わが)” の例文
わがすむ魚沼郡うをぬまこほりの内にて雪頽なだれため非命ひめいをなしたる事、其村の人のはなしをこゝにしるす。しかれども人の不祥ふしやうなれば人名じんめいつまびらかにせず。
かつてはわが民族の間に重くられたかと思う五月二十八日、または中世の印地打いんじうちの日として、記録にも残っている四月二十二日等
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
このれんは敵の接近したのを見て司令官がわが隊を激励する光景を叙した物だと云ふが、数学者に判断して貰つても一寸ちよつとわかりさうにない。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
かれさへあらずば無事ぶじなるべきにと、各々おの/\わがいのちをしあまりに、そのほつするにいたるまで、怨恨うらみ骨髓こつずゐてつして、法華僧ほつけそうにくへり。
旅僧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
なみだ各自てんでわけかうぞと因果いんぐわふくめてこれもぬぐふに、阿關おせきはわつといてれでは離縁りゑんをといふたもわがまゝで御座ござりました
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あゝ、海賊船かいぞくせんか、海賊船かいぞくせんか、しもあのふね世界せかい名高なだか印度洋インドやう海賊船かいぞくせんならば、そのふねにらまれたるわが弦月丸げんげつまる運命うんめい最早もはや是迄これまでである。
むすめよ! むすめどころかい、わが靈魂たましひよ! 其方そなたにゃった! あゝ、あゝ! むすめんでしまうた、むすめねばおれたのしみも最早もうえたわ。
わがここに住むもいまだ一とせばかりの事なれば、それよりはるかの昔にせ給ふと見えて、住み給ふ人の一三三ありつる世はしり侍らず。
わが感情の領分に、或る élégiaqueエレジアック な要素があるようにしたって、それがなんの煩累はんるいをなそうぞと、弁護もして見る。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
と仕方なく/\祖五郎はわが小屋へ立帰って、急に諸道具を売払い、奉公人にいとまを出して、弥々いよ/\此処こゝ立退たちのかんければなりません。
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
房奴カメリエリはけふの拿破里日報(ヂアリオ、ヂ ナポリ)を持ち來りぬ。ひらきて見れば、わが假名けみやうあり。さきの日の初舞臺の批評なりき。
「なう/\あれなる御僧ごそうわが殿御かへしてたべ、何処いづくへつれて行く事ぞ、男返してたべなう、いや御僧とは空目そらめかや」の一節。
「歌念仏」を読みて (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
普請ふしんも粗末だったが、日当ひあたり風通かぜとおしもよく、樹木や草花のおびただしくうえてあるのをわがものにして、夫婦二人きりの住居にはこの上もなく思われた。
果樹 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
わが十年の約は軽々かろがろしく破るべきにあらず、なほ謂無いはれなきは、一人娘をいだしてせしめんとするなり。たはむるるにはあらずや、心狂へるにはあらずや。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
しかれどもわがいふところの俳諧は其俳諧にはことなりと云ふことにて、荷兮野水かけいやすゐ等に後見うしろみして『冬の日』『春の日』『あら野』等あり。
芭蕉雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
わが越後のごとく年毎に幾丈いくじょうの雪を視ば何の楽き事かあらん。雪のために力を尽し財をついやし千辛万苦する事、下に説く所を視ておもひはかるべし。
(新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
彼れ其実は全く嗅煙草を嫌えるもからの箱をたずさり、喜びにも悲みにも其心の動くたびわが顔色を悟られまじとて煙草をぐにまぎらせるなり
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
独りこれをわが東京専門学校に求むるのみならず、又広くこれを官私の学校に求め、これをして各〻おのおの政党の以外に独立せしめ
祝東京専門学校之開校 (新字新仮名) / 小野梓(著)
やがて、米人フィシャー氏、嘉与吉を案内として、南口から直接登って来た、氏は昨夜温泉で、わが行を聞き、同一逕路けいろを取らんため来たのである。
穂高岳槍ヶ岳縦走記 (新字新仮名) / 鵜殿正雄(著)
なまじお辰と婚姻を勧めなかったらかくも、我口わがくちから事仕出しいだした上はわが分別で結局つまりつけねば吉兵衛も男ならずと工夫したるはめでたき気象きしょうぞかし。
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
これを筆にするも不祥ふしょうながら、億万おくまん一にもわが日本国民が外敵にうて、時勢を見計みはからい手際好てぎわよみずから解散するがごときあらば、これを何とか言わん。
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
喜内は待てと呼止よびとめなんぢ追行おひゆくとも最早もはや時刻じこくも移りたれば其甲斐有るまじ汝其志操こゝろざしあらばお花に廻りあひし上わが無念を晴しくれよと云うを此世の名殘にて廿八歳を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「気楽は気楽ですけれど、さみしゅうございますわ、だから今日のように、わがままを申すようなことになりますわ」
水郷異聞 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
ってこれを許し、さらに文化十一年に到りて、択捉以南をわが地となし、中間にウルップ島を置き、シモシリ以北を露領となし、事しばらくたいらぐを得たり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
わがまま勝手かってそだてられてたおこのは、たとい役者やくしゃ女房にょうぼうには不向ふむきにしろ、ひんなら縹緻きりょうなら、ひとにはけはらないとの、かた己惚うぬぼれがあったのであろう。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
ゆゑこの攝養法せつやうはふひろおこなはれ、戰後せんごてふ大任たいにんへるわが國民こくみん體力たいりよく一層いつそう強固きやうこならしめ、各自かくじ職責しよくせき遺憾ゐかんなく遂行すゐかうせられんことをふか希望きばうするところなり。
命の鍛錬 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
舶来種のまだわが邦土ほうどには何処やら居馴染いなじまぬ花だが、はらりとした形も、ふかい空色も、涼しげな夏の花である。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
三人の紳士淑女はふなばたにしがみつき、しかし激しい夢に酔いながら、わが前に踊る、二様の曲線に見とれていた。
地獄風景 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
これを要するにわが見聞すること少き人事を詠ずるは、雑の句を詠ずると同様の感ありて無味を免れざるなり。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
一夜の松風に夢さめて、おもひさびしきふすまの中に、わがありし事、すゝきが末の露程も思ひ出ださんには、など一言ひとことの哀れを返さぬ事やあるべき。思へば/\心なの横笛や。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
このまま死んでしもうても、今わが胸に充ちたものは、今までの色ももない生活にははるかまさっているに違いない。己は己の存在を死んで初めて知るのであろう。
先頃さきごろわが百首のうちで、少しリルケの心持こころもちで作って見ようとした処が、ひどく人に馬鹿ばかにせられましたよ。
昔ながらの松明まつのあかり覚束おぼつかなき光に見廻はせば、寡婦やもめらしの何十年に屋根は漏り、壁は破れて、幼くてわが引き取られたる頃に思ひらぶれば、いたく頽廃たいはいの色をぞ示す
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
その位だから、わが身の未来なんぞと云うことも、秘蔵子ひぞうっこが考えないと同じように考えないでいる。
わが住所の絶滅、我あらゆる者の滅尽を連想して、如何に彼らは、多大の恐怖と、悲嘆とに陥ったであろうか、神経の過敏なる者どもは、この一声の警電を耳にしただけで
太陽系統の滅亡 (新字新仮名) / 木村小舟(著)
しかしながら、ながくわがくに慣用くわんようされた歴史れきしのあるわが國語こくごは、充分じうぶんにこれを尊重そんてうせねばならぬ。
国語尊重 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
さいわいに世界を流るる一の大潮流は、暫くとざした日本の水門を乗り越えくぐけて滔々とうとうわが日本に流れ入って、維新の革命は一挙に六十藩を掃蕩し日本を挙げて統一国家とした。
謀叛論(草稿) (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
そしてちひさな聲ですぐ眼の前の人を呼ぶやうに、しかしながら遠い我子とわがをつととを見つめて
(旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
その表彰式に彼の母も参列したが、人々は「わが Senior Wrangler の姉君」のために万歳を三唱」した。実際母は彼よりただ十八歳の年長者であったのである。
レーリー卿(Lord Rayleigh) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
我をやしなはんとならば人めみぐるしからぬ業をせよとなんの給ふ、そもことはりぞかし、わが両方ふたかたははやく志をたて給ひてこの府にのぼり給ひしも、名をのぞみ給へば成りけめ。
樋口一葉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
何の声もなく唯だ黙して下界を視下みおろす時、かつて人跡を許さゞりし深林の奥深き処、一片の木の葉の朽ちて風なきに落つる時、自然は欠伸あくびして曰く「あゝわが一日も暮れんとす」と
空知川の岸辺 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)
おそれ多いが、先づわが天皇陛下から申し上げると、陛下の御誕生が一八七九年で、御即位が一九一二年、御治世が五箇年で、今年の天長節で第三十八回の御誕辰を迎へさせられた。
ふとわがあゆ街路がいろ前方ぜんぽうけた。五六けんさきから年頃としごろむすめが歩いて來る。
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
然れども人間の欲情もときわまる処なし。我は遂にむべきいえ着るべき衣服くらふべき料理までをも芸術のうちに数へずば止まざらんとす。進んでわが生涯をも一個の製作品として取扱はん事を欲す。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
大尉たいゐが高きほまれにはけおされてなど口々くち/″\いふ、百ぽんぐひより石原いしはら河岸かし、車の輪もまはらぬほど雑沓こみあひたり、大尉たいゐとも露伴氏ろはんし実兄じつけいなり、また此行中このかうちうわが社員しやゐんあれば、此勇このいさましき人の出を見ては
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
虎の子や虎、犬の児や犬、食与ものくゐわが御主おしゅう内間うちま御鎖おざすど我御主
ユタの歴史的研究 (新字新仮名) / 伊波普猷(著)
見ればたゞ何の苦もなき水鳥みづとりの足にひまなきわがおもひかな
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
すたれたる夢の古墟ふるつか、さとあかるわがむろの内
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
塚も動けわがなく声は秋の風 芭蕉
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
花に寝てわが家遠き野道かな
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)