でございます。それにこのような姿すがたになりましてからは、だれも気味きみわるがって、かまってくれますものもございません。
鉢かつぎ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
小児こども幸福しあわせになるよ。わたし母親ははおやのように世話せわをしてやります。
母親ははおやがよくならなければわかりませんね。あのも、かわいそうです。いろいろ心配しんぱいして。」と、おかあさんは、おっしゃいました。
雪の降った日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
たった一人ひとり母親ははおやわかれて、毎日まいにちらしておりますうちに、どうしたわけか、ある日そらからはちってきて、あたまいついて、このようなへんな姿すがたになってしまいました。
鉢かつぎ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
兄弟きょうだいのようすはわからなかったのです。そのから、やまでは、母親ははおや子供こどもこえがさびしく、陰気いんきに、毎日まいにちのようにかれました。
兄弟のやまばと (新字新仮名) / 小川未明(著)
つなちいさいときははわかれたので、母親ははおやわりにわたしがあの子をそだててやったのです。それがいまはえらいさむらいになったといって、せっかく遠方えんぽうからたずねててもってはくれない。
羅生門 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
子供こどもは、かえりながら、母親ははおやれられてゆきました。そして、その姿すがたは、だんだんあちらに、人影ひとかげかくれてえなくなりました。
雪の上のおじいさん (新字新仮名) / 小川未明(著)
母親ははおやがほんとうにいなくなったことをって、子供こどもはどんなにかなしんだでしょう。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
あわれな母親ははおやは、二人ふたり子供こどもまわしていいました。そこで母親ははおやなかにして、あにひだりに、おとうと彼女かのじょみぎこしをかけたのであります。
石段に鉄管 (新字新仮名) / 小川未明(著)
こういいながら、子供こどもはいつまでもやみの中をさがまわっていました。さっきかおわったのにおどろいてこえてたので、母親ははおやがおこって行ってしまったのだとおもって、よけいかなしくなりました。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
はなしはべつに、あるまち病院びょういんで、まずしげなふうをした母親ははおや少年しょうねん二人ふたりが、待合室まちあいしつかたすみで、ちぢこまって、いていました。
きつねをおがんだ人たち (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのばん太郎たろう母親ははおやかって、二日ふつかおな時刻じこくに、きんをまわしてはしっている少年しょうねんのことをかたりました。母親ははおやしんじませんでした。
金の輪 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「おまえのこころざしは、よくおとっさんにとどいたとおもいます。もうろうそくがなくなったから、さあやすみましょう。」と、母親ははおやはいいました。
ろうそくと貝がら (新字新仮名) / 小川未明(著)
ぼくかえってきた……。」と、ぐちでしたこえは、たしかに、自分じぶんこえでありました。母親ははおやは、またかとおどろいて、しました。
子供はばかでなかった (新字新仮名) / 小川未明(著)
ぼく母親ははおやは、子供こども時分じぶんから、ぼく教育きょういくするのに、いつも、いかなる場合ばあいでも、卑怯ひきょうなまねをしてはならぬといいきかせたものだ。
戦友 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのとき、母親ははおやのやせた姿すがたが、西日にしびけて、屋根やね灰色はいいろながかげをひきました。のつやもなく、脾腹ひばらのあたりは骨立ほねだっていました。
どこかに生きながら (新字新仮名) / 小川未明(著)
「さあ、そのあなからのぞき。だい一はあねおとうととが、母親ははおやをたずねて旅立たびだつところ。さあさあのぞき。一人ひとりのうちはおあしらない。」
子供の時分の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「おお、ちいさいかわいらしいさかなだね! どんなにか、このさかな母親ははおやが、いまごろかなしんでいるでしょう。」と、おかあさんはいいました。
赤い魚と子供 (新字新仮名) / 小川未明(著)
こういって、母親ははおや子供こどもちいさなかたからげているかごをはずして、自分じぶんがそれを今度こんどかたにかけてすずらしたのでありました。
煙突と柳 (新字新仮名) / 小川未明(著)
始終しじゅう不自由ふじゆうをして、まずしくんでいった母親ははおやのことをおもうと、すこしのたのしみもさせずにしまったのを、こころからいるためもありました。
万の死 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「おかあさん、手紙てがみでなくても、新聞しんぶんがいったら、わたし無事ぶじでいるとおもってください。」といって、やりました。すると、その母親ははおやから
母の心 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「おかあさん、きゅうりがあんなにおおきくなりましたよ。」と、二郎じろうは、そとからいえなかはいると、毎日まいにちのように母親ははおやげました。
遠くで鳴る雷 (新字新仮名) / 小川未明(著)
むらからあのとうげをこして母親ははおやまちて、機屋はたやでこの反物たんものい、いえにかえってからせっせとぬって、おくってくださったのです。
田舎のお母さん (新字新仮名) / 小川未明(著)