)” の例文
と、ちょろりと舌を出して横舐よこなめを、ったのは、魚勘うおかんの小僧で、赤八、と云うが青い顔色がんしょく、岡持をら下げたなりで道草を食散らす。
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それが皆わざおぎの所作ではなくて、神の実在を信じたあるじりであったことは、ちょうど我々の盆の魂祭たままつりの後先ともよく似ている。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
御相談ごそうだんをおかけになりました。この乳母うばたいそうりこうった女でしたから、相談そうだんをかけられると、とくいらしくはなをうごめかして
鉢かつぎ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
伊豆は死よりも冷酷な厭世家えんせいかって、小笠原の自殺した現場へも告別式へも出なかったので、誰に逢うこともなかったのである。
小さな部屋 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
夜汽車よぎしや新橋しんばしいたときは、ひさりに叔父をぢ夫婦ふうふかほたが、夫婦ふうふとも所爲せゐれやかないろには宗助そうすけうつらなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
遊ぶ金がほしさに、ただ出鱈目にカンヴァスに絵具をぬたくって、流行の勢いに乗り、もったいって高く売っているのです。
斜陽 (新字新仮名) / 太宰治(著)
乗合自動車は停留所ごとに人溜まりを呑んで、身じろぎも出来ないほど詰め込んだ胃袋をりながら、ごとごと走った。
指と指環 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
練習コオスは流れるよどみ、オォルがねばる、気持よさです。久しりに、はりきった、清さんの号令で、艇は船台ランディングはなれ、下流に向いました。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
それを大急ぎで食卓てーぶるの上へ持って行ってぐ食べてもらわないと縮まっていけません。その代り二つりの玉子で四人前のお菓子が出来ます。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
僕は作家として曲りなりにも生活が出来るやうになつてから、この床屋を久しりに訪問し、主人の好きな酒を贈つた。
世に出る前後 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
ひさりであなたにお目にかゝつてそのおしやくいたゞくのはお祖師様そしさまあはせでございませう、イエたんとはいたゞきません。
こわがるこたァねえから、あとずさりをしねえで、落着おちついていてくんねえ。おいらァなにも、ひさりにったいもうとを、っておうたァいやァしねえ」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
断じてそうではなかったらしいかつて作者は「私の見た大阪及び大阪人」と題する篇中に大阪人のつましい生活りを
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
長袖ながそであしにも肉刺まめ出來できることはあるまいとおもつて、玄竹げんちくほとんど二十ねんりで草鞋わらぢ穿いたのであつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
ひさりで良人おっとかおわせるのもまりがわるいが、それよりも一そうはずかしいのはかみさまの手前てまえでした。
ひさりのせふが帰郷をきゝて、親戚ども打寄うちよりしが、母上よりはかへつせふの顔色の常ならぬに驚きて、何様なにさま尋常じんじやうにてはあらぬらし、医師を迎へよと口々にすゝめ呉れぬ。
母となる (新字旧仮名) / 福田英子(著)
往来を見廻すと、牛は、お通を背に乗せたまま、重い体をって、彼方へ駈出しているではないか。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
厭味いやみたっぷりの文句や人をおとしいれる言いり、人に無礼ぶれいする語を用いることはなはだつつしむべきことである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
するとアダはレデイって、右足を後に引いて心もち腰をかがめる犬の真似をした。
孟買挿話 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
講釈師見山けんざんが、田宮坊太郎の先祖を「北朝の忠臣」なんて臆面もなくやったり、浪花節の燕月えんげつが「テームス河の上流に於て、海の藻屑と消え果てたり」なんて、新人ってうなるのを聴いて
青バスの女 (新字新仮名) / 辰野九紫(著)
と、少しおもてをあげて鬚をしごいた。少し兄分っているようにも見えた。
鵞鳥 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
今日は久しりに晴れた。空には一片の雲なく、日は晶々あかあかとして美しく照りながら、寒暖計は八十二三度をえず、涼しい南風みなみが朝から晩まで水の流るゝ様に小止おやみなく吹いた。颯々さっさつと鳴る庭の松。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
今一人が眞向まつかうよりざツくり切たる一太刀ひとたちに二言と云はず死してけり二人は血刀押拭おしぬぐひ先久しりの山吹色やまぶきいろと懷中へ手を入れてヤアないはコリヤどうぢやと二人は不審ふしんはれやらず猶も懷中を掻探かきさぐ財布さいふ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
女5 そう勿体もったいらないで、おっしゃい。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
久しりにて汽車に乗りしに。
悲しき玩具 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
ひさりに石油を一升買った。
清貧の書 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
るる、苦患くげんの声か。
哀詩数篇 (新字旧仮名) / 漢那浪笛(著)
まつとははず杉原すぎはらさまはお廿四とやおとしよりはけてたまふなり和女そなたなんおもふぞとて朧氣おぼろげなことふてこゝろ流石さすがつうじけんお八重やへ一日あるひ莞爾にこやかにじようさまおよろこあそばすことありてゝ御覽ごらんじろとひさりのたはふごとさりとはあまりにひろすぎてどころわからぬなりと微笑ほゝゑめらばはし
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
朝靄あさもやを、微風びふういて、さざら波のたった海面、くすんだ緑色の島々、玩具おもちゃのような白帆しらほ伝馬船てんません、久しりにみる故国日本の姿は綺麗きれいだった。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
こんどのいくさまえときおとらず随分ずいぶんくるしい戦争せんそうでしたけれど、三ねんめにはすっかり片付かたづいてしまって、義家よしいえはまたひさりでみやこかえることになりました。
八幡太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
全体なら沸立にたっている牛乳一合へ今の白身三つりを入れると牛乳が半分ほど白身へ吸い込まれて大きく膨れます。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
「久しりだから、何か御馳走しませうか」といた。さうしてこゝろのうちで、自分の斯う云ふ態度が、幾分か此女の慰藉になる様に感じた。三千代は
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
めんかしらも、お製作こしらへにつたんですか。……あゝ、いや、さぎのお手際てぎはたのでわかる。のきさがつた獅子頭しゝがしらや、きつねめんなど、どんな立派りつぱなものだつたかわからない。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
併し、馬は、暫く荷を張られなかったので、荷を積んで曳き出すと、一脚ごとに鞍をった。
(新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
左様さやうでございますか、わたしひさしい以前いぜん二のとりの時に一人ひとりつれがあつて丸屋まるやあがり、あなたが出てくだすつて親切にしてくだすつた、翌年よくねんのやはり二のとりの時にひさりで丸屋まるやあがると
昨年の夏、私は十年りで故郷を見た。その時の事を、ことしの秋四十一枚の短篇にまとめ、「帰去来」という題を附けて、或る季刊冊子の編輯部へんしゅうぶに送った。その直後の事である。
故郷 (新字新仮名) / 太宰治(著)
わしは、このがいよいよますのをち、服装ふくそうなどもすぐに御国みくにりのきよらかなものにあらためさせ、そしてその姿すがた地上ちじょう両親りょうしん夢枕ゆめまくらたせ、自分じぶんかみさまにつかえているであるから
障子しょうじれるひかりさえない部屋へやなかは、わずかにとなりから行燈あんどん方影かたかげに、二人ふたり半身はんしんあわせているばかり、三ねんりでったあにかおも、おせんははっきり見極みきわめることが出来できなかった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
土手に若葉をゆすッている血櫧あかがしの木立を楯にして、顔を焼きそうな対岸を眺めますに、燃えさかッている火の手はちょうど宿しゅく上町かみまち辺で、炎は人家の建てこんでいる、下へ下へと延びている。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
駕籠かごつてかうかとおもつたけれど、それも大層たいそうだし、長閑のどか春日和はるびよりを、麥畑むぎばたけうへ雲雀ひばりうたきつゝ、ひさりで旅人たびびとらしい脚絆きやはんあしはこぶのも面白おもしろからう、んの六ぐらゐの田舍路ゐなかみち
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
夫の体きむしるようにりました。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
日本人のコックさんが、広島弁丸出しのおくさんと一緒いっしょに、すぐ、久しりの味噌汁みそしるで、昼飯をくわしてくれました。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
草鞋わらじの新しいのが、上り口にある。さっき婆さんがら下げてたのは、大方これだろう。自分は素足すあしの上へ草鞋を穿いた。かかとへ通してぐっと引くと
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この粉と焼粉をふるって例の通りザット黄身の方へ混ぜてそれから五つりの白身をよくよく泡立ててバラバラと粉を振りかけながら幾度いくどにも混ぜて行って
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
今日きょうひさりでごちそうだったなあ。大根だいこんもうまかった。うまもうまかった。あれでうっかりしていて、馬吉うまきちげられなければ、なおよかったのだけれど、残念ざんねんなことをした。
山姥の話 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
突放つきはなされて、安兵衞も伊兵衞も悦びまして、栗林の間へ逃げ込みましたが、吉原土手で仙太郎に逢った侍は心有るものゆえ、ぱらって逃げましたが、国分の束は心がないから
兇器きょうきが手を離るゝのをて、局はかれ煙草入たばこいれを探すすきに、そと身を起して、飜然ひらりと一段、天井の雲にまぎるゝ如く、廊下にはかますそさばけたと思ふと、武士さむらいしやりつくやうに追縋おいすがつた。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
四箇月りで夫とった時、夫の笑顔がどこやら卑屈で、そうして、私の視線を避けるような、おどおどしたお態度で、私はただそれを、不自由なひとり暮しのために、おやつれになった
おさん (新字新仮名) / 太宰治(著)
「女には、誰にだって、いけない性分が沢山あるものよ。ただそれを、あたしみたいに、正直にうわべに出しているか、おしとやかって、うまく包んでいるかの違いしかありやしないものよ」
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
九時が過ぎてから、何方どちらかが玄関をがちゃがちゃとった。
秋草の顆 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)