大工だいく)” の例文
よろずやのおかみさんはあわてて、となりの大工だいくさんとこへ走りこみ、井戸ばたでせんたくものをつけているおかみさんに大声でいった。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
と、日数をかぞえたり、若夫婦のために、奥の書斎と古い一棟を、大工だいくでも入れて、すこし手入れもせねばなどといいはじめた。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大工だいく番匠ばんしょうというのは徴用工ちょうようこうという意味であった。壁をぬる人をシャカン(左官)というのは、その補佐役ほさやくということであった。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
むらの人たちもこまりきって、みやこだかい大工だいく名人めいじんんでて、こんどこそけっしてながれない、丈夫じょうぶはしをかけてもらうことにしました。
鬼六 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
まるたんぼうのはしを、大工だいくさんがのみで、ちょっちょっとほってできたようなその顔を、久助君はまぢかにつくづくと見た。
久助君の話 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
別れて出たては至極しごくおだやかで、白山はくさんあたりから通つて來る、或大工だいくと懇意になつて、其大工が始終長火鉢のそばに頑張つてゐた。
絶望 (旧字旧仮名) / 徳田秋声(著)
まして、自分じぶんが、つばさのある天使てんしたなどといっても、大工だいく夫婦ふうふはじめ、それをほんとうにしてはくれないとおもいました。
いいおじいさんの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
大工だいく、安井は皆肺結核患者であった——そして、この空気混濁は、そのことに起因して、肺疾患者を海上において生産する矛盾をあえてした。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
昨日頼んで置いたので、先家主の大工だいくが、六畳裏の蛇でものたくりそうな屋根裏やねうらを隠す可く粗末な天井を張って居た。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
普請ふしんはもう八どおりも進行しんこうしてり、大工だいくやら、屋根職やねややらが、いずれもいそがしそうに立働たちはたらいているのがえました。
紙屋だったと云う田口たぐち一等卒いっとうそつは、同じ中隊から選抜された、これは大工だいくだったと云う、堀尾ほりお一等卒に話しかけた。
将軍 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
もとは少工しょうくに対する名として、たくみの上席のものの称であった大工だいくの語を、後世一般の木材建築職人に及ぼし、それでもなお不足で、その頭分を棟梁と云い
長吏名称考 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
をしまず大工だいく泥工さくわんを雇ひ俄に假玄關かりげんくわんを拵らへ晝夜の別なく急ぎ修復しゆふくを加へ障子しやうじ唐紙からかみたゝみまで出來に及べば此旨このむね飛脚ひきやく
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
温泉場をんせんば普請ふしんでもときには、下手へた大工だいく真似まねもする。ひまにはどぜうしやくつてくらすだが、祖父殿おんぢいどんは、繁昌はんじやうでの、藩主様とのさま奥御殿おくごてんの、お雛様ひなさまこさへさしたと……
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ノルムはその語原ごげんを調べると大工だいくの使用する物指ものさしすなわち定規じょうぎである。この定規にかなったものがノルムてきすなわち英語にいうノーマル(normal)である。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
或は白木しらき指物細工さしものざいくうるしぬりてその品位を増す者あり、或は障子しょうじ等をつくって本職の大工だいく巧拙こうせつを争う者あり、しかのみならず、近年にいたりては手業てわざの外に商売を兼ね
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
起因おこり大工だいくであつたおいとの父親がまだ生きてころから母親おふくろ手内職てないしよくにと針仕事をしてゐたが
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
八百屋やをやきちらう大工だいく太吉たきちがさつぱりとかげせぬがなんとかせしとふにこのけんであげられましたと、かほ眞中まんなかゆびをさして、なん子細しさいなく取立とりたてゝうわさをするものもなし
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
帳場ちょうばいそ大工だいくであろう。最初さいしょつけたほこりから、二人ふたりが一しょに、駕籠かごむこうへかけった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
お光さんは豊津とよつの女学校をやめて、家へ帰ったそうだ。またお光さんに縫ってもらった綿入れが小包で来るそうだ。大工だいく角三かくぞうが山で賭博ばくちを打って九十八円取られたそうだ。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
簡單かんたん普請ふしんには大工だいくすこのみ使つかつただけその近所きんじよ人々ひと/″\手傳てつだつたので仕事しごとたゞにちをはつた。なが嵩張かさばつた粟幹あはがら手薄てうすいた屋根やねれも職人しよくにんらなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
野山にへる杉の樹や松の樹までが、常陸ッ木下総ッ木といへば、大工だいくさんが今も顔をしかめる位で、後年の長脇差ながわきざしの侠客も大抵たいてい利根川沿岸で血の雨を降らせあつてゐるのだ。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
「それは大工だいくがへただからゆがんだのだ」とお歌いになりました。すると志毘しびかさねて
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
この人はもうかなりのおじいさんで、わかいじぶんには鉱山こうざん大工だいくの仕事をしていたが、あるときあやまって指をくだいてからは、手についたしょくてなければならなかったのであった。
左甚五郎は彫物大工だいくですが、野沢琢堂は見識のある仏師で、関東地方に幾つかの傑作をのこしておりますが、この普賢菩薩なども、数ある琢堂の傑作の中でも屈指の数に入るものでしょう。
山頂に滞在せる大工だいく石工せきこう人夫にんぷら二十余名が手をむなしくして徒食せるにもかかわらず、予約の賃金は払わざるべからず、しかもその風雨は何時いつ晴るべき見極みきわめも付かず、あるいは日光のために
諭吉ゆきちは、三田みた慶応義塾けいおうぎじゅくをうつしたとき、自分じぶんのすむいえもたてましたが、大工だいくにたのんで、いえのゆかをふつうよりたかくして、おしれのなかからゆかしたへもぐってにげだせるようにしました。
大工だいくありと来るのだ、一日に何時間を働くといった、事が書いてある。当時十二や十三歳の小供が、大工の生活などに興味が持てるはずがない、それがまた賃金の問題だからなおさら無関係だ。
楢重雑筆 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
「だめでさあ、わっしもずいぶん目をかけました。でもどうしてもだめなんです。あいつは隊をさがってからもとの大工だいくにならないで巡査じゅんさ志願しがんしたのです。」「そして巡査じゅんさをやったんですか。」
バキチの仕事 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
すぢ向ひの家に大工だいく夜為事よしごとの長崎訛きくはさびしも
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
意地悪いぢわる大工だいくの子などもかなしかり
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
それでも飛騨ひだ白川しらかわのような辺鄙へんぴな土地では、たった一人の大工だいくがきて棟上むねあげまですむと、あとは村の人にまかせてかえったそうである。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
このあいだまで大工だいくたちが、ここで他所よそてるいえ材木ざいもくんでいたのでした。ここは、町裏まちうらはらっぱであります。
雪の降った日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
このうたいて、大工だいくはほっとしました。そうしてかえったように、元気げんきをとりもどして、宿屋やどやかえってました。
鬼六 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
やむなく大工だいく棟梁とうりょうの馬を曳いたという故事は聞いていたが、鎌倉の群集と諸大名の前で、犬を曳かせられるとは……と、高氏はちょっと感傷を覚えた。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ちょうど川本大工だいくも家にいて、男泣きに泣きながら、赤ん坊が死なないかぎり、松江を学校にはやれぬといった。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
鉋太郎かんなたろうこたえました。これは、江戸えどから大工だいく息子むすこで、昨日きのうまでは諸国しょこくのおてら神社じんじゃもんなどのつくりをまわり、大工だいく修業しゅぎょうしていたのでありました。
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
なんでも明治三十年代に萩野半之丞はぎのはんのじょうと言う大工だいくが一人、この町の山寄やまよりに住んでいました。萩野半之丞と言う名前だけ聞けば、いかなる優男やさおとこかと思うかも知れません。
温泉だより (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
うしろいた腰掛臺こしかけだいうへに、一人ひとり匍匐はらばひになつて、ひぢつて長々なが/\び、一人ひとりよこざまに手枕てまくらして股引もゝひき穿いたあしかゞめて、天窓あたまをくツつけつて大工だいくそべつてる。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
八百屋の吉五郎きちごらう大工だいくの太吉がさつぱりと影を見せぬが何とかせしと問ふにこの一件であげられましたと、顔の真中まんなかへ指をさして、何の子細なく取立ててうはさをする者もなし
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そんなものはございません、とったが、少し考えてから、老婢ろうひ近処きんじょ知合しりあい大工だいくさんのところへって、うまいのり出して来た。滝割たきわり片木へぎで、杉のが佳い色にふくまれていた。
野道 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
見付けたのは、人もあらうに、隣に住んでゐる大工だいくの金五郎の娘お美乃。
しかし、仕事しごとのないときですから、大工だいくたちはよろこんでやすいちんぎんではたらいてくれ、なかなかりっぱなじゅくができあがりました。それに年号ねんごうをとって、「慶応義塾けいおうぎじゅく」とづけたのでした。
道子みちこはもと南千住みなみせんぢゆ裏長屋うらながやまづしいくらしをしてゐた大工だいくむすめである。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
あ、大工だいくの家では洋燈らんぷが落ち
心の姿の研究 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
大工だいくのつごうで、すぐにしてやるよ。」と、ちちがいいました。おもいがけない二つのよろこびが、一にやってきたようで、わたしむねはおどりました。
時計と窓の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
大工だいくはせっかく見込みこまれてたのまれたので、うんといってけてはみたものの、いよいよそのてみて、さすがの名人めいじんも、あっといっておどろきました。
鬼六 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
しかし、昼飯ひるめしもまだなのを思うと、少し心配になった。心配しいしい土間どまでぞうりを作っていると、川本大工だいくのおかみさんが、気ぜわしそうな足どりでやってきた。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
そこで盗人ぬすびと弟子でしたちが、釜右ヱ門かまえもん釜師かましのふりをし、海老之丞えびのじょう錠前屋じょうまえやのふりをし、角兵ヱかくべえ獅子ししまいのようにふえをヒャラヒャラらし、鉋太郎かんなたろう大工だいくのふりをして
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
つい、その一時代前ひとじだいまへには、そこは一面いちめん大竹藪おほたけやぶで、よわ旗本はたもとは、いまの交番かうばんところまでひるけたとふのである。酒井家さかゐけ出入でいり大工だいく大棟梁おほとうりやうさづけられて開拓かいたくした。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)