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酒井家
つい、その
一時代前には、そこは
一面の
大竹藪で、
氣の
弱い
旗本は、いまの
交番の
處まで
晝も
駈け
拔けたと
言ふのである。
酒井家に
出入の
大工の
大棟梁が
授けられて
開拓した。
無念なりと
蹉跎なして
怒給ひしが今更
詮方も無りしとぞ
假初にも十五萬石にて播州姫路の城主たる
御身分が
素性もいまだ
慥ならぬ天一坊に下座
有しは
殘念と云も餘りあり天一坊は
流石の
酒井家さへ下座されしと
態と
言觸し其
威勢濤の如くなれば東海道筋にて誰一人爭ふ者はなく
揚々として下りけるは
矢來邊の
夜は、たゞ
遠くまで、
榎町の
牛乳屋の
納屋に、トーン/\と
牛の
跫音のするのが
響いて、
今にも——いわしこう——
酒井家の
裏門あたりで——
眞夜中には——
鰯こう——と
三聲呼んで